16. いざ辺境ブロワ領へ
私と私の実家であるブロワ侯爵家との折り合いは、昔からあまりよろしくない。しかも辺境の辺境過ぎて、王都近郊から転移しようと思うと、片道で一日分の魔力を消耗する。貴族としての後ろ盾はマール伯爵に養子縁組をしてもらうしそれでいいと考えていたけど、アレクサンドル王太子殿下に言われてハッとした。負傷後寝たきりの実父に孫の顔を見せるのは最期の親孝行かもしれないし、今後実家との間に変なわだかまりを残すよりも一応顔くらいは見せておいたほうがいいと思った。
まず実家に先触れを出した。異母妹のエリカから返事が届き、ぜひ久しぶりにお会いしたいと書かれていた。私が知るエリカは手が付けられないようなわがままさだったが、学園を卒業してだいぶ大人になったとアベルから聞いた。久しぶりに会えばもう少し姉妹らしくできるかもしれない。
旅程は二週間とることにした。マール領からブロワ領まで馬車で普通に行くと、往復十日もかかる。幼い子を連れての旅で、変に無理するわけにもいかないのでこれは致し方ない。途中いくつかの宿場町に立ち寄る予定だ。せっかくだから、温泉のあるヴォルカンにも寄ろう。ここだけの話、確執のある実家に行くよりも、温泉に入る方が楽しみだ。
フルール商会の方は、留守中の引継ぎを急ピッチで行い、なにか緊急事態にはマール伯爵に指示を仰ぐよう店長、従業員に伝えた。本格的に仕事を始めてから、こんなに長く休むのは初めてなので少し緊張する。
アベルの方は、殿下の命で一か月の休みをもらったので、ちょくちょくシモンを連れて、港の公園や町を散策して領民の話を聞いたり、領内の孤児院に慰問に行ったり、私が叙爵予定のアルトワ子爵領の牧場を見学したりと、シモンの面倒を見つつ、私との結婚後のことを考えて動いてくれている。
なんとかかんとか仕事をまとめ旅立ちの日を迎えた。侍女のアンヌも辺境領に長く勤めていたから、一緒に行かないかと誘って、ついてきてもらうことにした。いざ、ブロワ領へ。シモンが嬉しそうに馬車に飛び乗った。




