15 不殺
何と言うか、ただただ凄かったとしか。
唖然としている私とノルシェの目の前で、あれだけいた有象無象が次々と倒されていくのです。
遠距離は見たことの無い形状の弓から放たれる矢で、
中距離は銃のような魔導具で、
接近戦は目にも留まらぬ拳の連打。
あれよあれよと言うのは、まさにあの時の私たちの気持ちそのものでしたね。
全て片付いた静寂の中、その人は私たちを見てにっこり微笑みました。
真に驚いたのは、あの数全員を不殺だったことですが。
あの包囲網からはるか遠くに移動してからテントを張った私たち。
みんなが落ち着けたテント内で、ようやくご挨拶が出来ました。
その人の名はアイネさん。
ギルドに登録していないフリーの冒険者だそうです。
美しい艶消しホワイトの軽装鎧、
腰にはリリシアさんのとよく似た細剣、
背中には不思議な意匠の長弓、
髪は綺麗な薄茶のセミロング、
整った顔立ちには気品とほんのちょっぴりのやんちゃさ、
歳は驚いたことに私と同い年。
「助けていただき、ありがとうございます」
「事情は良く分からないけど、倒しちゃって良かったのかな」
感謝しかありませんとも。