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10. 魅了が解けて (side アベル)

赤い閃光が会場内を包んだ後、一瞬自分がどうしてここにいるのかよく分からなくなった。卒業パーティーでロベリアに頼まれて壇上に出てきたんだっけ。でも自分の中に確かにあったロベリアに恋焦がれる気持ちが一切なくなっていることに気づく。


そうだ、リリ!…彼女はどこいる、リリアーヌ!


呆然としていると、会場の警備にあたっていた騎士団員に捕縛され、そのまま病院に連行された。


翌朝、騎士団員とアレクサンドル殿下から一通りの取り調べを受けた。ロベリアのブローチから発せられた『魅了の呪い』を受け、ロベリアを"運命の人"だと錯覚していたそうだ。しかも自分は精神魔法への耐性が低く、人よりもかかりやすいらしい。これからも十分気をつけろとアレクサンドル殿下から念を押され、殿下自身が守護魔法を込めたというピアスも頂いた。これで中級程度までの精神魔法が防げるそうだ。しばらくは呪いが精神状態に与えた影響が分からないから、休んでいた方がいいと言われて、内定していた騎士団の仕事も半年間休むことになった。


少し落ち着いた頃、改めて両親にリリアーヌ失踪の経緯を聞いた。タイミング的に自分の心変わりがショックだったのだろう。最後にあった時の悲痛そうな表情が目に浮かぶ。失踪後、彼女の父親が婚約破棄の書類を実家に送ってきたのだが、両親は俺が正気に戻るまでそのままにしていたそうだ。そこに自分か両親がサインをすれば完成する書類だが、サインしてしまえば現在唯一残った彼女とのつながりも消えてしまう気がして、どうしてもサインする気になれなかった。


退院後は自宅で謹慎していたが、騎士団の治癒魔導士として、ネモフィラ嬢が往診にきた。彼女はリリアーヌの親友だったはずだ。何か知っているかもしれない。


「リリアーヌの失踪前に、君とリリアーヌが俺に会いに来たことがあっただろう。あの時の大事な話ってなんだ?俺に聞く必要があるって言ったよな?」


ネモフィラ嬢は難しい顔をした。彼女は嘘がつけないたちだ、多分よっぽど何かを言いたくないのだろう。


「あの時は聞く必要があった、でも今はないから話す必要がない。」


「リリアーヌに謝りたいんだ。もし彼女の行先を知っていたら、教えてほしい。」


「侯爵令嬢 リリアーヌ ブロワは死んだ。死人にすがるな、前を向いて生きろ。」


そういうと淡々と診察をはじめ、一切余計な言葉を発さず帰っていった。

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