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逆ハーエンドかと思いきや『魅了』は解けて~5年後、婚約者だった君と再会する  作者: 志熊みゅう
邂逅と懊悩

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2. 新しい町 (side アベル)

 新しい赴任先である王都隣領のマールの港町に引っ越すことになった。あくまでも短期的な派遣なので、自分で部屋は借りず、騎士隊の独身寮を借りることにした。昔第四騎士隊で部下だったラウルが引っ越しの手伝いに駆けつけてくれた。


「おお、ラウル久しぶり!今日はありがとな。」


「ボナパルト大佐にはだいぶお世話になったんでこのくらいは当然っすよ。」


 彼はブロワ領の魔獣討伐で足を負傷し戦線離脱してからは、マール沿岸警備騎士隊に配属になっている。


「今回は王太子殿下からの特命でこちらに来られているんですよね。」


「ああ。軍事魔道具密輸の調査だ。第五騎士隊から派遣されている諜報員のニコラ シャロン少佐が既にある程度下調べしているらしいから、早いところ打ち合わせしないと。」


 今回の密輸の件はどうやら一部の貴族が関わっているらしい。そういえば、リリの母親の実家ってここの領主のマール伯爵家だったよな。結局彼女の母親は一度も会うことなく亡くなってしまったから、伯爵家についても詳しいことは知らないが。


「大佐は相変わらず仕事熱心ですね。マールって実は観光都市なんすよ。俺が案内するんで、明日は一日開けといてください。」


 ***

 翌日はラウルの案内のもと、町を巡った。新しい土地で土地勘がないので助かる。この町は嵐で高波がくることもあるらしく、だいたいの貴族の屋敷は小高い丘の上にある。ただここ何年かは海が安定して大時化(しけ)もないらしく、港の周辺には露店や商店が集まり人々の賑わいがあった。


「あ、このカフェ!オリジナルのお菓子がおいしいんです。大佐、ちょっとよっていきましょう!」


『カフェ ド マール』

 ―白と青を基調とした外観に、色とりどりの季節の花が店先の花壇に植えられている。おしゃれなカフェだ。


「いらっしゃいませ!」


 店内に入ると、店を切り盛りしている少しふくよかな中年の女性がにこやかに席へと案内してくれた。


「この店、カステラってお菓子が有名なんでこれにしましょう。セットで飲み物もつけて...、大佐はコーヒーと紅茶どっちにします?」


「紅茶にしようかな。」


 カステラ...。この前の謁見で、殿下がこの町で流行っているって言ってたな。


「ご注文はお決まりですか?」


「カステラセットを二人分、飲み物は紅茶で。」


「紅茶の茶葉は何になさいますか?」


「ううんと、アッサムで!」


「俺も同じのを頼む。」


「かしこまりました。」


「ラウル、カステラってこの辺の名産なのか?」


「最近、露店でも真似して売り出してますけど、この店が発祥ですよ。もともと店主が思いつきで作ったお菓子だそうで。」


 店主というのは、先ほど席へと案内し注文をとった女性のことだろうか?


「こちら、カステラセット、ドリンクはアッサムティーでございます。」


 先ほどのふくよかな女性が注文の品を運んできた。皿に盛られたカステラと、大きめのティーポット、それにティーカップが2つ、それらがテーブルに行儀よく並べられた。


「二人分の紅茶がこちらに入っております。どうぞお楽しみ下さい。」


 そういって、とくとくとカップに紅茶を注ぐ。


「ここはカステラ発祥の店だと聞いた。君が発案したのか?」


「ええ、ここがカステラ発祥の店です!最近粗悪な類似品が多くて困っているんです。この店の店長は私ですが、カステラの発案者はうちの会長です。うちの店、フルール商会っていう商会が運営しているんですが、実は会長リリーの趣味がお菓子作りということで、会長の考案されたレシピで作ったお菓子をこの店で提供しております。」


「そうか、ありがとう。」


 …リリー、聞き覚えのある名前だった。動揺を悟られないように、静かに紅茶を口にした。


 店長が別のテーブルの接客に移った後、先ほど名前がでた『フルール商会』について、ラウルに聞いてみた。立ち上げから数年で大きくなった新興の商会で、化粧品の製造販売から始まり、現在は飲食店の経営にも力を入れているようだ。会長はリリーという名の若い女性で、表立ったものではないがマール家の後援が噂されているらしい。


「今度、商会が経営している飲み屋にも行ってみませんか?支部近くのバーなんですが、()()()()が店長で、炎の騎士様にぜひお会いしたいと言っているんです。」


「いいな。こちらの騎士隊員との親睦もかねて、ぜひ一杯やりにいこう。」

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