25 注視
幻聴では無かったのです。
何か、山側の端っこで人がぽんぽん飛んでいる。
聞こえてくる高笑いが、段々と、近くに。
「待たせたなっ」
合流してきたのは、
えーと、なんて言うか、痴女?
「私だけ仲間はずれはずるいぞっ」
ビキニアーマーじゃなくて、ビキニを着た女の人が大暴れをしている。
ハッと気付き動き出す私とノルシェ。
「知り合いですか」
自慢じゃないが知り合いに痴女はいないぞ、ノルシェ。
「峰打ちだ、安心しろっ」
人が宙に舞うような打撃は峰打ちとは言わないぞ、痴女の人。
それなりに重装備のガタイの良い方々が、景気良く飛んでいきます。
それにしても、スゴい。
痴女の人が剣を振るうたびに、それはもうぶるんぶるんと。
「よそ見はだめですよ、モノカ」
分かってる、いや分かってるんだけど人には抗えないものがあるんだよ。
その証拠に痴女さんを遠巻きに見ている兵士の皆さんも目も釘付けだ。
圧倒的パワー系痴女さんのおかげで、さっくりと突破、目の前にいるのがたぶん強硬派のリーダー。
何かごちゃごちゃ言ってるので槍で突いちゃおうかと思っていたら、リーダーがぴたっと固まった。
目線は私たちの後ろ。
この表情、見たことある。
道場で師匠をまじギレさせた時の兄弟子の顔。
いつの間にか近くにいた武装魔車から降りてきたセシエラさんの凛とした立ち姿。
勝負あり、かな。




