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………女は皿の上で、自分達を見下ろす男を見ていた。
自分達とは、バラバラにされた女の身体の欠片だ。
こんなに細かく刻まれたという事は、恐らく女の身体はもうとっくに心臓の動きを止め、死んでしまったのだろう。
そう、女は死んだのだ。
それも目の前で自分達を見下ろしている、この男の手によって。
この男は、女の夫だった。
もう死んでしまった女にとって、それは既にどうでもいい事実だ。
「……よし」
男が意を決したようにぼそりと呟いた。
そして女の身体の欠片を一つ、つまんで口に放り込んだ。
それを特に咀嚼する事なく飲み込む様子を女はじっと見つめた。
異様な光景だった。
男は尚も欠片を口に放り込み続ける。
女はやはりそれをじっと見つめる。
ここからでは男がどんな表情をしているのかわからない。
けれどもそれは容易に想像できた。
きっといつもように、暗い色をした目を伏せて、それから、何か物言いたげに開きかけた口を、ぎゅっと噛み締めるように閉じているのだろう――――。