第181部 full hassle (私、ハッスルしました!)
「秘密です。……。」
名前が無いという自称シビュラの娘はオレグらの前から消える。残ったのはシビュラの身体だが、気を取り直したシビュラはたった今の事を覚えていないと言う。
「シビュラさん、お気分はいかがでしょうか?」
シビュラという名前は神託を受け取る巫女のことである。
1249年8月13日 エストニア・ハープサル
*)神憑りのシビュラ
神憑りを演じたシビュラは三人から囲まれてキョトン! としているが、当事者が消えたのだから? シビュラを眺めても事は進展しない。
「シビュラ。すまないが今後は俺の家族の元で生活してもらう。今後なにかが生じても良いように対処したい。」
「いやですよ、私が何か悪い事をしたようで。」
「当たり前だ、俺はさっきまで得体のしれない神憑りの女? に纏わり憑かれていたのだから当然だろう。」
「シビュラ、実はそうなのよ。さっきはね、こわ~い顔でね『私はシビュラの娘だ~また逢う日まで御機嫌よう!』と言っていたんだからね。」
「覚えていません。」
「で、シビュラ。お前は俺をここに連れてきたんだが、覚えていないではすまんだろうが。え、ええ??」
「あらそうですわね、どうして公爵さまは私をここに連れて来たのです?」
三人は『ガ~ン!』となってしまった。全く雲を掴むようふわふわとしたシビュラが居るのだから。
「こりゃ~シビルの夢魔法で神憑りの女を呼ぶしかないのか。」
「お兄さま、たぶんですが無理だと思います。ですが、とても効果的な方法が有りましてよ!」
「なんだ、それをやったらどうなる。」
「もち、頭から出て参ります。火花と大きなこぶが!」
「リリーさん、それ、死んじまうから却下だ。地面に埋めてしまえ!」
「え~~~やだ~私と赤ちゃんの二人を殺してしまうお積りでしょうか?」
「当然だろう、今度出てきたら俺はなにをやらされるのか、不安でいっぱいになるから。」
「そうなんですか。」
「あ、リリー。ばれてもいいから旦那のトレースを召喚してくれ。もしかしてもしかするかも。」
「しれませんわね。……、……。……、……。」
「リリー??」
「えぇお姉さま。それにお兄さま。この村には居ません。どうしてでしょうか。」
「だろうな。シビュラの腹を掻っ捌いてみる方が早いだろう。クジラのまな板に載せて……。」
「お兄さま、無理のようです。シビュラは口から泡を吹いて卒倒いたしました。オレグお兄さまが脅かすからですわ。」
「そうか残念だ。まな板の上に載せてみたいな~あぁ~、まな板、まな板たた。たたた……。」
「お願いですそれだけは勘弁して下さい。もう不埒なマネはいたしません。」
「ほうら出てきたぜ。」「まぁ、本当ですわ。」「〆るよ、オレグ。」
「おう!」x3
「私、白い悪魔です!」
「へ、」「ホ!」「はぁ????」
「もう、何もお話しする事はございません。夫には逃げられたようですし、皆さまの言うようにいたします。冬に私は産まれます。それまで肥育に努めます。」
「そうかい、なんだかな~、毛糸の靴下を編んで待っているよ。」
「手袋とマフラーもお願いします。」 「カクっ。」
「おう、シビュラは死んだのか!」
「いいえ、残念ながら生きています。」
「もう俺の家に転送しておけ。……。あの部屋な!」
「はい座敷牢!」
「こいつ、問題を先送りにしやがった。」
この白い魔女だというが、冬に産まれるとはオレグと似たり寄ったり。
1249年8月13日 エストニア・レニングラード
*)ロシアの銀地金の買収
「お前ら~夏の暑いうちにロシアを攻めるぞ~!」
「オー!!」
という訳で神憑りのシビュラも同行させた。プリムラ村に監視抜きでは置いておけない。ならば『私が残る!』と言うソフィアを置いては戦士が減るのでソフィア抜きには出来ない。
「俺は兵隊か!」
「当然だろうが、新種が出たらどうすんだい!」
「キャン!」
と吼えるソフィアは宣戦布告のような・……・。
先に送り込んだニコライ・ハーシュホーンの滞在先を訪ねる。事前に知らせてはいるが、神出鬼没が気分のルイ・カーンなだけに訪問を受ける方は気苦労が絶えないだろうか。
「なぁリリー。ソフィアは置いてきたが良かったんじゃないかな。」
「それ、言えてます。お犬騒動が見られて楽しいのかもしれませんが、先々で問題を起こされちゃいそうですね。オレグお兄さまが戦力を欲しいと言われるからですわ。自業自得です。」
「だな、ニコライは未だに宿屋暮らしなのか。」
「そうですよ。港から王宮へ通じるメイン通りのパブの三階だそうです。きっと見張りや街の観察に向いているのでしょう。」
さすがに二度目のレニングラードなのか、キョロキョロする者は……居た。しかも三匹も。だが今晩は別のパブ兼宿屋へ向かう予定。
「おい、もっと物静かに歩けないのか。これではお上りさん丸出しではないか。少しは自重しろ!」
「オレグ大丈夫よ、団体さんの旅行者だもの、こんな大人数ではどこを歩いても目立ってしまうかしら。」
「ソフィアとシビュラが一番目立つのですが、次はリリーかな。」
「いいじゃありませんか、妻は綺麗で可愛い方がいいでしょう?」
「三人もの妻は要らない。リリー以外は着替えろ!」
リリーが絹の反物でシビュラの綺麗な服を作っていた。やはい派手で目立つ。ソフィアはソフィアでミニスカのフリルつき。よく目立つ。リリーは器用に服を交換出来るのか、貴族風の白の裾の長い服を着用している。通りですれ違う人からは奇異な目で見られている。
「貴族さまの、ご一行だ!」
と一人の町人が言った。目立つのは貴族の恰好をして従者や御者を付き従えるルイ・カーンの方だった。
「もしかして、目立っているのは俺なのか?」
「そうでしょうね、貴族が街を歩くなんて有りえないのでしょう。馬車か扮装して歩くのが普通でしょうね。特に西の異人が多いのですもの。」
「シーンプ、やっぱ、そうなのか!」
「ですから言いましたように、次回からは勝負仕事以外は商人らしい恰好で過ごされて下さい。どこに間諜が潜んでいるやら。」
「魚の目タカの目か?」
「そうですよ、公爵さまはどうも塩サバの目でいらっしゃる。鵜の目鷹の目でございます。欲を満たす者たちがきっと近寄ってくるでしょうね。」
「リリー、すまないが俺はあそこの暗い路地で待っているから、宿に着いたら召喚してくれないか。宿屋を知られたら襲撃があるかもしれない。」
「そうでしょうか、ここは至って普通の人しか通っていません。大丈夫でしょうが念のために召喚いたします。」
「あぁ頼む。シーンプが真顔で言うから俺も心配になったよ。」
「大きい尻子玉はどうされました?」
「あれは、どこかで抜かれたままだったな。今は誰が持っているのやら。」
「まぁおかしい!」
リリーはオレグとソフィア、それにシビュラの三人を置いて先に行く。残された二人の女が悪い、悪い。少しもじっとはしていなかった。路地で大人しくしていないから、通行も多い場所で三人の姿が消えるという珍事になってしまった。これはこれで大いに世間を騒がせる重大事件へと発展した。娯楽や趣味に乏しい時代だから奇天烈な事件は特に流れるのが早い。
「オレグお兄さま、ソフィアお姉さま。やっちゃってくれましたわね。あの者たちの会話の内容はなんですか! 『大通りで三人が消えた!』と聞こえるではありませんか。」
「あれ~?? 可笑しいな~、」
「そうですか、あの女二匹が大人しく出来なかったのですね!」
「だからさぁ、あのテーブルに言ってくれないか。」
「パブではお説教が出来ません。食後にお部屋でいたします。」
「リリー、それは無理だと思うよ。大酒のみのソフィアには特に。」
「ですわね、もう問題発生なのかしら。」
「まぁそれだけではないようだ。隣のテーブルを挟んだ先は俺らを観察しているようだぜ。どこかのボブみたいだな。」
「あらお兄さま、まだ酔ってはありませんのね。このままお酒は控えて下さい。あとで自室へお運びいたします。」
「そうだな、ここは早く引き払おうか。」
「そうですわね、明日に出て行きましょうか。……あ、あぁ、半数だけにいたしますか? 一度に抜けましたらニコライの宿が早くばれてしまいます。」
「ほほう、それはいい。それがいい。……だが、それは良くない。」
「まぁ、ここはオレグお兄さまが残るのがベストですわ。」
「だから、それは良くないと言っただろうが……。」
「はい、……残ります。」
「司令塔らしき人物は動いたらいけません。」
「だから……残ります。」
「私はお姉さまの監視で残れません。ここはお兄さまお気に入りの黒猫になさいまし。」
「黒を二匹か!」
「はいな。隠密の行動がとれていいのではありませんか?」
「だな、一人はサキュバスだし!」
「いいえ二人ともですわ。今から召喚いたしますか?」
「頼む、船で目を回して伸びていたからね。いい加減怒るだろう。」
「では外で迎えて来ます。」
そう言ってリリーはパブを出て行く。戻って来たのは約五分ほどしてから、
「キャッホー!」・・・・「公爵さま~!!」
「おい騒ぐな、皆から目を付けられるだろうが!」
「いいじゃぁありませんか!……公爵さま~!」
「リリー、このベギーは強制退去にしろ。」
「そうですね、このまま騒ぐようでしたら、船の檻に送ります。ベギー静かになさい。シン・ティを見なさい、静かでしょう?」
「まだ目を回しているだけです。」
「猫に説教を説いてもなぁ、猫に小判だし。」
「猫の躾は常に、ぶんなぐる”に尽きるんだぜ。」
「お、おおぉお!!! 親父、どうしてここに?」
ルイ・カーンがベギーに、無駄な説教を始めようかと口上を述べだした時に、不意に後ろから声を掛けられた。驚いて振り向いた先には建設ギルド長が立っていた。そこには2525の妖怪ジジイの笑顔があった。
「息子こそ、どうしたんだい。奇遇だな~。」
「よせやい、後をつけて来たんだろうが、違うか。」
「あぁ違うね。俺もレニングラードの教会の建設にさ。」
「それはいい。やったな親父。それで瓦はどれくらいだ?」
「それがな、尖がりお屋根の小さな屋根なんだよ。だから一万枚にもなりゃしないのだよ。まぁ、それでも初の大きな仕事だからな。だから俺が出張ってだな。」
「ほれ、俺の飲みかけだが飲めよ。」
「おうすまね~。俺が出張ってだな、打ち合わせに来たら、も~全部丸投げにすると言いやがってよ、だいぶん喧嘩腰で遣り合ってきたんだよ。だからもう一杯。」
「ほらリリーのビールだ。飲め!」
「孫娘よ、すまないね。美味しく頂くよ。」
「先に注文して下さいな。……それともですの?」
「よろしく頼む。お任せの焼き鳥の盛り合わせでいいよ。」
「それが私の食べる分ですわね。お爺さま、ゴチですわ!」
「好きにしろ、全部倅が払うんだからさ、好きに頼んでくれ。俺はオレグと話がしたいんだ。」
はぁいと言ってリリーは注文を出している。そのリリーの注文に注文をつける猫が二匹いた。リリーとベギーは、
「リリーお姉さま。」
「私、ベギーよりも年下だけど!」
「リリーお姉さまは、もう……。内緒にしますね。」
「分かっちゃったの? もう面倒だからお姉さまででもいいわ。それで、何が食べたいのかしら?」
「うんイカ焼き、たこ焼き、イカ刺し、タコわさ、タコ刺しに……。」
「あんた、それ食べたら腰が抜けちゃうよ?」
「だって美味ですもの。特にするめなんかは最高ね!」
「ちょっと、二匹とも船で伸びていたのは、船酔いじゃなかったの?」
「もち、船で酔う訳はないでしょうが。出航前に買っていたのよ。だって、とても退屈ですもの。」
一方、男の方は硬い議題で盛り上がっている。モンゴル侵攻で東ロシアから流れてきた農民で、レニングラードの都市の人口が増えたという。中にはペルシアから流れて来たのが居て、教会の建設現場に見てから、職をくれ”と言ってきたのが、瓦を屋根に載せる方法を知っているからだという。
「それでな、試に屋根瓦の工事をさせたのだが、俺に難癖をつけるばかりでさ、どうしても先に進まなくてよ、イライラしてな、あぁなってこうなってしまったんだよ。なぁ? 頭に来るだろう?」
「いいや全然。オヤジは実際に屋根に瓦を取り付けたんだろうな。」
「それがよ、載せるのだがどうしてもずり落ちてしまうんだ。どうしてだ? お前んちの家の建設では上手に積上げたのによ。どうしてだ?」
「それで、その男はなんと言ってるんだい。もしかして瓦に釘穴を空けないと瓦は載せる事が出来ないと言うんだ。」
「それだったらその男が正解だろう。オヤジが載せたら落ちるんだろう?」
「そうか、そうだったんだ。しかし、釘穴を空けるのもな~。」
「モンゴル帝国に宣教師を派遣したらしいぜ。あの国王どれだけバカなんだろ。倅もそう思うだろう?」
「騎馬民族の耳にキリスト教の念仏かよ。確かに笑えるな。……それ、本当か?」
「らしいぜ。西側と戦争している相手だぜ? なぁ、ちゃんチャラ可笑しくて笑えるだろう。」
「アぁ本当だったらな。……ホント??」
「それでさ、ハンは宣教師に向かってなんと言ったと、思う?」
「ギャハハハァァ・・・、きっと、お前んとこのボスを連れて来い? だろう?」
「そおうなんだよ、な! 笑えるだろう?」
「そしてお前にこそ、騎馬民族の念仏をキリストの耳に聞かせて説いてやる! だろう?」
「まさにその通りらしいぜ、ちゃんちゃら笑えるだろう?」
「でも良かったな、その宣教師はバカ真面目すぎて殺されなかった!!」
「そうなんだ、利口だったら殺されていたさ。」
「バカだから、ハーンの言う事を持ち帰って、法王に事の顛末を話すと考えたんだろうね。ハーンの方が三枚ほど上手だった!」
「いやいや法王の方が げぴた だったんだよ。凡人が声色を出して説いても誰も耳を貸さないもんだろう。」
(事実は小説よりも奇なり。どうして土着民族の侵攻のように、十字軍を出さなかったのだろうか。)
(げぴた とは … 普通のギリシアの人。七色の声色を出したという伝説がある。これは、100%ウソ。げぴた で検索されたら、いくつもの解説が出て面白い。 何度も何度も更新ボタンをクイックをする。これを考えた人、偉い! まさに げぴた 人?)
「私、気に入りました。」
「言い得てる。まさに破竹の勢いに乗った騎馬民族の思想そのものだな。」
「馬から見下ろす! か?」
「そうのようなものだ。見下ろす者が見下される! だな。」
「ルイ・カーンよ、まさに、お前、そのもだとは思わないのか!」
「あ! いや、まさにその通りのようだ。オヤジ、俺、眼が覚めたよ。ありがとうな。お礼になんでもご馳走してやるよ。」
「リリーお姉さま。……ですって!」
「良かったね白黒猫! アジの干物だよ!」
「ニャン!」x2
これで足元の見えないオレグが正常に戻ればいいのだが、一寸先は闇か!
*)地中海世界
地中海は大陸移動で大きな穴が出来た。ここに海水が流れ込んで塩湖が出来て漁業が盛んになり文化が栄えたらしい。この塩湖はアフリカから吹き寄せる熱風で完全に干上がる。人々はギリシアやイタリア地方で主に暮らしていたが、今度は大西洋から海水が流入して、約二百年かけて満水になった。海の浸食で
陸地を追われた人は地方へ侵攻して、戦争になり悉く植民地化していく。
ギリシアの島に文化が残ったのは、もともと陸地だったのが海になり山に避難したのが、そもそもの始まり。地中海世界で文化が似通っているのは、船で行き来して栄えたというのはウソっぽい。船を造るには木材が必要だが、乾燥地帯には大きい樹は存在しなかったはず。ならば海が広がるにつれ各地に移住した人々が文化を継承したはずである。だから似た文化が存在する。
ギリシアの人は東に移住いわゆる侵攻していく。その先には元から居た民族と戦争を繰り広げていく事になる。大木をくり抜いた船で地中海を行き来したのか? 大した荷物は運べないとおもうのだが。一日で着く距離でもないだろう。それが海上交通が出来たと言う方が滑稽。
多民族間の戦争の始まりである。追い出された民族は東に逃げるから、インド人とヨーロッパ人は似ている。さらに東に行きついたのが日本。日本は大規模な火山噴火に遭いさらに東へ逃げる。アメリカに行きついたインディアンの祖先が日本人なのだろう。その先住民は東のヨーロッパから侵攻を受けて南北アメリカ大陸の民族は滅んでいく。蹂躙したヨーロッパ人は、性病や風土病を持ち帰り、かなりの人間が死んでゆく。
まさしく 「たたりじゃ~!!」
小国家に分裂したと思われるギリシアはその主君を称えて神となる。これがギリシア神話の発生か。継承されて尾ひれがついて今に伝わる。か??????
私、異常ですのでご自分で考えて下さい。地中海沿岸を発掘調査が進めばもっと面白い事実大陸が出てくるだろうに。俺は死んでいるから残念。ムー大陸は地中海でありアトランティスの大洪水は地中海の生成過程の逸話が改変されて伝わったもの。 別に矛盾したことは書いていないと思う。中世・近世では地中海の若い歴史すら判らなかったはず。そこに遺文伝聞の怪文書を読み解いて、ムー大陸なるものを創造した。全部こじつけのウソであ~る。
遺文伝聞が地中海地方に残る意味であ~る!
みなさん考えましょう。「私、チタンダは気になりました!」
*)full hassle
議論百出。難題山積み。
「なぁ息子よ。げぴた の三文字が上のような問題に行きついたのだが、どう思う。」
「そうさな、この作者は気分屋で何を考えて書いている訳でもなく、思いついたら吉日らしい。三分先は闇なのだろうさ。何を書くのか予想も出来ない。」
「そうだよ物語のストーリーも考えていないらしい。だからレニングラードの事が書けないんだろな。」
「まさしく!」
ルイ・カーン、ソフィア、リリー、シビュラ、シン・ティ、ベギー、シーンプと二人の娘。エレナ、ソワレ、キルケー、ニコライとアウグスタ。魔女の3人。ヴァンダ王女とゴンドラは、まだバルト海クルージングに出て旅行中。
んな訳、あるか~!!! 今に奇天烈な、いや奇想天外な話で・・・・・・。書籍では出来ない情報が満載であ~る!