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人狼夫婦と妖精 ツインズの旅  作者: 冬忍 金銀花
第一章 駆け出しのハンザ商人 オレグ
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第97部 困窮のブィドゴシュチュの街


 1244年8月17日 ポーランド・グルジョンツ



*)オレグの貧しい日々


 煉瓦の五万枚は新築の館とビール工場に使われた。館の新築代としてビール工場の所有権はオレグが握る。


 この煉瓦を大量に製造したことがヨーロッパだけだは無い、世界の大きいい環境破壊に繋がる。あの綺麗な中世のヨーロッパの風景は大量の煉瓦を使用して建造されたのです。森は切り払われて薪にも暖房にも利用されました。禿山は開墾されて畑地に変わって行きました。


 元々が少雨の土地だったのがさらに少雨となりました。地震が無いというのも一つの鍵でもあります。煉瓦の建物は今どきのようなモルタルで接着していません。積みっぱなしなのです。牢なんて煉瓦を外せばよかったのでしょうか。柱となる角にはたくさんの煉瓦が並びます。壁もですね厚みは百cmとか? になる訳です。


 こんな説明をしているHPはここだけですからね、大いに勉強されてください。



 オレグは全財産を館と工場に投資して、オレグはブィドゴシュチュに戻りパブの売上だけで生活を余儀なくされた。


 横やりを多数受けながらもオレグは幸せだった。ただ不幸だったのが、あのボブ船長だ。


「なぁ兄ちゃん。仕事は無いのかい。」x200


 毎日オレグの顔を見ては仕事の催促をしていた。


「るぅせ! 俺の金はもうないんだ、家で寝ているしかないのだよ。判るか? なぁ、ボブさんよ。」

「いいや全然!」


「少しはボブを見習え!」


「点数稼ぎめ!!」


ボブ船長は吐き捨てる。


 ボブ二号はクレーンの改良に余念が無かった。


 倉庫の方からガキの声がたくさん響いていた。


「な、なんだ、このガキンチョは!!」

「おう旦那、旦那はタダにしておきますよ。いかがですか?」


「銅貨一枚のアトラクションかよ、苦情は言わないがでも文句は言うぞ!」

「でへっ!!」


 だがオレグの見たのは倉庫から港に籠が下りていくと、もう一つの籠が自動で倉庫に戻るように考えてあった。


「これは搬出向けには利用できるな、だが荷揚げには利用出来ないか!」


「おうボブ、売り上げを寄こせ。」

「旦那、規約違反です、自由に稼がせると言われましたですよね!!」

「お、おう、そうだったか……?」


「オレグ、あのボブは優しすぎるわよ、変じゃない?」

「暇なだけだろう? 違うか。」


「違わないわよ、お兄さま。ボブはこの前の亀が化けていましてよ!」

「だったら本人に訊こうか。」

「本人は白状しないでしょう?」


「おい、ボブ。お前はこの前のスッポンか!」

「イヤですよ旦那。あっしは女ではありませんよ。」

「そうか、もう寒いだろう早く川で冬眠するのだな。」


「ばこ~~ん!」

「まだ夏でさ~~!!」


 オレグはボブの尻を蹴とばして港に沈めた。ふわふわして泳ぐ亀の姿が見える。


「リリーボブを召喚してよ。出来るだろう?」


「うん召喚するね。でもいいの? 魔法がばれちゃうかもよ。」

「たぶん解らないだろう、もし解っても強制記憶操作! を掛けてやるよ。」


「我は、オレグの足元にボブ二号を召喚するなり……、ボブ召喚!!」


 酔っぱらったボブがオレグの足元に転がった。


 翌日になり、


「オレグ、あの魔女は豚の臭いがするわ。美味しそうよ! 捕まえて食べようか。」


 リリーの一声で悲鳴を上げて逃げていく豚が見えた。


「またかよこれで何人目になるかな。」

「まだ二人目だけど?」


「そうか? ならばあいつらはなんだい。」


 四方から豚や羊、犬が逃げていく。


「あらあらまぁ~やってくれるわね~殺毛キルケーめ!」


 ソフィアが人間の姿のままでオオカミの遠吠えを放つ。


「ゥオ~~、オゥ~~オーぅおー~~!!」


「あらま~みんな逃げていったわ。どうしましょ!」

「いいさ、放っておけよ。まだ害はなさそうだし。」

「でも食べ物が少なくなるわよ。」


 目先のチョロチョロした事にも興味を示さない、やる気なしのオレグだった。


「これは重傷だわ。早くライ麦の収穫が始まらないかしら。」


 元ドイツ騎士団の捕虜には食費が掛かる。今は倉庫からの放出でしのいでいるがこのような調子ではオットーⅢ世との戦争も出来ない。



「もしかしてオットーⅢ世は居ないのか?? ブランデンブルクへ行くか!!」


「ええ??」

「えぇ、!!」


 顔が紅潮する二人だった。



 1244年9月28日 ポーランド・グルジョンツ



*)ブランデンブルクという国 二人の統治者



 情報がありません。ブランデンブルクのオットー君は生涯独身でした。相方のヨハンⅠ世は二人も嫁さんを貰っています。羨ましい限り……ではありませんが、一人はゾフィー(デンマーク王ヴァルデマーⅡ世娘)と、ユッタ(ザクセン公アルブレヒトⅠ世娘)になります。


 ゾフィーとの間には四人の子供が居ますし、ユッタとの間はハインリヒⅠ世の一人です。さてゾフィーとユッタ、どちらと先に結婚したのでしょうか?


 前にオットーⅢ世はサイコパスだったら面白い”と、書きましたが独身とは知りませんでした。事実なのかも? しれませんね。こうやって考えていくのも楽しいですよ……。


 ブランデンブルクは二つの家系があり、一つはシュテンダル辺境伯です。もう一つはザルツヴェーデル辺境伯。メヒティルト=ポーランド王ヘンリクⅣ世を排出しています。

 

 ポーランド王ヘンリクⅣ世は1288年に王位を継承いたします。後、四十四年後ですね。この人は劇的な生涯を送ります。(この物語に出て来るかは不明です。)


 ゾクゾクするような物語の主人公です。生まれは不詳で、1258年頃。


1244年頃は大きい戦争がありませんので史実には登場しなかったと思います。



「オレグ、どうしてキルケーの動向を考えてオットーが居ないと思うのよ。」

「キルケは誰かに構ってもらいたいのだろう? だってちょこちょこと俺らを遊び相手に選んでいるとういう事は……?」


「はは~ん分かったわ、キルケは独りで寂しいのね。」

「ピンポ~ン!! ポ~ンポン!!」


「お姉さま、気の抜けたビールのようなお兄さまを見てるよりも面白そうですわよ、マティルダを連れて行きましょうよ! ね?」


 マティルダがピン! と、背筋を伸ばした。


「嬉しいわ……!! 忘れられたかと思っていました。」


 マティルダの登場となる。か! 乞うご期待!


 

 オレグはアンテナを立ててブィドゴシュチュを見ていたら、ドイツ騎士団の異様な多さに気が付いた。グルジョンツにいたっては、ここをポーランド制圧の砦にする予定だ。


 一人の行商人から情報を得る事ができた。


「騎士団長のダンゴさんから聞いたのですよ。オットーⅢ世がポーランドの王のヘンリクⅡ世と戦争をしたんですよ。なんでも、ヘンリクのオヤジが死んだからオットー君がルブシュ地方に侵攻して、ヘンリクⅡ世を負かせたという事らしいですぜ。」


 ルブシュ地方はここから西へ三百k先の、今のドイツと国境を接している。


「という事はポーランドがドイツに睨みを利かす城塞が落とされた、という事ですね。」

「オレグ、ドイツ騎士団がトチェフへ侵攻しなかったのは、そういう事情があったからなのね。」

「らしいな。騎士団の連中もルブシュ地方を食ってしまったから、東へ流れて来たんだろう。」


「いよいよここら辺りも騒がしくなるのね。」

「あぁ俺らの村は小さいから見逃してくれるだろうが、マルボルクもイワバも時期に侵攻されるな。」


「兄ちゃん悪いことは言わね~、ブランデンブルクとかに行くのはよしな命が無くなるぜ。なにせオットーⅢ世は折り紙つきの悪だそうだ。」


「ほう、折り紙つきとは鑑定書と同じだぞ。まいったね~。」


 出鼻をチ~ンとくじかれたオレグ。西へ向かえばドイツ騎士団が大勢で出迎えてくれるらしい。


「俺もダンゴ団長と顔見知りでなけりゃ、殺されていただろうね。ほんと、くわばら、桑原!!」


「オレグ兄さん、その桑原とはどういう意味なの?」

「ただのおまじないの言葉さ。神様、仏様と同じさ。」

「ふ~ん、で、本当に雷は落ちないの?」

「おまじないだから、雷は落ちるに決まっているだろう。」



 マティルダさんすまない。マティルダはまた気分が悪くなって寝込んだ。



 オレグはトチェフやイワバ、マルボルクの足場を固める方向に決めた。


「一に金儲け、二に金貨、三に金貨集め!!! だね。」


「くそ~絹の反物の売り先が無いぞ~。」

「そのうちにチャンスは来るわよ。落ち着いて、ね!」


「そうよ、オレグ兄さん、ブィドゴシュチュとグルジョンツからライ麦の仕入れに尽力しようよ、ね~!」

「あ、あぁ、そうだな。セールスだけならば金も必要ないものな。」


「じゃぁ、ギルドに行こう。」

「いやギルドでは無理だろう。商人ギルドと職人ギルドがあるのだが、ライ麦は農奴が生産して領主に献上するようなものだろう? ここではギルドは関係ないさ。」

「ふ~ん、そうなんだ。」

「だから街の実力者に会う必要があるね。」


「それなら、私たち三姉妹に任せて!」

「ドラキン三姉妹は不評だったぞ、それに一人足りない。」

「マティルダさんを連れていくわ。綺麗な絹の服を着せてね。」

「そうだね、マティルダを献上しよう!」

「バコ、バコ~ン!」

「いたたた……。」


 ブィドゴシュチュとグルジョンツの領主代行に会いに行く。手土産は見本つきの絹の反物だった。 



*)ブィドゴシュチュの領主代行、ローマン


 ローマンが一代でこのブィドゴシュチュを繁栄させた、という自負があった。もう老人になる。古い考えだから領主さま=神様だと思っている。ローマンの息子が虎視眈眈こしたんたんと地位を狙っていると知った。


「オレグ、これは越後屋になるべきだわ。」

「そちも悪だのう。」

「えぇ? どうしてさ。別にいいじゃん。」

「シビルに頼もうか、それとも綺麗な魔女を連れて行くか、だね。」



 オレグらはマティルダも連れて領主代行の館に会見の申し込みに行った。


「ガシャン、バキバキ!」


 奥の方で何か割れる音がした。?? と、オレグは門をくぐりそこに居た男に声を掛ける。


「恐れ入ります、領主代行のローマンさまにお会いしたいので会見期日の予定をお願いしたいのです。」


「あんたら、だれ!」

「はいハンザ商人のオレグ、と申します。」

「あぁ、あのオレグさんね。ちょっと待ってて、オヤジに尋ねてくる。」

「知り合い?」

「いいや、おべんちゃらだろう?」

「まぁ、おべんちゃら!!」


「入っていいよ、これから会うそうだ。」

「げげ、ギルド長の娘が居る。」

「あれは俺の嫁だ。だから話は聞いている。」

「そうでしたか、つい言葉を……すみません。」

「いいよそんな事。ついてきな。」


 大きな館ではなかった。これはローマンの好みなのだろう。現れた老人は小柄であった。


「父さん。」


「……?……あんたか、何か問題を起こしたのかね?」

「いいえこれからで……、あ、いや、これから秋で収穫されるライ麦の買い付けの許可を頂きたので、ご挨拶にまいりました。」


「あんたは日本人だね、回りくどい言い方をなさる。」

「いいえ、これはビジネス用語ですので意味はございません。」


「ライ麦は俺の領主さまの財産だから、譲れないよ。」

「さよでございましょうが、少しででもお売り頂ければ助かりますが、」


「ライ麦二十k一袋で銅貨十五枚ですが、いかがでしょうか。」


 ギーシャの眉が動いた。目も大きく開いたのだ。


「無駄だやはり売らないよ。この街で問題を起こすなよ。」


 意味が通じないと思いながらも、オレグは同じ事を言う。


「でしたらライ麦五千袋で、金貨七十五枚です。」

「おう金貨七十五枚か、よしよし……。」


「おお、売って頂けますか。」

「売らない、もう帰れ。」


「……?」


「オレグ、もう帰ろう!」

「そうだな、帰ろうか。」


 失礼しましたと、オレグらの三人は部屋を出た。息子は残ったままだ。



「少しお待ち下さい。……こちらのお部屋へお願いします。」


 ギルド長の長男の嫁が廊下でオレグを呼びとめる。


「はいなんでしょうか。ここが断られましたので、グルジョンツへ行きます。それも急ぎでですね。」


「いいからお待ちください。ギーシャを連れてまいります。」

「お、おお。」

「オレグ、失礼だわよ。」

(いや、俺は成功の足ががりを掴んで思わづ喜びの声が出たんだ。)


 オレグらは館の別館に通された。ここは息子夫婦の家になるのだろうと、オレグは考えた。……応接室へ通されて少し待つ。


「オレグさん、頑固オヤジですみません。」


 ギーシャの言葉使いが変わった。


「私は次期領主代行のギーシャと言います。先ほどのお話ですが、ぜひともブィドゴシュチュともお取引をお願いします。」

「それはありがたい。ですが、領主代行さまは断られましたよ。」


「はい、父は古い人間でして、今でも十年前の金額で領主に売っているのです。金額がライ麦一袋で大銅貨一枚です。あまりにも安いのでもっと金額を上げるように進言しているのですが、かたくなにいう事を聞かないのです。」


「ブィドゴシュチュの農民からの搾取をいたいませんと、街の運営が出来ない状態にまで落ちてしまいました。」

「ですが街は活気があってよろしいのでは?」

「いいえ木材をも売るような財政です。商人には本当に頑張ってもらっていますが、もう限界に近いと思います。」


「あなたさまが、この街を管理されてあるのですね?」

「はいライ麦以外は全部です。ですが、まだ若い街ですので主だった産業もなく苦労しております。」


 この男の無愛想の原因が分かったように思う。きっと今日も言い争って偶々門に出ていたのだろう。


「ドイツ騎士団ですね?」

「はい賦金の上納で苦しんでおります。備蓄が底をつくような……!」


「ではお父様を幽閉なさいますか?」

「そ、それは……、」


「いいえ極端な事を言いました、お許し下さい。ところで領主さまには金貨ででも納める事が出来ますか?」

「はい出来ると思います。何せ戦争する腹積もりのようですから、金貨は欲しいと考えます。」

「領主さまはどなたになられますか?」

「はい、ヨハンⅠ世さまとオットーⅢ世さまです。ここはもうブランデンブルク辺境伯の領地でございます。」

「すると、オットーⅢ世の管轄ですね?」


「? はい、さようです。……どうして、それを?」

「私どもも、領内で色々もめごとを起しまして、睨まれているのです。」

「はは、さようでしたか、良く存命でなによりです。」


「申し訳ありませんが、ヨハンⅠ世さまとパイプは有りますでしょうか。これらの者が着ている絹の反物がございますので、輸出が出来ないものかと思いまして尋ねております。」


「はい謁見えっけんは可能です。ですがブランデンブルク(ベルリン)は遠おございます。すぐには出来ません。申し込みが出来ましても戦争に行かれるような事態が発生しましたら謁見どころではありません。」


「そうですか、残念です。」


「リンテルンのホルシュタイン伯アドルフⅣ世とはどうでしょうか。」


 マティルダが大声で尋ねた。


「あぁ、あの方はルブシュ地方の城塞に詰めてあるかと思います。」

「そうですか……、」

「アドルフⅣ世が何か……、」

「いいえなんでもありません。昔お世話になったものですので、つい……、」

「そうですか、」


 だがマティルダは、


「そのルブシュ地方の城塞へ赴く事は出来ますでしょうか。」

「それは出来ますよ、ライ麦の搬入の途中になりますから無理はありません。」

「でしたら、その、私を連れて行って頂けませんでしょうか。」


「ほらマティルダさま、そう急に言われましても困られるだけですよ。」


「えぇ!!!、マティルダさま?!!」


「あっ、」


 ソフィアが地雷を踏んだ。少し間がひらいた。


「はい、こちらはマティルダさま、ホルシュタイン伯アドルフⅣ世さまの娘さまになられます。」


「え~と……。」

「あ、私はギーシャと言います、女の名前ですので言いたくはないのです。」


 ローマンとギーシャ、何か引っかかる名前だと思うオレグだった。


「もしかしてお母様のお名前は、……?」

「そうですよアテナですよ……! なにか!!」



「もしよろしければ私のパブへお出でになられませんか? 情報が洩れては困りますから。」

「行きたい、すぐに案内してくれ。」

「はい喜んで。」



 マティルダは喜色の顔になった。


「お待ちくださいまし。ギーシャは私がパブまで案内いたします。連れだって道を歩くのは良くありません。……倉庫のあるところが本店でしょうか?」


「はい本店の方が静かですので、そちらまでお願いします。」

「では後ほどまいります。」


 オレグは帰るなり急ぎでギーシャ夫妻を迎える準備を始めた。最初は、


「おまえら、うるさいから何処かへ出て行け!!」


 だった。



 ギーシャとの商談が始まる。


「わざわざお出で頂きありがとうございます。」


 ギーシャは店内を一瞥いちべつしてから、


「綺麗なパブですね。……これは素晴らしい。」

「お褒め頂きありがとうございます。奥の席でございます。」


 奥には、今日の三人が席の手前で並んで立っている。


「よろしくお願いします。」


 と婦人が挨拶しながら通り過ぎた。


「はい。」x3


 と返事を返して厨房へと姿を消した。へステアは三人を目で追いながらパブの店内へと視線を移していた。


「こらへステア……、」

「はいすみません。へステアと言います。」


 へステアの目の前には父のギルド長を床に追いやった本人がいる。だが、そのような事は気にもしていない様子。


「ギルド長のお加減はよろしいでしょうか?」

「はいご心配には及びません。兄に代替わりさせるいい機会です。今はヒ素を少しずつ食べさ……いいえ、なんでもございません。」


「はは、いやいや、どうして……。」


 オレグは(やる~!)と心で呟く


「オレグさん、全量とは申しません、この街を助けると思ってライ麦を購入して頂けませんでしょうか。」

「いやいやお売り下さい、とお願いしているのは私の方です。喜んで買い取らせて頂きます。」


「はいお願いします。ライ麦はブィドゴシュチュでおおよそ五万袋が生産されています。この街の食い物としての一万袋を残しますので三万袋になります。」 30000x1500=45000000=450


 金貨で四百五十枚になる。オレグが扱う量の半分ほどだ。だがオレグは4万袋とは少ないと感じた。(こいつ、サバを読んでいるのか?)と、オレグ。


「金貨で四百五十枚になります。よろしいですね?」

「はい十分でございます。」


「商談成立です、ね!」

「はいありがとうございます。」


「良かったね、ギーシャ!」

「あぁ、ほんとだ。」


「すみません金貨四百五十枚でこの街が維持出来るのでしょうか?」

「はい一万袋はギルドへ流しますのでもっと多くなります。私が販路を持っていませんので、父と同じく領主さまに売るしかなかったのです。」


「もしかして、オットーⅢ世もお金が無いのでは?」

「?……?……? ああああああ~、そうですよね~、少しも疑いませんでした。これならば、父の分のライ麦、十五万袋も金貨に換えて送ればいいのかも知れません。」


「疑問なのですが、どうして荷物として嵩張かさばるライ麦を遠くへ送るのでしょうか。考えた事はございますか?」

「いいえ全然。ただライ麦を送れという指示で送っております。」

「ギーシャさん、ライ麦の輸送費は領主さまの手出しでしょうか、それとも?」


「はい領主さまの手出しでございます。」


 オレグは輸送費のコストを計算する。農奴に送らせるのだろうが、十五万袋とは莫大な量になる。十五万x二十k=三千t、荷馬車でも半分の一千五百台たぶん飯代だけでの金額だろうから、一千五百人分x十日=一万五千日、銅貨十枚の計算で十五万=金貨で一,五枚、約二枚の計算になった。



「これはこれは。私が船で輸送するよりもはるかに安そうでうね。」

「はい全部、農奴を使います。馬車は持ちませんので馬車に管理費用は分かりません。」

「そうですか……、」


 オレグは奥へ視線を送る。


「ギーシャさん、お父さんのライ麦を金貨に換えませんか、十五万x銅貨十五で金貨……二千二百五十枚になります。これなら楽ちんでブランデンブルクまで輸送できますよ。」


 金貨でおおよそ三十kにもならない。だがブランデンブルクまでハンザ同盟の為替(送金)を使えば安全に送金できる。


「ギーシャさん、これはぜひとも私に扱わせて下さい。ギーシャさんにはおおよそ金貨で七百五十枚が手に入る計算になりましょうか。」


「おぉぉぉxx・・・」


 へステアは失神してしまった。ギーシャは……目が泳いでいた。とても冷たいビールが運ばれた。


「ノルェーのサバの刺身でございます。とても美味しいですよ!」



「うん~~~~ん美味しいわ~~~。」

「これはプリン・プリンとして歯ごたえがあり、美味しいです。」


「おかわり下さい。」


「お兄さま、それは私が運んできた本当のサバのお刺身ですわ!!」

「美味しいぞ! これはいける。」



 マティルダはまたしても、ルブシュ地方の城塞へは行けないようだった。


 マティルダが悲しむように差し込む夕日が無くなりローソクが灯された。

(十八時?くらいだろうか。)


 トチェフへ一人の商人が訪れていた。オレグは気づかない。



 この人狼夫婦と妖精 ツインズの旅は、1章ずつ書いております。ですので、

先の話は決まっておりません。直前で横に逸れるのはいつもの事。人狼と少女

のように初めから話の展開は考えておりません。だって先が長いのですもの…

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