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7. 卒業パーティーを終えて

マールに来て2度目の春が来た。シモンが産まれてもうすぐ1年経つ。赤ちゃんの成長は早い。最近はつかまり立ちができるようになった。シモンが産まれてから本当に毎日毎日大変だったが、伯父夫妻は港町の別邸を一つ貸してくれ、色々な側面から生活を支援してくれた。何とかがむしゃらに頑張ったおかげか事業はうまくいってるし、子育ても実家(ブロワ侯爵家)をクビになったと聞いて呼び寄せた侍女アンヌが手伝ってくれている。


アマリリス、ネモフィラは無事(?)ルミエール魔法学園を卒業したらしい。私は卒業式には参加しなかった、いやできなかった。だって出奔したままだから。卒業パーティーの"断罪劇"の顛末は、アマリリスからの手紙で知った。


**********************

親愛なるリリーへ


そちらはお元気ですか?シモン君はもうすぐ1歳かな?マールの潮風が恋しいです。


先日ですがついにルミエール魔法学園を卒業しました!

卒業パーティーでは我々の予測通り、ロベリア嬢とハーレム構成員のヴィクトル殿下、アベル様、サヴォイア先生が私への断罪を始めたので、作戦通り反証しました。彼らが言うには、私が女子寮の階段でロベリアを突き落としたり、彼女の卒業パーティーのドレスをビリビリに破いたりしたそうです。入学後一度も女子寮に入ったことない私にどうしてその所業を行えるんでしょうね。本当に馬鹿も休み休み言って欲しいです。まあヴィクトル殿下に至っては、婚約者にもかかわらず、私のおばあ様が元学園長であることすら知らなかったわけですが。。。


なおパーティーで私とヴィクトル殿下との婚約は無事に解消され、新たにアレクサンドル様と婚約を結ぶことになりました。本当にうれしいです。貴女のアドバイスがなければ絶対に選べなかった選択肢なので、とても感謝しています。


あとこの事件の真相について、貴女に一つご報告しなければならないことがあります。これは闇の副属性も持つアレクサンドル様が気づいたことなのですが、ロベリア嬢のブローチには『魅了の呪い』がかけられていたそうです。呪いというのは闇属性の属性魔法で、解呪も闇属性持ちにしかできません。ロベリア嬢は火属性なので、もともとブローチに強い呪いがかかっていて、何らかの身体代償を払って呪いを発動させたのだろうという見立てでした。仮にも一国の王太子に対して、呪いをかけるという行為は言語道断です。アレクサンドル様の力をお借りして卒業パーティーで無事解呪致しました。解呪後、呪いの代償でロベリア嬢は老婆のような姿になり、国家反逆の容疑で捕らえられ、ご実家の男爵家もお取りつぶしが決まりました。ハーレム構成員の方々ですが、魅了とはいえ相手に好意が全くない状態で、この呪いにかかることはありません。三人とも深く反省されているようでしたが、ヴィクトル殿下は廃太子が確実、アベル様は謹慎、サヴォイア先生は学園を解雇されたとのことです。


ところで差し出がましい提案になってしまい恐縮なのですが、一度アベル様にお会いしてシモン君の件、ご相談されるのはいかがでしょうか?呪いが解けて、アベル様も今ではすっかり頭を冷やされているようですし、以前と違って冷静なお話し合いができると思います。シモン君のお父様はアベル様です。貴女の希望があれば最大限サポート致します。


最後になりますが、フルール商会の新作のマニキュアの試作品とっても良かったです!欲を言えば、色のバリエーションがもっと欲しいところですが、まずは在庫を増やし過ぎてもいけないので、送って頂いた三色から売り出してみましょうか?


お互い忙しくなりますが、たまには王都に遊びに来てくださいね!


愛をこめて

アマリー

**********************


ヴィクトル殿下が廃太子ってことは、アレクサンドル殿下が王太子になるのかぁ、それでアマリリスはそのまま王太子妃かぁ。さすが元女性起業家だ、野心がすごい。


「それにしても魅了の呪いねぇー、そんな設定した覚えがないけど。」


一瞬疑問に思い、そう吐き捨てた。しかしすぐに、ロベリアへの好意がないとかからない『魅了の呪い』とやらに簡単にかかったアベルへの怒りが腹の底からこみあげてきた。この世界には、転生者である私たち悪役令嬢トリオとロベリアが暗躍したせいで、元のシナリオから大きくずれてしまった部分がある。きっとアベルもそうなんだろう。ひたすらまっすぐで一途なワンコ系騎士は幻想だったのだ。そもそも私は彼から拒絶されたのだ。今更会いたいとは思わない。加えて親権も厄介な問題である。シモンはアベルと同じ火属性だ。この世界の貴族法で貴族の子女の親権は子どもの魔力養育を鑑みて、原則属性の同じ親が得ることになっている。彼がシモンを認知してしまった場合、シモンをそのままとられる恐れがある。


シモンは私がひとりでお腹を痛めて生んだ私だけの子だ。アベルにとられてたまるものか!!


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― 新着の感想 ―
時に、被害者の欲望を増幅させ事に及んでしまう類の魔法の罪深さはどのように扱われるのだろうな、ある人物は殺意を抱く程相手を憎んでいたが魔法をかけられる事さえなければ実際に殺害を決行しなかったとしたらその…
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