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04 しんけん


 リリシアさんが悔しそうに語った。


「残念ながら私たち三人はすでに定住地申請を受理されてしまっている。 正当な理由無しでの移転や期間不明の長期クエストはまず不可能なのだ。 王都に戻って再申請する手もあるが、向こうの状況によっては精神探索される可能性も否定出来ない」


 佐州さんと梨想さんがうつむく。



「御三方にはここからのサポートをお願い出来ませんか」


 ノルシェの言葉は重い空気を振り払うかのごとく明るいものだった。


「私とモノカなら定住地探しの名目があれば長旅も大丈夫です」

「旅のあいだの王都への定期報告はその時の居場所のご当地ギルドから送るんですから、ニエルさんの捜索依頼の進捗状況と一緒に送れば不自然じゃないですよね」

「後はこちらの状況を御三方が例の魔導通信機で知らせてもらえれば」


 通話距離に制限の無い魔導通信機はこの屋敷の倉庫から発掘されたとんでも魔導具である。



「ふたりはそれで良いのか」


 リリシアさんとノルシェが見つめ合っている。


「ふたりじゃないですよ、可愛い妹との三人旅なんです」 笑顔のノルシェ。



 よくぞ言った、ノルシェ。



「依頼の件はそれで何とかなりそうですが、あとはマクラちゃんの方ですね」


 私を見つめるノルシェ。



「実はそちらは解決済みです」


 みんなから一斉に見つめられると、これから言うことが何かとてもいけない事のように思えてしまう。




「わたくし秘崎萌乃果はマクラの母親になりました」




 老神官から相談を受けてすぐ、私はひとりで宿屋に向かった。


 マクラの父親である宿のご主人と相談するためであったが、私とご主人の覚悟は運命にいたずらを許さぬ程に迅速にマクラの人生を変えた。


 この世界におけるお役所仕事の受け付け先であるギルドの町民相談窓口で午前中に婚姻届を提出、午後イチで離婚届を提出し、今の私は書類上は引き取ったマクラの母親なのだ。


 正直、婚姻届制度を利用する人はそれほど多くないらしくギルド窓口のおばさんは困惑していたが、離婚届けとマクラの親権移動を見て何かを察してくれたのはありがたかった。



 と言う訳で、そこそこアバウトなこちらの制度上は間違いなく私がマクラの母親なのである。


 結構衝撃的な告白だと思ったのだが、みんながあっさり受け入れてくれたのは少々拍子抜けだった。



「良い感じに全部解決しちゃったっぽいので、お菓子作りがんばっちゃいますよぅ」


 ニエルさんが泡立て器をしゃかしゃかさせながら厨房へ戻って行った。


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