第51部 新しい入植者 長屋の建設
1242年12月22日 ポーランド・トチェフ
*)木材の切出しと植樹
移民の人数が八十一人に増えた。長屋は十三棟の百三十戸を用意している。次のステップに進む必要性が急務となった。
「長屋の建設も先には木材の確保からか。デーヴィッドさん、どこから手を付けるね。」
「新しい森から切り開きましょうか。その方が真っ直ぐな木が多いでしょう。」
オレグは、
「労働力の大人が四十八人だから男は山に行かせましょう。女は次のカブの生産に携わってもらいます。」
しかし、長屋の建設を始めたいから、男女の三十八人を従事させる。木材の切出しと移送。夏に切り倒した木材は板材に加工してしまった。ここは重たいが生木を加工して壁にと積み上げる。
「リリーさん、すまね~またお手伝いをお願いするよ。」
「もう、しょうがないな~今度は何をするのかな?」
「簡単さ、切出した木材の乾燥を頼みたい。重くて作業が出来ないしさ。」
「うん、いいよ。大地の魔法は使わなくてもいいの?」
「え~と、たぶん大丈夫だ。その時にはお願いするよ。」
リリーは、木材集積場の材木を一瞬で乾燥させてしまう。
「デーヴィッドさん、あんたは馬の扱いが出来るよな。それで切出した木材を馬でこの集積場まで運ばせてくれないか。これは女で出来るだろう。」
「そうだね女手でも作業が出来るだろう。取り付けと取り外しは男にやらせるさ。馬に怪我させると面倒だからね。」
「頼んだよ。俺はこの集積場から馬車に載せて長屋の建設場所へ持って行くさ。」
「オレグさんも数人の女を使いますかい?」
「ああ、まだ水車小屋が使える日が有るのだよ。板材加工にも搬送しておくよ。」
「デーヴィッドさん、これを出せるのだろう?」
オレグは右手の親指と人差し指で丸を作った。金の催促だ。作業の員数が増えた分だけ、鋸やカンナ等の機材を出したからその代金を請求したかった。
「おう、目録と請求書を館に回してくれ。奥様のグラマリナさまが計算して 払ってくれるさ。」
「そうか、どうせならエリアスさまの方が気が楽でいいのだがな。」
「しかし、代金はグラマリナさまが出すだろうさ、な?」
ここは石工のシモン、マシュ。それに建築のイェジィ、ジグムントを中心にすえて長屋の建設を進める。基礎に使う石は既に切出しているから、据えて回るだけで良かった。
オレグは氷室の肉を確認した。
「あぁ! 肉が足りないな~。バイソンを二頭絞めるか。これは年始のお祭りの行事にさせよう。娯楽になっていいだろう。」
子供のバイソンも、もう十分に肉サイズに成長していた。
*)やせ地の開拓方法は? 家庭の灰の活用 雪の融雪剤
次の仕事は各家庭の灰を集める事だった。これは手押し車を改良している。カブなどの小物やライ麦袋を載せられるように、衝立を四隅に立てた。イエジィに作らせた。この手押し車に灰を集めて載せる。
「旦那、頭はまだ寝ているようですぜ?」
「ええ? なんでだ。どこか可笑しいかい!」
「灰は直に載せないで麻袋に入れるもんでしょうが。」
「あ! そうだな。畑に撒くのにも便利だよな。あは、アハハハハ~」
(旦那はもう頭が良いのか悪いのか、理解が出来ないね!)
「よう~し、この仕事はお前ら子供の仕事だ。家を全部回って集めてこい。」
「うん、パンとお肉の増量だよ?」
「おう、任せた!」
子供らには家の灰を集めさせて畑地に撒くのだ。薄らと少し積もった雪を溶かすのに使う。次はライ麦の束を細長く何列も並べさせた。
*)カブの生産強化
「こうやってこの畑に藁を敷くんだ。出来るだろう?」
「うん、出来るよ。俺たち頑張る。」
ライ麦の藁を並べ終えたら、女たちにカブの種を丁寧に蒔かせた。蒔いた後は軽く麦わらを掛けさせる。掛けさせたのは、藁の一本を横に並べた感じで数本が重ならないようにさせる。
「旦那さん、これでいいのですかえ?」
「あぁ十分だ。カブの芽は藁の間から出てくるだろう?」
「たぶんそうでしょう。ですが私らはカブとか見た事もありません。」
「見た事もなくても、もう食べただろう?」
「あ! あのスープの白い根菜だね? あれは美味しかったよ。あれがここになるんだね。」
「いいや、ここに生えてくる。出来るんだよ。」
「この冬にでも出来るのかい。それはいいですね~、旦那?」
「よせやい気持ち悪い。くっつくな!!」
十二月のポーランドのトチェフは、気温が-四~四度らしい。川は凍らないかもしれないが、他のHPには凍結するとの記入がある。ビスワ川の水車小屋を藁で覆えば利用が出来そうだった。
水車の復活を宣言します。
「イエジィさん。水車小屋をライ麦の藁で覆って水車の凍結から守りたから。嫌でも付き合え!」
「え~? 嫌ですよ。川は寒いしですね。長屋が忙しいのです。」
「そうか、長屋の建設の作業員を全員、水車小屋をライ麦で覆う作業に就かせる。」
「でっか! ならばついて行きますよ。」
オレグらは馬車で必要な木材と藁、ロープ、紐を運んでいった。
「よう~兄ちゃん。来たぜ!」
「あんたは誰だい?」
「おう随分な挨拶じゃないかい。俺を忘れたというんだな。」
「なぁイエジィさん。この男は誰だい知らないよ。」
「そうか旦那はまだ快復していないんだね。……こいつはボブ、だ。」
「ボブさん。すまないね~オレグの旦那は井戸に落ちてさ、頭が逝かれたようなんだ。たぶんボブの事を忘れているかもしれないよ。」
「叩けば治るだろう? この俺が三途の川から脳みそを取り戻してくるよ。」
「そうだなオレグの逝かれた頭が、生かされたになるかもしれね~な。」
「オレグ。俺の息子だ。抱いてみろや。」
「おう、この小さいのがボブだね。……少しでかくないかい?」
ボブに似た大きい息子だった。
「オレグ金出せ。瓦と建設の金具や釘を運んだぜ。」
「おう、助かったぜボブ。持つべきものはボブだな!」
「??????」
「こいつ、船荷を見たら思い出したのか? あ、ああん?」
何かにつけ、オレグに引きずり回されていたボブが帰って来た。
「そうなんだよ。今年は川の凍結が無さそうなんで、親子で帰ってきたよ。で、オレグは嫁に逃げられたと聞いたぜ? ギャハハハ~!」
少しふて腐れたオレグだが別に気にしない様子だ。
「いいだろう、もう帰ってきているからさ。」
オレグは土木工学のダミアンを呼んで尋ねた。
「なぁダミアン。この水路は凍ったりはしないだろうか。ここまで引き込んでいる用水路は上に木材と枝木を置いたがいいかな。」
「そりゃ当然置いたがいいだろうよ。でも初めての冬だからな。半分半分でどうだ。実験で確かめたがいいだろうよ。」
「だな。」
「それと旦那。向こうのため池からの用水路の道筋が出来ましたぜ。冬の間に建設したがいいと思うよ。」
「そうだよな。春になれば開墾が待ってるしな。」
「いやいや、そういう意味ではないですよ。移民の生活資金にする為にですよ。このまま移民にはお布施をするのですか?」
「長屋の建設があるだろう。これではダメかい?」
「旦那。やはりお玉が頭になってますぜ。長屋は家賃が無料なら二重のお布施になってしまいますよ。」
「あ! そうか。長屋はあいつらの住居だし、建っても金にはならないな。」
「水路は百人で建設して、所要日数はどれくらいだい?」
「三年だろと思いますね。」
「そうか、なんでもするのは大変だね。」
「ですよ。この冬には道筋のくい打ちだけでもやりましょうや!」
「おう、そうするか。」
「なぁ兄ちゃん。話は済んだか。」
「あれま~ボブじゃないかい。会いたかったぜ~元気そうでなによりだ。そう、なによりも仕事だ。」
「そうせかすな。積み荷が有ると言っただろう。」
「そうだ、瓦は載せてきたか。建築金物も載せているよな、な、な。」
「すぐに運んでやるよ。任せな!」
「おう、任せた~。」
「荷馬車を貸せ!」
*)豚の農場の拡張
「ボブ。着いてそうそうだが豚の農場を作るよ。でだ、明日から山に入って残す立木にマーカーを付けてくれないか。今はデーヴィッドさんが指示を出してはいるが、まず出来ないだろう。」
「そうだな、あいつは金の計算以外はからっきしだったかな。」
「そうだな、そのようだね。とても残念だよ。」
*)年始のお祭りの行事にバイソンを二頭絞める。
十二月二十六日になりオレグはソフィアとリリーを連れて館に行った。
オレグは住民が増えたので年始のお祭りをエリアスに頼んだ。内容は捕獲したバイソンの牛乗り大会と牛の解体ショーだった。オレグにはこの程度の頭しかなかった。
ソフィアは、
「オレグ。もっとましな演し物はないの?」
「ソフィア、あればこそっとお教えろや。」
「リリー、オレグにいい催しものを教えてあげなさい。」
「エリアスさま、このオレグに指示をお出し下さい。」
「グラマリナ、お前のお国ではどのような祭りがあるのだ?」
「オレグ。何をしているのです。早く計画を作りなさい。」
「????・………?」
「バイソンの解体と焼き肉大会。それにほっげんぎょう(どんど焼きのこと)ですね。バイソンの肉を賞金にした家族の綱引き大会。五穀豊穣を願ってカブ投げ大会です。カブは拾えた分だけ持ち帰る事が出来るとか。」
「そうですね。第一回目です。それでいいでしょう。」
1243年1月2日 ポーランド・トチェフ
第一回トチェフ祭りが開催される。牛乗りは拒否された。




