タイ旅行記~その2~
タイ初日の夜。いざ、オカマショーの見れるサイモンキャバレーに出発。
ホテルが呼んでくれたタクシーに乗り込む。運転手はスタイルの良いロザンの宇治原に似た30歳くらいの青年だ。
その宇治原は姉と軽快な世間話を英語で交わし車を走らせる。
何分か経ち、とある交差点を曲がったところで、スマホの地図を開いていた義兄が、「あれ、今のところ左じゃない?」と呟いた。勿論日本語なので宇治原には通じてない。
「空いてる道から行こうとしてるんでしょ」二番目の姉が推測をして義兄も納得した様子。
そうしてずんずん進んでいったが、地図上では目的地からどんどん離れていく。
「大きく迂回しようとしてるのかな?それにしては大回りすぎるし…」と義兄。
先ほどの推測がぐらついてくる。
しかし皆、ホテルが手配した現地の運転手だから大丈夫と楽観的にタカを括っていた。
……のが間違いだった。
流石に離れすぎているので姉が英語で「これ本当にサイモンキャバレーに向ってるんだよね?」と聞くと、宇治原が急にブレーキを踏んだ。そして色を失った顔で
「サイモンキャバレー?」
と弱弱しく聞き返す。
姉がYES、YESと念を押すと宇治原は「おー……」と頭を抱えてしまった。
なんと行き先を違うキャバレーと勘違いしていたようなのだ。約50分の道のりが水の泡である。
おまけに予約は6時、もう時間も過ぎようとしてるのでこのまま引き返してもショーは終わってしまう。一人当たり3500円がパアだ。
運転手はあたふたと電話をかけだした。何やらタイ語でまくし立てている。そして予約証明種類を姉が渡すと、そこにペンで何かを書き込む。
「OK、これで何とかなる。僕に任せて」
と、車をUターンさせて、急いで目的地に向った。
何か裏のルートでも持っているのか。我々は彼に任すしかないので、状況を見守ることに。
更に1時間少しを要して、やっとこさ目的地に着く。
宇治原は店の受付で先ほどの書類を渡して何かを説明する。しかしすぐに顔色は曇った。肩を落として姉に告げる。
「ごめん、やっぱり無理だった」
どうやら先ほどの記入は、予約時間を次のショーの時間に改ざんしたらしい。どうにか煙に巻いて入れてもらおうと思ったのだろう。
「ソーリー、ソーリーね」と何度も謝罪する宇治原。もう我々は諦めるしかなく近くでご飯を食べて帰ることに。
しかし折よく、ショーを終えたレディーボーイ達がずらずらと外に出てきた。
最後に観客に写真を撮ってもらうサービスらしい。
せっかくなので近くまで寄って彼ら、いや彼女たちを見ることに。横一列に並んで悩ましいポーズをとる彼女たちは、身長が高いものの、皆一様に綺麗な顔立ちをしている。体も改造済らしく、胸の谷間も露わなセクシーな衣装を身にまとっている。
なんとかお目にかかれただけでも良しとして、我々はそのキャバレーを後にした。
宇治原は最後まで「ソーリーね」と手を合わせていた。
その3に続く。