第187部 オレグとアンナの姦計はいかに その二
1249年8月18日 スウェーデン・マルメ
*)ヴァイキングとの戦い、二戦目
ヴァンダ女王とアンナ妃の戦は先に始まっていた。
あらぬ言いがかりを付けられたアンナ妃は、ボコられながも言いだしっぺの妖怪のヴァンダ女王に噛みつこうとあがいている。
「バ~カ!!」
船尾に取り付けた鐘がけたたましく鳴らされて開戦の合図が響き渡る。
「ほうら、私が言っていたように大船団にぶつかったのだわ、ざま~、」
「バコ~ン!!」
「じゃかましい、黙れ! なんならお前を舳先に吊るしてやろうか?」
「ノーサンキュー。」
「あんた、本当に英語も話せるバイリンガルだったのね。」
「そうよ、だから私は本物だってば!」
アンナは七か国語も話せる優秀な姫だったのだが、見かけはとても残念な姿に変化している。横から見れば前に二段で後ろに一段の大きなでっぱりが見えるのだ。
「アンナさん、あんた若い時はとても美人さんと聞いていたわよ。それがどうしてもう……嘆かわしい。」
「パンダ女王さま、お気づかいありがとうございます。(この妖怪ババァめ!)それは暗い洞窟でお食事も出来なかったから僻んでいますのね!」
「う……。食わせたい部下が居ましたから、耐えておりました。二百年を過ぎましたら可愛い愛娘の…今はソワレと言いますが、会えるのを楽しみにしまして……。」
「その娘は逃げているようだけれども?」
「あ、あれはドラゴンの生贄になりましたので、ゴンドラが怖くて逃げているだけですのよ。あなた、ドラゴンはお好きですか?」
「いいえ全然。トカゲを焼いたのは美味しいわ~!」
「まぁ、……。」
「ドッカーン!」「ドッカーン!!」「ドッカーン!!!」「ドッカーン!!!」
ゾフィの大砲の砲撃が始まった。聴いたことない連中は総じて驚いている。
「海戦が始まったわ、貴女、部下を遊ばせておくおつもりですか?」
「仕方ありません、全員が捕縛されているようですので、私にはなにも出来ません。だから、この私が死なないようにお祈りをいたします。」
「相手がヴァイキングではなくて、スウェーデンの海軍だったらどうよ。」
「カマ掛けても無駄でございます。私には予言の力がございます。あれは全部がデンマークの海賊でございます。」
「じゃぁ少しお待ちになって。海賊の旗を貰って来ますから。」
「えへん、私が持ち込んでルイ・カーンに渡した旗ならば、特徴が有るので偽物と直ぐに判ります。」
「そうかい、そりゃ~残念だったね。では燃えていない旗が…キャッ!!」
「ドッカーン!」「ドッカーン!!」「ドッカーン!!!」「ドッカーン!!!」
ヴァンダ女王は本当に大きい音が苦手なのか、アンナ妃に思わず抱き着いてしまった。
「ラッキー! 鼻が噛めるわ~!」
「、…キャッ!!……痛いわよ、このメスブタ野郎!!」
「私は淑女です、野郎は居ません。」
「メスブタにして、やろう!!」
「んまぁ!!」
「ドッカーン!」「ドッカーン!!」「ドッカーン!!!」「ドッカーン!!!」
「…キャッ!!」「また噛んでいいのね!」
「ドッカーン!」「ドッカーン!!」「ドッカーン!!!」「ドッカーン!!!」
「ドッカーン!」「ドッカーン!!」「ドッカーン!!!」「ドッカーン!!!」
甲板で見学しか出来ないリリーとボブ船長は、
「おいおい、あのヴァイキングの船は、魚の骨で出来ているのかい。派手に弾けるが、どう見たって魚の背骨が弾けるように見えるぜ!」
「そうね、この戦いで勝てたらお魚のフルコースでご馳走するわ。だからゾフィにはもっと応援をよろしく!」
「オオ!! 今度は魚の頭が弾けたぜ。ありゃ~きっと司令船だろうか。」
「だったら向こうで弾ける魚のシッポは、雑魚かい。」(キルケー)
「だろうな。マグロのトロは弾けないのか!」(ルイ・カーン)
「はっちゃける船は……、あのデカい船がお宝満載の宝物船だろうか!」
「そうかもしれないわ。ゾフィには沈めないようにお願いしなくちゃ。船そのものがはっちゃけたら大変だわ。」
はっちゃけているのはルイ・カーンのクルーたちだった。槍も矢も出せないヴァイキングの船は次々に沈んでいく。オレグ艦隊? の一方的な蹂躙に戦争は終始している。ぼちぼち海戦から離脱して行く船が出るころだろう。
「ゴンドラ準備はいいか。逃げる船には矢がたんまりと残っているはずだから気をつけろよ。」
「爪楊枝が飛んできても痒いだけだぜ。任せておけ!」
「なぁリリー。ゴンドラの奴は飲み過ぎて痛みが判らないだけだろう?」
「えぇお兄さま。酔いが覚めるまでは飛んでいますわよ、あらぬ方向へ!」
「あちゃぁ~……あれは、やっぱ使えネ~!」
「でもシビルが乗っていますから方向の修正が出来るかと、」
「おうおう、ドラゴンはシビルに鞭打たれて喜んでいる……?」
「……のようですわ。あの二人には困ったものです。魔女の石爆弾を落とさせますますか?」
「いいや、あいつらはゾフィの魔力補助で忙しいからさ。」
「そうですわね。」
「それにヴァイキングもドラゴンは怖いだろうさ。たぶん自滅するのではないのか?」
「そうかもしれません。……宝船に近づきましたわ。私たちも出動いたします。」
「大漁で頼んだぞ!」
「はいお兄さま!」
「ボブ! あの大きな船に横づけだ、気張れ!!」
「おう~よ!」
ボブの見事な舵捌きでオレグの軍艦は逃げるヴァイキングに追いついた。ゾフィは差し支えの無いマストに砲弾を命中させる。ヴァイキングの船にはいつの間にか、キョトンとしたアンナ妃の兵十名が立っていた。
「ドッカーン!」
続いて迫りくるヴァイキングの船にも連続射撃が繰り広げられた。右往左往でゾフィの砲弾を補充しているのはアンナ妃の護衛兵たち+ルイ・カーンだ。
アンナ妃の護衛兵たちは開戦前には解放されて『死にたくなければ、応戦を手伝え!!』ときつくルイ・カーンから言われていたのだった。船酔いの兵士は一人もいない。戦争とは船酔いも直ぐに治るのだと経験者先生から聞いている。
中学までは戦争経験者が田舎の教師にと……? 派遣されていた。
(きっと、そうだろう。ロ助! と口走る先生も!)*ロシアのロ助
高校ではシベリア抑留の話を聞かせて頂いたものだ。親父は銃創が二つ? と足の指が二本? 無くなっている。今でも元気でいるが……2023/12/30に他界しました。
「ドッカーン!!」「ドッカーン!!!」「ドッカーン!!!」
「ドッカーン!」「ドッカーン!!」「ドッカーン!!!」「ドッカーン!!!」
「派手に弾けるが、どう見たって魚の背骨が弾けるように見えるぜ!」
「ドッカーン!」「ドッカーン!!」「ドッカーン!!!」「ドッカーン!!!」
「ドッカーン!」「ドッカーン!!」「ドッカーン!!!」「ドッカーン!!!」
「派手に弾けるが、良く見ても魚の背骨と頭の骨が弾けるぜ!」
そう言っているルイ・カーンの頭上から金銀財宝が雨のように降ってきた。
「お兄さま、お怪我はありませんか?」
「こんな頭のコブは怪我のうちには入らないよ。もうお終いか?」
「はい最後はこの破けたスウェーデン王国の国旗です。これを早くあの女に!」
「おうおう泣いて喜ぶだろうぜ。楽しみだ!」
「あ、お兄さま、銀貨もスウェーデンの通貨ですので、大量に持って行って下さいな。きっとダメ押しになるでしょうか。」
「んだな!」
ルイ・カーンは全くの被害も出さずにヴァイキングとの二戦目を終了した。
「リリー、銀貨はどれくらい在ったんだい?」
「銀の板も在りますから、おおよそ千Kは在るのかと思います。」
次章(……条件は出しました。)
ルイ・カーンとアンナのバカ試合? いいえ、バカし合いです。書けるかな~? 書けるといいな~!