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………体温を失った妻の身体を分解する。
私は涙を呑んでそう決断した。
これで最後と、私は妻を思いっきり抱きしめた。
妻の身体は驚く程軽く、温もりも冷たさも感じられなかった。
1つ、ひとつ、妻の欠片が切り落とされ離れていく。
ノコギリを握る手は自分のものではないような感覚がしてまるで現実味がない。
意識もどこか浮いていて、頭一つ分上から物を見ているような妙な心地だ。
妻が死んだという現実から無意識のうちに逃避しようとしているのかもしれない。
そうして長い時間をかけ私は妻の身体を全てバラバラに解体し終えた。
壁に汗まみれの身体を預けて息を整えながら私はふと、バラバラになった妻の身体がいくつに分かれたのか気になった。
私は重い身体をふらつかせながら目についたダンボール箱の中に妻の欠片を1つ、2つ、3つ………と数えながら移した。
何が入っていたのか忘れたが、その通販の空き箱は丁度いい大きさでぴったりと妻を全て納めることが出来た。
すると今度は妻の欠片を並べたらどのくらいの長さになるのか気になった。
私は箱を玄関まで運んでしゃがみ込むと、そこから1つ、2つ、3つ………と並べ始めた。
廊下に一つひとつ同じ間隔で綺麗に並べ、階段にも一段ごとに1つずつ並べ、また廊下、そして寝室まで辿り着いた。
やっと一通り並べ終えたと思ったら、今度は妻の欠片を全て積み上げたらどれくらいの高さになるのか気になった。
その後も次から次へと浮かんでくる疑問を私は何度も何度も試した。
すぐそこまで迫った最後の時を少しでも遠ざけようとするかのように―――。