2. 誕生日ケーキ
『カフェ ド マール』の閉店後、サルビアとその他有志の従業員とで、新作ケーキの試作品の試食をはじめた。
一つ目はメロンのタルト。口に含むとメロンの香りと果汁があふれ、ブランデーを使ったカスタードクリームによく合う。二つ目はレモンのムース。少し酸味は強いがレモンのさわやかな香りがクセになる。三つ目は苺、ラズベリー、ブルーベリーをふんだんにトッピングしたショートケーキ。そういえばシモンはベリー系の果物が好きだ。このケーキを誕生日ケーキにしようかな?
「ねえサルビア、今年のシモンの誕生日なんだけど、三つ目のベリーのケーキにしようと思うんだけど、用意をお願いできるかしら?会はこの店の閉店後だけど、時間外のお手当は出すわよ。」
「ベリーベリーベリーショートケーキのホールですね。シモン様って今年でいくつでしたっけ?」
「六歳よ。昨年喜んでいたから今年も『ビストロ フルール』の個室を使って誕生日会をするつもり。」
「じゃあ、ろうそくは六本必要ですね。あのレストラン、去年初めて行きましたけど、窓からの夜景がきれいですよね。」
「そうね、シモンも窓から見える商船が気に入ったみたい。ところでゲストなんだけど、マール伯爵夫妻とあの子の父親が来る予定よ。」
「ち、父親ですか?」
「ああ、あんまり詳しく話してなかったわよね。騎士隊の騎士で今任務でこちらに派遣されてきているの。いい別れ方をしなかったから、あの子のこと話してなかったんだけど、髪の毛の色が父親そっくりだから気づかれちゃったみたい。」
「シモン様の反応はどうでした?」
「それが、この前初めてあったはずなのに、もう懐いているのよ。誕生日会も自分から来て欲しいって誘って。」
「あら!それなら、シモン様の親同士、リリー様もその方といい関係が築けるといいですね。私もお会いできるの楽しみしています。」
そういうと、サルビアはにっこり微笑んだ。




