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私は怪奇な世界で神を封じる  作者: 瀬戸内 智也
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鏡の中の幽鬼

白茶は照れくさそうに微笑みかけた。

ふん、あの子に演技なんか披露するはずがない。

今まで誰一人、彼女の演技力に気づいた者はいない。

体調が悪くなければ、エンターテイメント界に進出してグランドスラムを取っていたことだろう。

「言葉だけじゃないだろう。上って確かめろ!」と蔡が横で口をはさんだ。また誰かに上って探索させようとしている。

しかし王旭明は遮った。「最も重要なのは、ルールを検討することだ。受付のお姉さんが現れたことを考えると、この2つのルールのどちらが真実なのか確認する必要がある」

蔡の表情が曇る。

正直、王旭明など聞いたこともなく、見た目にも記憶に残るところがない。Aランクに上り詰めたプレイヤーなら、ある程度の知名度があるはずだ。

ただの駄目な奴がひたすら生き延びてランクを上げたのだろう。

彼が再三に渡って自分の発言権を奪おうとしていることに、蔡は非常に苛立っていた。

「じゃあお前がどっちが本当だと思うか言ってみろ」蔡は王旭明を冷たい目でにらんだ。

王旭明は肩をすくめ「わからない」と答えた。

「ふざけるな。もう一度言ってみろ。本気で殺すぞ!」

王旭明は親切に微笑んだ。蔡の苛立ちは募る一方だ。

ルール上のダンジョンでは、通常クリアするには2つの方法しかない。頭が利くか、他のプレイヤーに試行錯誤させるかの2択だ。

8人いるのだから、残り7人に試行錯誤させれば問題ない。

蔡は冷たい目で全員を見回し、突然受付のポスターを指差した。

「今夜はみんなこのポスター通りに動け。了解か?」

すぐに皆が眉を寄せる。特に受付嬢と直接対面した鐘満の顔が曇る。

「蔡さん...死のルールに触れるかもしれないのに、また受付通りにするのは危ないんじゃないか」

すでに言葉遣いは丁寧を極めているが、蔡は鐘満の生死などお構いなしだ。蔡が望むのは、彼らが死のルールを破ることだけ。

他の者も黙り込んでいた。

その後、民宿の隅々を捜索したが、受付の大きな鍵以外に手がかりはなかった。

誰も宿泊していないはずの部屋のドアはすべて内側からロックされており、ドアをこじ開ける以外に入る方法はない。ルールで部屋に入ることを禁じていないが、誰も軽々しく動けなかった。もしかしたら受付嬢が中にいるかもしれないからだ。

だが異様な違和感は払拭できない。時間が夜に近づくにつれ、民宿に湿った冷たさが立ちこめてくる。

引き潮のようで、北国の深冬の濃霧のようだ。霧の中の湿気には骨の髄まで冷える寒さがある。

周囲は見た目通りなのだが、この民宿の暖色の照明にも温もりを感じられない。

肖晓と白茶は部屋に戻った。白茶の顔には疲れがにじむ。がんばってベッドに腰をおろす。

肖晓はためらいがちに「進展もないだろうから、休んだほうがいいんじゃないか」と言う。

眠ること自体がルールに触れる危険性があるとはいえ、白茶の体調を見ると、明日を迎えられそうにない。

白茶は手の甲で額を探る。

まだ38度ある。体が冷えて頭が痛い。この状態では眠れまい。

「少しだけタオルを濡らしてくる」

肖晓は止めなかった。本当の危険が訪れるのは夜になってからだ。今のところ手がかりはない。熱を下げられるうちにさせてやるべきだ。

白茶はバスルームに入り、ドアがギーッと鈍い音を立てて閉まった。

少し躊躇い、ドアの外を意味深な目で見る。すでに外は完全なる暗闇。明るかったはずの電灯が消えている。

バスルームの照明も暗くなっている。電圧が下がったようだ。

鏡の自分は顔色が蝋のように青ざめ、さっきよりひどく見える。

白茶は鏡に近づき、顔を触る。動きが鏡の自分よりも一瞬遅れているような気がした。

唇に意味深な笑みを浮かべ、目をキラキラさせる。

鏡の自分も同じ笑みを返すが、僅かに固さが感じられた。

白茶はくすくすと笑い、水を出した。

龍頭からは鮮血が溢れ出す。強烈な鉄臭に吐き気を催す。

鏡の自分は意味深な笑みのまま動かない。見破られたのだ。

笑みがいっそう深まる。唇の端が裂けるほど。

白茶「......」

白茶「ぶえぇ......」

洗面器に向かって激しく嘔吐し始める。血の匂いに胃が締め付けられ、酸っぱい液が喉をつたって飛び出す。

しばらくして水も途絶えがちになる。出たり止まったりの迷い。

咳き込みながら鏡を見上げる。表情を失った自分が恐ろしげに見つめ返している。

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