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人狼夫婦と妖精 ツインズの旅  作者: 冬忍 金銀花
第一章 駆け出しのハンザ商人 オレグ

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第5部 商談、開始。


 1241年4月1日 バルト海・ゴットランド島、ヴィスビュー


*)商談、駆引き開始


 ハンザ同盟の商人を頼んでいた。夕食の費用は俺持ち。追加を注文すれば相手持ちだ。この男の名はマクシムと言って年は、そうだな、四十歳くらいか。俺は同じ料理とビールを注文したが、マクシムは俺を気遣ってかビールとつまみを注文した。


「マクシムさんは、ハンザ商人の経験は長いのか?」

「そうですね、父に師事していたから、二十五年にはなるかもしれません。」

「なあ、あんた。どこかで会わなかったかい?」

「ボブ! なに口説いてるんだい?」

「口説いてね~よ。」


「ええ、一度船を借りましたよ。あの時は~? 何だったかな。塩漬けのニシン? だったでしょうか。」

「ああ、そうだった。船が臭くなって困ったぜ。客が逃げたもんな。損害代を出して欲しいものだ。あんたはこの後は何処に行くんだい? な、船はどうだ?」


「嫌ですよ~損害の補償なんて! しませんよ。船は未定ですね。オレグさんが大きい注文を下さればお願いしますから。」

「なあ、兄んちゃん。大きい注文を出せよ。船を頼むぜ。」


「なんで俺に話を振るんだい、他に客は居ないのかい?」


「マクシムさんは、手持ちの商品は何を持ってあるのでしょうか? おお教しえ下さい。」


 ソフィアが俺に助け舟を出してくれた。ボブは自分の船を出そうとするから話しは常に振り出しに戻るのだ。



「私は東洋のチャイナのシルクの反物を仕入れました。これをフランスと英国の貴族相手に売りに行きます。ペルシャからは、宝石のたぐいと銀の食器などです」


「マクシムさんは、塩や胡椒。それに厚めの反物、銀じゃない庶民の食器、それからロウソク、すきくわなどの農機具類は手配ができませんか?」


「おやおや、随分と地味な商材をお求めですね。どのような算段がおありなのでしょうか? 残念ながら、銀でも木でもそうですが、食器はこの世にはまだ、存在いたしません。」


「はは、なんでもないよ。俺たちの所帯道具になるのさ。子供が百人は出きそうだからね。畑を切り開いて村落を作りたいからね。」

「それはそれは、奥さまも大変ですね、孫やひ孫で百人も。お子さんを十人は産まないとイケませんね。精のつくにんにくも必要かと?」


「それには及びませんわ。この人はスケベだから他に五十人は嫁さんが居るのよ!」

「いね~よ。そんなの。せいぜいで、十人だな、多分!」

「い~や、もっと居るわね。何が子供や孫で百人よ。バカにしてるわ!」


 ソフィアは、プイ! と横を向いた。眼だけは私の方を向いている。マクシムさんは、ケラケラと笑っている。腐ってもハンザ商人だ。俺の意味する所は理解していよう。眼は笑っては居ないのだ。本気になって相手をしているのが分る。



「そう言う訳さ! 大所帯になるから必要なのさ。どれ位は用意出来そうか?」


「明日に代金を決済して頂いて、三日後ですね。私の調達出来る量でよろしいでしょうか。」

「ああ、ただし、制約があるな。ボブの背中に乗れるだけ”ですが・・・。出来そうかい。」


「おおよそ、そうですね、ボブさんの船が満杯になる? でしょうか。金貨で五百枚。五千万クローネで十分です。おつりが出る筈です。」

(金貨1枚で、十万クローネ。五千万相当になる)


「OK! それで頼むよ。仕切り書は明日の昼にはできるか?」

「できますとも、商材は明日の朝から調達に走らせます。調達の様子は商館をお訪ね下されば即刻開示いたします。」


「金貨の決済でいいのかな?」

「はい、よろしいですよ。クローネの決済で、一%は取られてしまいますから。」


「では、よろしく頼む!」


 マクシムさんは、これまでの注文の計算書を持って席を立った。


「わ~忙しくなるぞー。諸共! 集まれ~!」


 周りの客が十人ばかしが席を立って、嬉々として出て行った。


「兄貴! 久しぶりの大物か…………。」


「よかったじゃないかボブ。料理がただになったぜ! それよりマクシムはなんだ? 手回しが早いな。この俺さまを調べたのか?」


 ボブは意味が解らずに目を丸くしている。俺はボブに向かい傭船の交渉に入った。ボブは喜んで前のめりになり、酒臭い息を鼻から噴き出している。


「ボブさん、と言う訳さ。船を頼むぜ。場所はそうだな、ポーランドのグダニスクだな。ここに物資の拠点を置く。」

「おお、ありがて~。兄ちゃん頑張って運ぶぜ。人足も直ぐに用意ができるからさ任せな!」

「で幾らだ? 傭船の他に倉庫の要員も必要になるしな。金額は小切らせて貰うぜ。」

「明日の朝にマクシムさんと打ち合わせをして、昼には金額を出すさ。期待して待っててくれよ、な。」

「ああ。頼んだぜ。」





*)オレグの野望



「ところでよ、ポーランドはあのスケベの子孫と戦っているが、いいのかい?」

「ああそうだね、大丈夫だ。俺はハンザ商人だぜ。ばかにすんなよ。戦争には弱いが、商戦には強いぜ。もう直ぐに戦争は終わるさ!」

「ノルウェーの内戦も終わってるが、あそこは寒すぎで農地が無い。だから発展する余地は無いね。」


「そうなの? オレグ! 戦争が終わったらどうなるのさ、私にも理解できるように教えなさいよ。」


 ソフィアは女だからか、理解出来ないでいる。俺は丁寧に教えてやった。ボブにも分かる様に、だが、説明は非常に難しいので、ご理解ください。


***********************************************************

 1241年前後は、かの有名なスケベ親父の子孫が、東ヨーロッパ地方に侵攻を続けている。何が何でも征服! の文字の如く、執拗に侵攻を繰り返してくる。人狼の巫女の呪いが弱いのか、それとも子孫が多すぎなのか、多分後者だろうが、なかなか死なないのだ。ルーシ各地がモンゴルの支配下になるし、ワールシュタットの戦いでモンゴル軍が、ドイツ・ポーランド諸侯連合軍を破る。


 モヒの戦いでハンガリーが敗れる。オロモウツの戦いでモラヴィアが敗れているから、モンゴル軍は恐るべし! である。


************************************************************


 ハンザ同盟は、1237年にはイングランド王国の、国王・貴族に対して独占的に毛皮を輸出していた。


 1158年にハンザ同盟が結成されてから、海外に進出して行った都市の商人は、外国での保護による外商の利益を守るために外地ハンザを結成した。 


 最盛期になった十四世紀は加盟七十都市になり、各国の通商権の保護のために、三年おきにリューベックで会議を開いた。しかし、国独自で貿易・商業を営むデンマークとは敵対関係にある。諸外国に外商館を置いて戦争も意に介せずハンザ同盟は商圏を拡大したし、共通の貨幣制度も作ってしまう。


 1368年のデンマークとの戦争など、北欧諸国と越権をめぐって対立して、北欧諸国はハンザ同盟に対抗しようとして、カルマル同盟を結成する。ハンザ同盟は陸海軍の保持などを共通規定で運用した。軍隊を作ったのである。


 この頃から、ドイツは世界大戦の芽を孕んでいたのだ。これも、かのスケベ親父の撒いた種が発芽したからだろう。人はこよなく殺生を好むのだ。


 ドイツでこのような強力な都市同盟が形成されたのは、イギリス・フランス・スペインなどに比べて、ドイツなどの東ヨーロッパの国々が弱かったのは、かのスケベの末裔がしつこく侵攻を繰り返した所為である。


 王権に力が無いために、国家統一が遅々として進まなかったのである。



 かのスケベの末裔が死んでゆき、1250年頃の大幅な人口増による多大な経済成長は、黒死病=ペストにより衰退していく。十九世紀に入りようやく人口増に転じる。十九世紀の初めに、ワットの蒸気機関が大きく普及し出す。第二の産業革命としてさらに発展する。(第一次は、鉄の安価製錬による鉄器の普及による農機具類の発展である) これ位で説明はご容赦ください。


************************************************************

 という理由で、農地も人口も爆発的に増えていく。当然に、農耕物資の需要は増えるし、人口増大で、生活物資も需要が増えて行く。ここにオレグは商機を見出した。


 当然ながらか、残念ながらか、農民には金が無い。無いから穀物が出来るまでは買い物が出来ない! では農村は発展しない。オレグは考えた。


「いいかい、ソフィアとボブ。来年の収穫の代金と、農機具と生活用品の代金を相殺するのさ」

「どういう理屈だ? 兄ちゃんよ。分かる様にだな、その、な? 分るだろう?」

「ああ、分るよ、ボブはバカ! だって事がな。」

「ひで~ぜ、兄ちゃん。頭は海の事で一杯さ。おかの事は苦手さ~ね。」


「あいよ、もっと優しくだな。農民に物資を売った代金の回収を半年間だけ待つのさ。半年でライ麦は収穫出来るからさ、売った代金の分をライ麦で払って貰うんだ。」


「とすると、農民には金が無くとも、兄ちゃんは売るのかい?」


「ああそうだとも。農民は泣いて喜ぶぜ。序でにライ麦の買の金額は貸付金としてな、年に10%の利息を付けるのさ。その分、ライ麦が安く買上げが出来るしさ。」


「少し酷くはないかい? なあ兄ちゃんよ。」

「そんな事は無いよ。ボブに例えるならば、こうだな。」


「船に満載した商品をボブの監視付きでだ。到着した港で販売してだな、その代金で船賃を回収するのだよ。それも利息を付けてさ。これで船代も無事に回収できるだろう? この説明でどうだ、理解できるか?」


「ああ、よく分ったぜ。でも船賃は先払いだぜ、いいな。」

「OK!OK。分ってるぜ。即金の方が値切れるしな。」


「オレグ! ライ麦の買い付けはしないの?」

「はは、そこはそこ。ばっちし恩を売っといて、安く買いたたくさ。そんでもって、ボブの船に満載して、ノルウェーやスウェーデンに売りつけるんだ。」


「はははぁ、そいつはいいや。往復出来るじゃないか。嬉しいね!」

「はいはい、ボブ! 宜しく頼むよ。」


 往復は出来るが、半年以上はポーランドで待機しないと出来ないのだ。オレグは分っていたが、ボブには話さなかった。



「なぁ、リリー。俺に弟は居ないんだよね?」

「弟は居ないけど、息子が二人いるよ!」


「何処にだい? 教えてくれ!」

「リトアニアのカウナスに長男が、鉄器の製造をしているよ。二男がクライベタで農機具類を販売と、農業の技術指導を今でもしている筈だよ。」


「二人は、ネムナス川(ネマン川)の国際運河で、それぞれ活躍しているよ。」

「そりゃぁ、いいや。頼りになる奴らかな。リリー。」

「逞しいから、大丈夫だよ。二十年は会って無いけれども大丈夫よ!」


「ねぇ? リリー。二人はオレグと誰の子供なの? 私じゃないよね。」

「もちろん違うさ。ソフィアには娘が一人居るよ。忘れたかい? 第一に人狼の巫女は、娘しか産まないだろう?」

「そうよね。でも夫は誰よ! 教えなさい」

「はは~ん、内緒だよ。自分で思い出すんだな。教えてやるものか。オレグにも教えてやらないよ。自分で思い出しなよ。」


「もうイジワルしないでよね。ノアは知ってるのかな?」

「俺! 知らないよ。オレグの子だとは言わないからね。」


「それ! どういう意味よ! 教えなさい。」

「ふふ~んだ。なあ! リリー?」


 事実は異なった。ソフィアは二人の娘を産んでいた。前世は貴族の嫁だったが、人狼の一人しか産まない! というジンクスは破られた。かの末裔に侵攻されて家系は断絶する。のちに二人の娘が、それぞれ一人の娘を産んでいる。


 前世で、オレグとソフィアは夫婦で、その生まれ変わり? のはずだが・・・・。


 こうしてチグハグなメンバーが揃った。明日から行動開始となる。



 次章は、垣根の上を飛ぶ女。亜衣音の表題がここにあります。


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