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人狼夫婦と妖精 ツインズの旅  作者: 冬忍 金銀花
第一章 駆け出しのハンザ商人 オレグ

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第48部 新しい入植者 一次 パブと宿屋を作る


 1242年12月14日 ポーランド・トチェフ


*)風聞


 オレグはハンザ商館やマクシムと会った時には、ある事を頼んでいた。


「マクシムさん、ライ麦とは関係が無いんだが、いや、将来は大いに関係があるな。俺には大切な事なんだ。」

「そうですか、この私で出来ることでしたら、お手伝いいたしますよ。」

「いや、俺はまだそこまでは言っていないだろう。」


「いいえ、オレグさんとはお取引を通じて散々言われてきましたよ。例の農民の移民でしょう?」

「えぇ、そうです。冬までには十三軒の長屋百三十戸を完成させます。」


「そんなにたくさん作られたのですね。随分と頑張りましたね。」

「いや、中身がまだ無いんだよ。建物だけだがな。」

「ええ、え。これから会うハンザ商人には漏れなく話しておきます。」

「はい、よろしくお願いします。」


 これと同じ会話を誰彼の区別なく話してきた。この話が他国へ流れるには半年以上はかかっていた。そのよもやま話が実を結ぶ時が来たのだった。




*)新しい入植者 一次


 オレグが井戸に落ちて長い夢を見ていた時に奇跡が起きた。オレグが待ち望んだ農民=難民が二十七人だが、オレグの話を聞いた! と、いって流れてきた。おりしも冬に向かうのだ。住居も食べる物も持たない難民だった。



 オレグが臥せていたが、デービッドは独断ですべての人員を受けいれた。家族数は、五家族の十七人。独身が六人で身寄りのない子供が四人も居た。この二十七人は、完成している長屋から順次入居させる。ただし条件が付いていた。農奴の選択だった。農奴を選択しない者には家賃の支払いを命じた。オレグが居ないので、まだ暫定の事項説明で終わっている。


 早く起きろ! オレグ。


 説明や指示を出したデーヴィッドは、難民からは領主さまと呼ばれていた。デーヴィッドは訂正するのも面倒だから黙っているが。


 難民には取り敢えずのルールが言い渡された。

一、森の木は、指定した区域のみ。

二、食糧は配給する。泥棒は即刻追い出す。

三、村の共有財産は触らない。

四、与える農地は無いから家族単位で開墾せよ。

五、牧場にも近づくな。

六、仕事は全員に指示するから働け。

七、老人は麦粉の製造で働け。

八、井戸の使用は自由だ。

九、その他、思いついたら書き込む?。



 1242年は戦争が多かった。四月のエストニアの氷上決戦ではドイツ騎士団が敗退してしまう。(チュド湖上の戦い)モンゴルのポーランド侵攻がポーランドだけでなく、ベラルーシにも及んだ。ここトチェフなど北部地方は難を逃れていた。

 

 ポーランド・ベラルーシの戦争危険地区が多数存在した。侵攻して略奪しただけで引き上げたモンゴル人。統治はせずに放置したのだった。この農民が難民となりオレグの風聞を聞いて流れてきた。


 この難民は、隣国のベラルーシのホメリから来たのだった。五家族の十七人。独身が六人で身寄りのない子供が四人=二十七人十五歳以上の大人は十八人だ。   


 デーヴィッドは最初に森へ行かせて薪を集めさせた。指定した森には伐採している枝木が利用された。同時に奥の森では立木の伐採を命じた。


 次は、ライ麦のパン粉の配給だった。肉も氷室から出されて配給された。野菜は少ない。だから、多数の植栽のカブを配給した。


「ありがとうございます。領主さま。」


 とにかく不足していた農民だ。農地が無いので全員は賦役につく事になる。石工の見習いだ。石の産出と切出し。次は港への馬車輸送だった。女を当てた。


 少し器用な男は煉瓦でかまどの製作と煙突の設置だった。


「当面はこれでもいいか。」


 まだ大きな事業が残っている。長屋の瓦だ。瓦葺きが殆ど進んでいないのだ。瓦は憶測だが不足はないだろう。煙突が出来る前に瓦を葺かねばならないのだ。


「まだ五家族と二棟だ。順次作るとするか。」


 デーヴィッドが出来るのはこれくらいだろうか。





 1242年12月17日 ポーランド・トチェフ


*)オレグの目覚め


 井戸の事故から眠り続けていたオレグが、ようやく目覚めてくれた。


 デーヴィッドは喜んで皮肉を言うが、


「オレグさん。このたびは落ちた災難でしたね。」

「あぁ、とんだ災難だったよ。ここは天国ではないだろう?」


「わぁ~、オレグさん。私を覚えていますか?」

「ああ、覚えているとも、エルザだろう?」


「はい、そうです。今から食事の用意をいたします。しばらくお待ちください。」

「えぇ、少しでよろしいですよ。一度に食べると太りますから。」

「そうですね、頭も冴えているようですし、柔らかいお肉のシチュウーにいたします。温まって下さいね。」


「なぁデーヴィッドさん。俺はどれくらい寝ていたんだい?」


 デーヴィッドは指折り数える。


「指が足りなくなった、オレグさんちょっと貸せ!」

「足の指でいいのだろう? 自分の足を使え!」

「この通りに靴を履いている。だから無理だ。オレグさんは裸足だろう?」

「いや、俺は死んだようだ。足が無い!!」


 デーヴィッドはオレグの切り替えしを見ながら、


「今日で六日目だ。気分は良いのだろう?」


 オレグは考える仕草をして、いや、分からない、と返事した。


「あ、オレグさん。一大事だ! 農民が二十七人も増えたぜ。」

「?・・・あ、・・! そうか、増えたか。で、誰が産んだんだ?」


「そうか、オレグさんは、記憶が無いのですね!」


 そうです、オレグは夢食いのシビルに夢も記憶も食われていました。快復には寒い外での散歩が有効でしょう。か?


 エルザが温かいシチューを運んできた。木でできた器だ。オレグはこの木の器を見つめている。


「さ、食べましょうね!」

「おう、喜んで、あ~ん。」


 エルザはオレグの頭を叩いた。


「なんだ、残念だわさ。」


 食事が済んだオレグに分厚く服を着せるエルザだった。


「さ、私の旦那さまと外へ行きなさい。お散歩の時間ですよ。」

「嫌だ! 寒い。」


 デーヴィッドとエルザは嫌がるオレグを引きずり出す。最初は難民の居る長屋へ行った。子供しか居ないが新しい顔が見られる。


「誰だ? 汚いガキンチョだな。難民か?」

「そうですよ、オレグさん。思い出しましたか?」


 次は石切り場と石工の工場へと案内した。


「誰だ? 汚いガキンチョだな。難民か?」

「いいえ難民の大人ですよ。思いだしましたか?」


 オレグに気づいたシモンが走ってくる。


「おう旦那。気が付きましたか。頭はで~じょうぶですか?」

「そうだな。お前がシモンという事くらいしか分からん。? マシュだったか?」


「デーヴィッドさん、まだ養生が必要ですね。」

「ああ、そのようだ。もう帰るから今日も頑張ってくれ!」


「そらオレグ。目覚めの祝いだ!」


 シモンは小さい雪の玉を作りオレグの服に押し込んだ。


「おう、このお礼は後程にな!」

「あぁ、待ってるぜ、旦那。」

    

 オレグはワインを飲んで寝た。翌日には全快になるか?




*)パブと宿屋を作る


 この頃は食後すぐに就寝しました。ですが、夜中に目が覚めて起きるという習慣がありました。やることはただ一つ。子づくりです。明け方前には再度就寝しました。


 ローソクの発明や脂の発見で照明が確保され出すと、就寝時間は遅くなり今のような就寝時間となっていきます。


 ですので、このパブでも夜中の営業は出来なかったと推測されます。かまどの火が唯一の明かりでしたでしょう。すると農作業は十七時前とかに終わって、パンを焼きスープを作るのが一般の家庭と思います。


 やはり、ここのパブは、異質ですね。まだ照明がありません。


 オレグは移民の全員を集めて、パブへの改築を先に進めた。十五歳以上の大人の十八人、総出で改築に宛がった。イエジィやシモン、オスカルとヘンリクも加わるから、約六日で終わった。大変だったのは、大きいかまどの製作だった。分解してから再構築された。煙突の太さが足りないかも知れないが、出来上がった。


「おう、随分と早く完成するものだな。」

「それはもう、架空世界ですのも。早いに決まっていますよ。」

「会話の省略、いや、作者の怠慢か。中身のない会話は無くていいだろう。」

「へい、さように思います。同感ですね。」


 次に大変だったのが、台所だ。水は作業台までは上がらずに、裏木戸の所まで流れてきている。


「食器の洗い場が外では可哀そうだね。どうにか出来ないかな。」

「そうですね、水が上がりませんもの。ここは現状維持でしょうか。」

「んだな!」  


「オレグさん、なんでパブを作るのです?」

「あぁ、これは移民の食事のためだよ。一種の食堂だな。第一に考えても見てよね。夫婦や家族で母親がいればいいが、独身とか父親と子共だけとか、最悪、子供だけとかは食事が大変だろう?」


「まぁな。俺もそう思うよ。」

「んで、俺らが移民にパブの仕事を振るだろう?」

「ああ、そうだわな。」

「で、給金はどうするのよ。一律にライ麦粉か? だけでは生きていけないよ。ここは、銀貨で払って食事は有料にしようじゃないかい。デビットくん。」


「デーヴィッドです。間違わないでください。ロレグさん。」

「いいじゃないかい。お互い様だね。これからは貨幣制度の時代になるんだ。だから、予行練習をするのだよ、マシュくん。」

「デーヴィッドです。間違わないでください。グレロさん。そうですか~お金を使う準備なのですね。」


「そうだよ、デーヴィッド。これからは君もここで働きたまえ。」

「そうだね、エルザで賄いを作って商売を始めようか。」



 物々交換では生活は豊かにならない。貨幣制度を取り入れてこそ、生活は豊かになっていくものだ。だから行商が出来るようにもなるものだ。




「あぁ、もちろんさ。農民の作るライ麦が不作だったらどうするのさ?」

「領主さまが、分け与える必要が出てまいります。」

「だったら金貨で納税させてさ、余った金貨は残させるのさ。不作の年はその金貨で納税させるよ。」


「あんたは悪魔か!」

「いいや俺は天使さまだよ。農民にも富を与えるのさ、な?」


(この方法は最悪の納税でした。不作の時に麦角が発生しました。税は通常通りに納税する必要があります。だから麦角のライ麦も混ぜて納めるようになります。その麦角の菌が元でたくさんの人々が死んでいきました。ですが豊作の時でも、それは変わらなかったようです。やはり多くの方が亡くなりました。)


「どうして富=金貨が残るのさ?」

「労役や賦役でも納税出来るのだろう? だったら労役を増やしてさ、金貨での納税を少なくしてやるのさ。」

「おお、そうしますと農民にも金貨が残るのですね!」


「これはデーヴィッドさんも勿論ですが、エリアスさまには、ぜひともマスターされて欲しい事案ですよ。」

「ここは試験に出ますか?」


「おう、よく理解出来たじゃないかいデービットくん。」

「デーヴィッドです・・・・・。」


「あ、シモン。急ぎで臼を六個ばかしこさえてくれ。」

「また水車を作るので?」

「いいや、移民の子供の仕事にするのさ、ライ麦を搗かせる。」

「でもさ、麦粉は水車で作れますでしょう?」

「では、子供には仕事が無いから、死ねというのかい? マシュ。」

「いいえ、シモンです。とてもいい考えだと思いますよ! ダンナ。」


「なぁ粗い麦粉を水車で搗けば、それだけ早く綺麗な麦粉が出来るからさ、より多くの麦粉を蓄えに廻せるのさ。」

「で、キタル移民の受け入れの準備をする、ですね!」

「あぁ正解だよ、マシュウくん。」

「シモンです! キタルとは来たるですか?」


「ほぁ?・・・・・・・・?」



 オレグはここで息絶える。ようやく出来たパブで倒れてしまった。


「おう誰か。この男を運んでくれないか。」

「作り掛けの戸板に乗せろや、家まで運んでやるよ。」


 お休みな、オレグさん。もう悪い夢は見るなよ!


 オレグは泣きたくなるくらいの、とてもいい夢を見た。


「ソフィアとリリーが帰ってくる!!」


******************************************************


 この方法で農民は豊かにはなりません。三圃農業の普及で穀物が増えました。同時に人口も爆発的に増えました。ここで中国の毛皮と一緒にペストが輸入されます。ヨーロッパの人口は半減しました。農民は激減して農地が余ります。


 この農地をある人々が借りまくって小麦を植えました。結果、成功し多大な富を築きます。これは十八世紀のイングランドから広がって、各地へと広がりを見せます。



 ソフィアとリリーが帰ってきました。オレグには泣きたくなるくらいの、とてもいい夢を見て頂きたいですね。

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