6. 従兄の意思
日曜日は予定通り、従兄のパスカル兄様の見舞いに行った。彼は今伯爵家本邸の離れに住んでいる。部屋に入るとベッドの上で分厚い本を読んでいた。
「パスカル兄様、体調はいかかですか?お見舞いにこの前お話ししたリンゴのゼリーを持ってきましたの。」
「この前言っていた新作かい?いつもありがとう。今日は幾分か気分がいいよ。」
「それはよかったですわ。実は伯父様から体調が芳しくないと伺っていたもので。。」
この世界で迷信で、魔法属性ごとに体調を崩しやすい臓器があると言われている。風属性の場合は、肺を壊しやすいそうだ。パスカル兄様の肺病はもともと外国から渡来したものだ。発病する人しない人、重症化する人軽い感冒症状だけの人がいた。パスカル兄様は風属性だったせいか、この病で生死の境をさまよった。
「もう、肺の半分以上が機能していないと言われてね。まあこうやってベッドの上だけで生活する分にはそこまで苦しくないよ。。。。ゲホッゲホッ。」
といって、咳き込んだ。
「兄様、大丈夫ですか?!」
「ちょっと咳き込んだだけだ。心配するな。それより伯爵家の跡継ぎの件とシモン君の件は問題ない。それを確認しにここに来たのだろう。」
「はい...」
「貴族として優先されるべきは個人の感情ではなく、家の意向だ。領民達の生活が懸かっているからな。医者からもう残り1年ないと言われたんだ、ゲホッ、、、私は若い頃かかったこの肺病のせいで、ゲホッ、、、嫡男としてろくに領地に貢献できなかった。最期くらい少しでも役に立ちたいんだよ、、ゲホッゲホッゲホッ、、」
そう言い終えるとパスカル兄様が激しくむせこんだ。口元を押さえた手には血がついていた。
「兄様!いま使用人を呼んできます!」
その後はとても会話できる状態ではなくなり、大慌てで医師が呼ばれた。