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人狼夫婦と妖精 ツインズの旅  作者: 冬忍 金銀花
第一章 駆け出しのハンザ商人 オレグ

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第91部 銭湯開始!

 

 1243年12月31日 ポーランド・ブィドゴシュチュ



 ブルダ川には二艘の船が停泊していた。


 ボブは大きく手を振って港の完成を知らせる。船でも手を振る男が居た。


 二艘の船が入港し、トチェフからの農婦らが降りてくる。デーヴィッドがいの一番に降りて駆け寄ってきた。ソワレとエレナもだった。


「ほぇ~!!」


 意外な人物を見てオレグが大きく驚いた。


「まぁ~!!グラマリナさま!」


 とソフィア。


 エルザも赤ん坊を抱いて降りてきた。当然ルシンダもいる。


 リリーも起き上ってみんなを出迎えたかったが、身体は死んだように動かなかった。グラマリナは一番にリリーを見舞って、贈り物をだした。


「まぁ~きれいですこと。嬉しいですわ。」


「でしょう? これはデーヴィッドにグダニスクへ買わせに行かせたのですよ。ここにもバラの苗を植えて下さい。」

「そうか、ここにはバラの樹が無いですもの、私の魔力が尽きるはずですわ。」


 バラの花を見たリリーはたちまち元気になる。グラマリナはトチェフからも多数のバラの苗木を持ってきていた。


「さ、リリー、このバラを植える場所を教えて下さいな。デーヴィッドに植えさせますから。」

「はい、冬には元肥を入れて植えなければなりません。事務所の近くに仮植えをお願いします。移植は私が行います。」

「はい、分かりました。」


 女たちは倉庫の三階に宿泊させる。グラマリナ、エルザは事務所の四階に宿泊させる。デーヴィッドは二階になる。エリアスは来てはいなかった。


 パブも大きく作られている。地下倉庫もあるが食材の備蓄はまだない。エルザはオレグの倉庫から色んな食材を抜いて持ってきていた。


 これらの食材は地下倉庫に厳重に保管された。そして、


「エルザ、明日の調理にはエルザも立ち会ってくれないか。不審人物が混じると大変な事になるからね。」

「まぁ、どうしてですの?」

「あぁ、二日目に魔女から毒入りの食事を出されたのだよ。幸いに男たちが眠らされただけで済んだが、本当に毒を盛られたら全員が家畜にされてしまうからさ。」


「まぁ、そうでしたか~私も注意して女たちを監視いたします。」


「明日は落成式だからお願いするね。」


 大晦日の夕方になった。明日の式典にはお構いなしに、宴会が行われる。テーブルにはキャンドルが置かれているし、要所要所にもキャンドルのあかりが灯っている。暖炉兼パン焼き器にも薪がたくさん燃やされていた。


「おやおや、明日までは待てないようですわね。」

「そうですね、奥様。」


「そういうデーヴィッドもでしょうか?」

「いや~、ニューいやーですね。」



 明日からは暫く休みになる。オレグには休みは無いが仕事が出来ないから、強制のお休みになるのか。


「オレグ、この扉の向こうは何が在りますの?」

「まだ稼働出来ないのですが、銭湯です。井戸もありませんが熱源リリーが臥せっていますので、もう暫くかかります。」

「それは残念ですね。」


「これは残念ですね。」


 グラマリナからは人足や職人の派遣費用の請求書を貰ったオレグが、ため息交じりに口にした。金貨六十七枚。

「たか!」


 呑んだくれの男はパブの床で寝てしまう。


 オレグは食材の番として、食材と添い寝をすることにした。


「オレグ、抱き枕は豚でいいですか?」





  1244年1月1日 ポーランド・ブィドゴシュチュ



*)落成式


 すでに終わったような落成式を行う。会場に居る男はまともな者はいない。全員が塩サバの目つきになっている。女たちは一部を除いて普通だった。


 グラマリナは来賓として檀上で挨拶をしたいと言う。


「グラマリナさま、申し訳ありませんが、もしもの事が有っては申し訳がたちません。ソフィアとソワレ、エレナを横と後ろに控えさせて下さい。」


「オレグがそうしたいのならば、仕方がありません。指示に従います。新年から働く魔女は居ませんでしょうか!」


 グラマリナは三人に連れられて檀上に上がる。オレグも檀上に上がって周りを見渡すが、異常は見受けられない。


「では、グラマリナさま、お願いします。」


「みなさん、大変なお仕事ご苦労さまでした。この激動の1244年に新規で活躍出来る大きな商会が発足いたしました。今後も支援いたしますので、職員の皆さんは他国に負けない努力で、オレグ商会で励んで下さい。最後に、オレグは、トチェフを忘れないで下さいね。」


「パチパチ……。」


 会場から拍手が上がるが今いち気の抜けたビールのようだった。


 続いてオレグは、


「おう、お前ら~今日までありがとうな~、存分に飲んで食べてくれ~!!」


「おー!!!!」


 会場が湧きあがる。


「グラマリナさま、群衆には、エサが必要です!!」

「まぁ、そうですか~!!」


 午後から始まった宴会、昨日以上に酒が消費されていく。原因は疲労から快復した魔女たちのせいだった。オレグは頭にカチン! と来て、


「お前らは元気になったんだ。川の水を汲んでこい。」

「は~い、オレグさま~!」


 上機嫌でブルダ川からパブの隣の銭湯に水を汲み上げた。


「おう、魔法だと素早いな。でだ、誰かお湯に出来ないか。」

「オレグさん、私とリリーお姉さまでお湯にいたします。」


 エレナがリリーを連れてきて言うのだった。


 リリーは、


「オレグ兄さん。エレナが居れば一回分のお湯は出来ますわ。任せて下さい。それで地下三階を冷却すればよろしいでしょうか?」


「そうか、それはありがたい。で床に氷か雪を頼みたい。」

「エレナ、どれくらいの氷が出来るかしら。」

「たぶん、地下三階は全部出来ると思います。行ってみましょうか。」


「きゃっ、きゃっ!」


 オレグが不気味なはしゃぎ方をしている。地下へ通じるドアの鍵を開ける。二人をあとにしてオレグは先に階段を下りた。とても良く出来ているから天井からの光は全く無かった。


「すまない、ローソクに火を点けるよ。」


 オレグの寝具と豚の枕が転がっていた。


「ない、これ! お兄さんの枕なの?」「キャッ、キャッ!」x2


 二人して笑っている。地下二階に下りる。暗いから不気味でもあった。



「ここが地下三階ですが、広すぎますか。」

「いいえ、大丈夫です。ただ……」

「ただ??」

「お風呂が熱くなりすぎますでしょうか、……」


「だったら風呂の分だけで出来るかな~!」

「いいですよ! リリーお姉さま。今日は私だけで冷やします。え~~と、床は氷を二十cmほど作ります。」


「あ! いや、氷はまずいよ。棚が動かせなくなる。雪でお願いします!!」

「はい、分かりました。」

 エレナは雪魔法の呪文を唱えている。床が白く光り出した。


「オレグ兄さま、棚の上に上がりましょうか。私たちも雪にされますから。」

「お、おう、先に上がるな。」

「はい、お兄さま。」


 リリーはオレグに右手を差し出す。


「ほいきた、どっこいしょ!!」


 床には十cmの雪が出来た。


「これくらいで十分のようです。お風呂を覗いて下さい。足りない時は再度呪文を唱えます。」

「エレナはリリーのように、継続の魔法は使えないのか?」

「はい、私は瞬時の魔法だけなのです。後はリリーお姉さまにお願いします。」


「ゲート!」


 リリーはいきなりお風呂にゲートを繋いで開いた。


「おう、これはいいや。とても温かそうだぜ!」


「オレグ兄さん。この大きい木箱は何かしら!」

「それは風呂のお湯を循環させて、綺麗に保つ装置さ。これは魔女に手伝ってもらう必要があるけどな。」

「そうですか~、」

 リリーはオレグの背中を押しだした。


「なんだい、リリー……? もしかして?」

「そうよ。エレナと一緒に入るわ。グラマリナさまを呼んできて下さい。」

「OK、直ぐに呼んでくるよ。見張りはエルザでいいか。」

「えぇ、お願いします。」


 主だった女たち全員がはせ参じた。シビルも居た。魔女たちは多すぎるから次にするように頼み込む。見張りはアントニアが請け負った。


「チェッ、一時間しても出てこないよ。……・・」


 不都合なく入浴は完了した。次は魔女を案内して木箱の循環装置を説明する。


「誰かこの木箱にお湯を入れてくれないか。注ぎっぱなしになるが、いいか。」

「は~い! 輪番でお湯を循環させま~す。」


 いい返事がオレグに返ってきた。オレグは気をよくして、


「このお湯の循環をしてくれる魔女には、当日の風呂を無料で利用できる。」


 と、言った。魔女らは喜ぶ。


(ふん、あとはお前らで決めてくれ、水汲みもあるのだからな!)と、オレグは心で呟いて風呂場から出ていく。




 給仕の女も農婦の女も、男よりも先に入浴を終わらせた。いい香りのする若い女に男たちがついて回っていた。


「これは夫婦が出来そうだ……春先は……麦畑だな!」


 デーヴィッドが名前をメモしていた。グラマリナは酒を飲んでも仕事をするデーヴィッドを見て、


「うふふふf……!」



 エレナには追加で魔法を使ってもらい、オレグは順次男たちを風呂へと追いやった。ボブは何年ぶりかの風呂だったらしい。あくまでも、らしい”なのだ。ボブ船長の肌は地黒かと思っていたが、なんの事は無かった、日焼けでもないただの汚れだという事が判って、アントニアが怒りだした。


「ふ、ふ、不潔だわ!!!」


 その他、ドラマが生まれそうだった。オレグは目を細めて見て笑っている。



「オレグ、これは失敗だったわね。」


 ソフィアが男たちを見て言う。


「あぁ、ビールをがぶ飲みされるくらいはいいさ!」


 オレグはソフィアと飲み始める。ここまでキルケの妨害は無かった。


「オレグさん、綺麗な女の人が見えていますが、お通ししますか?」

「は?」

「ひぇっ!」

「ふぃにゃ~!!」

「へ!・?」

「ほ!」


「ま!!っ!」

「どうしましょ!」



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