第73部 人狼の巫女 VS 魔女
1243年8月18日 ドイツ・リンテルン
*)決戦前夜
ルシンダはジィとシビルの三人で、魔女の亡骸の火葬へ行った。リリーは嫌なモノを見てまだグジュグジュと泣いている。
魔女の探査方法が無くなったので今後の移動が楽になるだろう。
「ルシンダさま、火葬をありがとうございました。」
「いいえ、それが……シビルの……、」
「はい?」
「亡骸の半分はハーメルンへ向かいましたわ。シビルの提案で船に載せましたのです!」
「じゃぁ、残りの半分は?」
「ハンブルク行きの船にな。これはマティルダさまになるかと思っての事だが。良かったかい?」
と、シビルが返事した。
「あぁ、とてもいい選択だよ。」
「樽で3個分?」
「いや5個でもいいぞ!」
「オレグさん、このマティルダも魔女の探査装置かも知れません。どうでしょうか。もしそうでしたら。私もこの仲間からは外れます。」
「たぶん違うでしょう。」
「しかし、」
「でしたらマティルダさま、リリーの結界でお守りいたします。今すぐに結界で包み込めば探知が出来ないでしょう。」
「はい、お願いします。」
明日の襲撃の方法やルートが検討された。
「ボブ、殺されたくはないだろう。しっかり道案内はしろよな!」
「はいです、」
「戦場は決まっているさ! 城の麓さ。」
「どうしてそうなるのよ。」
「あぁ城を守る為だよ。誰だってマイホームには他人を土足で入れたくはないだろう。特に攻守できても城がボロボロになったら?」
「うん、ホルシュタイン伯アドルフⅣ世が黙っていないわ。だから、要らぬ嫌疑を受けない為には麓で片づけたい!」
「うん、そうなるだろうね。」
「だったら他国から攻められました~、ではいけないの?」
「もち、すぐばれる嘘こそ、命取りになるさ。」
「ならどう言うのさ!」
「俺ら人狼の襲撃を受けて撃退しました、だよ。これは本当だろう?」
「そうよね、オレグがオオカミに化けて襲撃するのは間違いない事実だもの。襲撃の理由だって、綺麗な奥さんのしっぽを踏みました~、それで要らぬ襲撃を受けました~でいいはずよね。」
「ソフィアさん、少しストーリーに脚色が掛かりすぎではないでしょか。」
「あ~ら、決してそのような事実はありませんわ。」
「おう、分かったよ。それでいいよ。」
夕方過ぎに、情報収集だ~と言いながらパブに行っていた三人が帰ってきた。
「バルトシュ、街の様子はいかがでしたか?」
「はい、何も異常はございません。人も幸せそうで何よりでした。」
「まぁ……、ご苦労さまでした。」
ピアスタが帰って来たバルトシュの労を労った。だが(こやつは役にたたぬ。)と、ピアスタの心の声が漏れてきそうだった。
ルシンダは、サローとヤンの報告を聞いたのだが、
「ルシンダさま。街のどこにも不審な人物は居りませんでした。」
「はい、二人ともご苦労さまでした。ゆっくりと休んで下さい。」
(こやつらは役にたたぬ、たぬきか!)と、ルシンダの心の声が……。
「ルシンダさま、申し訳ありませぬ。どうかお許しください。」
「二人とも、何を言うのですか?」
ルシンダの心の声が、口に出ていた。サロー、ヤンは隅で小さくなった。
「収穫は無しですか、まぁ~無理もないでしょうか。」
オレグは期待はしていなかったので落胆はしていない。次にオレグは、
「シビル、三人のこころを見てくれないか。」
「オレグ、いいのかい? 俺は知らないよ!」
「ピアスタさま、ルシンダさま、お許しください。」
「えぇ、どうぞ、どうぞ。」x2
「ばこ~~~んん!」x3
三人はシビルから殴られて伸びてしまう。
「どれどれ、おう、おう。こやつらは娘の顔しか見てはいませんね。な~にが可愛い娘か! このう。」
「シビル、どうだい、何か分かったかい。」
「え~ぇ、この三人は魔女の手に落ちていました。女ばかり見ていたからですね。最後にはこう言っていますよ。」
「なんだい。」
「あ~可愛い魔女の御嬢さん。私に刃向っても無駄です。すぐに帰りなさい。明日までに帰ればトチェフとイワバは見逃してあげます。」
「まぁ~失礼な! シャウムブルク城ごと燃してやりますわ!」
「いいえ、シャウムブルク城ごと、ヴェーザー川に流してやりますわ。」
ルシンダとピアスタの過激な声が聞かれたオレグは、
「お二人とも頼もしいですが相手はきっと手ごわいです。前に雑魚と対峙しましたが、本当に退治が出来ませんでした。」
「そうですか~……」x2
「なぁソフィア。シビルを覚醒させたらどうだい。強い戦力にならないか。」
「そうね~、シビルは羽が生えたように逃げ出しても知らないわよ。」
「????、たぶん大丈夫さ。……、な? シビルさん?」
「おう逃げないぜ。俺はあんたを食って殺るからさ。気にすんな。」
「はは~ん? シビルには出来るのかしら?」
「我は汝の記憶を司る。我は汝の真名を唱える、ファティーマ シビン」
「ば~ろう、そんな呪文は俺には効かないよ!」
「おいソフィア。遊んでないでしっかりと呪文を唱えろ!」
「あれ? 間違えたかしら。」
「我は汝の記憶を司る。我は汝の真名を唱える、ファティーマ シビル」
今度は真名を唱えたから、シビルはしびれて倒れてしまう。
「さぁ~シビル。あなたは私の僕になるのよ、分かったかしら?」
「はい、私はお母様に忠誠を誓います。ムニュア・むにゃ! む~!」
「それでいいのか?」
「はいな、これでいいわよ。でも、お母様とは誰でしょうか謎です。」
オレグの問いに答えるソフィア。
「もう、いいよ。風呂に入って考えるよ。」
「あら、オレグ。何日目になるのかしら。」
「う~ん髭の伸び具合からして四日目だろうな。」
「まぁ、不潔だわ。」x5
「普通ですぞ。」x5
ゾフィだけが何も言わない。シビルは寝ている。女x5 男x5 か。
リリーは本当に心細いのか、会話に加わっていないのだった。リリーは「どうせ、つまらない思いつきにしかならない」と思っている。
明日はシャウムブルク城へ攻撃を掛ける事に決まった。
1243年8月19日 ドイツ・リンテルン
*)ハーメルンの笛吹き男
翌日の朝。街の住民が街から消えていた。何処にも居ないのだ。
オレグは、
「どうせそんなもんだろうと、対策は考えていたぜ。」
「オレグ。どうするの? 街に誰も居ないのならば、私たちが街に出た途端に総攻撃を受けるわよ。」
「うん敵さんはそれが狙いだろう。住民が居たら当然俺らは紛れるからさ先手を打たれたね!」
「ではオレグはどうするのですか? シャウムブルク城に着く前に決戦をするのですか?」
「はい、ピアスタさま。そうなるかと思いますがここは暫くお待ち下さい。朝食を食べて英気を養って昼から攻撃を開始します。」
「そうですか、ではもう暫く大人しくしておきます。」
「フン! 意気地なし!!」
シビルがオレグに雑言を言う。オレグは気にも留めない。
「リリー、ハーメルンまでシビルと一緒に運んでくれ!」
「へっ!」
「うん、いいよ。任せて。」
「俺はこの前ブレーメンの街で買った、笛を持っていくから!?」
「ほう、それでなんとする!」
異なことを聞いたピアスタが感嘆詞を言った。
「お昼までには帰ります。行くぞシビル。覚醒した巫女の力を披露してくれ!」
「どうすんだい。俺には出来るか分からね~ぞ。」
「大丈夫だって。リリーも居るしさ!」
「ゲート。……ハーメルン。」
三人は消えた。
オレグはハーメルンの、リンテルンからの入り口の道に立った。
「シビル、俺の笛の音に夢食いの魔法を頼む。」
「おう、いいぜ!」
「リリー、俺の笛の音にブーストを頼む。」
「うん、いいよ。」
「では、いくぞ!」
「ぴーひゃら、ぴーひゃらら、ぴーひゃら、ぴーひゃらら、」
「吹ける訳はないよな。……」「ブースト!」
「ぴーひゃら、ぴーひゃらら、ぴーひゃら、ぴーひゃらら、」
「ブースト!」
「ぴーひゃら、ぴーひゃらら、ぴーひゃら、ぴーひゃらら、」
「ブースト!」
「ぴーひゃら、ぴーひゃらら、ぴーひゃら、ぴーひゃらら、」
シビルは夢食いの魔法を念じている。
「あれ、えっさっさ。ほれ!えっさほいさっさ。あれ、えっさっさ。」
「あれ、えっさっさ。ほれ!えっさほいさっさ。あれ、えっさっさ。」
「ほれ!えっさほいさっさ。あれ、えっさっさ。ほれ!えっさほいさっさ。」
なんと、街中の女から男まで踊りながら出てきたではありませんか!
「オレグ、これはどうしたことなの?」
「おう集団催眠だ。こうしてリンテルンのシャウムブルク城まで行進させて俺らは群衆に紛れて行くのさ。」
「まぁオレグが、ハーメルンの笛吹き男だったのね?」
「あぁ、そうさ。さっき風呂の中で考えたのさ。どうやってハーメルンの笛吹き男を登場させようかとね。」
「ふ~ん、やっぱ、」
「おいリリー、なんと言いたいのさ!」
「あんたは、バカだ! と言いたいのだろう?」
「シビルさん、ありがとう。」
「?……フン!」
「さ、俺らも踊るか!」
「え~~~イヤだ!」
「ゲート、リンテルン。」
ハーメルンからの群衆を見たピアスタ、ルシンダ、マティルダは、呆気にとられていた。
ソフィアは、
「うちの旦那は型破りなんだから。頭が良いのか悪いのかが判らないわ!」
「これって、意味が有るのでしょうか。私には無駄なような、」
マティルダがこの行列の核心を言う。オレグ以外は納得するのだった。
オレグが、ハーメルンの笛吹き男 だ。
*)人狼の巫女 VS 魔女
シャウムブルク城からこの群衆を見ていた魔女マティルダは、
「ぬぬぬ……ただならぬ魔法使いが居るのか。」
「魔女マティルダさま、ご指示をお願いします。これでは昨日立てた作戦が失敗します。」
「フン!……もう失敗しておるわ。悔しい……どうしてやろうか。」
「魔女マティルダさまも、夢食いの魔法で群衆を眠らせてはどうでしょうか。」
「不可能じゃ。このワシには即席魔法は数人が限度じゃえ。」
「では、あいつらの中には強い魔女が居るのですね?」
「……魔女マティルダさま!」
「おう、そうじゃ。大地の魔法じゃ。地割れを起こそうか。そこにヴェーザー川の水をザーヴェー! と流し込んでやるわい。ザーヴェー! と。」
「笑えませんわ、魔女マティルダさま。」
「おう、そうじゃろ。ワシの考えはすごいじゃろて!」
「いいえ、ダジャレが笑えませんです。それに、二度も言われるのですから。」
ある若い魔女は、
「川があるのに、また川を造ってって意味は成しませんわ!」
「?……」
ハーメルンの群衆と共に、ヴェーザー川の河原に着いたオレグたち。
「オレグ。魔女はまた川を造りましたわよ、どうしますか?」
「はい、ピアスタさまには、水の魔法『アクア・バードスプラッシュ!』の出番でございます。ヴェーザー川の水を全部シャウムブルク城へ降らせて下さい。」
「それだけでいいのですか?」
「はい十分でございます。」
「リリー、またブーストをお願いするよ。」
「うん、でもあの城は高い所にあるから届かないよ。」
「そうか~届かないのか~。」
「だったら焙り出せばいいでしょう? 私に任せんシャイ!」
「あああああ! ルシンダさま、ぜひともお願いします。森に火を点けましょうか。……うん、いい方法です。」
「ルシンダさま、火の魔法『ファイヤー・バードスプラッシュ!』を!」
「ええ、ではリリー、一緒に唱えましょうか。」
「はいルシンダさま。」
「火の魔法……ファイヤー・バードスプラッシュ!」
「ブースト・ファイヤー・バードスプラッシュ!」
「ファイヤー・バードスプラッシュ!」「ファイヤー・バードスプラッシュ!」
ルシンダとリリーの魔法で特大の火焔が飛んでゆき森が燃え出した。
「これで魔女が出てくるだろう。」
「シビル。風魔法で送り火を頼むよ。」
「今日は8月十九日だよ。お盆は過ぎたから送り火は出来ないよ。」
「そうか~残念だ。送り火で天国へ逝かせる予定だったんだがな~。」
「普通に強風でいいのでしょう?」
「おう頼んだぞー。」
「おう任されたー。」
「ファイヤー・バードスプラッシュ!」 「ファイヤー・バードスプラッシュ!」
「ブースト・ファイヤー・バードスプラッシュ!」
「センプー・ファイヤー・バードスプラッシュ!」
「魔女マティルダさま、魔女マティルダさま。これでは私たちは森の豚と同じですわ。丸焼きになります。」
「そうですね。すぐに消火させます。え~と、呪文は……そうだわ。」
「Feugr! Feugr! Feugr!・・消火・・・消火・・」
森の火災はみるみる消えていく。
「魔女マティルダさま、すてきです!」
「ふふ~ん。」
「ファイヤー・バードスプラッシュ!」 「ファイヤー・バードスプラッシュ!」
「ブースト・ファイヤー・バードスプラッシュ!」
「センプー・ファイヤー・バードスプラッシュ!」
「魔女マティルダさま。ここは打ってでましょう!」
「Feugr! Feugr! Feugr!・・消火・・・・消火・・」
「そうするか、全員河原に下りるぞ~」
箒に乗った魔女軍団がまるでカラスの様に舞上がった。
これを見たオレグは、
「シビル、夢魔法は消してくれ。住民が被災してしまう。」
「あいよ、すぐに解除するよ。」………言葉はない。
群衆は魔女の群れを見て驚き、逃げて行く。ここがどこだか判らないのだがとにかく逃げていった。
「よしよし、……では、ピアスタさまには、水の魔法をお願いします。リリーもブーストを頼むぞ。」
「俺は何かするのかい。」
「おう、シビルには強風の上昇気流を頼む。」
「まぁオレグはえげつないですわ。お金と同じですわ。」
「そうでしょうか?……褒め言葉ですね!」
「うふふふfっ。」
「アクア・バードスプラッシュ!」「アクア・バードスプラッシュ!」
「アッパー・センプー・アクア・バードスプラッシュ!」
「バースト・アクア・バードスプラッシュ!」
ヴェーザー川の水柱が高く舞上がった。
「キャー、……」x25
「魔女マティルダさま、お助け下さい。」
「いや、このワシにはどうにも出来んわ!」
「魔女マティルダさま、お助け下さい。」x25
「今度は思いっきり水を降らせてくれ!」
「アクア・バードスプラッシュ!」「アクア・バードスプラッシュ!」
「ダウン・センプー・アクア・バードスプラッシュ!」
「ブースト・アクア・バードスプラッシュ!」
「キャー、……」x25
「魔女マティルダさま、お助け下さい。」
「いや、このワシにはどうにも出来んわ!」
「魔女マティルダさま、お助け下さい。」x25
魔女マティルダさまは、手も足も出なくなるのだ。
「リリーすまないが、シビルを連れて上空五千mまで上がって、上空の空気を一気に魔女に吹きつけてくれないか。」
「うん、任せて。」
「おい、オレグ。この俺を上空五千mに放り投げるとは、言わないよな。」
「シビルの言う通りだ。やってくれ。魔女が河原に落ちたらすぐにだ!」
「うん任せて!」
「俺はイヤだ~、お母様、助けてくださ~い。」
「オレグ、あの二人を上げてどうするの?」
「すぐに判るさ。」
「さ、みなさんは農家に入って下さい。冷たい風が吹きますよ。」
「キャー、落ちる~」x25
「魔女マティルダさま、お助け下さい。」
「いや、このワシにはどうにも出来んわ! すまぬがこのまま着地してくれ!」
「魔女マティルダさま、お助け下さい。もう、飛べませ~ん。」x25
魔女の二十六人はヴェーザー川の河原に降り立った。
と同時に上空5000mの空気が一気に下降してきた。
「魔女マティルダさま、寒いです。魔女マティルダさま、凍えます。」
「魔女マティルダさま、もうだめです。動けません。」
「魔女マティルダさま、凍りつきました……。」
ヴェーザー川の河原に多数の樹氷が出来上がったのだ。
「そんな、オレグ。一網打尽にするとは、」
「俺が本気を出せば、こんなもんさ。」
「ヒュ~~~ン、バチャ~ン!」
「ごめ~ん。シビルを落としてしまったわ。どうしよう、死んだかな!」
「あぁ、たぶん大丈夫だ。リリーには危害は及ばないよ!」
「お次は、……」
「サロー、ヤン、バルトシュ。魔女を残らず簀巻きにしてくれ。」
「おうさ、やっとワシ等の出番か。今度は魔女にいい夢を見せたやるよ。」
「ふ~ん、私の出番は無いんだ。」
「すまないな、ソフィア。ソフィアの裸は誰にも見せたくはないのだよ。」
「うん、ありがとう、オレグ♡」
「ただ、お母様になってシビルから俺を守ってくれないか。」
「それは無理だわ、シビルに憂さ晴らしをさせないと最後まで根に持つからこの後が逃げ切れないわ!」
シビルはフラフラして川から上がってくる。
「いやだ~助けてください~。」
オレグは逃げだそうとするが、シビルはオレグの首根っこをむんずと掴んでビシバシと殴りだした。
「ギャー!」
オレグの悲鳴と共に、ヴェーザー川の戦いは呆気なく終わってしまった。
「リリー最後の頼みだ。魔女を全員境界の魔法で、シャウムブルク城まで連れていってくれないか。」
「うん、死体は無いよね。」
「俺が死ぬところだったよ。シビルには俺も敵わないものな。」
「う~ん、でも、やだ。ゲートに放り込んでちょうだい。」
「ではソフィアは……リリーの傍がいいな。ピアスタさま、ルシンダさま、マティルダさまとゾフィ。バルトシュとも先にいくか!」
「うん、魔女たちは二人に投げ込んでもらうね。」
オレグらは、先にシャウムブルク城の庭先に跳んだ。だが、ゲートの先は結界が張られたままだからまたしても地下牢だった。
「リリー、ゲートは中止だ、中止。」
しかし、どんどんと魔女も地下牢に跳んできた。
「オレグ、ちょうど良いではありませぬか。監禁が出来ますよ、ね?」
「マティルダさま、そうですよね。リリーが着きましたら私たちだけが牢から出ればいいのですよね。」
だが、余裕だったオレグらはすぐに悲鳴を上げる事になる。
「オレグ、ここは狭くて寒くて凍えそうです。早く何とかしなさい。」
「はい、ですが、リリーがここに居ませんと脱出も出来ません。」
「ブ~!!」
ソフィアもサローとヤンもジィも牢に跳んできた。最後はリリーだ。
この地下牢にも結界の魔法が張られている。入ったら出れないのだ。
「あ~やっぱり境界の魔法でなければいけなかったな。」
「オレグ、ごめんなさい。」
「まぁ仕方無いさ。でも、どうやって出たらいいのかな。」
「魔女マティルダさまに、結界を解いてもらうしかないかな。」
「イ~ッヒッヒ。この牢に居る限り結界は解けぬで。イ~ッヒッヒ。」
「あっ! そんな~、」
「オレグ、これからどうすんだい。」
「すまないな、バルトシュ。……どうしようか。」
「ヤン、力まかせにぶっ叩いてみろ!」
ヤンは鉄格子を蹴ってみる。体当たりもしたがびくともしなかった。
魔女は、
「シャウムブルク城は防御に徹した造りじゃ。叩いても壊れぬでよ。」
地下牢は芋の子状態だ。不吉な予感が走る。
「ママ、おしっこ!」
キター、悪魔の囁きだ。オレグは慌てるのだ。
「ママ、早く。」
「あんた、そこをどいておくれ。そこは便所だ!」
「へっ!」
「あたりめ~だろう、ここには長いこと住んでおったでの。」
「あっ、そうでした。」
*)二人の人狼の魔女巫女?
「オレグ、この際だから、その魔女マティルダさまに尋問を頼みますよ。」
「そうですね。そうしますか。」
「いやだ、俺は何も話さぬぞ。」
「では、名前だけでも教えてくれないか。」
「アンナだ。それがどうした。」
「魔女マティルダさま。真名を言いましたら……あ~もうおしまいだ~!」
「なんでだ。」
「おうアンナ。真名が判ったらこうなるんだ。」
「ソフィア、後は頼んだぞ!」
「うん任せて。拷問にかけるから。」
「あんた、綺麗な顔してズブな事を言うのだね。」
「あら、そうぅお?」
「我は汝の記憶を訊く。我は汝の真名を唱える、ファティーマ アンナ!」
アンナは全身で痙攣を起こして悶えだした。
ソフィアは、たぶんナンバーツーと思われるゾフィに化けた魔女に、
「あんたもこうなりたいの。名前と他なんでも話しなさい。」
「い、い、い、いや、いやです。」
「ほれ、もう一声!」
オレグが囃し立てるのだった。ソフィアは、
「我は汝の記憶を訊く・・・・・・・」
「は、はい、言いますから、呪文は掛けないでください。」
この魔女は、名前がカレーニナという。オレグが怖がらせたからかバカなのかは分からないが、真名が不明ならばソフィアの呪文は効かない。だからソフィアは呪文を途中で切ったのだ。
「あっ、しまった。どじったわ!」
「もう遅いわよ。それで、あなたたちはこの城で何をしていたの。」
「う、う、う~。」
「では、改めて呪文を唱えましょうか。」
「はい、言います、言います。」
なんの事はなかった。城を乗っ取って食い潰しているだけだった。先の城も食ってしまったから、このシャウムブルク城に来ただけだという。この城も食ってしまったらまた次の城を襲うのだというのだ。
「そう、あんたたちだねブレーメンの音楽隊は!」
「はい、そういう伝説が出来上がっていますか事実ですね。」
「お姉さん、オレグ兄さん。この二人は人狼の巫女だわ。」
「え?」
「そうか、俺は何も思わなかったよ。今までの癖で呪文とかと言っていたんだ。」
「ならば、絶対服従の最強呪文を掛けられるわね?」
「そうだな。アンナが目覚めたならな。」
「うんうん。」x2
「でさ、妖精のマティルダさんを元に戻してくんないかな。」
「いいですが、ここには大人の服がありませんわ。いいのでしょうか?」
妖精のマティルダは急いで、
「ここではだめです。本当に裸になってしまいます。」
思わぬところで、二人の巫女が見つかった。ここの魔女の目的が分かったところで、安堵していたら、
「ガシャ、ガシャ、ジャラン。」
「あんたたち、ここでなにしているの?」
「あっ! シビル!!」
「何処にも居ないので今まで探していたんだ。……あんたたちバカなの?」
「う~面目ない。ここから出してくれないかな。」
「ガシャ、ガシャ。」
とシビルの顔の前でカギの束を振って見せるのだった。目つきが妖しい。
「オレグ、このカギはお幾らでしょうか?」
「うぐっ! そんな~、」
「お・い・く・ら・で・しょ・う・か?・」
「ピアスタさま。」
「フン!」
「ルシンダさま。」
「イヤよ。」
「ソフィアさま。」
「私もイヤだわ。これはオレグが悪いのよ。もっと叩かれなさい!」
「そんな~。」
「リリーさ~ん。」
「ごめんねオレグ。私も悪いとは思うのだけれどもね~ぇ!」
「リリー俺はあんたにも噛みつくぜ!」
「オレグ、早く金額を言いなさい。」
「金貨、三枚だ。」
「少ない。もっと出せ!」
「一人、金貨三枚だ。」
「十枚にしな。ここには十人か? 十x十=百枚だな。」
「子供は負けておくよ。」
「それはどうも!」
「ここは閂だけだよ。」
「あ、ホントだ。」
リリーの召喚の転送魔法で鍵も飛んでいたのだった。
「損な~!」
全員は解放された。妖精のマティルダも自室で元に戻された。
「オレグさん、金貨百枚は私がお支払いいたします。デンマークまで来て下さい。王室から絹糸も出させますので。」
「あ、いや、その。デンマークは苦手でして、行く訳には……。」
「オレグ、ここはぜひとも反物の販売も兼ねて、行こうではありませんか。」
「そんな~ピアスタさま~私は絶対に行きません。」
「オレグさん、魔女も買い上げますよ。」
オレグたちはデンマークのお城に行く事が決まったのだ。




