タイ旅行記~その4~
滞在3日目。
今日はこの旅の最終日。
朝9時前に起床し、コンビニで買ったロールパンとコーヒーを飲んでいると、母親の元気がない様子に気づく。
「昨日は大変やったんよ、何回もトイレに行って」
聞けば眠りにつこうとした深夜1時頃、急にお腹の調子がおかしくなり、数時間おきにトイレに駆け込んだそう。先に爆睡していた私は全く気付かずにいた。
「ミックスジュースじゃないか?」
思い当たるふしがあったので口にしてみる。前日の屋台で母親が頼んだメニューだ。食事は皆でシェアしていたので、異なるのはジュースだけということになる。
「たぶんそうやね」
母親はそう言うと、また腹下しが襲来するのを心配してか、お腹をさすっていた。
その日の朝は、歩いて5分のビーチに出かける予定だったが、母親はキャンセル。私も疲れが残りだるかったので、部屋に残ることにした。
母はベッドで再度眠り、私はバルコニーでぼんやり過ごすことにした。
椅子と寝台の間を取ったような形のデッキチェアに身をうずめ、ただただ海を眺める。
コーヒーを飲み、体が弛緩するのを感じる。
時々わざと目をつむる。
暖かい風が頬を撫でるのがわかる。
目を開けてまた海を見る。
遥か遠くで、名のわからぬ鳥が2羽飛んでいる。
海ではしゃいで泳ぐのも楽しいだろうが、このひと時は間違いなく最高の時間であった。
そうして姉たちが海から帰ってきた。
充分に体は充電できたので、昼食をとった後、また皆で海に行くことにした。
海を楽しみ、ホテルに戻ると帰り支度をする。
3時45分。私たちは部屋を後にした。
空港に着き、タクシーの女性ドライバーに珈琲とお菓子をお礼に渡した。屈託のない笑顔で彼女は手を振っていた。
7時45分。プーケットからの飛行機は飛び立った。
バンコクからJALに乗り換え、日本に向かう。
機内食は鶏そぼろの乗ったお粥だった。
「丁度良いわ~」と病み上がりの母親は喜んでいた。
朝の6時5分。我々は日本の地を踏んだ。
「楽しかったね」姉か母のどちらかが言った。
「うん楽しかった」嘘偽りない気持ちが出た。
帰りも特急に乗り、疲れからかすぐにうつらうつらした。
誰かの笑い声で目を開け、鼻をすすって窓外を見た。
見慣れた大阪の街並みが遠くまで広がっていた。
私は時計を日本の時間に戻して、もう一度目を閉じた。
タイ旅行記-完-