第157部 ワイルド、ウルフっ娘(こ)!
「いい! いいわウーグンスマーテ、どんどん吸い上げなさい。」
火に油を注ぐようにキルケーがひとりで燥いでいる。
オレグが寝込んで七日が過ぎた日。・・・・・ 満月の夜が来た。
三人の女はこの満月を見て勝手に宴会を始めていた。
「こんな日は飲まずにいられないわ、お~寒気が襲ってくる!」
「この寒いのに海に入るからでしょ!」
「あらシッポ!」
「きゃ、どこ?……出していないわよ。」
シビュラは寒いと言うからソフィアが突っ込んだ。そのソフィアをあのアウグスタがからかっている。
ソフィアが船から持ってきたのだろうか、肉を焼いている。酒は村のどぶろくだが金を出してアウグスタが買ったのだろう。シビュラは村の養殖池からエビをたくさん盗ってきたらしい。なにやら陰に隠れて殻をむいていた。
「きゃっは~、みんな~お先にしつれい~!!」x3
ともうすでに酔いつぶれている……。
「とても平和ですから、あの三人は放置しておきましょう。」
1248年12月9日 エストニア・ハープサル
*)赤い月と灰色オオカミ
「ウォ~ォ~ オ~~ォ ウォ~~~」「ウォ~ォ~ オ~~ォ ウォ~~~」「わ~、大変。お姉さまたちを縛ってかないと。」
オオカミの遠吠えを聴いて慌てだしたリリー。オレグも今晩の赤い月を見て不吉な予感と言っていた。
「リリー、あれはただの逸れオオカミだよな。」
「いいえ、オオカミは家族思いですから単独では生活していません。ですから森には多くのオオカミたちが集まっています。」
「シビル。お願いだ。あの三人が目覚めないように夢魔法を強くかけてくれないか、な?」
「とっくに特大魔法をお見舞いしているが、どうだろうね~。夢の中にあれが出てくるのだったら、いくら俺でも手が出せないよ。」
「でもシビル。現実よりも良いかもしれませんわ。いくらなんでも夢の中では人は殺せないでしょうか。」
シビルはお尻で会話している。頭は物陰に……。
「ぬるい、ヌルイわリリー。この私ならば夢の中ででも人は殺せましてよ。」
「そうね、貴女は特別かしら。だったらあんたも夢の中でアルデアル侯と対決されてくださいな。出来るかしら。」
「はいお安い御用です。どうなんでしょう、そのアルデアル侯はいい男なの?」
「そうね、美貌は知らないけれども七つの領地を統治する貴族さま。齢は……不明かしら。他はそこに尻出して頭を隠したシビルに訊いてね。」
「お尻ツンツン……ねぇシビル。七つの領地を統治するアルデアル侯はいい男なの? う~ん??」
「あ、あ、あれは呪いのドラちゃんよ。この私でもシッポを巻いて逃げ出したいほどの、おっかないのよ。こ、……怖いのよ。」
「ドラちゃんなら、ゴンドラを嗾けたらいいのではないかしら?」
「?……。」
シビルの震えが止まった。本人は隠したつもりの頭を上げて、
「そうね、そうよ。ここには強敵になるドラゴンがいるのよね、そうよ、ドラゴンだわ!」
「ウォ~ォ~ オ~~ォ ウォ~~~」「ウォ~ォ~ オ~~ォ ウォ~~~」「ウォ~ォ~ オ~~ォ ウォ~~~」「ウォ~ォ~ オ~~ォ ウォ~~~」
「キャー、いや~ん!」
「ばぁ”~ろ”・う”……!!」
次々に聞こえる遠吠えがシビルには怖いらしい。声が震えている。
「ウォ~ォ~ オ~~ォ ウォ~~~」「ウォ~ォ~ オ~~ォ ウォ~~~」
村の一番の長老が出てきて、
「山の神さまじゃて。心配はいらぬ。この村はご先祖さまが守ってくださる。」
「おじいちゃん。」「おばぁちゃん。」
「あれ? どっちなのかしら。」x?
「ワシはおじばぁちゃんと呼んでいいぞ。」
「お~、か~・・・・・ま~・・・・なの?」
「Ifじゃて気にするな。あのオオカミたちは毎年この時期に来るのじゃて。心配はいらぬ。ここもあの人の領地ぞえい~ひっひ~、い~ひっひ~。」
「キル、ここもアルデアル侯の領地ならば怖いわ。わ、俺は明日ポーランドに帰る。」
「シーちゃん。この私が帰しませんわ。」
「そうなのね、キルケーも怖いのかしら?」
「リリーこそどうなのよ。」
「私はお姉さまさえ居れば怖くはありません。でも、今日は寒気が止まりませんものやはり怖いわ。」
おじばぁの説明だと、村人は松明片手に山に登るという。
「なに目と鼻の先の、ほれ、港にせり出した大きな岩山じゃて。あそこに今晩の生贄を置いてくるだけじゃよ。」
「生贄ですか、おじばぁちゃんさん。その生贄はなんでしょうか。」
「若い女子じゃが、隣村から調達したでの。なに大丈夫じゃて。」
「え”え”~!! 若い女のいけにえ~!!」
「そうじゃが、どうしたか?」
「おいゴンドラは居るか、さっきは飲んだくれて寝ていたが。」
「あ、いや、居ないよ。」
「おいシビル。隠していないよな。」
「め、め、滅相もない。隠すだなんて……。もう女子の処とか!」
「わ~今晩は荒れるぞ~。俺の船は大丈夫かな。」
「お兄さま。港のドッグに入っていますからまったく心配はありません。ですが、プリムラ村はどうでしょうか。」
「おいおい、そんなことを言うなよ、段々と心配になってきたではないか。」
「お兄さまは、昨年はどちらにおられましたでしょうか?」
「たぶんエストニア・レバルだと思うが、俺はこのような事は知らぬぞ!」
「ギェ”~!」 「ギェ”~!」 「ギェ”~!」
「ウォ~ォ~ オ~~ォ ウォ~~~」「ウォ~ォ~ オ~~ォ ウォ~~~」
「ギェ”~!」 「ギェ”~!」 「ギェ”~!」
「わ~、ドラゴンだ~、ドラゴンが出たぞ~!」
「わ~、逃げろ~!」x?・・・・・・
遠くで得体の知れない叫び声と共に村人の騒ぐ声も聞こえてきた。
「あちゃ~もう遅いようだ。」
「ヴァンダ王女。あれは貴女の従者ではありませんか、どうにかして下さい。」
「シビル。お前、なにを言っておる。お前が精気を分け与えた為にこの騒動が起きたのじゃ。」
「お、俺さまのせいだというのかい。あ、あぁん??」
「もう、どうしようもない。あれは生かさず殺さずに二百年の風雪を耐えさせて来たのじゃ。」
「だったら耐えずにあんたも一緒に死ねば!」
シビルとヴァンダ王女の仲が荒れてきた。
「シビル、ル・ル、お母様に、な、なんということを言うのですか!」
「ぱこ、パコ、パコ。」
とソワレ(=ヤドヴィガ)がシビルの頭を殴りだした。
「アイ、アイ、あいや、もう、勘弁しておくれ。」(アイ=痛い)
「ぱこ、パコ、パコ。」「ぱこ、パコ、パコ。」
ソワレはシビルに馬乗りになって叩き出した。
「ヤドヴィガ、もう止めなさい。そこの下女が言うのが正しいのです。精霊に身を落としてまで生きてきた天罰です。」
「お母様! 幽霊だろうと、精霊だろうと構いません。やっとお母様にお会い出来ましたから、そのような悲しいことは言わないで下さい。うんこでも!」
「おぉ、ヤドヴィガ。……、 全部、うそでしょう?」
「バレました? か!」
鍾乳洞の洞穴で過ごした者に風雪を耐える! とは、なんと風流な!
*)鍋料理は、お好きですか?
そんな慌ただしく動き回る男たちをしり目に村女は逞しいのだった。村中の女たちは各々が食材を黒い袋に詰め込んで、ここ、集会所兼宴会場にやって来るのだった。
「あらあらドラゴンですって? 今年はドラゴンのシッポとか珍味があるのでしょうか、ねぇ? お隣の奥さま!」
「まぁいやだ。あの珍味は夜の力を呼び込むらしい”ですわ! まだ子供を作る気ですか?」
「いいじゃありませんか、うちの旦那は子供が好きなのですよ。」
「大きくなったら食べる! とか?」
「えぇその頃は私も貴女(べ~)も賞味期限がとっくに過ぎていますわ!」
「まぁヒドイ。べ~ですって?」
このような会話を耳にしたオレグは、
「シーンプとまったく同じ人種だな。これを聞いているあいつはどう反応するやら。」
女たちは持参した黒い頭陀袋を暗い納屋に置いている。ここには灯りを灯さないというのだ。村中の人間が集まるには小さい集会所だから、屋外にも臨時のカマドに火が入れられている。そこにも大きい鉄の鍋が火に掛けられていて沢山の具材が、次々に放り込まれて煮立っていた。その鍋を女が二人して木で挟んでオレグらの元に置いていく。都合三個だった。
「さぁみなさん、たくさん食べて下さいね。お魚がメインの海鮮鍋ですわ!」
「わ~本当だ、大きい魚のシッポがはみ出しているわ。」
「美味しそう~!」x?
ゾフィが一番大きいシッポを摘み上げると、
「おう、凄くでかいシッポだな、 …… だけだが!」
「それは二百Kものマグロですわ。」
「おいウソだろう!……真黒とはなんだい。」
「それは、秘密です。」
「だったらこの細長い肉は?」
「ホウリモンです。博多の名物料理をご存じありませんか?」
(食べられる物ではない=捨てる物=放る物=ほうりもん=ホルモン。)
「あのホリエモンのお腹が入っていますの。」
「あぁソーセージだな。」
「はい西側ではそうなります。」
「この大きくて丸物は?」
「クジラの目玉です。とても美味しいです。」
オレグの前の鍋には四角い物とその特大の目玉が入っていた。他にはエビが所せましと泳いでいる。底には柔らかいものがあるのだが。
「これはなんでしょう。」
「出汁用に入れた釣りのエサです。これも美味しいですわ。」
オレグは、
「ミミズ!?」 …… 「海の……ね!」
「わ~。この赤い星形のお肉はなんですか?」
「はい、人手がありませんでしたから、その人手の代わりです。」
「オレグ~私たち三人はのけ者ですか~!」
「おうソフィア。起きたか。いい夢が見られたようだな。」
「ふぁ~い?」x3
騒がしいので起きたのか、それとも匂いにつられて起きたのか。
その時、魔女らの六人からオレグにお礼の言葉が届くのだった。
「オレグさま、私たちのために精の憑く食べ物のご配慮をありがとうございまちぃた。」
「??……?……!」
「はい、トカゲのシッポに、イモリの燻製、何よりオオサンショウウオの干からびた手と足の乾物、もう最高でちゅ。」
「お……おう、そ、それは良かったな。まだ他にもあるから堪能しろよ!」
「ふぁ~い!」x6
こいつらもすっかり酔っぱらっている。
「おいそこの農婦。オオサンショウウオの干からびた手と足の乾物とは何だい。どうして胴体がなくて手足なのだ!」
「あ、あれですね。あれは、行は三日間かけて遠くの山に捕まえに行くのですが、行はそれはもう一日分の飯しか持っていきません。」
「んで、どうすんだ、残りの二日の飯は!」
「ぜ~っ食です。現地に着きましたらその、オオサンショウウオを捕まえて即、焼いて食べて飢えを満たします。」
「んで、どうすんだ、帰りの飯は!」
「はい、オオサンショウウオの胴体を食べながら帰って来ます。」
「ん??……だったら、その、干からびた手と足の乾物が確保できた食糧か!」
「はい、とても精の憑く食べ物でございます。」
「ん~精の憑く…ねぇ~!」
「はい精が憑いたら、もう子だくさんで……??」
「おた ま じゃくし か!」
「ヤモリにカエル。ヘビの燻製は最高です!」
「ゲ~!」「ゲ~!」「ゲ~!」「ゲ~!」「ゲ~!」
オレグと魔女以外は食べたものを即吐き出した。
「おうおう。もったいない。」
魔女以外は意外とまともな食材だったのだが、みんながみんな、先の会話で吐き気を催したのだった。
「オレグはん、あんさんのお鍋は?」
「あ、これな、クジラの目ん玉はゼラチンで美味いぞ。それに白の四角いものはどうも…皮の脂のようだ。これも美味くて酒が進んで癖になりそうだよ。」
「その、鍋に浮いた油がですか?」
「おう、そこの女。なにか深みのある皿を持ってきてくれないか。」
「なんでだす? お皿は貴重だす、このバチあたりが……。」
「いいから持ってこい。いい物を作ってやろうじゃないか。」
「へいへい、これでいいでっか?」
「上等、じょうとう!」
オレグが鍋に浮いたたくさんのクジラの脂を器に掬って移した。
「ソフィア、もう十分飲んだだろう、パンツの紐をくれ!」
「もう、いやだ~オレグっちゃら。みんなが寝てから外してよね!」
「バカ言うな、飲み過ぎだろう。この地酒は甘くて飲みやすいからな、ついつい飲み過ぎてしまうんだよ。でだ、紐はないか、麻の紐でもいいが。」
「オレグは女の紐だろう。だったらオレグで十分さ!」
「こいつ失礼だろう。ゾフィには……大役だ、この麻の紐に火を着けろ。」
「小さすぎて出来ないな。オレグの尻には歓迎するぜ!」
「おいおい、俺が屁をこいたらこの家は吹き飛ぶぜ?」
「そうなのか、それは良くないや。」
「はい、私は家の守り神です。私が火を着けて差し上げます。」
「おうこれは火のウーグンスマーテが適任だな、この麻紐の先に火を灯してくれ。」
「こ、これでよろしいですか、でも、すぐに消えるかと。」
「まぁそう言うな、見ててのお楽しみ!」
オレグは鍋のクジラの脂を器に注いで麻紐を端っこに入れた。そして火のウーグンスマーテに火を着けさせたら、あ~ら不思議。
「オレグ、これはなんですか、ろうそくでもないわ。でも火が燃えている。」
「ソフィアのパンツの霊力だ、どうだ凄いだろう!」「バッコ~ン!」
「これは灯りなの?」「オレグ、最低!」
「あぁそうだとも。ろうそくではないロウソクだ!」
「んな、バカな!」x?
村人が次々に集まった。
「これが、灯りに!」x?
「げ~、すっげ~!!」
「これだけ在れば一晩中の灯りとして使えるだろう。これは使えるからラビー次長さん、村をあげて作ったらどうだい。」
「あぁ、あ……、そうさせて頂く。今まで脂はホウリモンで、海に投げ捨てていたよ。……目から鱗だな!」
「俺らに闇鍋を食わせるからだよ。得したな!」
「んだ、んだ!!」x?
海のジューラスマーテは、
「これは世に知らしめてはいけません。クッジーの災難です。私は断固反対いたいます。オレグには一生憑いてまわります。」
「ジューラスマーテ、お前はクジラが家族だもんな。すまない!」
「いいえ、私の精気の元ですわ。今度からはオレグさまが、私の精気の元になられますなら、反対いたしません。」
「おんどりゃ~!、いきちぇおかさないじょ~! オレギュはあたいのものだぁからな!」
「ばっこ~ん!」
ソフィアがオレグに憑いて回る宣言をして、海のジューラスマーテを思いっきり殴り飛ばしてしまった。同時に、
「ドッカ~ン!」と天井を突き破り、海のジューラスマーテが飛んでいった思いきや、らら? 天上の空から天井を突き破り落ちてきた二体の姿があった。
「ぎゃ、ドラゴン!」x12
「おう、驚かせたか! すまなんだ。」
ゴンドラはオオカミを脇に抱えて飛んできたのだった。オオカミはのちに村娘に変化したから……。
「おう、これは手土産だ、鍋の具材にどうだ。」
「ざけんな!」「ばっこ~ん!」
「私という女が居ながら~!」「ばっこ~ん!」
ソフィアとシビルのイカズチが、ゴンドラに両頬に炸裂した。ゴンドラが差し出したのは灰色オオカミだったのだ。それを見たソフィアは怒り、若い女を抱いたゴンドラを見て、嫉妬からかシビルは火山のごとく怒るのだった。
主のヴァンダ王女は、右手で顔を覆い下を向いて嘆いているようだった。だがすぐに右手が動いた。
「あんにゃろうが、いつもいつももめごとを作ってくるったら、もう~!」
「びゃきゃやろ~が~!!」「びゃっこ~ん!」
ヴァンダ王女も酔った勢いでゴンドラを殴り飛ばした。
「あれ~!!」
「もういっべん、その女を置いでご~い!」
「おう、よく飛んでいったな~、オオカミの生贄になるのはあいつか~!」
ヴァンダ王女は真顔になり、
「王女として申します、オレグ、可愛い部下の悪口は許しません。」
「は、はい、申し訳ございません。」
生贄の娘とソフィア、アウグスタ、シビュラが例のごとく戦闘を開始した。
「おいソフィア。その女は!」
「ルーガ・ルーなのよ。仲間を呼ばれたら困るから、黙らせるの!」x3
ソフィア、アウグスタ、シビュラが仲良く口を揃えて言った。
ワイルドな生贄の娘、三人の女をものともせずに軽くあしらっていた。
「ぶひょ~、ワイルド!」
オレグは感嘆してそう叫んだ。いくら酒を飲んでも飲まれることはないはずの巫女たちなのだが、どぶろくには敵わないのだろう、口が回らないのは当然としても、手も足も自由には動かせないようだった。すぐに三枚の座布団が山となり上には若い女が胡坐をかいていた。
「なによ、この女たち!」
どこかがおかしい。生贄の娘は灰色オオカミの巫女のようだった。服装からして村娘とは思えない出で立ちで、腰にはなにやら棒を携えていた。
村人が全員、ひれ伏したのだ。
「ルーガ・ルーさま!」「最高です!」
ゴンドラは生贄の女の代わりに、灰色オオカミの巫女を拉致して来たのだ。だからソフィアたちは仲間を呼ばれたくはないから、飛びかかったのだが無残にもひれ伏してしまった。
「あ、はぁ~ん?……お前がオレグなのだね!」
「あ、いや、俺は、……そう、ルイ・カーンです!」
「そう、ご主人さまの伝言よ、ありがたく聞きなさい。」
「なぜだ、俺には関係ないだろう。」
「いいえ、ご主人さまへの生贄を奪ったのですもの、覚悟しなさい。」
「バカ言え! 俺の家族を守ってなにが悪い。」
「次に赤い月が昇ったら、命を頂戴しに来るからと、ね!」
「おう上等だ、ば~ろう。……喧嘩上等。」
「オレグ兄さま、これは戦争よ!」
とリリーが口を出していた。
「おう、そうだとも、バカ侯爵にお灸を据えてやる!」
「あれが帰る前に帰るわ。御機嫌よう!」
名も告げづに女は、天井の穴から飛んで消えてしまう。あれには弱いのだろう。ゴンドラが帰ってくるのがイヤなのだ。
「ゴンドラはねちっこいな性格だからな。あれは本当に頼もしい援軍だな。」
「それならばいいのですが、本質はどこかが狂っていますわ。」
と言うリリー。
「なぁシビル。伸びて寝てしまった三人に夢見を頼むよ。今晩は・・・・だ。」
「いいわよ、・・・・ね! しっかし、女が三人でかかっても逆にあの女から伸されるとは、なんとも言いようがないよね。」
「そうさな、あいつらの自尊心を傷つけさせないためにな。」
「ん~、・・・・・・・に変更しておくわ。」
「あ、いや、それはそれであとが拗れて問題だよ、止めてくれ!」
「オレグ、それくらい面倒を見なさい。」
「バカ言え!」
「リリー、この四人を船の寝室に飛ばしなさい。」
「らじゃ~!」
「お兄さまとは生きて再会できればよろしいのですが……。」
「なに心配いらないよ。****はないんだ、みな夢だしな!」
「もうシビルは、本当に無責任なのだから。」
船室では、春爛漫?!