第162部 ドラゴン(悪魔)とヴラドⅡ世(ドラゴンの騎士)の関係
「ケケケ……!」
と囚われの魔女が高笑いをした。
「呪われた家族なのね、もう全員お仕舞よ!!」
「うんうん、そうだね! ヤドヴィガも卒倒しているしこの物語も終わりだね!」
「そんなのイヤよ、今日も全部一気に斜め読みをして頂いたのよ。ここで大人しく終わりはしないわ!」
「もう、ばっかじゃないの?」
「お前なんか、キルケーに頼んでこけしに…?……?? キルケーはどこかしら!」
「リリーお嬢様、キルケーさまは伯爵さまに拉致されたもようです。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・。。。。。」
西の海上に異変あり。
1248年12月22日 エストニア・ハープサル
*)ドラゴンとヴラドⅡ世の関係
魔女たち六人が倒れた四人をせわしく介抱している。
「リリーお嬢様、ソフィアの姐さん、オレグのカシラ!」
めいめいが勝手に呼んで気絶した者を揺り動かしている。ここでは言えないが魔女たちは足で小突き……いや、足までも揺すってリリーを起こそうとしていたのだった。その甲斐あってか一番に目を覚ます。
「あ~私、とても嫌な夢を見たみたいだわ。ねぇ貴女たち、まさか足で蹴ったりしてはいないよね!」
「ブルルxルル……めっそうもありません。足で小突くとか決してそのような無体はいたしておりません。」
「えぇそれは信じるわ。無体は上の役所が下の者に行って初めて無体というのよ。理解していないのね?」
「いいえ、私たちの”足を揺すっていただけです……。」
「そう、それならばいいわ。ところで朝食は出来ましたか?」
「はいもう少しです。」x6
「そう、できるだけ早く用意なさい。もう少しでイングランド経由でドラゴンが舞い降りてきますわ。きっと目を回しているはずだから、間違っても貴女たちが食べられないように注意なさい。」
「リリーさんリリーさん。どうしてゴッドランド島に飛ばされたドラゴンがイングランドまで行くのです?」
「あぁシーンプさん。お子さんは無事でしょうか? もっともな意見ですね。夜中に舞い揚がって方向音痴がまともに飛べるとでも?」
「あれ、方向音痴なんですか!」
「あのドラゴンにしてみれば、ゴッドランド島からここまで一時間もあれば着きます。ですが着かないとなれば……?」
「えぇ西へ飛んで行ったとか!」
「さ、私の秘伝の薬を使って皆を起こしましょうか。私の壺はどちらに?」
「ごぎごにに……。」
鼻にエビで栓をした魔女が壺をリリーの下に運んできた。
「そうありがとう。では実験その二の開始ね。」
そう言いながらリリーは壺に布を握った手を入れてごそごそとしている。魔女たちにはイヤな予感しかしなかった。
「最初はお姉さまからですわ。お姉さま、起きて下さい、」
「ぎゃ~~~!!」
「お兄さま、鍋の用意ができました。」
「お! 早くくれ! ぎゃ!!」
「ソワレさん、お母さまが貧血でお倒れに!」
「それは良かった、もう二度と起きないように……ぎゃ!!…あれ?」
「それは夢ですわ。次は……。」
「もういません。」
「ということはお姉さまが言葉が出ないので、最悪だったのですね。」
「リリーお嬢様、それは違うと思います。お姉さまはお鼻を激臭で痛めたかと思われます。」
「そう、それならばいいわ。…私、何か重要なことを忘れたような? ま、いいわ。すぐに思い出さないのであれば大したことじゃないのよね。」
「いいえ、キルケーさまが拍爵様に拉致されたようです。」
「あぁそうですか、キルケーならば公爵さまをコウモリに変身させるでしょう。そうして焼いて食べるから心配はいりません。」
(私は、公爵さまではなくて伯爵さまに”拉致されたと申していますが??」
「ゴゴゴ・・・・ごごご・・・バサバサバサ・・・。」
「そこ、逃げなさい。」
西の方向から物凄い大きな爬音が聞こえてきた。それも天空の方であった。魔女らはリリーから言われたように一斉に避難した。
「ここに舞い降りるからここにはたくさんの壺を置いてと。北側には頭が倒れてくるから大きな漬物石を置いてと。」
「リリーお嬢様、ゴンドラさまを殺すのですか?」
「いいえ失神させるのです。殺しては面白くありませんよね? 」
「ゾ~~~!!!」
とリリーの恐ろしさに怯える魔女たち。
「ジェアグゥィチエルモジン。ヴァンダ女王、ヴァンダ女王はいずこに!」
屋根の穴を通過する前から叫びながら舞い降りるドラゴン。
「オハ~!」
と言うヴァンダ女王。リリーは大きな声で、
「全員、退避~! 耳をふさげ~!」
「は~い!」x6
「わ! とととっっ……ゴキン!! ぎゃい~~~ん!!」
見事にリリーの罠に嵌って倒れて後頭部を損傷、失神した。
「リリーお嬢さま! 割れてしまいました。」
「そのうちにくっつくわよ、放置なさい。」
「はぁ、漬物石は割れても元に戻るのでしょうか……?」
「お姉さま、ソワレ、さぁ起きて下さい。頭、全壊、いや全快になさって。ドラゴンが着きましたわ!……ついでにオレグ兄さまも……。」
鼻からエビの尻尾を出した三人が起き上がり囲炉裏に集まった。
「リリー待たせたな、もういいぞ。このエビ、お前らの配慮なのか!」
「はい、朝食の具材です。お気に召しましたでしょうか?」
同じく鼻からエビの尻尾を出した魔女が言うのだった。
リリーは絶賛失神中のゴンドラの鼻をつまんで、
「では最大に壺の酢をゴンドラの鼻に流し込んで……。?? 起きません。」
「死んだか?」
「はい息をしていません。ヴァンダ女王なにか手立てはありますか。」
「若い娘の生血で元に戻ります。吸血ドラゴンですから!」
と言いながら魔女の一人から生血を抜こうとしていた。魔女は抵抗し悲鳴をあげるも誰も助けようとはしない。男どもは大きく目を見開いてヴァンダ女王が魔女の乳房に噛みつく処をつぶさに見つめていた。
「あんたたち、つぶさじゃないわね。なんで、ちぶさ見て鼻血出てるのよね。」
「ソフィアさん、その男たちの鼻血を集めなさい。」
「あ、これね。……ゴン! もっと出して寄越しなさい。」「ゴン!」「ゴン!」「ゴン!」と、ソフィアは男たちの鼻を殴っていた。
「も、ももも、もう、勘弁してください、鼻が潰れちまう。」
「ウソを言えばまた伸びるわよ。ほら伸びてきた。あんただけは私からもっと殴られて喜びたいのね!」
「お姫さま~! 黒タイツがお似合いですぅ~!」
「ソフィア、シーンプには毒になるから止めてくれ!」
「そうなのね。……だからシーンプには女が近づかないはずだわ。」
「いいのです、女は二人をもらって育てています。」
「あんた、それ犯罪だからね。判ってないのね。」
「はい中世ですから、女衒も普通でしょう。」
「ガバッ!」・・・・・・・・「ヴァンダ女王、ヴァンダ女王はいずこに!」
とゴンドラは跳ね起きて、真っ先に自分の下を見た。
「よう、ゴンドラ。早かったな、パンダの敷物はないぜ!」
「ではこの赤い敷物は??」
「お前の血だ、貧血になっていたから今お前に輸血をしていたところだ。」
「ワシは男の血は好まぬ。そんな不味いものは返す。」
「あ、こっちのビンに女の血を入れておいた。飲め!」
「おおすまね~、赤ワインを頂こうか。」
すっかり正気に戻っていた。飲んでいる側から後頭部に開いた傷からワインが流れでていた。それもすぐに止まり傷が癒えていく。
西の海上に異変あり。
「オレグ、風景描写はもういらぬであろう。ヴァンダ女王を出せ。俺はヴラドⅡ世とパンダ王女の関係を知りたいのだ。」
「ヴラドⅡ世は私の父なのよ。もう放っておいて!」
「そうよゴンドラ。正気に戻りなさい。もう脳みそのワインは抜けたのでしょう? それにヤドヴィガ(=ソワレ)とソフィアが姉妹だと分かったのよ。」
「そうだ、ゴンドラ。冷たい海で頭冷やしてこい。」
「こらオレグ。ここは昔の俺とヴァンダ女王とヴラドⅡ世との関係を問いただしているんだ、神さんのことは犬も食わぬ!」
「フン! どうせ私は人狼の始祖だわよ。神よ、序におかみさんですよ!」
ムッとしたゴンドラはオレグとソフィアを撥ね飛ばして、囲炉裏をはさんでヴァンダ女王と向き合った。
「ゴンドラ鼻息が臭いわ。顔洗ってきなさい。」
「そうかぁ? クンクン、いい匂いだぜ。この臭いはなんだ。甘酸っぱいぞ! こんないい匂いだと……腹が減ったな。これは女の匂いか? もっと寄越せ。」
魔女はアツアツの鍋をゴンドラの胡坐の上に置いた。そして壺の酢を注ぎ込んだのだった。
「おうおうおう・・・・・。もうかなわん。ありがたく食わせて頂く。」
ゴンドラのクチャクチャ音以外は聞こえない。静かになった。一心不乱に鍋に頭を突っ込むようにして食べているのだ。取り皿とかは不要、魔女たちはかわりがわりにオオカミの肉と野菜を追加していく。横では大なべに替えて煮炊きしていた。
『硬い肉を柔らかくするには酒を入れればいい。』とオレグは常々言っているから魔女は惜しげもなく赤ワインを入れていた。だが命じもしないオレグは知らなかった。知ったのはオレグが鍋料理を一口食べたときだった。
「ゲッ、ゲ!! 俺はオオカミの肉は食わん!」
オレグはおもむろに立ち上がり魔女の傍らで立ち止まる。そうしてワインの本数を数えるのだった。だがオレグは魔女には何も言わない。そこが恐ろしいと感じた魔女らだった。
(あ、あとが怖いわ。)x6
ようやく腹が満たされたのかゴンドラは、
「オレグ。ドラゴン(=悪魔)とヴラドⅡ世(=ドラゴンの騎士)の関係は……判ったか!」
「いいえ全然。俺だって知りたいよ。」
「四千文字も費やしてまだ先には進めぬのか! この愚か者め!」
「それはヴァンダ女王に尋ねてくれないか。……リリーヴァンダ女王の肉には自白剤を入れてくれたよな。」
「はいもちろんです。前章のように恥ずかしいことも、すらすらと口を滑って滑らかに、そして滑稽に! 口からドンドンと出てきます。」
「滑の字は三つで打ち止めか!」
「はい骨女ですもの! 肉体は骨だけになっておりますわ!」
「わ、わ、わわ、私は本田貴子なの?……洞窟で死んでドラゴンと共に霊になっているの?」
「はい半妖の犬夜叉にしゃぶられております。」
「私の騾馬ー、ヴラドⅡ世さまはどこに居られますか!」
「あぁそれな。今はaが付いた、息子のドラキュラ伯爵になっているそうだ。」
「あ。思い出しました。そうです、公爵さまには病弱の男の子が居るので、丸いお肉を食べさせた”とか。」
「な、な、な、なに~~~!!! 俺の片玉が~!!! 伯爵にだと~!!!!」
ゴンドラの片方のなにの行方が分かり奇声と大声で喚くゴンドラ。
「あら知らなかったのですね。お可哀そう~! それで公爵さまは……もう死んでおりますでしょうか。」
と言うのはヴァンダ女王の娘のヤドヴィガ(=ソワレ)だ。
「自分が食いたかった肉を食べずに息子に与えたのだ。死んだに決まっている。」
と言うのはオレグ。
「そうですか、そうですよね……。」
「ぬぬぬヌヌヌ・・・・・・・。」
「まだ怒っていますのね。」
「あたりまえだ。この怒りは収まらぬ・・・・・・・。」
とはヴァンダ女王とゴンドラだ。
オレグはソフィアとリリー、それにゾフィと共に外に出た。村人も全く見かけないほどに誰もいない。理想の秘密会議が開催された。居ても構わないのだが……。
「……でしょう? オレグ、私に感謝しなさいよね。」
「あぁもちろんだとも。それでさ、俺らに強力なスケットが見つかった訳だが、もちろん騙して賺してシビルにくっつけて連れていくだろう?」
「そうね、もろ手で賛成よ。」
「異議な~し!」x2
「で、今後はどうするの?・・・・・・・・。」
「もち、・・・・・・・・だよ。」
「そうよね・・・・・・・だよね。」
「え~俺、いやだな。だからさ、・・・・・・・・・・。」
と会議が続いている。
「お母さま、憎きゴンドラには昨日のおさらいを話しておいたわ。続きはどうなのよ。早く先に進みましょうよ。」
「あ、そうね、外の四人が戻ってからにいたしましょうか。また話すのも大変だものね。それに同じ説明になるとは限らないし。」
「ソワレ、奇奴らを呼んでこい。」
「べ~だ! 奇人は嫌いだもの。」
ヴァンダ女王はヴラドⅡ世=ドラゴン騎士団に任命された、ドラクルと呼ばれる事を話し出した。オレグたちが戻ってきたのだ。
「私の騾馬ーはドラゴン退治をしたのがハンガリー王に伝わると、あ、ハンガリー王はジギスムントと言ってね、後には神聖ローマ皇帝にまで出世したのよね。偉かったのよね。」
「む~年代が合わぬが、ま、いいだろう。この物語は史実のようで、どこかが大きくズレておるし、構わぬか!」
「そうですよゴンドラ。そんな小さなことは問題ではありません。」
「やい、昔ドラゴン。玉は取り返すのだろう?」
「もちろんだ、居場所が判れば直ぐにでも!」
「だったらこの俺が連れて行ってやるからドラキュラを倒せよ。ところで昨晩は残念だったな~、せっかく玉の持ち主が判ったというのに。あ~残念だった、残念だった。」
オレグによるドラゴンを騙す作戦が開始された。
「私のヴラドⅡ世はドラゴン騎士団に任命されたのだけれども、『つまらぬドラゴンを退治しただけで、このような立身出世ができたのだ、これもヴァンダ女王のおかげだ!』と、とても喜んでいました。」
「あれ~? お母さま、黒マントのおじさんは竜が怖くてチビッていましたわ。」
「ヤドヴィガ。ウソはいけません。第一にお前はドラゴンに生血を吸われていて失神していたでしょうが。」
「でへっ!」
西の海上に異変あり。西風に乗ったものが近づいている。
VladⅡ世はDraculと呼ばれた。Draculにaを付けたら息子という意味ななる。Dracula。英語読みでドラキュラ(Dracula)竜は悪魔という意味もある。これからヒントを得てドラキュラ伯爵の物語が始まった。
「自分でもそう名乗っているしー。」
西風に乗ったものが多数近づいている。
「カンカンカン!・・・カンカンカン!・・・カンカンカン!」
「お~い海賊だ~バイキンがせめてくるぞ~!!」
村中が大騒ぎになった。山の上で鐘を敲く音が聞こえてきた。
「なんだなんだ、どうした。」
集会所内部でも慌ただしくなりだした。
「カンカンカン!・・・カンカンカン!・・・カンカンカン!」
今度は村の港からけたたましく響きだした。山の上でも鐘の音は鳴り止まない。
「カンカンカン!・・・カンカンカン!・・・カンカンカン!」
「カーン公爵さま、ヴァイキングが多数攻めてくるようです。山に逃げて下さい。ここは村の者で迎え討ちます。」
「バカ言え! 俺だって戦ってやるぞ。リリーここの全員を俺の軍艦に転送しろ。……ゾフィ大砲だ。それと三人を連れて出航の準備を頼む。」
「ボブ船長、シビルを連れて出航の準備だ! 急いでくれ。」
「オレグ、残念だが今は干潮だから船は出せない、港で迎撃するしかないぞ。」
「あちゃ~俺の責任だ。船に合わせた港の浚渫を忘れていた、気づかなかったのは命とりか~!!」
「オレグお兄さま、魔女らに手伝わせれば直ぐに浚渫は完了いたします。どちらかと言いましたら沖合に小島を隆起させた方が早くて先勝の可能性大ですわ?」
「でもリリー。七人で小舟に乗って行く必要があるのだろう?」
「そうですが、ほんの少しですわ。先にシビルと風のヴェーヤスマーテに頼んで強い東風、向かい風で侵攻速度を落とさせて下さい。」
「リリー艦長、アイアイサー!」
「まはっ! 可笑しなオレグ!」
「ルイ・カーン侯爵さま『船頭多くして、船、山に登る』ということわざを思い出して下さい。そんなんでは~!」
族長が心配している。(こいつらはバカだからと)
「そうか、先導が多すぎて無駄な戦法だと言うのなだな。」
「そうでございます。」
「リリー小島は却下だ、あいつらは船を担いで山でも登ってしまう。」
「でしたら入り江の向こうの美容にいい” という泥炭土で港の周りを埋めてしまいましょう。ここのヘドロがお金になるのはまだ500年も先ですから、ここは贅沢に使用いたしましょう。」
「おお、それはいい。いや、それがいい。ヘドロでは足も使えまい。」
「侯爵さま、櫂で強くこげば進みます、です。」
「でも速度は全く出せませんわ!」
「よしその作戦、ドロドロ作戦で行こう!」
ヘドロを取り除いた海域はコーパルの海に変身していた。だが大量のヘドロを移動させたせいで、リリーと魔女の六人は戦線から離脱させざるを得なかった。
「あ、船を出せない!!」
ボブ船長はオレグを見て、
「お前バカだ。リリー嬢と魔女が恢復しない限り戦艦は出せないよ。」
「あちゃ~!!」
「おう俺に任せろ!!」