03 思案
戦うという選択肢ははなから無い。
国を相手にどころでは無い、場合によっては複数の国と事を構えるのだ。
個人の武でどうこうなると言う問題では、既に無い。
逃げるとすれば何処へ。
残念ながら私たちは召喚脱落者だ。
定期的に居場所を証明することを条件に城を出た私たちは、安易に姿をくらませば国からの追っ手をも覚悟せねばなるまい。
ひとつだけ、思いついた。
私たちは冒険者でもある。
「期限にとらわれず長期間旅をしても周囲の不振を買わないようなクエストを受ければ、あるいは……」
私のつぶやきには、みんなの沈黙を破る力が無かった、
のだったが、想定外の方向から返事が来た。
「ありますよぅ、皆さんにオススメの依頼、私持ってますよぅ」
ボウルと泡立て器を持ったニエルさんが、にこやかに微笑んでいた。
以前、ニエルさんから聞いた話。
『友人にして恩人の魔族のお嬢さんとその娘さんを探して欲しい』
聞いた当時はまるで雲をつかむような話だと、興味こそあったが実際動きようが無いなと思っていた。
しかし、今の私たちが欲しい要素を満たしていることは間違いない。
確かに実在していた人物の捜索であること。
確定情報が少ないおかげで目的地にある程度の融通が効くこと。
依頼主と受け手が知り合いであるため、ギルドの依頼申請審査を通る可能性が高いこと。
「もちろん本来のニエルさんの依頼である捜索をしつつ、不自然にならない程度に出来るだけ長期間各地を旅してまわる、と」
「いかがですかねぇ」
出来れば泡立て器しゃかしゃかは止めて欲しい。
「それで行きましょう」
佐州さんの言葉に全員うなずいたが、リリシアさんの表情が暗いのが少し気になった。