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詩の空 朱の空(仮称)  作者: うっさこ
国家の転機
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謝罪の理由

マメ科

 豆は種子であると同時に、古くから育てられ食べられてきた作物の一つ。


 大豆は日本で実に馴染みの深い食べ物であるが、自然界には多種多様な、食用栽培品種とされた豆がある。


 日本で著名なのは大豆の他、小豆、ササゲ、インゲン、エンドウ、落花生などが当たるだろうか。

 日本国内を出れば、レンズの語源になるレンズ豆、ヒラマメなどの流通も多い。

 ルイボスもマメ科に当たる。


 一般的に食用豆を主流に認識がされているが、マメ科の下には幾つもの種類が広がっている。

 食用豆でないもので著名なのはクローバーであろうか。


 痩せた土壌を休耕させる際に育てると良質な土が育つと広く認知されている。

 クローバーに代表されるように、マメ科は痩せた土地でも育てやすいという認知があり、農作物の一つにマメ科を選ぶ農家も多い。

 その理由は、マメ科と共存する事の多い根粒菌にあるとされている。


 サザウ国を始め、古くをスラールと呼ばれた地域の主食は豆。一の豆、二の豆、三の豆。

 その形は様々であるが、豆、マメ、まめである。



「いきなり、なんですか!」

 幢子は、唐突な栄治の謝罪に、とっさ抗議する。


「どう考えても、腹芸ができない、というのは今のやり取りで何となく理解できた。領主様を困らせてきたのでは?」

 栄治はコヴ・ヘスを見てそう述べると、彼は苦い表情で僅かに頷いた。


「同郷の者は、あまりそういった類が得意ではないのです。私もあまり気が進まない。知識があってもそれを小出しにしない。だから、周りは何をしているのか理解し難い行動が多い。」


「全くその通りだ。そしてどうやらそれは、トウコ殿に限った話ではない。」

 納得をしつつ、コヴ・ヘスは栄治を見る。その表情は硬く、声質は低い。


「だが我が領はトウコ殿を客人として遇している。使者殿の御考えの通り、確かに、陶器はトウコ殿がもたらしたもの。その知識は我々にとって得難く、我々はそれを高く評価している。」

 コヴ・ヘスの言葉と目に、気勢が乗る。それに気づいて、栄治はそれを静止する。


「別に河内さんを否定してるわけじゃない。領主様を邪魔したいって意味でも、同郷の者だから連れて行ってしまおうという意味でもないですよ。」


「私は安心したんですよ。前向きな同郷の民が、少なくとも意思疎通できる状態で目の前にいたことに。おまけに地域で信頼まで勝ち得ている。」

 栄治はそういうと、力の抜けたような表情で、二人を見る。


「河内さんは、いや失礼、幢子殿は私よりどうも一回り以上若い。それも女性だ。一人でこの異国の地で生きていくのは容易ではない。だから協力者を得る必要がある。私もそうでした。そのためには手段を選んでいられなかった。そう思うんですがね。」

 幢子は言葉を続ける栄治を、表情を緩め、見る。コヴ・ヘスもまた、再度それを聞く姿勢を見せる。


「私はこの地にやってきて、季節を二つほど過ごしています。乾季の初めから、今の冬季まで。聞けばそれは半年ほどの期間だという。幢子殿がどれほど前から滞在しているかは、まだ存じ上げませんが、生まれ育った故郷に比べ、この周辺地域の状況は悪い。食文化、衣類、日常の品、恐らく風土の病にもまるで理解ができない。当たり前を存じ上げないのです。それは、我々にとっても同様で、双方が探り合う必要がある。」


「だからお互い、相手の人となりを理解をしていても、相手の実績を評価をしていても。疲れてしまう事もある。そこをまずお詫びしたい。そういう話ですよ。今後のためにもね。」

 そこまで言うと、栄治は一旦言葉を止める。

 少し脱線をしすぎたかと、話の軌道修正を意識する。


「私は、灰を得たくてこの地にやってきました。当初はそれだけだった。だが、その灰がどの様に使われるか、或いは、先日所在をご存知かお伺いした木酢液、これがどう使われるか。まずその理由をお話しましょう。」


「そう、それです!灰と木酢液!」

 幢子の表情が和らぎ、身を乗り出す。

 それを受け、コヴ・ヘスは再び、一寸、顔を歪め、それを正す。


「この地域の主食は豆。私もリゼウ国では乾いた豆を食っている。私は何故豆なのかを、考えたんです。幸い、故郷では農作と畜産を生業としてかじっていましてね。」

 コヴ・ヘスは目を見開く。幢子もまた食い入るように栄治を見る。


「豆ぐらいしか満足に育たない。他所から種を仕入れても育ちにくい。下手をすれば発芽すら出ない。そういう状況ではないですか、こちらも。」


「そうだ。それがこの地域の風土だ。古くからそうだ。様々に試みられてきたがな。」

 コヴ・ヘスの姿勢と口調の変化に、栄治は気づく。

 そしてそれは、話を聞いてみる姿勢になったものだと理解した。


「しかし森には多様な木々が並んでいる。それは多分、農作技術と知識や理解の問題、というのが私の出した今の所の答えです。収穫量も増やせれば、冬季に豆を育てることすらできる。その延長で、他の作物にも視野が伸びる。」


「リゼウ国では、最終的にイノシシの飼育と出荷までを目標に試行錯誤を重ねていく。私の目的はそれで、国主にもそう提案している。そのために、お力添えが必要なのですよ。」


にかわが手に入るんですか!革も!それと動物性油脂!」

 幢子が勢いに身を乗り出す。その横で、コヴ・ヘスは頭を抱えていた。

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