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人狼夫婦と妖精 ツインズの旅  作者: 冬忍 金銀花
第四章 国盗り物語
171/257

第171部 また、ルイ・カーンという名前に戻られますか?



 オレグは領主のかの嫁をどうしてやるかと思いあぐねるのだった。だから結果は出ないのだ。思いあぐねるとは、あれこれと考えること考えがまとまらないという意味だから。


 考えがまとまらずに一睡もできなかったオレグは、直ぐにでもトチェフ村へ飛んで行きたかったのだがドラドンには拒否された。


「そうだな、黒幕は表に立たないから黒幕なのだ。そうだ、ここはリリーに全権委任だ~!」


 バカなオレグに成り果てた。




 1249年2月14日 ポーランド・トチェフ村


*)トチェフ村


 全権委任。このオレグの四文字は蛇の道とも読んでいいのだ。そう、女狐の皮をひん剥いてもいいのだ。結果はオレグが負うのだから。その仕返しは不明だが。ただ、コーレグ金貨が帳簿の包みに同封されていた。


「まぁお兄さま。この金貨を使え! と言われますのね。」


 だがトチェフ村から購入できるのは、麻布とライ麦だけだ。食器はオレグ雇用の職人が作るのだから。鍛冶製品もそうだ。これらはギュンターが管理している。他はブドウやワイン。ビールに牧場の肉類も今では全部ギュンターの管理だ。全部がオレグの商品なのだ。


「お兄さま、使う方法が有りません。」


「お兄さま、いい案が無いのですね。暫くお休みされて下さい。あとはリリーがどうにか致します。焼打ちでいいですよね?」




*)リリーのバラの樹



 バラは低木(灌木)でたくさんの品種が作りだされている。栽培は意外と難しい。若木は成長が早いので『あっは~ん、栽培は簡単だわ~!』という感想を抱くが、中成木や老木になるととたんに気難しくなる。人間と同じ。


 愛情を注げばそれに応えるように綺麗な花々を咲かせてくれる。残念ながら私には栽培の経験がない。本で読んだだけ隣の植木を見ただけ。バラ園の樹を見ただけの三だけだ。苗を買った事もなく、どこかの歯科医院の伸びた若芽を摘んで挿し木をしたのだが……。ここでは大きい鉢に植樹されてもいる。植木屋さんが手入れしているようだ。まぁ、よそ様の花を見ているだけでいいか。


「でも、このバラの花たちは、私の命そのものですもの。大切に育てなくては。目下の懸案事項はドイツ騎士団だけだわ。いつ侵攻して来て私の木々を踏み潰すかもしれないものね。」


 リリーの予想は外れた。ここトチェフ村は貧弱に見えたのだろう侵攻は無かったと思う。史実は不明だが侵攻されたとも記入がない。


「さぁごはんですよ~、今日はパブの残り物でごめんね。ビールをいっぱい飲んで大きくなってね。」


 とパブでの残飯を土に根元ねもとに、根元から少し離れた所にすき込んでやる。あとは毎日、可愛い声で『おはよう』や『おやすみ!』とあいさつをしてやればいいのだ。それだけで植物は嬉しくなって元気に育っていく。


 バラは古代ローマ時代から愛好され栽培されたのだが、ここ中世ヨーロッパではバラを異端視している。なんでもバラの香りが人々のこころを惑わすからだそうだ。つくづくキリスト教は弊害しかもたらさない。ベルサイユは、宮殿のくさい臭いを消すために、たくさん飾られていたと聞いたのだが。



 再びバラの花が市民権を得るのが、あのルネサンスになってから。中近東の沢山の品種が紹介され始めてからになる。この頃になって脱中世ヨーロッパになる。


ようやくペストの恐怖が去って人々が明るくなっていったからだろうか、ペストは三回ものパンデミックがあった。第一次のパンデミックは過ぎて、今は第二のパンデミックに差し掛かろうとする時代だ。1331~1855年が二次になっている。あと九十年もすればヨーロッパの増えた人口は半減していく。ただただ恐ろしいの一言に尽きる。


 みなさん、蚤の市、はご存じですよね。この蚤による媒介でしたので怪しい物は全部、二束三文で売却だ~! として栄えたとも考えられます。


 今はフリーマーケットのご先祖さまにまで昇格しています。語源は定かではないらしいのですが、フランスから広まったとか。




 日本みたいにお風呂が発達していなかったからだ。いや、それ以前に住宅には暖房を兼ねるように藁が敷き詰められて、零した食べ物はそのまま放置、ウンチもそこいら中に放置された。部屋の区切りもなくて人とネズミは同居していたのだな。詳しくは検索されて下さい。



「なによこれ。私の愛情あふれるバラの章じゃなかったかしら? もう、あったま来ちゃう。」


 とリリーは怒って自宅に引きこもる。暖かい屋内で咲かせたバラが、リリーを待っているからだ。窓辺の日当たりに置いた植木鉢、簡単な板で作られていた。そんなリリーを和ませるのがバラの花。


「もういいです。先に進んで下さい。」


 リリーが留守の時はバラ園の手入れはソワレが担っていた。


「ソワレさん。マルサは一旦置いといてバラ園の管理をして戴いたお礼を、そのう、ごしょう……。」

「はい喜んで招待を受けますわ。エレナも同席をお願いできて?」

「えぇもちろんですわ。私が一所懸命にお料理を作りますから食べて下さい。」

「はい喜んで~!」




 1249年2月14日 エストニア・レバル


*)オレグ公爵の悩み


 ところ変わってレバルのオレグの館だが。


「お前たち、どうして本館に住んでいるのだ。なに、ダメとは言っていない。ただ旧館のメイド壮に追いやるだけだ。」


「あの旧館はイヤでございます。使えないメイドがごろごろとしております。それもこれも伯爵さまが教会から見境なく女を買われたからです。」

「あ~そうだった。俺はあいつら全員を放置して帰ったからな~……あ~! それで三十人から居たはずだがどれほどに減ったのかな。」


「それが全然減らなくて、逆に国元から姉妹を呼ぶありさまで増える一方なのでございます。」

「あちゃ~ではここの賄いはどうなっておるのだ。」

「はい仕事と言えば、館の掃除と荘園の庭仕事だけですので全員が順番に行っていまして、仕事一に対して昼寝が六でございます。」

「するとなんだ。お前ら姉妹は昼寝が七なのだな。」

「いえ、決してそのような事はございません。ここの維持管理費を稼ぐのが六で 昼寝は一でございます。」


「そんなアホな!」


 オレグは考えた。どこかオレグ遺産を残していただろうかと。だが思いあたるところはなかった。


「ま、まるで野良猫を集めた猫屋敷だな。俺が悪いのか!」

「そう…ではありません。」

「そうの後に続く文字はなんだ、あ、ああん??」

「そうです。」

「もしかしてエサの出所は教会か!」

「そうです。」

「すると明日にでも挨拶に行って、菓子箱の超重た~い物を用意して!」

「そうです。」

「ま~た押し付けられるメス猫を買い取るのか!」

「そうです。」

「これが俺の運命というやつか!」

「そう…ではありません。」

「ならばなんだというのだ。俺には分からぬ。」

「そう…ですか。全部、お妾さんにすればよろしいのです。」

「するとなんだ。女の精気を吸い上げて残った筋は魚のエサにするとか!」

「そう…ではありません。」

「ならばなんだ!」


「お転婆、いや転売にいたします。かなりの利益が見込めます。なに教会と同じでございますれば、神様もお許しになられましょう。」

「そうなのか!」

「はいコーレグ金貨と同じようなものでございます。」


「お前、誰だったかな。ぺ、ぺ、ぺ……。」

「唾は飛ばさないで下さい。もう私なんぞお忘れですか!」

「ペンギン・ギュントだったか!」

「ペール・ギュントでございます。」

「トームペア城のヴィルヘルム家であったな。そうするとお前がここのATMなのか。それとこの姉妹にはパブの女将を命じていたような……、」

「すみません、私が勝手にクビにいたしました。今では私が主人を務めまして、大いに稼がせて頂いております。」


「そうか、そうなのか。で、今日は?」

「ご挨拶に参りました。引き続き雇用契約をお願いしたくて!」


「それで、おお風呂敷はなんだい。」


「この貧乏なエストニアの貨幣につきまして……少々。」



*)流通しないデンマーク国の金貨


「デンマーク領・エストニアは貧乏なのか!」

「はい。金貨は使われません、流通はすべて銀貨でございます。」

「すると俺の……この前の失敗とは、」

「そうでございます。ご理解が早いですね。」

「この国は金貨が使われないのがよ~く分かった。だからコーレグ金貨を見せただけで逮捕されるのか。」

「公爵さま。それはご存じのはずではございませんか、お尋ねします。銀貨は?」


「ドイツ銀マルク。」


「正解です。ここはひとまず西へ行きまして金貨で銀貨を買いましょう。そうして当座の資金を得まして、今度はデンマーク国の金貨を鋳造しまして、さらにドイツ銀マルクを買い漁りましょう。」


「するとなにかい、デンマーク国の金貨をただで作ってやれと言うのだな。」

「はい、デンマークにとりましたら自国の金貨が増える訳ですので、当然にインフレに振れ国は税金を取りやすくなります。」

「デンマークを助けるのは気に入らん。あとでギャ⇒フンと言わせる事が出来るのならば危ない橋でも渡ろう。」

「いえいえ、国が地方貴族から税金を徴収しておれば、エストニアでも例外なく貴族らも取りたてれられます。そうなればここの貧乏国はさらにその力を失います。まずは、トームペア城を根城にされましたら……どうでしょう。」


「国を盗るのか!」


「さようでございます。コーレグ金貨とかドブに捨てるような使い方では本当に使った! とは言えません。」


「伯爵さま、お身体が震えておいでですが、……お寒いのですか?」

「そう思うのならば暖炉に火を入れてくれないか。」

「あ、そうですね。いつも私たちだけでしたので思いもよりませんでした。」

「ふぉ~ふぉっほ!」


 ペールが大声で笑っている。


(こいつ、どこから湧いて出てきたのだ?)とオレグはこころで問うてみる。



「私はサタンですので当然煙突からに決まっております。」

「だったら火も入ったしもう帰れないな。ここで永住するか!」

「当然でございます。公爵さまは執事をお持ちではありませんから私がその右腕になりましょう。……閻魔です!」


「黒黒、お前たち俺を図ったな!」

「はぁ~いそうでございます。それと私たち出勤しませんといけませんが、お話の続きはパブで行いませんか?」


 俺のパブが一つ空いたのでどうもこの三人が偽の契約書で買い取ったらしいという事が分かった。普通の契約書だったから、ワルス夫妻も異議もなく金銭を受領し、蔵(二人は倉庫と言ったが)を建てたという。


「あいつら~よくもよくも~。」


「公爵さま、あの夫妻には口止めをいたしましたので、責めないで下さい。私の計画がもし漏れてしまったら打ち首ものです。」

「あの黒猫を好きな娘はどうしている。」

「もう少しでお嫁に行ける歳になります。が、なにか。」

「お前、娶ってヴィルヘルム家を継げ。俺はエストニアの国王になろう!」


「ゲゲゲ……。」x3


 瓢箪からとっくりが出るような摩訶不思議な方向へと物語が進みだした。


「またルイ・カーンという名前に戻られますか?」


「そう……するか。すまぬがペール。明日からハープサルに行くから付き合ってくれないか。デンマーク国の金貨は持っているのだろう?」

「はいたんまりと。ドイツ銀マルクも少しは持っております。」


「おう、これから忙しくなるな~。」


 物語が動き出した。



 リリーには書簡でグラマリナは不問にするから急ぎ帰れ! と書いて送った。


 オレグの書斎の机にはリリーとの通信箱が設置されていた。ここには、そう、リリーの境界の入り口が開けられている。


 前の帳簿と一緒に届いたアイテム。


「これ使うと俺の魔力が手を通して吸われてしまうからな~怖いな~。でもでも、この箱に手紙を入れるには、右手を入れなければならないし~、すると通信料の代わりに、俺は魔力を払わなくてはならないし~、いやだな~でもでもパイソン一頭マルマル引き出す事も、出来ちゃう訳だし~。またパイソンの串焼きを貰おうか!」


 オレグが通信箱に右手を入れて掴んだ物は今回はなんだかとても柔らかい。「えい!」とばかりに取り出した。



「オレグお兄さま、ご用ですね?」

「ヒャッ!!……ど、どうして。」

「どうしてって、お兄さまが私の胸を掴むからでわ。お蔭で私、驚いちゃった!」

「……。」

「心臓に悪いですね、……すみません。でも一度トチェフに戻り船をグダニスクまで届けなくてはなりません。ところで、あのマクシムさまにご用はありませんか?」

「そうだな、ドイツ銀マルクをたくさん欲しいとでも伝言を頼めるか。」

「ラジャー!」

「ブッ!」



「リリー時間だ。出かけるぞ。」

「はいお供いたします、……どちらの寝所パブへ?」

「あ、俺のパブにだ。晩飯に行く。序に俺の部下も紹介する。喧嘩するなよ、前はソフィアとあいつ等がドキャ・ファイトをやって俺のパブを潰しやがってな、いい迷惑だったよ。」

「では、お姉さまは今、メイド姿になって……?」

「今日改装開店なのだが、もう今頃はクビになっているだろうさ。」


「それ言えてます。お姉さまもこらえしょうがありませんもの、一番酷いでしょうか。」


「おいおいその言い方はこの俺も含まれるのか。」

「お兄さまはご自覚されてある分、いくらかましですわ!」

「ひで~言い方だな。虫の居場所が口になったのか?」

「はい、奥歯が少々痛みます。」

「奥歯に物が挟まった言い方だものな。それで閊えているのなんだい?」


「お兄さまの甲斐性なし……。」


 リリーはオレグの顔を見て急に、グラマリナへの対応なさにオレグへ腹を立てたのだ。


「私に丸投げしておいて後で不問とはなんですか。すでに色々と画策かくさくを練っていましたのよ!」

「あ、すまん、すまん反省するよ。しかし、俺の方が忙しくなってさ。ね?」

「今日は久しぶりに会えましたし、それにしっぽのあるあれが居ませんので甘えさせて頂きます。」

「それが出来るのならばいいぜ。とことん付き合うからさ。」


「とこふとん、と言って貰いたいです!」


「と……こふとん、ん?……。とこ…ふとん。……??」


「お判りになられないでいいのです。ですがあの、すこし懐かしいような、しわタイツの女は放置してもよろしいですか? あとが怖いと思いますが。」


「あぁ、あれな。俺が手を出したら、」

「それはだめです。私だけにしてください。ここはパイソンの生血でも注いでパブまで歩かせましょう。」

「それでいいのか! キルケーは生き返るのか!」

「でも、このまま殺した方がいいのかもしれません。」


「ギギリー……。聞こえたわよ~……。」

「キャーゾンビ!」

「オレグ~腹がグ~。」

「そうだな歩けるか。」

「引きずってくださいな。パブまで絶えて、いいえ耐えてみせます。」

「そのまま絶えてろ!」



*)俺の妹だ


「このパブのはずだが、……随分と大きく成長しているな~。」

「まぁ恥ずかしい。」


 トンチンカンな返事のリリー。


「……? ここには不思議なモノが居るから、飛びかからないでくれよ。」

「……? 豹かしら?……猫ですね。大丈夫です。親戚ですね。」

「そう、なのか? あいつらは爺臭くてダービーがとても好きだというぜ!」

「馭者ね! とても上手なのでしょう?」

「そうさ、最高ににね。」

「ホクダイの競馬部の後輩ですもの。よく知っています。」

「そうかぁ? 麻美の後輩か!」


「冗談です、……我は中の子猫を二匹、我の目の前に召喚す! ド・ロボウ猫!」

「ポン、。。。。キャッ! トっ!!」


 いきなりリリーはシン・ティとベギーの姉妹を召喚した。二人はフライパンとお玉をそれぞれ右手に持っていた。


「なによそれ! 私と喧嘩したいのかしら?」


 と二人の出で立ちにリリーは啖呵を!


「……これ、ちっぱいだわ。」「そう、聞いたことがある。」

「そうですか、小さいですか。」    「カチ~ン!」


「ガチ~ン!! バンバン、パン、フライ~~!!」「パン!!」


 リリーが黒を殴る。黒も殴り返す。もう一つの黒もフライパンでリリーを叩く。瞬く間にキャットファイトになった。


「俺、先に食っているからな。」


「はい…どう…ぞ。ここは直ぐに片付きますから。」

「そうかぁ?? あまり無理するなよ。」


「なによ、」  

「なによとはなによ、」  

「アバズレの姉妹ね!」

「アバズレで悪い!」

「いいえ、お似合いだわ!」

「まぁ、胸を掴めないのね。」

「あんたたち六つもあるのね、羨ましいわ~。」

「そうでしょう。」

「でも貧乳!」

「ヒ、ヒ!!」

「だって六等分ですもの。小さいわ!」

「六等分!!」

「だから私が大きいわね!」

「まだ子を産まないだけよ。」

「産んだら大きくなるとでも?」

「そうよ、ちっぱいの十倍にはなるわ。」



 表の喧騒に店主がバケツを叩きながら仲裁にはいる。


「お前ら! いつまでさぼっているんだ。公爵さまが見えたから早く戻って?? これはこれはもしかして、リリーさま。」

「そぉ、ですが?」

「はい、どうぞ、ガチン、どうぞ、ガチン、お入り下さい。」

「アイ、アイ。」


 ペールはリリーへの挨拶の途中途中で器用に姉妹の頭を殴っていた。姉妹は「アイ、アイ」x2、痛いと言っている。


 パブではオレグが、


「俺の妹だ、……爪を立てるな!」

「は、はい、です。……。」x2


 ソフィア以上にリリーの性格が捻れたのだろうか。


「あ~ぁ、ぶんなぐってせいせいしたわ。」


 リリーは先ほどのイライラを解消しただけだった。姉妹にしたらいい迷惑なのだが、オレグを怒らせたら怖いのか、その後は大人しくなることはなかった。料理に塩や胡椒をたくさん混ぜたり、リリーのお皿には二つ穴の肉やブタの耳、丸いしっぽや爪のある足を載せて配膳している。


 この姉妹の仕打ちにリリーは、


「村のあの頭の威力を試す時だわ。トリ頭、召喚!」


 リリーはニワトリの頭を紐で通した輪を二つ取り出して姉妹の首にかけた。


「三歩あるいたら全部忘れるからね、楽しみだわ。」


 恐ろしいまでのリリー。姉妹はお客の注文を聞いては忘れ、ペールの指示も聞いては直ぐに忘れるのだった。常に怒られている姉妹。


 しまいには、


「これ最高に面白い。」


「リリーさま、もうこれくらいでご勘弁下さい。あの二匹にはもぐさを据えておきますので、ひらにご容赦を!」


 ペールがリリーに泣きを入れる。


「そ、そうですわね、営業、ぼ、妨害ですわね、すみません直ぐに呪いは解除いたします。」

「ペール、俺もリリーにはお灸を据えておくからさ。」

「リリー何か出して謝れ。」


「はいマタタビ!」

「ニャン!」x2

「……。」



「公爵さま、間もなく閉店いたしますのでお二階へお願いします。」

「まぁお二階。ワクワク・どきどき。」


 トンチンカンな返事のリリー。


「あぁ待っている。」


 残念ながらパブの入り口に放置されたままの物体は……。



 オレグの国盗りが始まるというのにこんな出だしでいいのだろうか。


「なぁ~にタイ焼きに餡が入っていないだけさ。」


 そういえば、北海道の小豆が品不足で黒餡が不足していたのはどうなったであろうか。大雨も勘弁して欲しい。降ればすぐに五十mmとか百mmもの降水量になる。




「ようね~ちゃん、今日は一人かぁ?」

「うるさい。」

「お茶しないか。肉奢るぜ!」

「え! ホント? いく行く。」


 一人の女がナンパに靡いてパブへと招待された。


「ここだ、ここの料理が一番旨いんだぜ!」

「へ~ここにもパブがあるんだね、でも名前が良くない。」

「ケン・ケン・パ~だぜ、な、面白いだろう? な?」

「ケン・ケン・パ~。……それって、……嫌・犬・パ~だね! いいわ、受けて立つわ!」

「そうこなくっちゃ。……、そこのゾンビ、どきやがれ!」


 チンピラは店の前で転がっているモノを蹴飛ばした。すると、


「兄貴、どうしました兄貴。骨と皮だけになりましたぜ!」

「お前のも頂戴!」

「ぎゃ¥-~~¥!!」

「その悲鳴で、銀貨一枚しか持っていないのね。」


「なんだこいつら。この俺さまに奢らせるつもりだったのか!」

「そのようね。」

「な~んだ。あんた生きて戻っていたのね。残念だからご馳走してあげるわ!」

「ソフィア、愛してる!」


「嫌よ、冗談は嫌いよ!」

「犬でも愛せる女は他に居ないわよ?」

「パ~チョリンな事言わないで。私、オレグ一筋なのよ。」


「へぇ~嫌・犬・パ~がパブの名前なんだ。」(たて読みで!)


 と右手の親指を立ててキルケーも感心したのだ。ソフィアはこのサインが中に入れ? ……私の男が居る??……と判断した。



 またまたこのパブででもド・キャ・ファイトが始まるのだろう、役者が揃ったようだ。


「オレグ~お待たせ~、来たわよ~。」

「ぎゃにゃ~!!」x2 

「ぎゃだにゃ~!」x2

「にげぎゃだにゃ~!!」x2

「あ~ら、もう逃げ出すのかしら!」


「お姉~さま。二階ですよ~遅かったですね~。」

「あらリリー。来てたんだ!」



 次の章はとても長いです。書いた苦労は読者さまにも当然背負って頂きます、悪しからず! 誤字脱字、当て字は愛嬌ですよ!

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