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一日がゆっくりと、そしてとても早く過ぎて行く

 今日から休みが始まった人も多いのではないだろうか。

 私は27日からと世間より一日早めの連休を迎えた。その初日はほとんど寝て過ごし、この10連休をフル活動する為の充電に当てた。

 そのおかげで疲れも取れ、今日は梅田にくり出した。

 

 最寄りの駅のホームでは、普段の休日より人が多いようだった。

 電車を待つ間、列の前にひと際目を引く女性がいた。鼻は高級工芸品の様に整って美しく、まつ毛の長い目は冬の澄んだ空気に輝いている。

 まだ寒さは息を白くするほどでもなかった。

 暫くして電車が来た。

 電車は混んでいて、若者も老人もいた。私は揺られて、目的地までの間少し目をつむったり、乗客に目を遊ばせたりして過ごした。

 15分ほどして電車は止まった。

 梅田の地に降りた私は、先ほどの美人を追い抜かして改札を出た。

 

 梅田は流石に都市だけあって、人という細胞が慌ただしく行き交う生物さながらだった。

 私はおかまいなく歩を進めた。

 コーヒー屋に向っていた。

 大阪駅前第三ビルのホーリーズカフェ。何度も通っている私の憩いの場所。そこで交代勤務する数人の店員さんも、もう覚えてしまった。店員さんの方はどうであろうか。今日の店員さんは、その中でも一番大人しそうな女性だ。


 客はまばらだった。ストレスを感じるほど混んでもなく、寂しさを感じるほど空いてもなかった。

 私は270円のアイスコーヒーを頼んで、隅の席に腰を下ろした。

 シロップとミルクを入れてかき混ぜ、小説を開いた。

 コーヒーがいつもより苦い。

 2つ隣のおじいさんがあくびをしている。

 大人しそうな店員さんが、店を出る客にお礼をする声が響いていた。


 小説はしおりが外れていたので、読むべきページがわからなかった。長い間ほったらかしにしていた本でもあるので、なおさらだ。

 記憶を辿りながら、適当なページから読むことにした。

 そうして時間が経過して、11時になった。

 うん、今日はどうも乗らないな。

 小説に見切りをつけて、店を出ようと思った。

 次の目的地を頭の中で二つ用意して、瞬時に一つを選んだ。

 一つは同じ第三ビル内の「どストライク軒」というラーメン屋。もう一つもラーメン屋で「町田商店」という少し前から目をつけていたお店だ。

 決め手は前者がまだ開店していないという単純なことで、それだけ私の腹が急を要していたのだろう。

 空のグラスを乗せたトレイをレジ横に返し、店を出た。

 ありがとうございますと店員さんが言った。

 店員さんが次の客に接する声が、どんどん遠くなっていった。

 

 町田商店は駅ビルを出て数分とほど近い場所にある。その看板の見える交差点まで来て、私は信号待ちをしていた。

 今年の冬はいつ厳しさを増すのだろう。

 店の前で、店員さんらしい男性が掃除をしていた。三人組の若い青年たちが先に店に入っていく。

 店の中ではTシャツ姿の店員さんが、透き通った笑顔で歓迎の声をあげていた。


 未知の味を経験できる期待を胸に、私は「ラーメン」と書かれたボタンを押した。

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