7. マール沿岸警備騎士隊
マール伯爵家から邸に戻ると、侍女のアンヌが駆け寄ってきた。
「どうしたの?アンヌ。」
「今年も、例のブツが届いたんですよ。」
そう苦々しげに言って、大きな包みを指さした。中を開けると、派手に胸元が開いた青いドレスと青い宝石がついたペンダント。贈り主はレニエ子爵だ。
「あの三股借金男の瞳の色に合わせたドレスですね。あとこちらも。」
手紙だ。やれ『女神』だの『美の化身』だのぐだぐだ書いているが、要するに海神祭の祝宴で君をエスコートしたい、当日は贈ったドレスとジュエリーを身に着けてほしいということのようだ。
「アンヌ、そのドレスとジュエリーは送り返しておいて。あと断りの手紙も書くから一緒に送って頂戴。」
「かしこまりました。リリー様!」
***
祝宴の会場警備について、マール沿岸警備騎士隊の隊長と細かいところを詰めるため、騎士隊支部に訪れた。事前にアベルに言っていたからか、門のところまで迎えに来てくれた。
「アベル、仕事さぼって大丈夫なの?」
「俺の仕事はここの騎士隊とは独立しているから、咎める人はいないよ。ちゃんと王太子殿下に定期報告もだしているし。」
そういって隊長の部屋まで案内してくれる。
「そういえば権利侵害の被害届、知財1課にだしたわよ。話を通してくれていたおかげですんなり受理されたわ。」
「ほら、俺もちゃんと仕事しているだろ。そういえば海神祭の祝宴はレニエ子爵とネール男爵も招待されているのか?」
「ええ、もちろん。伯父様の立場では呼ばざるを得ないのよ。」
「じゃあ、俺も警備に加えてもらおうかな。」
あ、そうか。当日ここの騎士隊に所属していないアベルは仕事が割り当てられてないのか。会場警備をするなら、私をエスコートして、あの三股借金男から守って欲しい。当日には大事な発表もあるし。
「レニエ子爵から付きまとわれている話したっけ?」
「ローズから聞いた。君の資産を狙ってるのだろう。」
「そうそう。あの三股借金男、毎回断っているのに、しつこく求婚してくるの。また君をエスコートしたいって、ドレスとペンダントを送りつけてきたから、全部送り返してやったわ。それで今回の祝宴でマール伯爵が私を後継者指名する予定なの。レニエ子爵にかまってられないから、当日のエスコートをお願いできないかしら?」
「もちろん!リリと踊るの久しぶりだから練習しよ。あとドレスとそれに合わせるジュエリーも贈らせて!今度一緒に選びに行こう。」
「ありがとう。ではお言葉に甘えて。」
「ここが隊長の部屋だよ。じゃあドレス選びに行くの楽しみにしてる。ちゅっ」
「ちょちょっと、アベル!」
完全に油断していた。アベルは私の額に軽く口づけをして去っていた。
その後、隊長との祝宴警備の話し合いは去年と同じ会場ということもあり、つつがなく終了した。私はまだ少しドキドキしながら転移魔法で家路を急いだ。




