4. ヒロインの登場
「ラヴァル男爵家のロベリアと申します。魔法属性は火です。市井での生活が長かったため、貴族社会に不慣れ部分もあると思いますが、皆様仲良くして下さい。」
慣れてなさそうなカーテシーであいさつする。ヒロインのロベリア ラヴァルはラヴァル男爵とメイドの庶子だ。母親は妊娠を機に屋敷の女主人に追い出され、市井で出産、彼女は平民として育った。母親が亡くなった時に自分の出生の秘密を聞いたロベリアは、母の形見のブローチを胸に、男爵家の門戸をたたく。この時、既に屋敷の女主人は鬼籍に入っており、彼女はラヴァル男爵に温かく迎え入れられる。正式な貴族籍の手続きも終わり、二年生の夏休み明けルミエール魔法学園に編入してきた。
「ねえ、アベル。あの編入生みてなんか思った?」
「え、あの男爵令嬢?いきなりどうしたの?」
ロベリアはヒロインらしく、整った顔立ちとふわふわのピンクブロンドに青い瞳がお人形さんみたいで、とても可愛らしかった。アベルが彼女に一目惚れしたかと思って一瞬焦ったのだが、取り越し苦労だったようだ。
観察していると、どうやらロベリアも転生者であり、授業そっちのけでイベントを回収に奔走し始めた。まず近づいたのはサヴォイア先生だ。編入生のため遅れている分の補習をお願いしたらしい。放課後、個別指導してもらってるようだが、明らかに先生と生徒の距離感ではない。次に近づいたのはヴィクトル殿下だった。俺様ヴィクトル殿下もあっという間に陥落し、今まで侍らせていた女子生徒たちも散っていた。最近はアマリリスの義弟とも仲良くしているようだった。
もしかして、逆ハーエンドを狙っているのか?いや、ありえない。だって学園にリュカがいないんだから。逆ハーエンドにならないはずだ。