さよなら、渦巻き
先日の読売新聞で、中学校の給食についての記事があった。
大阪府では長年、給食実地率が全国最下位だったが、2018年には93%にまで上昇したらしい。
ほー。時代も変わったものだ。勿論私が通った中学では給食制度を敷いていなかった。
ほとんどが母の手作り弁当であったが、時折校内の売店で済ますことがあった。その時は妙にテンションが上がっていたのを覚えている。その中でも、とりわけ興奮して買った商品がある。
うずまきデニッシュという菓子パンだ。
その商品は円形で、文字通りパン生地が渦を巻いており、上にはお好み焼きのマヨネーズのように液化した砂糖がかけられている。
顔面くらいのビッグサイズに関わらず、確か100円とお値打ち価格だったはずだ。
生地の表面全体にシロップかなにかが塗られているので、ちぎって食べようと思うと、手がべたべたとして一苦労なのだが、あえてその困難を楽しむために手で食べるか、あるいはそれをスマートに回避して直接かぶりつくか、その選択に悩ましいのもこのパンの醍醐味の一つなのだ。
そしてお供の飲み物として欠かせなかったのがリプトンのレモンティー。
当時紙パックの500ml仕様が、これも100円だった。
中学生の懐になんとも優しいこの商品たち。
甘いデニッシュに続いて飲むと、柑橘の程よい酸味が後味をさっぱりさせて、まさにベストパートナーであった。
しかし時代は流れ、私の嗜好も変化した。
以前大人になってからこのデニッシュを買ったが、ある程度美味しいとは思うのだが、当時のような愛着は持てず、少し食べ残してしまった。
ロングセラーのこの商品は恐らく根底から味の変更はなされていないだろう。
酒を覚え、煙草を経験し、魚の美点に気づき、煮物に安心する。
私に流れた幾数十年が、食べ物との付き合いを変え、寂しいかなデニッシュについても例外ではなかったのであろう。
その輝かしく狭かった世界にさよならをして、私も少しは成長したのだと、そう前向きに捉えたいと思う。
12時のチャイムで売店に駆けた日々よ、永遠なれ。