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忘れたい彼と思い出せない彼女  作者: 赤白 青
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長瀬マナカ


土曜日

俺は癒しを求めて毎週ここに来る。

喫茶そよ風

昔から通い続ける俺の好きな場所だ。この場所を見つけた自分を今は褒め称えたいと思う。

心の中で過去の自分を称賛してから俺はいつものようにボロい茶色の看板を見てから、木製の扉を開く。

扉を開けた瞬間コーヒーの良い香りが俺を包み込む。


「いらっしゃいませ。お一人様ですか?」


「えっ?」


お店に入り、いつものカウンター席へと向かおうとすると見慣れないウエイトレスさんに声をかけられ、少し驚いてしまった。

ウエイトレスさんは俺よりも小柄で黒髪ポニーテールが良く似合っていて凄く可愛い。歳は俺と同じくらいだろうか?

胸元のネームプレートを見ると、長瀬と書かれている。

彼女は少し不安そうな表情をしていることから、俺は新しいバイトかなと思った。


「はい」


「ではお好きな席へどうぞ。」


彼女はぎこちない笑顔でお店の中へと手招きする。

俺はそれに従うようにいつもの自分の席へ。


「ご注文が決まりましたらお呼びください。」


彼女はそう言うと、カウンター席の机におしぼりとお水を置いて、他の席の対応に向かった。


「いつものでいいのか?」


「玄さん、あの子新しいバイト?」


俺が彼女を目で追っているとカウンター越しからこの店のマスターである石渡玄太(いしわたりげんた)さん。通称玄さんが俺に問いかけてきた。

なので俺は玄さんの問いに頷くとあの子について聞いてみた。


「ああ、マナちゃん。ちょっとこっちにおいで。」


玄さんはマナちゃんと言うウエイトレスを俺の方に来るように手招きする。

すると先ほどの黒髪のポニーテールの子が俺の前で足を止める。


「彼女は長瀬マナカ(ながせまなか)。ワシの親戚の子で今日からバイトに入ってもらったんだ。」


俺に長瀬さんを紹介すると玄さんは次に彼女に俺を紹介した。


「そして、こちらは夕凪蓮斗(ゆうなぎれんと)くん。この店の常連さんだ。歳も同じくらいだろうから仲良くしてやってくれ。マナちゃん挨拶しな。」


「長瀬マナカです。」


「夕凪蓮斗です。」


長瀬さんと俺は互いに名前だけ名乗ると軽く会釈をした。

俺はなんで定員さんとこんなかしこまって挨拶させられたのだろうかと思ったが、まぁ可愛い子と話せたならまぁいいか。

その後他のお客から注文が入り、長瀬さんはそちらの客の対応にむかった。

その後ろ姿を見ていると、玄さんがいつもより少し低い声で、イヤ殺気がこもる声をかけられる。


「手ぇ出すなよ。」


「出さないよ。」


手ぇ出すなよって紹介したのあなたですよ。普通定員紹介とかやらないでしょ。とか思いながらも玄さんがいつもより少し強めの口調で言うので、親バカみたいだなと少しおかしくなった。


「ってか出せねぇよ。」


俺は長瀬さんを見ながら呟くと昔を少し思い出して拳を握り締めた。

そんな俺の姿を玄さんはどう見てたのか分からないが、机の上にいつも俺が注文するどら焼きとコーヒーを置くとそれ以上何も言わずに厨房に消えていった。


それから俺はどら焼きをパクりと食べてコーヒーを一口飲む。

くぅーー美味い。

気持ちがリセットされる。さっきまでの暗い気持ちが晴れていく感じだ。

ふぅっと一息着く。

相変わらずどら焼きの餡も甘さと粒の食感が絶妙で何より生地がもちもちしてて本当に美味しい。そして、そこにコーヒーを飲むことで更なる相乗効果が生まれる。完璧な組み合わせだ。


その後、俺は本来の目的である日頃の疲れを癒すためにどら焼きとコーヒーをまったりしながら食べて過ごした。

食べ終わった俺は、長瀬さんとは話すことはなく店を後にした。



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