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人狼夫婦と妖精 ツインズの旅  作者: 冬忍 金銀花
第一章 駆け出しのハンザ商人 オレグ

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第84部 ドイツ騎士団の惨敗!!

 

                  1243年11月8日 ポーランド・トチェフ


*)休戦

   

「だったら魔女の寝屋を通るように仕向けましょうや。」

「お前が行きたいだけだろう!!」

「えへ!!」


 協議の結果、藁を燃やして煙を送る。ただキャンプ地には煙を送らない。キャンプ地にはでかいバイソンを送る事に決まった。


「そしてこの動乱に紛れ込んで、馬をさらうのはどうだ。」

「そうですね、兵隊と同じ格好をすればよろしいでしょうか。」


 オレグは酪農のレオンの意見を採用した。


「今晩にでも決行したいが準備が間に合わない。明日に再度協議しながら場所を決めようか。奇襲は明日の夜に行う。」

「おーーッ!!」


「俺は商人だ。与えた飯代は倍にして返してもらう。」


 オレグは、馬、馬具、武具に次いで食糧も奪う計画の画策を練る。真夜中だからゲートを使っても見られる訳ではないから構わない。


「オレグ兄さん、少し欲張り過ぎではありませんか?」

「そうかぁ?」


 翌朝になりオレグは奇襲の兵を募る。成功報酬は無い。もちろん損害の補てんも無い。これは村を守る聖戦なのだから与える必要はないのだ。ただ、戦災の補償と怪我の治療は行うつもりではいるが、面と向かっての通達はしていない。



 オレグらが、あらかたの作戦を説明する。


 勇士が五十人集められた。これらの五十人が働き蟻になりゲート前に戦利品を集めてくる。オレグらがその戦利品をゲートか境界に投げ込む役を行うという戦法だ。村人にもリリーの魔法は知れられたくはないのだから。


 戦争の情報を聞いたイワバの領主、ピアスタお嬢さまからは弓矢が多数搬入された。同じくマルボルクからも弓矢が多数届けられた。


 これらの武器が昼前にビスワ川の河原に到着したのだ。川の少し上流で船により村へと搬入された。搬入した男たちは残り弓の兵士へとなってくれた。頼もしいかぎりだ。


 オレグの戦法が変わった。


「あんたたち、たくさんの武具をありがとう。これで撃退が出来るというものだ。あんたたちは夜襲のかなめになるだろう。」


「オレグさん、俺たちは何をしましょうか。」

「おう、暗闇を逃げるドイツ騎士団の矢を射ってもらいたい。ビスワ川の堤防に潜んで街道を逃げる兵を殺さぬように射ってくれないか。」

「暗くて見えませんですぜ!」

「あぁ、それは大丈夫だ。離れた所に篝火になる放火をしておく。影になって見えるから夜襲は出来るよ。」


「オレグ、魔女に松明を落とさせましょうか。それと、ケムケム作戦は農地にキャンプを張らせずに、街道の方に張らせたらどうかな。」

「そうか、そうしたら俺らは煙と一緒にキャンプ地を襲撃して、騎士団を街道に追い立てればいいのか。」

「だったらオレグ兄さん。バイソンは西の方からと村の正面の街道から放ったがいいわ。街道から放つのは弓の人たちを守る為にね!」


「そうか、だったら俺たちは馬のみを捕獲して、馬具や武具は騎士団を追い払ってから集めればいいのだな。」

「そうだよオレグ兄さん。だったら村人も運搬人として五十人は増やせるし、また危険だったらその五十人は送らなくていいしさ!」


「よし、その作戦でいこう。西のキャンプ地ではもう煙で追い立てる必要があるな。すぐに藁に火を点けようか。」

「松の丸太をそれぞれに配置して、バイソンも連れてきておくか。」

「オレグ、たくさんの松明もここに集中させようよ。魔女には順次飛んでもらうからさ。」

「そうだね、ソフィア!」


 オレグらはこの先の展望が開けてきて元気が出てきた。オレグは気づかなかったが、これはオレグの常套手段でもあった。最初に俺たちは、弱いんだ”と思わせて、相手に油断をつくらせおごらせる。後にその傲慢な鼻っ柱をへし折るという戦法だ。


「勇士のお前たちには、馬で騎士団の兵が逃げないように、馬が繋いである方面からの襲撃を頼む。大多数の馬が無くなれば次の襲撃までには、長い期間を要する事になるからしっかり頼むぞ。ここはかなめだからな!」



*)休戦を破るもの、それは猛牛バイソン


「お前たち女の仕事だ。麦わらを出来るだけ煙を出して燃やしてくれないか。序でに夕餉の肉も焼いてくれ。」

「いいよオレグ。このボブの嫁さんに任せな! 肉は串刺しでいいか!」

「あぁ、その方がありがたい。騎士団にはとてもいい匂いを送ってやれよ。」

「シビル、弱い風でいいんだ。出来るだろう?」

「任せてオレグ。これが……あれば十分だよ、一人で出来るよ。」


 シビルは右手を握り口の前でクイッとして見せた。


「おう、ここは任せた!!」


 オレグは気づかなかった。ボブの嫁さんは名前が欲しい、という事を。


 麦わらを燃やす煙が北に流れる。騎士団は二分させる事は出来ないので街道の方に全員が集まる。


 予定通りだ。

 

 馬は村先の北風避けの森に繋がれている。手入れをしている村寄りの森だから、馬を繋ぐにはちょうど良かったのだろう、ここに馬が集約されていた。


 オレグは街道の橋のたもとに来ている。


「ここには丸太を六本架ける。ばらけないようにすぐにロープで縛ってくれ。そしてそのロープにつまづかないようにすぐに土で覆ってくれ。」

「任せてくたさい。俺らがすぐに渡れるように作ります。」

「おう、任せた!!」


 オレグは煙を送る所にも同じ内容で橋を架ける指示を出していた。五十人の勇士にはたくさんの肉を食わせる。馬具や武具を集める五十人には黒パンをたくさん食わせた。河原の奇襲兵には肉と黒パンを与えた。


 イワバとマルボルクの弓手には、


「とにかく暗くなって移動してくれ。見つからない様にしてくれよ。」

「オレグさん任せてください。いつもの狩りと同じでさ!」

「そうか、それは頼もしい。」


 オレグはこのトチェフにも猟が出来る村人が必要だと思った。


「だってさ、肉は育てればいいから森で狩りの必要はないよ。」


 常々から狩りの必要性を認めていなかった。弓は数本も無いだろう。


 早めの夕餉が始まる。


「みんな、今晩は酒を控えてくれ。この作戦は必ず成功するから、酒は明日の昼過ぎから豪華に振る舞うよ。」

「旦那、ご馳走を期待してますぜ!」

「ご馳走を食いたければ、騎士団から奪ってこい!」

「うっひょ~~! 任せて下さい。全部かっさらってきます。」

「おう、任せた~!」



 三次の決戦が開始されバイソンが放たれる。


「ンモ~~~~!!!」

「いくぞ~!!!!」

「わ~、わ~、わ~、……それ~、わ~、わ~」


 村人五十人の奇襲が始まった。


「わ~、わ~、わ~、……それ~、わ~、わ~」


「夜襲だ~! 夜襲だ~!」「応戦しろ~!」「ンモ~~~~!!!」

「わ~、わ~、わ~、……それ~、わ~、わ~」


 村にまで聞こえる。


「ソフィア、バイソンの誘導を頼む。」

「いいわよ、オレグ。この代償は高いからね。覚悟してよ!」

「OKだよ、ソフィア。服は俺が持っていくからね。」


「ウォ~ォ~ オ~~ォ ウォ~~~!」「ンモ~~~~!!!」

「えぇ? オオカミ?」「ンモ~~~~!!!」

「ウォ~ォ~ オ~~ォ ウォ~~~」「ウォ~ォ~ オ~~ォ ウォ~~~」


「オオカミだ! みんな逃げろ~!」「ンモ~~~~!!!」

「ウォ~ォ~ オ~~ォ ウォ~~~!」



「夜襲だ~! 夜襲だ~!」「応戦しろ~!」

「わ~、この襲撃はなんだ~、牛が襲ってくるぞ~!」「ンモ~~~~!!!」

「隊長! バイソンです。」

「?隊長~ぅ、サキュバスを抱いている暇はありません。すぐに避難してください。」

「バイソンがどうした、とにかく応戦しろ~!」

「ンモ~~~~!!!」


 今度は、


「夜襲だ~! 奇襲だ~!」 「本部へ逃げろ~!」 「本部へ逃げろ~!」

「夜襲だ~! 奇襲だ~!」 「全員逃げろ~!」 「夜襲だ~! 奇襲だ~!」 

「本部へ逃げろ~!」 「本部へ逃げろ~!」  「全員逃げろ~!」


 オレグとヤン、サローが大声で叫んでいた。魔女による松明投下は順調に進む。騎士団の本部は後方に下がった所だ。街道にでて北に走ってすぐの所だから、騎士団の兵士は街道に出る。夜中だから草むらは走って逃げられない。


「おう、弓を構えろ~矢を放て~!」 「放て~!」「矢を放て~!」 

「放て~!」「弓を構えろ~、矢を放て~!」 「放て~!」


「ぎゃー、痛てー!」 「こら、俺を蹴とばすな~、踏みつけるな~、」

「矢を放て~!」「ぎゃー、痛てー!」「矢を放て~!」「ぎゃー、痛てー!」

「ぎゃー、痛てー!」「ぎゃー、痛てー!」「ぎゃー、痛てー!」


「ウォ~ォ~ オ~~ォ ウォ~~~!」

「どでかいオオカミだ! みんな逃げろ~!」


「馬はこちらに連れてこい。」「馬はこちらだ~!」


 オレグが常に叫び続けていた。サローとヤンと馭者らが馬を順次連れてくる。


「リリー、ゲートは牧場に繋がっているだろう?」

「うん、牧場だよ。」


「ウォ~ォ~ オ~~ォ ウォ~~~!」

「オオカミだ! みんな逃げろ~!」


「ソフィアありがとう。もう元の姿に戻ってくれ!」

「今晩は月夜だよ。もう少し散歩してくる。」

「お姉さま、すてきですわ! 私もお供します。」


 エレナがソフィアの後について飛んでいた。オレグはソフィアの服を持ち必死になり走っていた。


「ソフィア~、もう勘弁してくれ~、ソフィア~!」


「ぎゃー、ソフィアー、それはあんまりだー、止めてくれ~」

「ウォ~ォ~ オ~~ォ ウォ~~~!」

「でかいオオカミだ! みんな逃げろ~!」

「ウォ~ォ~ オ~~ォ ウォ~~~!」

「オオカミだ! みんな逃げろ~!」


 ドイツ騎士団の本部に全長五mの特大の女将オオカミが乱入した。ドイツ騎士団本部も壊滅した。


 ドイツ騎士団は瓦解していく。バイソンとオオカミの奇襲が大いに役にたった。


「ソフィア、五mは悪ふざけだろう?」

「お姉さま、ほれぼれいたします、お姉さま!!!」


「テヘッ!」



「エイエイオー!」 「エイエイオー!」 「エイエイオー!」


 トチェフの村に勝鬨の声が響く。


 翌朝になると多数の騎士団の捕虜が出来た。


 オレグは朝一から指示を出す。


「こいつらは金貨の化身だ、とにかく殺すなよ。良く治療してやってくれ。」

「オレグ、この捕虜は金貨に換えるの?」

「あぁそうだとも。戦争の代償にするさ。」


 ドイツ騎士団の捕虜は港の檻に収監された。多い、二百五十人は居るようだ。矢は大多数が足に命中しているから死人は無かった。どちらかというとソフィアに弾き飛ばされた兵が重傷だった。さらに頭を齧られた兵は顔が潰れてとても悲惨だ。


「おいソフィアさん、やはり悪趣味だぜ。これでは金にならないよ。」


「馬具と武具は俺の倉庫に運んでくれ。食糧も俺の倉庫に入れてくれ。今日の宴会に全部使うから!」


 ドイツ騎士団、五百人の約十日分の食糧だ、食べ尽くすには多すぎる。


「残ったものは俺の物だ!」


「オレグ、イワバとマルボルクにも分けてあげなくちゃ!」

「おう、そうだな。あいつ等に自由に選んで持って帰って頂こうか。」

「オレグ兄さん、私のゲートで送らなくいいの?」

「あぁ当然さ。その方が持てなくて分け前が少なくて済むだろう!」

「まぁ! お兄さまは、わるだわ~!!」x4




*)収獲祭りゃくだつさい



「リリーに頼みがある。」


「なになに、お兄さま!」

「魔女を四人連れてボブの船に飛んで、魔女を置いてきてくれないか。ボブには早く帰って来てもらいたいのだ。」

「うん任せて! 扇風機を連れて跳んで行くね。」

「オレグ、どうしてボブを急がせるの?」

「あぁ馬具と武具を早く金に換えたいんだ。持っていると後々に襲撃される可能性が高くなるからね。だから持たない方が良いのだよ。」


「何処に売るの? また、ルシンダ様のお父様に?」

「そうだな、今回はルシンダさまにも役に立って頂こうか。」

「うん、そうだね。明日の夜に出港すれば気づかれないかな。」

「そうなんだ、売り飛ばしたという情報は流しても、買主の情報は誰にも教えないさ。教えたら買主が襲われるだろう。」


「でもオレグ。知られたところで襲撃されるのは歴史が証明しているわ。」

「そういう事は言わないでおくれ。気が引けるからさ!」

「?……?」


 リリーが魔女四人の選別を終えて戻ってきた。


「貴女達は扇風機なのよ、しっかり働いて頂戴!」

「Tak, ma'am! ソフィアさま!」


 そう言う魔女の舌の根の乾かぬうちにリリーは飛立った。


 オレグはルシンダを呼んで、エルブロンクに行くように説得する。返事は当然、


「イヤです。私はここから動きません。」

「ルーシー、ちょっとお母様ソフィアの家まで行きましょうか!」


「きゃ! ひゃ、わぉ、あぁ、いや~!!や~!!」


 ソフィアはルシンダを家に連れていく。右耳を強く掴みながら……そんな姿を見たくはないオレグは館に向けて歩き出す。


「グラマリナさま、戦争が終わりました。」

「ご苦労さまでした。オレグにはいつも助けて頂くばかりですね。」

「お礼には及びませんが、戦利品は全部頂きます。」

「えぇ、それで構いません。エリアスには私から言っておきます。ですが、処分出来るものは早めにした方がよろしいでしょうか。」

「はい、武具・馬具は明日にでも送り出します。」


「それはいいわ、して、……。」

「はい、今宵は館の皆様も収獲祭りゃくだつさいに来て頂きたいですね!」

「はい、喜んで!!」 



 今宵の宴会が始まった。オレグの倉庫の特設ステージでは、


「みんな~! この戦いは皆で戦った成果だよ~。今宵は存分に飲んで食べて下さ~い。私もこのトチェフがとても素晴らしい村だと良~く分かりました~。!」


「わ~~!!」


 あの綺麗な服を着てエレナが祝辞を述べた。村中の人が集まり騒ぎ出す。


「放置プレイはあんまりだ~俺たちにも飯を食わせろ~」


 港の二百五十人の捕虜も喚きだす。この声は隣のマルボルクにまで届いたという。


「お父さん、妹は戦争に勝ったんですね!!」

「ユゼフよ、明日は我が身と心得よ!」

「はい、お父様!」


「あぁ~グラマリナ!!」


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