5. オネエの後押し
土曜日、閉店後の『バー・ローズ』に訪れた。
「いらっしゃいましー♪」
「ちょっとローズ、私は客じゃないわよ。帳簿をみせて。」
「あらあら♪でも最近ちょっとあんた機嫌よさそうじゃない?あの騎士様とうまくいっているの?」
「ローズ、この前はクソ男って言ってなかった?」
「でもダーリンが言ってたのよぉ~、あの騎士様、毎回休みの日、あんたの家にお子さんに会いにいっているって。だから案外うまくいっているんじゃないかと思って♡」
「随分よく知っているのね。」
帳簿から目を離さずに答えた。
「はーい、サイドカー♡カクテル言葉は『いつも二人で』よ♡」
「ちょっと、冷やかさないでよ。」
「でももともと婚約者だったんでしょ?お子さんもいるんだし、やり直すのもありなんじゃない?人柄はダーリンのお墨付きだし、あんたとお似合いだと思うわぁ~。学生の頃おかしくなってたのは、きっとあのヘンテコな呪いせいよぉ。」
「そうだといいんだけど。」
一通り、帳簿を見終えて、出されたサイドカーに口をつける。柑橘系の酸味がさわやかで、さっぱりとしている。まるで初恋のような味だった。




