表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
逆ハーエンドかと思いきや『魅了』は解けて~5年後、婚約者だった君と再会する  作者: 志熊みゅう
プロローグ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

5/59

5. まさかの妊娠

「リリ、週末の剣技大会の予選だけど応援来てくれる?」


「ええ!予め言っておいてよ。その日はアマリー達と遊ぶ予定になっているから...」


「なんとかアマリーやネモフィーに言って予定ずらせない?リリに応援して欲しい!」


「ううーん、ごめん!今からだと無理だわ。準決勝と本選は必ず行くから今回は本当にごめんなさい。」


「アマリー、アマリーって。。そんなに将来の王太子妃様が大事かよ。」


 始まりはそんな些細な喧嘩だった。遊びに行くとは言ったが、実際はアマリリス達とマールで大事な商談が入っていた。予め言っておいてくれれば別日にしたのだが、直前ではずらしようがない。アマリリスは王太子の婚約者ではあるが魔力量が少なく、隣領のマールまで転移することができない。そして三人の中で他の人を巻き込んで転移できる魔力量があるのは私だけだった。そもそも商談自体も私の絡んだ案件で、アマリリス達に無理言って代わってもらうのは難しかった。


 そして週明けだった、アベルの態度が激変したのは。話しかけても無視するし、びっくりするほどロベリアにべったりになっていた。


「ねえどうしたの?予選行かなかったのはごめん。結果はどうだった?次の試合は必ず行くから日程教えて。」


「もう来なくていい。お前は未来の王太子妃様に媚売ってりゃいいだろ。」


 こんな感じで話にならないし、すれ違うたびに睨まれる。いつも中庭のガゼボでロベリアといちゃついている。段々と話しかけるのにも疲れてしまった。


 そして非常にタイミングが悪いことに、月のものが来なくなった。最近は食欲も出ないし、食べても吐いてしまう。原因はなんとなく分かっている。夏休みに彼の領地に遊びに行った時に、一線を越えて、肌を重ねてしまったのだ。貴族としての貞操観念でよろしくない気もしたが、私たちは一応婚約者だし、何より彼に逃げられたくなかった。


「体調は大丈夫なのか?一度診てもらったほうがいいのではないか?」


 ネモフィラに声をかけられた。彼女は転生前は医療従事者だったらしい。今世でも光属性を生かして、治癒魔導士になりたいらしく、医学の勉強に励んでいる。事情をすべて話した。彼女は慌てて、この世界の妊娠検査薬を買ってきてくれた。やはり陽性だった。


「…アベルにどう伝えよう。今の状態じゃ口もきいてくれない。」


 目に涙を浮かべながらそう告げると、ネモフィラは優しく抱きしめてくれた。


「私もついていくよ。その話だとアマリーはいない方がいいだろう。」


 私はそのままわんわん泣いた。


 ***

 今日もアベルはロベリアといた。


「アベル、話があるんだけど…。」


「は?来るなって言ってるだろう。」


 怒気にあふれた口調で、にらみつけられる。隣のロベリアがほくそ笑んだ。


「アベル君、大事な話だ。君は聞く必要がある。」


 ネモフィラも一緒になって説得してくれる。


「うるさいなあ。未来の王太子妃様の取り巻きどもが。」


「"悪役令嬢"さん達、必死になって大変そうね。」


 ロベリアが薄汚い笑みを浮かべた。とんだ性悪女め。


 さすがに人前で「あなたの子どもを妊娠しているの!」と叫ぶわけにもいかず、何度かアベルが一人でいるところを狙って声をかけたのだが二進も三進もいかない。無理だった。『これで話しかけるのをやめるから、最後だから話を聞いて欲しい』と言っても、一瞥もされなかった。


 アベルは前世の交際相手と比べても相当なクズな男だ。自分の理想を描いてこれなのだから、私は真正のダメンズウォーカーなのかも知れない。もう男性を信じることはやめた。だけど、段々大きくなるお腹の子については諦めたくなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ