第189部 デンマークの異変
古代ローマの時代に飲まれたワインは、アルコール度数が焼酎以上の40度とか? らしいのです。そのままでは飲みにくいですので水で割って飲んだとか。この水で薄める行為がワインの名前の由来になったような?
古代ギリシアの文明はアフリカからもたらされた? と言うのですが、これは信憑性に欠けるかと思います。地中海を航海する木材はアフリカには在りません。古代ギリシアは北の黒海も支配しておりました。唯一の大河のドナウ川があります。この上流には開けた草原もありますが、青々とした森林地帯も存在しています。木材はこのドナウ川を経由して供給されていたようです。
ただし、地中海が只の塩湖が乾燥した窪地だった時代には、食物を得る為に往来が多かったと思います。
アフリカの巨石文明はギリシアの神殿に? イギリスの巨石文明に流れたとも考えられます。こう考えましたら、あながちアフリカ説”も否定できませんが、皆さまはいかがお考えでしょうか。
古代ローマ帝国においてドナウ川は、北から侵攻してくるであろうスラブ人等から守る国境線にしていたようです。ドナウ川の北方の草原にはモンゴルからの移民が住みついていました。ですので東の文明も存在していたはずなのですが遺跡が無いとか。騎馬民族は遊牧民族ですので当然に遺跡は無いはず。昔から群雄割拠した民族は国を創り、今に至って戦争を続けているのでしょうか。
イギリスの石畳はローマ人が建設していますが、各地に残る古墳はローマ人が建設したのではないとも言われています。色々考えましたら面白いですね。
「オレグ、息子の二人を呼び寄せる時が来たようね。」
「あぁ、あの二人を探しに行くか。」
「それで名前は?」
「……、……と……だ!」
「でしょうね、ならば本当の息子ではないのですよ。」
「だってリリーが教えてくれたんだぜ? あいつがウソを言ったのか!」
「いいじゃない。明日からはデンマークのオーフスに乗り込むのね!」
「そうだな、明日からはホテル・オーフスに宿泊するぞ~。」
「お部屋の代金は高いわよ。」
「な~に¥14,200~からだ、どうだ安いだろう!」
「そうね、銀貨はたんまり在るのだし連泊し放題かしら!」
「ソフィアは帰っていいぞ。……。」
「はい喜んで~!」
とソフィア。
「え?、? …………ウソ!」とオレグ。
「私、嬉しいです!」とリリー。
「あ、リリーがドロボー猫になりましたら、私、困ります。やっぱ、残ります。」
とソフィア。
だがソフィアが残った事により事件が起きる。それも早い段階でだ!(この一行を三週前に書いたために物語はあっちの方向へと進んでしまった。残念! 続きを昨日に頭を捻って書き上げたのだが……最後には宇宙ステーション補給機が出てくるはめに!!)
1249年8月23日 デンマーク・オーフス
*)シェラン島を迂回せよ
アンナ妃はエーレ海峡を通過するさいにオレグが放り投げていた。これに対しリリーが、
「お兄さま、最低でもダンボールの箱にお弁当を入れておいた方が、よろしかったのではないでしょうか。」
「神のご加護があるんだ。あいつ、自分の命さえ助かればいいのだと神に祈ったのだろう?」
「はい、そのようにパンダ女王から聞きました。」
「おいおい、居なくなればあだ名で呼ぶのか!」
「いいでしょう? お兄さま。」
「あぁ構わないさ。過ぎさった者は追わず、もう忘れたよ。」
「まぁ薄情な!」
「リリー。お前、神にはなるなよ!」
「さ~どうでしょう!」
オレグは言いたい事を三行先ですっかり忘れてしまった。会話が続いていないのだ。
夜間のやや遅い時間に脱兎の勢いでスウェーデンとデンマークの間の狭いエーレ海峡を走り去る。左右からの攻撃に適した場所は二箇所も在るのだから気が抜けない。断酒して望んだ二箇所の狭いエーレ海峡、無事に通過できた。
「どうしてスウェーデンとデンマークの狭い間に両国の首都が出来たんだい。先に作ったのはスウェーデンだがな。」
「でも、それは未来のお話になりますから! 今はまだデンマーク領ですわ。」
「早くデンマークから独立したいからだろうね。」
「はい、デンマークの首都はオーフスですので、航路からはかなり外れてしまうからではないでしょうか。」
「いいや、違うぜリリーさん。」
「あら、あなたはどなた?」
「おう海の海王さまを忘れたか。ボブ船長だよ。」
「すみません、とても博識とは存じませんでした。」
「そのオーフスはデンマークの陸地に在るんだ。だから農産品や産業製品の移動には地の利があってだな、今のコペンハーゲンは島だろう? だからいちいち船でたくさんの荷物は運べないだろうが。」
「あ、なるほど、そうでしたか。納得です。他国からは船で輸入するのですから都市としてはどこででも良かったのですね。」
「まぁそういう意味だろうさ。判ったか、……授業料にオレグワイン!」
「はいはい無事にエーレ海峡を抜けましてからね!」
「ケッ!」
「シビル、しっかりと風を起こして頑張りなさい。」
「ケッ!」
「オフースの手前に島が在るからそこまでノンストップだな!」
「おいおいおい、朝まで断酒かぁ?」
「従え!」
「……、・・・。」
「オレグ、今回は夏で良かったね!」
「あぁ??……そうだなリリー。前回は冬の海に落とされたからな。なぁシビル?」
「いつもオレグの指示だろうが、……うるさいよ!」
「あい!」
その日の朝から宴会を催すような輩ばかりのオレグの部下たち。交代で見張りの人員を割いて就寝する。見張りは当然、宴会の人員たちとは違う、アンナの部下たちだ。今回は小船積載だから泳ぐ必要もない。
(*当時はスウェーデンの南部もデンマークの領土でした。)
オレグの戦艦は陸と平行に走り、陸とは反対の左舷で上陸用の小舟を用意しながら航海を続ける。
「ボブ船長ここいらでいいぞ、俺らは小舟に乗り込むからさ、神業で小舟を海に下ろしてくれないか。」
「あぁいいぜ。任せな!」
「おいシビル。減速してくれないか。」
「お兄様? 減速はいたしませんので速やかに小舟を海に落として下さい。なんたってお兄様は無敵ですもの。」
「シビル。俺でも敵わない事はあるんだ。やだよ、また泳ぐのか?」
「お前たち、風魔法で小舟を浮かせておやり!」
「イエス、モン☆」x6
いつもいつも寸足らずの説明しかしないシビル。口が悪くて難儀する。だが安心もできた。それに反してボブ船長は、
「オレグ~達者でな~、俺たちはプリムラ村で待っているぞ~!」
「んな殺生な!!!!」
オーフスからかなり離れた海域でオレグの母船と別れた一行は少数精鋭の六人のみ。オレグ、リリー、ソフィア、エレナ、ソワレ、と??。
「リリー、どうしてこんな女を召喚したんだ。俺は投げ捨てたと思っていたが?」
「いいじゃありませんか、水先案内人ですわ。・・・…ねぇアンナ?」
「はい敗者復活です、リリーさん好きです!」
「俺はハーレムにしたいとは一度も考えた事はない。どうして……女ばかりになってしまったのだ。」
「これも神のご加護ですわ!」
とアンナが言う。
「リリー、もう一度捨ててもいいか!」
「また舞い戻りますからここは一蓮托生で行きましょう。いざと言う時の尻尾には利用できますから。」
「こいつ、トカゲにするのか。」
「もちろんです。いよいよの最後は人質にも出来るかもしれません。」
*)オーフスの街
オレグらはアンナの見立てで貴族の服を買い揃えて、オーフスの街を散歩して回った。アンナは妃らしい振る舞いでオレグを従えているかのように。だが現実はお上りさんだった。オレグは問題なくてもその他の女は約三名だが、街の店に興味をあからさまな態度で示していた。
「おいソフィア。お前! もっと慎め!」
「え~やだ。だって初めてだもの。もっと感激しなくちゃ!」
「リリーそこの路地に入るからソフィアを境界に仕舞ってくれないか。」
「はいです……でも、・・・・・・。」
「おうおう、尻尾を巻いて逃げ出したか!」
「はい、今召喚しますので、お兄さま、取り押さえて下さいまし。すこし暴れますのでご注意を!」
「いいぞ、アンナの巨体で押さえつける。」
「んまぁ失礼しちゃう。文鎮の代わりにはしないで欲しいですわ。」
召喚されたソフィアはオレグが飛びついて押さえ、直ぐさまアンナが体重?kで押さえてしまう。
「さぁお姉さま、観念なさいまし。」
オーフスの観光は終わった。日本のような黒のアスファルトの道ではない。小さなレンガの石畳。趣があって好感がでる。街全体が明るい雰囲気に包まれる。
「お兄さま、未来の街には好感が持てましても、今はピリピリした街にしか見えませんわ。」
「そうだな、やたらと私設の兵士らの姿が目立ってしょうがないな。戦争でも始める気か?」
「オレグが国賊のヴァイキングを殲滅させたからでしょう? だからああやって新しいヴァイキングの船員を探しているのですわ。」
「おいおいソフィア。あれを俺の所為にするのか。」
「ほらほら、あ~やってイカツイ男に声を掛けていますでしょう?」
「ふん、なんだい、ただの腰抜け男にしか見えないぞ。」
「だったら一度戦ってみますか? 金一封で呼んで参りますが……。」
「いいやいい。俺はどうやっても敵わないだろうさ!」
目で嗤うソフィア。オレグの一言に突っ込みを入れるリリーは、
「あらら、どちらが敵わないのでしょうか。」
「もちろんあの男が尻尾巻いて逃げ出すに決まっている。」
「そういう事にしておきます、お兄さま!」
*)オーフスの港
オレグたちは見つからないようにオーフスの郊外から上陸して街に来たのだが、行き着く処は港に決まっていた。ここが街一番の情報が集まる所になる。船の積み荷や船の大きさ、船籍を見るだけでも必要な情報が得られるというものだ。
「おいソワレ。あの船はどこかで見たような……。」
「はいエストニアの貴族の船のようです。そうして積み込む荷物は……。」
ソワレはエレナを眺めて言葉を閉じてしまう。エレナは何時もの偵察業務が命じられたかに感じるのだった。
「はいはいお姉さま。直ぐに変身して船の会話を拾ってまいりますわ。それで?」
「私たちはこの港で他の情報を漁ります。集合場所はリリーが教えてくれますからそれまで頑張って下さい。朗報を期待しておきますわ。」
(やな性格!)と思っても口には出さないエレナ。私抜きで先にパブに入るのは予想される事。親分がオレグなだけにパブが情報源だと信じて切っているのだ。
「ほらほら船は多数在りましてよ! 全部紋章が違いますから気張って下さい。注意点としては人足よりも貴族らしい男の会話が重要かもしれませんわ。」
「はい、すぐに偵察へ向かいます。……(バ~カ!)」
貴族らしい男など何処を見ても居はしない。(今は昼食時とは考えないのか!)と思いつつもエレナは小鳥になって船を渡り飛ぶ。エレナが見えなくなって、
「ソワレ、性格がキツいぞ。妹にはもっと優しくしてやれないのか!」
「ルイ・カーンさまと同じですわ。気にされないで下さい。」
「この俺も同じなのか?」
「リリーさん、そこの分からず屋にハッキリと言っておやりなさいよ。『お兄さまは妹を粗末にしすぎです』と。」
「お兄さま、好きです!」
「バコ~ン!」
とソフィアのハリセンが炸裂した。
「おんどれは、じゃかましいわい。」
「こら! ソフィア。」
「べーだ。」
とリリーを庇ったオレグに舌を出してソフィアは走り去って行った。
「あらあらソフィアさんはまだオーフスの観光が物足りないのですね。」
「ソワレ、あいつの自由にさせてやれ。じきに腹を空かせて戻ってくるさ。」
「戻らない時は私が魔法で召還いたしますの、大丈夫ですよ。」
ソフィアとエレナを除いた四人はできるだけ瀟洒なパブに入って行った。
「オレグさ…ルイ・カーンさま、ここのパブに致しましょう。きっと口の軽い貴族の馭者が集まっていますわ。」
「そうだな、俺とアンナは右から入る。リリーとソワレは左から入ってくれ。」
「ルイ・カーンさま、ここは逆でしょうか。ほら右からは商人が入るようです。ですから私たちは左から入りますわよ。」
「そうか~? なんだか違うように思えるのだがな。」
アンナの見立ては間違っていた。商人と思われた男は貴族の扮装だった。だがパブへの入店はつい、いつものように右のドアから入ってしまった。そそっかしい性格なのか、それとも地が昔の商人だった所為か!
左右から入店した二組はパブの客から不思議な視線で見られる羽目になった。先に入店した貴族は特に大きく目を見張って驚いていた。この成り上がり貴族の名前は今はラースという。鼻の下と顎にはヒゲをこしらえている。
「親父どの~!!!」
パブに響く大きな声に客はこのラースに注目した。オレグに向かって放たれた一言は当然オレグにも聞こえたが、まさかオレグの息子だとは思わなかった。
オレグはパブへ入ったばかりだから声の持ち主に気を払うでもなく、パブの客全員にも関心を示さないようにと、猫かぶりで入店したのだった。再度大きな声。
「親父どの~!! 私です、ラースです、親父どの~!!!」
やはり分からないオレグは無視である。だがリリーは違っていた。
「お兄さま、あの方はお兄さまの自称長男さまですわ。すっかり風貌も変わりましたから見分けが出来ませんでしょうが……。」
「?? 名前も顔も忘れてしまったよ。あれが長男なのか!」
「あらあら、分かっているではありませんか。」
「あいつはやかましい。大人しくさせてくれないか。」
「では二階に?」
「空きが在れば行こうか。」
「はいお兄さま。」
「私はあのヒゲを黙らせるから、ソワレさんは二階の部屋の予約をお願いね。」
「承知しました。お料理はお任せでいいかしら!」
「おう構わないが、店のお任せで頼んでくれ。ソワレのお任せでは金が足りなくなる恐れがある。」
「ケッ! 失敬な。 ばれていたか。」
「あれも忘れるなよ。」
「エレナですね、まだ戻りませんわ。」
「冷たい姉だな。後で後悔しても知らないぞ。」
ソワレは二階の部屋の予約に向かいリリーはラースの元に急いで向かった。
「ラースです親父どの~? …… リリーさま??」
「ラースさま、ここはお静かにお願いします。さ、お二階へ参りましょうか。」
「あ、少し待たれよ。嫁と息子も連れて行きたい。是非に孫を紹介したいし。」
そう言ってラースは女と子供の元に駆け寄って、
「ほらメッテ。ウィリアムを抱いて付いてきてくれ。親父どのとの面会だ!」
「まぁ~お懐かしいですわ……。」
「だな……。」
リリーは立ち止まってこの家族を見ているだけだった。一方のソワレは、
「あの~二階の部屋をお借りしたいのですが、……。」
「宿泊のみだよ。何人だい。」
「総勢で九人になりますが、」
「だったら三部屋だね。料金は前払いの銀貨で三十五枚ね!」
「んもう~、お任せのお料理も注文いたしますのでもっとお安く!」
「あいよ、……だったら、銀貨で六十枚ね!」
「えぇ美味しいお料理でお願い。お代はあの貴族さまからお願いしたいわ。今は手付けで銀貨十枚しか出せないから。いいでしょう? 案内の時で!」
「そうかい、だったら銀貨七十枚ね!」
「それでいいわ。」
*)貴族の夜逃げ
ラースはパブを見渡して一人の男に目をつけた。
「よう、久しぶりだな。この前は随分と儲けさせてやったからさ、ここは、な? 俺の頼みを聞いてはくれないか。」
「これはこれはラースの旦那。随分とご機嫌なようで!」
「この俺の顔が機嫌よく見えるとはいい度胸じゃないか。えぇ??」
「え、あ、はい。……それで、」
「俺の弟のミケルを至急呼んで来てくれないか。火急の用件が出来たからとな。」
「あ、はい。至急お連れいたします。ここの代金はお願いしやす。」
「ん?……これくらいならいいぜ。任せな。」
「まだ一口だけですので、食べて飲んで行きます。」
「これはたった今、俺の料理になったんだ。食わせる必要はないだろう。さっさと弟を呼んで来い。」
「ひぇ~!」
ラースは腰に下げている剣に手をやって男を脅していた。
「ふん、たわいない奴め!」
ラースはこの男から詐欺まがいの商取引で大損をこいていた。
「リリーさん、お待たせいたしました。さ、案内をお願いします。」
「え、あ、はい。先にルイ・カーンさまが上がられてからに致します。」
「ルイ??」
「・カーンさま。オレグ兄さまの今の名前ですのよ。ラースさまと同じですね。」
「そうですか、オレグさまも改名されたのですね。」
「今は八百円の印紙代で出来るようですが、とても面倒らしいですわ。」
「そうなんですか~……。」
「さ、お部屋の準備が出来たようです。行きましょうか。弟さんは?」
「直ぐに参りますでしょうが、どうしましょうか。」
「二階で呼びますから大丈夫です。今のお名前は?」
「はい弟はミケル。妻はヘンネ。子供はエンマと言います。」
「分かりました。さ、親子の対面です。」
親子と言われてもオレグは転生した身で記憶もなにもない。ただリリーが教えてくれただけの事。事実はどうだろうか。二人の兄弟も同じ事だ。記憶は在るが顔は変わっているから定かではない。
二階の一部屋に集合してからリリーは別室で弟の三人家族を召喚した。が、おまけが付いてきた。男の子が居たのだった。子供はエンマという女児のみのはずだったが。冷や汗のミケルがリリーに尋ねるのだった。
「リリーさん、この男の子はなんでしょうか。」
「あのう、ミケルさん。ここはひとつ別室でお話し合いをお願いします。エンマは私が預かっておきますますから。」
ミケルとヘンネは間一つ離した部屋に案内されたらすぐに、部屋からはもの凄い怒声と物が壊れる音が響いて来た。
「私、知~らないっと!」
リリーはエンマと男児を抱いてオレグらの部屋に入っていく。オレグは全てを見透かしたようにリリーに問うのだった。
「リリー遅かったな。それでその子はなんだ。向こうは修羅場なのか?」
「はいミケルの家族の三人を召喚したのですが、どうしてかこの男の子も混じって召喚したのです。間違いなくミケルの子供なのでしょうが、どうなんでしょうか。私、ミケルの命が気になります。」
「DNAが一致したんだな。いいさ放置しておこうか。又は双子だったとか?」
「ミケルに訊いて下さいな。」
「必要ならばそうするさ。今はラースからデンマークの状況は聞くとするよ。ソフィアも呼んでくれないかな。」
「はいエレナと一緒に召喚しますね。エレナはいい情報を掴んでいればいいのですが。」
「船員と港の人足たちだから無理だろうな。」
「では料理とお酒が運ばれるまで、ラースさんにはデンマークの状況をお話し願いましょうか。」
「お父さん、このデンマークはとても排他的でやりにくかったですね。途中で三回も名前を変えました。今はラースで通っています。」
「そうだろうな、この俺だって同じだよ。それで成功したのだろうな。」
「はい、自前で船を持つまでで終わりました。この国で船を持つという意味がとてもまともな意味ではありませんでした。」
「そうか、貴族としての賦役で国賊に仕立てられたんだな。」
「はい、それで損ばかりでした。ですので新興貴族と貴族の分家は生活の基盤さえ持てずに国外に逃げ出す有様です。」
「それはどのような意味なのかな。俺には予想が出来ない。」
「はい無理もありません。今は古い貴族が幅をきかせておりますので遣りたい放題、好き勝手に地方を統治している有様です。それに対して王国は何も言えずに富の集約が出来ずにおります。」
「あは~それで国の事業でヴァイキングをしているのいか。」
「はい、そうなんです。古い貴族や名門貴族とは別の、力の無い貴族を集めて船の建造費を出させ、その挙句ヴァイキングの利益は国が吸い上げるというヒドイ仕打ちでございます。」
「すると港の船というのは、国外へのエクソダスの為だな。」
「はい、この私も例外ではなく、先のヴァイキングの大敗も有りましたから、これ以上デンマークに滞在しておりましたら、国から富や金が吸い上げられますので逃げ出すところでした。」
「それでエストニアの俺の処へ?」
「はい、エストニアのトームペア城の紋章を買いまして船に掲示しておりました。それで何とか国の目は誤魔化せましたが、まだまだ水物でございます。船を出すまでは安心が出来ません。」
「それは良かった。ちょうど俺もお前ら兄弟を呼び戻しに来たところさ。どうだ、二人ともエストニアへは来れるだろうか。」
「はい願ったり叶ったりです。喜んでお供いたします。それで次の任務とは?」
「今と変わらないが、今度は領地を持たせるからしっかり働いてくれないか。」
「それだけではありませんね。国をひっくり返すのでしょうか? でしたら積年の恨みを晴らしたく存じます。」
「ほほう気概心丸出しだな。」
「気概心とは言いません。気概に満ちたと表現すべきです。造語も甚だしい!」
「そうなのか?」
「気概はこころの有り様を意味しますので、気概には心という漢字を付けられません。」
というようにデンマークの終焉を迎えるよな時事が語られた。これからはデンマークが国力を落としていく時代に突入していく。同時に儲かってしようのないハンザ同盟を真似てもいるが、焦ってゴットランド島に手を出したのが運の尽き、ハンザ同盟からは戦争を嗾けられてしまう。
*)ソフィアの困惑
「リリー、すっかり忘れてしまっていたが、ソフィアは呼んでいるのか。」
「はい、犬も食わぬ夫婦喧嘩を食べさせておりますので、今頃は満腹かと思います。どうしましょうか、三人を呼んできますか?」
「もう夕食になるだろうから、呼んで来てくれないか。あぁそうだラースに命じようか。」
「はいお父様。序でにこの男の子も帰して仕舞いましょう。これ以上家族に波風を立ててほしくはありません。……お父さんの子供ではないのですか?」
「それなんだが、その子は誰の子だ。俺にはまだ出来ていないぞ。」
「ラース、お前……、」
「お兄さま、この家族にも喧嘩を振ってしまわれますか?」
「リリー、いや俺は、……もう黙っておく。リリーが召喚したんだ。リリーが育てるのかな。」
「私だって嫌ですよ。門前に捨ててまいります。」
一同はリリーの言葉に「・・・・・・。」
別室からミケルと妻のヘンメ。ソフィアとエレナが移ってきた。夫婦喧嘩は? どうしてかソフィアが食べてしまったらしい。
「ママ~お帰り!」x2
「ヘンネ、とても可愛い男の子じゃない。」
「違います、娘のエンマだけが私の子供ですわ。」
「ママ~!……ママ~??」
「ねぇオレグ。この子は誰なの?」
「俺にも分からないよ。間違っても俺の息子ではないぞ。リリーが召喚して持ち込んだんだからな。俺は知らないよ。」
「リリーどうなのよ。ミケルは心当たりは無いと言う事で一件落着したのだからね。やはりリリーがこの問題を解決するべきだわ。」
「ママ~!……ママ~!!」……「ママ~!……ママ~??」
「お前、誰に向かって言っているのよ。ママとは誰よ。」
「ママだよ、他には居ないもん。……ママ??」
リリーの怖い一言で一同はリリーを見つめていたが、今度は男の子がママと言うソフィアに視線が集まる。
「え~い、うるさい、黙れガキンチョ!」
「ママ~?……ママでしょう?? だってママの名前はソフィアと言うのだよ。ねぇ同じでしょう?」
「あのね、ガキンチョ。ソフィアという名前はとても有り触れた普通に多い名前なのよ。だからお前の母ではないの。私はまだ二十歳なのだからね子供はまだ産めないのよ。」
「ふ~ん僕は四歳だから、ママが二十五歳の時に産んだんだよ。」
「おいソフィア。今から仕込めばまだ間に合う計算になるが、こいつは未来人なのだろうか。」
「冗談は止めてよね。だったらオレグの子供になっちゃうわよ。違うかしら。」
「あ! ホントだ。……しかしなぁ、巫女は女しか産まないよな。こいつ男だろうし~!」
急にソフィアの目つきが変化した。この変化は昔にもあったような?
「ガキンチョをひん剥くと分かるわね。詐称かもしれないし。」
「ビェ~!!」
危機を察してか子供は大声で泣き出した。周りの大人への救助要請なのだ。ソフィアにしてみれば子供とは嫌いな存在らしい。いつものように、
「うるさい、黙れ!」
である。口よりも手が早いのがソフィアの性格。周りが止めようとしたがもう遅かった。上着は素早く剥ぎ取られて宙に舞いズボンは直ぐに下げられた。
「あら……可愛いわね……。」
「きゃ~!!」
一同は大きな驚きの声が舞った。
「出ている物が出ているわ。……でも、お前は……。」
「ぼくは男の子です。ちゃんと長い物が在るでしょう?」
「そうね、……お尻にだけれども。」
「……。」
一同はもう声も出なくなった。子供嫌いのソフィアの目つきがさらに変わった。今度はオレグを見て、
「ねぇオレグ。この子私の物よ。もう離さないわ。これからは私が育てるの。」
「……、!……? なぁソフィア。俺は言葉も出ないよ。後悔しても俺は知らないぞ。」
「いいの、いいのじょ。わちゃしと同じ生き物だわ。ん~ぞっぐりだわ!」
ソフィアは剥ぎ取った服を逆に素早く着せている。ソフィアは感激して言葉が大きく変化していた。
「リリー女の子用の可愛い服を作って頂戴。直ぐによ。こんな貧相な服は駄目よ、分かるでしょう?」
「お、お、オ、オ、お姉さま、あ~やっと言葉が出てきたわ。そのう、お姉さまは本当にこの子をご自分の娘にしてしまうのかしら。」
「これはリリーからの贈り物だわ。リリーありがとう。」
「もう言葉もございませんわ。好きになさって下さい。幸いにもママと呼んで慕ってくれるのですもの。キルケーの贈り物でなければいいのですわ。」
「だったらリリー至急キルケーを召喚して訊いて下さい。あれは……、」
「そうですわね、人を動物には変えれるのでしょうが、動物を人には脳みその関係で出来るはずはありませんもの。これは間違いなくどこかの巫女が産んだ子供に決まっていますわ。」
普通に可愛い男用の服を着ている時点で、どこぞの貴族の子供と判断出来るのだが、ソフィアからしたら貧相に見えるらしい。
「リリー、どうかしてこの子の両親を召喚出来ないかな。血を一滴たらして魔方陣を書くとか出来ないのか。」
「……そうですね、髪の毛を一本抜いて稔じてみます。これで誰かが出てきたらきっと親ですわ。」
「出なかったらどうなのよ。リリー、もう出さなくてもいいわよ。」
「んもうお姉さまったら。出てきたらどうしますか?」
「うん一口だよ。今変身して待機するね!……これ位で…、」
「お姉さま、それ以上はお止め下さい。ここにはシビルが居ませんから関係者の記憶の削除が出来ません。」
「そんなの殴って消せばいいのよ。死んでもいいわ!」
「ゲート!」
リリーはソフィアが冗談でないことを感じ取り慌ててゲートを出した。
「さ、お姉さま。皆さんをゲートに押し込んで下さいな。」
「いいわよ任せて!」
「ぎゃ~殺されるー!」x4
危機を察してか、オレグの二人の息子家族らは慌てて部屋から飛び出して逃げてゆく。引きずられている二人の子供が可愛そうになるくらいの慌てようだった。エレナとソワレはソフィアの秘密は知ってはいるが、念の為にとリリーが二人をゲートに押し込んだ。
「キャッ!!」x2
とんだハプニングになってしまった。話を盛りすぎてはいないだろうか。この尻尾がある女の子はどうなるだろうか。……乞う一年後!!
リリーが女の子の髪の毛を持って念じたら、出てきた。
「おい、これ、食えるのか!」
「はい今晩の焼き鳥に!」
「カカカカカカカカカカカ・・・・!」
「これは鶴でしょうか。」
「いいやコウノトリだろ。嘴が赤くて長いだろうが!」
「リリーありがとう。コウノトリが運んでくれたのね!」
「え! ウソ! 北欧には居ませんわ!」
「だったらシュバシコウというヨーロッパコウノトリだよ。今の時期は繁殖期だな。」