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人狼夫婦と妖精 ツインズの旅  作者: 冬忍 金銀花
第四章 国盗り物語
188/257

第188部 オレグとアンナの姦計はいかに その三


「ねぇご主人様、私の出番は無かったのですが?」


 と言うのは前回の夜間の襲撃でヴァイキングを撃破した、海のジューラスマーテだ。今回は忘れ去られたように出番がなかった。


「ごめんよ! おいらが働き過ぎたんだ。次回は楽しみにしているよ。」


 という事は、ご主人さまなるものはゾフィなのか。次はいよいよ小題のスウェーデン・マルメになる。王宮へドロボーだー!!





 1249年8月19日 スウェーデン・マルメ



*)ルイ・カーンとアンナのバカ試合? いいえ、バカし合いです。



「リリー銀貨はどれくらい在ったんだい?」

「銀の板も在りますから、おおよそ千Kは在るのかと思います。」

「ほほう、考えたくはないが、これは何を意味する数字だい?」

「えぇお兄さまの先勝の賞金になりました。これでたくさんの銀貨が手に入りましたので、マルメのスウェーデン王宮の攻略は中止いたしましょう。」


「いやいやこのような面白いイベントは逃したら勿体ない。此処は一つ、」

「お兄さま、この私に生き死をかけた本当の役者になれと?」

「いいじゃないか、どうせならこのまま妃の座を簒奪してしまえ。」


「え~ん、お兄さまは意地悪です。可愛いリリーを追い出すのですか、え~ん。」

「いや追い出したりしないよ。只の例え話だぎゃな。…!!……。」

「ギャナ?? そうですか、この可愛いリリーさまがこの先、デブブタで一生を過ごせと言われるのですね。こんな見にくい姿はもう懲り懲りです。私、…実家へ帰らせて頂きます。」

「リリーちゃんごめんなさい。大勝利でつい浮かれてしまいました。」

「海に落ちても浮かれるかどうか、実験よオレグ、きゃら~い!!」

「ひぇ~!! ドッボーン。」


 オレグはリリーの癇癪により海に飛ばされてしまった。笑って見ていたボブは飛び去るオレグに大きく手を振って、


「逝きの駄賃で花束を海に投げて海葬にしてやるからな~。」


 (行き掛けの駄賃か!)と叫んで遠くに飛んでいくであろうオレグに声援を送るのだった。オレグは航海の途中でシビルに拾われて生き返る。


 ルイ・カーンの不在の間に、ヴァンダ女王とアンナ妃の二回戦が始まった。


 船倉ではアンナ妃の目の前に、スウェーデンの国旗と銀貨と銀の板が積まれていた。大きく眼を開いて「み・う・り・か」と言うのだった。この時点でオレグの策に騙されたようなアンナ。


「あんた、眼の視力検査じゃないんだ。泣くのを我慢しなくていいのだよ?」

「泣いてなんかいません。だって、ベッドが在りませんから泣けません。」

「あんた……リリーかい。」

「?? それ、とても古いです『私は泣いています、ベッドの下で!』??」

「?? 上だろうが。……。」


「だって、私の作為戦勝ちよ?」


「なにが作為戦なんだい。これからは二回戦目に入るようだよ。あのデブッチョのリリーを見てごらんなさいよ。もう女狐に瓜二つよね。」


「?そっくり?……えぇ!! それ、ダメ~、ダメだよ。私、あの方から…殺され……、いや、私を早く解放しなさい。」


 アンナがつい、ポロリと口を突いて出た言葉が『あの方』だった。この一言を聞いたソフィア、リリー、シビル、キルケーが一斉にアンナ妃を見つめるのだった。アンナは不覚にもまずい事を言ってしまったと後悔して、みんなの顔を見る事が出来ずに、焦点の合わない目で四方をキョロキョロと見回す。


 アンナが言い終わる前からリリーが、シビルが、ソフィアが、キルケーは除いてアンナのの前に座り込んだ。


「アンナ、あんたは、あの方のなんなのよ。前回、今回のヴァイキングの襲撃は仕組んでいたのね。」


「い、い、いいえ、違います。違うんだからね。」


「おう待たせたな。俺が居なかったから、こいつ、ボロかしっぽを出したんじゃないか。……ソフィア、どうだった。」

「ア、オレグ……嫌いよ。この私がそうやすやすとしっぽは出さないわよ!」

「あ、……ぁははは・・。ソフィアのしっぽじゃないよ。」

「まぁ失礼しちゃうわ!」


 ソフィアだけがしっぽを持っているから、つい、オレグからからかわれたと勘違いをしてしまう。


「お姉さま、可笑しいですよ、私、笑っちゃいます。……でもお兄さま、このアンナ妃は本物ですよ。序に『あの方』の手先でしたわ。」

「ははぁ妃が手先か! スウェーデンも『あの方』の領地なのだな。」

「はい、だって『あの方』は、スウェーデンではとても影響力を持つ貴族なのですから。」


「いいさ、俺がそのうちに印籠を渡してやる。」

「さぁ、私はルイ・カーンに銀換算で千Kをお渡ししました。ルイ・カーン、即刻私を解放しなさい。そしてライ麦の全量を私に寄越しなさい。さもないとルイ・カーンは『あの方』に命を奪われます。」


「アンナ。今度は俺らがお前をだしに使ってやるよ。王宮へ案内しろ、な?」


「私はお約束通りの銀を与えましたわ。直ぐに解放しなさい。」

「明日の昼前には王宮へ連れて行く。今晩からあの四人組しのびを王宮へ忍び込ませて調査に行かせる。任務完了後に奴らを帰した後でアンナは処刑にしてやる。覚悟しろ。」


「え~ん、イヤです、え~ん。」


「泣き落としは通用しない。アンナは海に落としてやり次はリリーをお前の代わりに据えてやるよ。どうだ……。」

「え~ん、イヤです、え~ん。」「え~ん、イヤです、え~ん。」


「リリー、決まりだ、やれ!」

「え~嫌ですよ。私が汚れ仕事をするのですか。」

「いいだろう? 明日には美味しいおご馳走に有りつけるのだから。」


「はいアンナ、口を大きく開けてー『あ~ん!』ほら!」

「あ~ん。」・・・・・・「ブ~!!!」

「ほらお兄さま、アンナの口にご飯を入れても相手に唾と一緒に吹き出すのよね。可愛い私の服が台無しだわ。」

「なにが『私の服よ、』それは私のよそ行きの服だからね、返しなさいよ。」

「べ~!」

「だったら飯抜きにしようか。二・三日食わなくても痩せはしないさ。」

「そうだね……!」


「なぁ、お前の計画とはこんなものか?」


一、ヴァイキングを使って、ルイ・カーンを始末する。

二、ヴァイキングの船団からお宝を、ルイ・カーン自身で銀一千kを調達させる。

三、スウェーデンに害なすヴァイキングを殲滅させる。


 と三つの事を話したがアンナは黙っている。だが他には考えられる事が無い。


「俺の勝ちか!」


 ルイ・カーンからしたらライ麦を渡さずに銀の一千kが調達出来た事だろうか。ただし今後の銀の調達は絵に描いた餅になってしまう。次は王宮へ乗り込んで現金を強奪できるか? という商人らしからぬ行動が問題。このままスウェーデンが上お得意様になるとは…限らない。逆に富を奪われる方か。


「なぁリリー。俺らはここで引き返したが徳じゃないかい? 大した出費も無くてデンマークには日頃の恨みを晴らして、スウェーデンから銀の一千kが調達出きたんだからさ。」


 リリーは(だからさっき言ったでしょう?)と思いつつも、


「あら、考えが変わりましたか?」


 今度はアンナの考えが変わってしまったか、


「えぇ!! ヴァイキングではなくて、本当にあの船はスウェーデン王国だったのかしら?……。」


 アンナは自分の計画が間違っていたかと、ついつい不安の一言を漏らす。


「だから言っただろうが、デンマークじゃなくてスウェーデンだと。」

「あ、い、いや、そんなの、間違いだわ。ウソよ、これは夢だわさ!」


 蒼くなるアンナに対して、オレグとリリーの二人は赤みを帯びてきた。オレグの失言にはまったく気づいてはいない様子。オレグとスウェーデンはなんのいざこざは起きていない。まだ接触もないのだが……。


「これで俺らは銀の一千kとこの船のライ麦を手に入れた事になった。ここは大人しく身を引こうか。」

「さんせ~い!!」x2


「そうと決めたら先行の四人は呼び戻すね。まだ小船の上だから間に合うわ。」

「そうだな。此処は欲張らずに帰ろうか!」


 という、何とも腑抜けな選択をしてしまう。


「オレグ待ちなさいよ。アンナを期限付きで黒猫に変化へんげさせて王宮へ届けましょうよ。そしてアンナに化けたリリーがロシアのレニングラードで、悪の限りを尽くして銀を巻き上げるのよ。これ……最高じゃないかしら。」


「さんせ~い!!」x5


「お姉さま、兵隊たちの二十人はどうしますか?」

「もち、櫂のこぎ手に使うからいいでしょう?」


「さんせ~い!!」x5


「よ~し、明後日まで休息日に決めた!」


「さんせ~い!!」x5




 1249年8月22日 スウェーデン・マルメ


*)デンマークの異変


 デブデブの黒猫は予定通りにマルメに放猫ほうびょうされた。


「なぁリリー、放鳥のように野に放っても大丈夫かな。」

「きっと『あの方』のご加護が有りますわ、だから優しいお兄さまの心は私に向けて下さい……。」

「バコ~ン!」  「ひゃ!」

「リリーなにをしれ~っと言っているのかしら? あ、ああん??」

「お姉さまがお兄さまに愛情を注がないからですわ。だからアンナ黒猫にも気にされるお兄さまになられたのですよ、少しは反省しなさい。」


「べ~! だ。」

「んもう~……。」


 ルイ・カーンはエレナに空中の偵察を依頼していた。エレナが船に戻って報告しに船倉へ降りてきた。


「ルイ・カーンさま、ヴァイキングの船は見当たりません。全部デンマークの港に戻っております。」

「そうか、ありがとうな。また昼にも頼んだよ。」

「はい、」


 長い休息日も延長がなされてついに終わってしまう。ヴァンダ女王はゴンドラと共にデンマークの偵察に飛んでいる。毎日ルイ・カーンはドラゴンを飛ばせるのだからゴンドラの酒の量が半端ない。毎日、毎晩、ワインを樽ごと飲んでいる。腹に入った樽は後日、綺麗な樽になってドラゴンが吐き出していた。


「クズラ、だ!」

(1967年当時、七~十二歳の方は判るかもしれない。)


 ルイ・カーンとヴァンダ女王の会話で纏める。 


 三日目にしてヴァンダ女王からデンマークの異変が報告された。

・船が大量に造られていること。

・他国の商船が物凄く少ない。

・街は人が多くて活気があるが、地方では働き手の男の農民の姿が少ない。


「ルイ・カーン、これって戦争の準備じゃないのかしら。」

「どこと遣り合うつもりだろうか。間違っても『あの方』の指示じゃないよな。」

「それは大丈夫ですわ。外国の商船が入港しないのであればエストニアへの侵攻とか、スウェーデンへの略奪行為だと考えられます。」


「あ、そうそう。ルイ・カーンとアンナの姦計はどうなったのかしら。」

「今の所アンナの隠す意図が判らないので、俺の勝ちでいいのではないでしょうか。今後はレニングラードでも勝利を収めれば、ヴァイキングも真っ青な大船団を率いてバルト海を右往左往できます。」


「そうですか、ではデンマークもオレグの船を狙って来るのでしょう。」

「えぇ~そんな~、嫌だ~!」

「仕方ありませんでしょう? だってデンマークは農産品が少なくなるのですから今後はどうするのでしょうね。戦争をけしかけるにも兵たちのパンも大量に必要なのですよ。分かっていますか?」


「俺だったら高値で売りに行くが、…行けば……身ぐるみ剥がされてしまう!」

「きっとそうなります。だから他国の船が寄りつかずに少ないのです。」

「あ~なるほどそういう理由で商船が少ないのですね。では男が少ないのはどういう理由でしょうか。」

「農民の男は軍船に乗せて兵士にされています。それに造船ギルドででもたくさんの男たちが雇用されています。」

「だ~から、街には人が集まり活気があると!」

「そういう理由だと私は判断いたします。」


「ヴァンダ女王さま解説をありがとうございました。残りの人生はゴンドラと共にお過ごし下さい。」

「なによ、もう用事が済んだから地獄へ帰れと言うのですね?」

「ですが、まだなにか……。」


「また出てまいります。次は傭兵としてゴンドラは貸し与えますので!」

「(いらんわい!)はい、よろしくお願いします。……デンマークの鋳造銀貨でお支払いします。」


 ソフィアがオレグの傍らで、


「オレグ、息子の二人を呼び寄せる時が来たようね。」

「あぁ、あの二人を探しに行くか。」

「それで名前は?」

「……、……と……だ!」

「名前を言えないですね、……ならば本当の息子ではないのですよ。」

「だってリリーが教えてくれたんだぜ? あいつがウソを言ったのか?」


「いいじゃない。明日からはデンマークのオーフスに乗り込むのね!」


「そうだな、明日からはホテル・オーフスに宿泊するぞ~。」

「お部屋の代金は高いわよ。」

「な~に¥14,200~からだ、どうだ安いだろう!」

「そうね、銀貨はたんまり在るのだし連泊し放題かしら!」


「ソフィアは帰っていいぞ。……。」


「はい喜んで~!」

「え?、? …………ウソ!」



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