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逆ハーエンドかと思いきや『魅了』は解けて~5年後、婚約者だった君と再会する  作者: 志熊みゅう
家族になる

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10. 海神祭の祝宴

 ドレスは贈られた二着のうちマーメイドラインのドレスを選んだ。祝宴の会場は『ビストロ・フルール』二階のホールだ。ここはパーティーだけではなく、結婚式の披露宴に貸し出したり、フルール商会の新作のレセプションにも使っている。エメラルドのペンダントとピアスが夜会の光をまとい、まばゆく光る。


「お手をどうぞ、リリアーヌ。」


「ありがとう、アベル。」


 今日のアベルは正式の騎士制服だ。胸には今までもらった勲章と袖には階級を示す腕章がついてる。アベルは騎士団長の子息だが、あえて危険が多い第四騎士隊に志願したと聞いた。胸につけられたたくさんの勲章は誰もが恐れる死地で武勇をあげた証だ。こうして彼にエスコートされることを誇らしく感じた。アベルに手を取られ、会場に入場した。


 宴はマール伯爵の挨拶に始まり、この日のために用意したとっておきのシャンパンで乾杯した。会場の運営も滞りなさそうだ。祝宴中の全指揮は『ビストロ・フルール』の店長に任せている。彼が会場全体に目を光らせ、ウェイターを適切に配置している。


 そしてついに、ダンスタイム。祝宴の前一応何度かアベルと二人で練習したけど、社交の場でアベルと踊るのはかれこれ7年ぶりだ。


「リリ、もしかして緊張している?」


「ちょっとね、もともとダンスはあまり得意じゃないから。」


「ちゃんとリードするから安心して。」


 アベルも侯爵令息だから小さい頃から嫌というほどダンスは仕込まれている。リードが上手で、とても踊りやすかった。ファーストダンスだけでなく、二曲目も一緒に踊った。普通決まったパートナー以外と何曲も踊ることはしないのだが、書類上は婚約者なのだし問題はないだろう。


 二曲目が終わった時点で、聞き覚えのある甲高い声の男性に声をかけられた。


「リリー、今日も麗しい。女神のようだ。しかし毎回毎回、貴族である私が贈ったドレスを送り返し、エスコートも断るというのは、いささか不敬ではないか。」


 レニエ子爵だ。相変わらず何を言っているんだろう、この人は。


「これはこれは、レニエ子爵。私の婚約者に何か用かな?」


 アベルが一歩前に出て、牽制する。レニエ子爵がなめまわすようにアベルをみた。


「第四騎士隊の騎士か。魔獣討伐部隊の君がなぜここにいる?この町に魔獣は出ないぞ。それに君に発言の許可は与えていない。不敬だ、名を名乗れ。」


 本来、第四騎士隊は魔獣討伐部隊だから魔法を扱える貴族の方が適任のはずなんだけど、実際は危険業務手当が目当ての騎士学校上がりの平民の志願が多い。階級を示す腕章の色は所属する騎士隊によって違う。たぶんアベルの腕章をみて、彼を平民出身と勘違いしたんだろう。


「申し遅れた。ボナパルト侯爵家のアベルだ。現在は個人で騎士伯も賜っている。それで不敬というのは何の話かな?レニエ子爵。」


「き、騎士団長のボナパルト侯爵のご令息でしたか。これは申し訳ない。こちらが初めに名乗り出るべきところを。しかし、変な嘘はいけませんぞ。その女は平民だ。どこかの貴族の養子にでもしない限り、嫁にとれない。なあリリー、君はだまされているんだ。彼のような上位貴族の令息が、いくら君の見目が麗しく金を持っているからと言って、平民を嫁にとるわけがない。所詮愛人どまりだよ。その点、私は後妻だから細かいことは気にしていない。ネール男爵に君との養子縁組も頼んでいる。私と結婚しよう、リリー。」


 つくづく腹の立つことを言う。みるとレニエ子爵の甲高い声が会場に響いて、全体の注目を集めてしまった。平民暮らしが長すぎて、こういう時に貴族らしい微笑みができない。口元をセンスで隠し応戦することにした。


「私も申し遅れてましたわ。本名をリリアーヌ ブロワと申しますの。マール伯爵の姪ですわ。アベルとは子どもの時から婚約しておりますの。レニエ子爵、いい加減その品のないふるまいを改めてくださらないかしら?」


「リ、リリアーヌ ブロワって呪いの事件で失踪したっていう、あの侯爵令嬢か。またそんな冗談を…。」


「冗談ではないよ。彼女は確かに私の姪だ。そして継ぐべき子爵位も持っている。これ以上、会場に似つかわしくない発言は控えたまえ、レニエ子爵。」


 マール伯爵の言葉に会場がざわつく。アベルがさらに追撃する。


「そうだ。一昨日、君の学園時代の同級生で文官のセルジュ フルニエ君が汚職容疑で逮捕されたよ。君も心あたりがあるんじゃないか。」


「は?私は関係ない。ネール男爵に彼を紹介しただけだ。」


 会場の隅にいたネール男爵が飛んできた。


「な、なにを言っているんですか。レニエ子爵。私、そんな男知りませんよ。」


「ネール男爵がコピー商品の被害届を握りつぶすためにフルニエ君に金を渡したことも、レニエ子爵がそれを斡旋したことも、こちらには証拠がある。そしてなによりフルニエ君がすべてを自白した。既に君たちの令状は王太子殿下の命の元、こちらに用意してある。捕らえよ。」


 手早く警備の騎士達がレニエ子爵とネール男爵を取り押さえ、騎士隊支部に連行していった。アベルは何も言っていなかったけど、予めこうするつもりだったんだろう。これで軍事魔道具の密輸の件も家宅捜索できるはずだ。


 パン、パンと二回、マール伯爵が手をたたいた。


「皆の者、楽しい宴だというのにお騒がせした。ホストとして謝罪したい。あと私の方からも発表がある。既に知っているものも多いと思うが、倅のパスカルの体調が芳しくない。このためマール伯爵家嫡子として姪のリリアーヌ ブロワを指名する。彼女にはこれから我が家の養子になってもらう予定だ。」


「ブロワ侯爵家のリリアーヌと申します。ここにいる皆様にはフルール商会のリリーの方が親しみがあると思います。マール領は決して広くはありませんが、漁業と交易が盛んで常に活気がありどこよりも可能性と将来性にあふれた領地です。伯父からこの土地を引継ぎ、新しい産業の開発推進、交易の活発化に尽力し、さらに発展させていきたいと思っています。皆様のご支援、ご助力をよろしくお願い申し上げます。」


 満場に拍手が沸き上がった。

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パスカルさん、まだ死んでないのに。気の毒としか言いようがない
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