1. 転生した悪役令嬢
まさか自分がプロジェクトリーダーとして作りあげたゲームの世界に転生するとは...いうなれば私はこの世界の"創造主"といったところだろうか…。
私、リリアーヌ ブロワには前世、日本人 野口百合としての記憶がある。死因は過労死だったのかな?最期の方の記憶はおぼろげで定かではない。社畜としてゲーム制作会社に勤め、ダメンズに翻弄されては涙する短い人生だった。乙女ゲーム『恋してルミエール魔法学園♡』はそんな過去のクソ男たちをバネに完成させた私の"遺作"である。このゲームの攻略対象者は5人、王太子である第二王子 ヴィクトル ルミエール、騎士団長の息子 侯爵令息 アベル ボナパルト、魔法学園 戦闘魔術学教員テオドール サヴォイア、年下の公爵令息 エミール オルレアン、平民の特待生 リュカ、そしてシークレットキャラが1人、王と愛妾の子で冷遇されている第一王子 アレクサンドル ルミエールだ。
私が自分の理想を詰め込んで作り上げた騎士団長の息子アベル。その婚約者であり、アベルルートでの悪役令嬢にあたる侯爵令嬢 リリアーヌ ブロワに転生した。明るい茶髪のポニーテールに真っ青な瞳、黒髪黒目の日本人だった私からするとちょっと派手で違和感がある。一方アベルは燃えるような赤毛に、緑の瞳を持つ爽やかイケメンだ。ゲームの中の彼と婚約者リリアーヌは趣味嗜好の違いで最初から険悪だ。でもアベルルートで彼は初恋の相手になるヒロインに対しとっても一途なワンコ系騎士だ。"悪役令嬢"のポジションで油断はできないが、ヒロインより先に彼を"攻略"すれば、私のことも一途に思ってくれるに違いない、そう考えてゲームの世界の"リリアーヌ"が一切興味を持たなかった剣技の稽古を見に頻繁に彼の領地に訪れ、好物である甘いものを差し入れし着々と"餌付け"をしていった。
ちなみにこの世界には他にも転生者がいる。王太子ヴィクトルの婚約者であり、公爵令息エミールの義姉である銀髪ストレートの麗しき公爵令嬢のアマリリス オルレアン、魔法学園教員テオドールの妹で巻き毛のブロンドが愛らしい伯爵令嬢のネモフィラ サヴォイア、彼女らも日本からの転生者だ。10歳の時に王太子妃候補として王家主催のお茶会で出会い、同じ"悪役令嬢"ということもあってすぐ意気投合した。
まず悪役令嬢トリオは攻略対象 平民のリュカに目を付けた。彼は貴族に対して強い恨みを抱いており、ハッピーエンドでもバッドエンドでも革命の先導者になり、反乱によって多くの貴族が血を流すことになる。貴族令嬢である我々としては、なんとしてもヒロインにリュカルートを選んで欲しくはなかった。元々彼は孤児で奴隷落ちし魔力を暴走させて奴隷商人から逃げ出したという"設定"がある。血眼になって闇市場を捜索し、最終的にアマリリスが年の離れた兄に頼み込んで彼を買い取った。隷属契約魔法を解除した上、学園には通わせず公爵家の影にした。リュカが学園に入学しなかったせいかリュカルートの"悪役令嬢"も姿を見せなかった。
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