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忘れたい彼と思い出せない彼女  作者: 赤白 青
2/28

手ぇ出すなよ


土曜日

お店に入ると長瀬さんがレジに立っていた。

何度か通っているうちに俺も長瀬さんがお店に居ることに違和感を感じなくなっていた。彼女自身も仕事にだいぶ慣れたようで、最初に会った時のどこか自信なさげな顔は今はしていない。

そんな感じで俺は今日もどら焼きをパクりと食べる。

美味い。

そんなどら焼きとコーヒーの癒しの時間にカウンター越しから玄さんが話しかけてきた。


「凪坊はこの後何か予定あるのかい?」


「知ってて聞いてるでしょ?何もないですよ。」


俺はよく通っており、玄さんに話を聞いてもらいたいタイプの客なので、よく話している。当然休みの過ごし方などは話している。俺はこのコーヒー&どら焼きの時間は自由に満喫したいため、基本的に後ろに予定は入れないのだ。


「ちょっとおつかいを頼まれてくれないか?ここは奢るからさ」


「玄さんのお願いなら別にいいですけど。なに買うんですか?」


どら焼きを食べてる途中なので、正直あまり行きたくはないが奢ってくれるし、玄さんの頼みならと、俺は了承した。


「それはマナちゃんが知ってるから大丈夫だよ。」


「えっ?長瀬さんも一緒なのか?」


聞いてるのか聞いてないのかわからないが俺の言葉は無視された。玄さんは長瀬さんの元に行き、何かを話すと俺の方をチラッとみて会釈した長瀬さんは厨房の奥へと消えていく。


しばらくすると、紺のロングスカートにみどりのTシャツ姿の長瀬さんが奥から現れた。

はじめてウエイトレス以外の服装を見たのだが、よく似合っていて可愛い。

しかし長瀬さんは厨房から出てこない。

そんな長瀬さんを見た玄さんは声をかける。


「大丈夫、凪坊は良いやつだから。信用出来る子だ。迷子がいたらスルーするような子でもないし、落とし物は交番に届けるタイプだ。」


なんか玄さんの独特な諭し方に俺は誉められてるのか疑問を覚える。

ちなみに俺は迷子は道を聞かれれば答える程度で、落とし物は危ない気がしてそもそも拾わないタイプである。

しかし、俺の疑問とは裏腹に長瀬さんは厨房から出てきて俺の元へ。


「今日はよろしくお願いします」


長瀬さんは肩からかけたバッグの紐をぎゅっと握って俺に会釈をする。

俺も軽く会釈をすると、机の上に残っていたどら焼きの最後の一口を食べる。


そして、お店から出るときに玄さんに呼び止められた。


「マナちゃん、安心していいって言ったけど、本当に何かあったら直ぐに言うんだよ。おじさん直ぐに駆けつけて、この男をボコボコにして出禁にしちゃうから。」


なんか凄い脅されてるんだけど。

ってか俺が手を出す前提かよ。どんだけ過保護なんだよ。だったら俺と一緒に行かせなきゃいいいのに。

長瀬さんもさすがに苦笑いしている。


「凪坊、手ぇ出すなよ。」


「だから出さないって。そんなに心配なら自分で行けばいいじゃないですか。」


「それが出来ないから、凪坊に頼んだろうが。」


玄さんの表情が笑ってないから怖い。

きっとマジなんだろうな。こんな感情出す玄さんは初めてだ。

まぁ苦渋の決断で俺に白羽の矢が立ったということなら仕方ない。任務は全うしますよ。

それから二人でお店を出たのだが、お店から見ているのか、しばらく背中に殺気を感じてとても歩きにくかった。

だから手ぇ出さないって。


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