タイ旅行記~その3~
滞在2日目。
今日はプーケットから見て遥か北方向にある、パンガー湾という観光名所を訪れる一日ツアーである。
車で1時間程走らせ、出港場所に合流。35人程のツアー客の中には、日本人の青年3人組の姿も見られる。日本語の話せるガイドさんに挨拶をし、スピードボートに乗り込み出発。
後部についた大きなエンジンを唸らせ、体感速度は100㎞くらいに感じる速さだったが、実際はどうであろうか。波に打たれて一面海の中を疾走するのは実に気持ちが良い。
1時間ほどで最初の目的地へ到着。ヘルメットと懐中電灯を手に、鍾乳洞を探索。つららのようになったいびつな岩石を避けながら異空間を楽しんだ。
2つ目の目的地はポン島という小さな島の周辺で、カヌー体験。
横幅はぎりぎり大人が1人入れる縦長のカヌーに3人ずつ乗り込む。船頭を入れると計4人乗りだ。
カヌーはゆったりと進み、周りの景観を楽しみながら、皆カメラを撮るのにも忙しい。
天井ぎりぎりの洞窟をくぐり抜けたりしながら、辺りを一周すると、最後はパドルを持たせてもらった。見よう見まねで漕いでみるが、なかなか思うように進まない。
「右ばっかり言ってるで」と後ろで姉と母親に笑われる。
なかなか貴重な体験だったと息をつき、船頭にチップを渡しお別れ。
移動して次に着いたのはパンイー島呼ばれる島の周辺にある、水上生活者の集落だ。1500人のイスラム教信者が住んでいるこの高床式の村で、昼食をとる手はずになっている。
レストランに通されてビュッフェ形式の食事が待っていた。
味は正直美味しいとは言えない。
その後、土産物屋の並びを奥に進むと、小さな小学校に行き当たった。
教室が3つ並んでいて、その前はサッカーゴールが設置された運動場がある。
そこにツアー客の西洋人の子供が3人ほど混じって、現地の子供とサッカーをすることになった。
飛び入りの参加を無邪気に喜んで迎え入れ、子供たちは競技に打ち込んだ。
なかなか実力伯仲で、見ごたえのある試合に。
白熱してきた頃、突然ツアー客の金髪の子がボールを脇に持ち、ラグビーのように駆けだした。敵を振り切り、ゴール目掛けて思いっきり投げつける。ボールはネットを揺らした。
このルール無用の突飛な行動に現地の子らは大受けで、次は彼らがその方法をまねるものだから、もはや何の競技かわからない有様に。
その新競技を何順か繰り返し、ツアーの時間が来たところで終了となった。運動場を去ろうとする西洋人に、現地の子が近づき、どちらともなく熱い握手を交わす。
今世界では西洋とイスラムの対立が厳しくなっているが、子供たちにはそんなものは関係ない。共に汗を流して遊べばもう友達なのだ。
私は少し胸が熱くなった。
小さな希望を目にした私達は、もう訪れることはないであろうこの村を背に、ボートで帰路についた。
その4に続く。