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人狼夫婦と妖精 ツインズの旅  作者: 冬忍 金銀花
第三章 オレグvsアルデアル公
155/257

第155部 前途多難な船出! 


 1247年11月25日 ラトビア・リガ


*)再びの戦闘!


 途中、リガのニコライ・ハーシュホーンとその妻のアウグスタのもとを訪ねる。自宅兼商館の屋根には黒猫の銅製の彫像が瀟洒な館を彩っている。その黒猫のシッポはニコライが言ったようにとあるギルドを指していた。


 船が港に着いた。


「バタン、……ダダダ・・・・・ツ。」


「シビル。すまないが今夕はニコライの接待を行うから魔女らと準備を。」

「はい喜んで……。」

「リリー、あれは解除してくださいね。」

「えぇシビル避けの魔法ですね。もう解除しておりますが、、、節度は守って下さいよ。」

「へいへい、承知いたしております。」


 船のことはボブ船長とシビルに任せて二人は船を降りた。


「ねぇオレグお兄さま、ハーシュホーンご夫妻の在宅は間違いありませんか?」

「それは間違いないさ、なにせ港に着くなりいの一番にソフィアが脱兎の勢いで街に跳んでいっただろう?」

「あ、なるほど! もうお姉さまとアウグスタ奥様とは仲がよろしいのですから、港に着く前から在宅が分かっていたのですね!」

「きっとそうだろうさ。今時分は二人でお茶をしているかな。」

「間違っても屋根で喧嘩してませんよね。私、少し心配になりました。」


「んだな、黒猫の銅像が壊れていたら半分は費用を出すよ。」


 オレグとリリーが市街地に入ると、


「人狼だ~狼が出たぞ~! 人狼だ~ルー・ガルーが出たぞ~逃げろ~。」

「あらあらまぁまぁ、お盛んなことですね。」

「あの様子では今晩には帰ってこないだろう。俺らはニコライと共に美味いものを食べておこうぜ。」

「賛成です。お姉さまはとても残念がるかしら!」

「そうだな~、リリーここいら辺でいから、鶏がらを多数ばら撒いてくれ。きっと腹空かせて追いかけっこをするだろうからね。」


 二人でバカばっかの会話が尽きるころに、ニコライの商館に着いた。ニコライは、


「もう着かれるころだと思っていました。なにやら街が騒がしいのですが、途中でなにかありましたか?」

「いいえ犬が二匹でじゃれているだけでした。ニコライさんお久しぶりですね。」

「はい、今アウグスタは留守でお構いができません。リリーさんでした…?か。お願いしてもよろしいでしょうか。」

「はい私が代わりにお茶のご用意をいたします。」


 リリーは一人で台所に行って持参した茶器にワクスを入れて出てきた。


「とても冷たいですわ。……どうぞ!」

「そうですね、十一月の気温は……今日は二度でしょうか。」

「おお、これは綺麗な食器ですな。ご持参されたのですね。」

「はい持参ではなく、売り込みです。」

「これは、うまい!」

「お世辞は結構ですが、キリスト教の魔女裁判に引っかかるような食器です。お気に召しましたか?」

「……これで銀貨が何枚分になりますか?」

「まだまだ製造技術が追いつきませんので銀貨は十二枚を使いました。」


 リリーが持参したのは銀のゴブレットだった。オレグの行く先々ではこの銀の器を使う予定だ。


「他にはどのような。」

「はい、ここに在りますのはまだ試作段階ですが、お皿やスープ皿、ビールのジョッキにナイフとフォークになります。」


  ニコライは手に取り一つひとつ丁寧に撫でまわして見入っている。その間のオレグとリリーは、


「おいリリー。木の器を出すはずだったろうが。」

「お兄さますみません。茶器にワクスをと思った瞬間に銀の食器がポロリと出てきたのです。……不味かったですか?」

「だって、いつどこで試作したとか、紹介をしていないぞ。」

「まぁそうですが、未来から取り寄せました。お兄さまはレバルでこれらの銀の食器を創るのですよ。」

「そうか、この先、、、、俺が、、、創るのか。」

「器の裏面にはオレグマークを入れますので考えて下さいな。」


「これは素晴らしい。いったいいつの時代になればこのヨーロッパには流通するのでしょうか。」

「そうですね、あと三百年後からですが?」

「今の言葉は聞こえなかったことにいたします。それでこの話に私もカメと?」

「できれば、銀の手配が出来れば……ですよ。銀貨ではとてもとても手が出せません。どこか銀山をご存じありませんか?」

「この近くではポーランドの南、クラフク地方が主な産地になります。他はイベリア半島がヨーロッパでは最大規模を誇っておりますが遠いですね。」

「わが国で産出していたとはまったく知りませんでした。」

「そうでしょうね。現在はドイツ産が多いようです。どうです? ドイツ騎士団から銀を巻き上げることにいたしませんか?」


「か、かつあげを!?」

「いいではありませんか、あいつ等には本当に煮え湯を飲まされることばかりでございますから、どこかの村はドイツ騎士団と対等に渡り合ったと聞き及んでおります。ここはペテンにかけてひと儲けを!」

「ふむふむ、どこかの村のようにですか!」

「はいはい、そうでございます。エサは……ですよ。」

「ほほう、エサが……ですか、これはいい!」


「お二人とも、私はお腹が空きました。オレグ兄さま、ニコライさまを早くご案内しましょうよ。」

「そうだな、ニコライさんぜひとも我が城に来てください。洋上に浮かぶ私の城をお見せしたくてうずうずしております。」

「海にお城?……?」


「リリー、船では準備が出来ただろうか。」

「はい早く戻りませんと、シビルが卒倒しているかも知れませんわ。」

「結界は解除したんだろう?」

「えぇ半分だけですわ。どこかに隠されないように、全部は解除いたしておりませんの。」

「あはぁ~、もう手遅れだろうぜ。」


「ではニコライさん。行きましょうか。」

「はいお供いたします。ですが、アウグスタがまだ戻りません。」

「はい、奥様はソフィアが付きっ切りで接待をしておりますので、夜には船に戻るかと思われます。なにせ昼食は鶏がらですので腹は数倍にも減ると思われます。」

「と、鶏がらが、昼食ですか!」

「あ、いや、鶏がらの野菜スープのことです。ポーランドの家庭料理ですよ。」

「それは私も頂きたいですな。」

「はい、存分に用意いたしております。」


「お兄さま。ニコライさまには決して空を見上げないようにさせて下さいね。煉瓦や鍋、木材の破片が多数飛んでいるようですわ。」

「俺の城には影響はないだろうな、リリー船にも結界が張れるのか!」

「はい魔女たちに出来るように仕込んであります。この前の船の二の舞には絶対にさせません。」


「ニコライさん、街には人が居ませんね。」

「お、、、、、お兄さま。それは禁句です。」

「えぇ本当ですね。こんなことは今までありませんでしたが、まだなにやら街の郊外が騒がしいですね。」


「リリー、もう着くからゾフィにあれを撃たせてくれないか。空砲でだぞ。」

「あ、はい。承知いたしました。私たちの姿が見えたら撃たせます。」

「オレグさん、その、なにを撃つのですか。」

「空に飛ぶ煉瓦を、……いや、ただの大きい爆音です。」

「ほほうそれは楽しみです。いったいなんでしょうか?」


「あの帆船がそうです。」「ゾフィ、船が見えたわ。今よ!」

「ばこ~ん、バコ~ン!」x2

「わ~ぉ、花火ですか!」

「ゾフィ、もう一度お願い。」

「ばこ~ん、バコ~ン!」x2


 船からせり出している煙突のような筒が白い煙をだしているのが見える。


「あの大きい筒がそうです。ゾフィが考えて造ったのですよ。」

「へ~あの可愛らしいお嬢さまが……ですか!…面白いですね。」


 ニコライは船の傍にきて、その偉大さに気が動転した。


「こ、こ、、、んな大きい船が……。」

「はい私の城塞です。」

「むむむ・・・・・。」


 ニコライは港の桟橋でだが船尾から船首までを何度となく往復している。


「大きい、、、、これは大きい。凄い……。ゴツイ……。」

「どうぞ、船に上がってください。」

「い、いや、ここは……この橋渡しは上れそうもありません。どうしてか、その、足がすくんでしまいました。」

「えぇどうしてでしょうか。」

「私は……。」


「リリーどうしてか分かるか!」

「……、、、そうですね、問題があるとすれば三精霊でしょうか。ラトビアは精霊の一大産地らしいです。」

「ほう、ニコライは精霊に恨まれることをしているのか。」

「かも知れません。もしくは……。」

「アウグスタ!!」x2


 二人同時にアウグスタの名前をあげた。後で訊いたら子供の時に精霊イビリして遊んでいたらしいのだった。アウグスタにしてみればただの遊びなのだろうが、精霊たちにしてみれば、いじめそのものだった。



「ニコライさん、ここは港で行いましょうか。私も最初はこの橋板は上れませんでしたよ。恥ずかしいやら困るやらで。」

「いやいや、私こそお恥ずかしい限りです。」


「リリー後は任せた。よろしくな。」

「はいお兄さま。」


 港には結界があるせいかあの二人が近づかない。だから街の人々で賑わっているのだった。


「ボブ、シビル。仕事だ。大いに稼げよ。」

「おう兄ちゃん、随分と気が利くじゃないか。」

「それと、あのデカ物もお願いしたいのだが出来るか。」

「あれはシビルにぞっこんなのさ、お守りはシビルに頼んでおくよ。」


 あれというのはゴンドラのことだが、声も聞かないほどに大人しかった。おかに上げたら途端に賑やかにふるまっている。


「あいつ、海が怖いのか・・・・・。」


 ゴンドラの意外な一面がバレテてしまった。たちまちユール・ボードが多数出現した。ニコライやオレグには一つのテーブルだけだった。残る四個ものユール・ボードは臨時のパブとかしたかシビルとボブがお金をもらって料理やビール、ワクスを売り渡していた。


「オレグさん、オレグさん。このような事は以後禁止ですよ。さもないと教会の異端訊問のかっこうの餌食になりますから。」

「食器を使う時点でアウトですよ。別に驚いたりしません。」

「そ、それでは困るのです。この私が仕事が出来なくなります。」

「あ、そ、、、、うですよね。至急食器は外しましょう。」

「はいそうして頂ければ助かります。」


 オレグはシビルの許に行き、


「なぁ、シビルさん。」

「なんだい気持ちわり~ぃ!」

「食器の皿を全部、まな板に替えてくれないか。魔女尋問に引っかかるらしいのだよ。」

「ケッ! オレグはケツの穴が小さいんだな。今晩は俺の魔法で全部無かったものにしてしまうさ。」

「今、すぐに捕縛されてもか?」

「今日は心配ないよ、だってあれが二匹、教会の騎士に追われているんだよ。この好機を逃すなんてできっこないよ。……出直せ! ばぁろう~!」

「はい、どうもし~ません!」


「ニコライさん、今日は私の大船に乗った気分でいいそうです。」

「いいえ、あの船だけは乗りたくはありません。」

「それは、しかし、困りました。ニコライさんとは再度エストニアまで行きたいと考えておりましたが。」

「用があるのは女房のアウグスタにでしょう? あの腕っぷしは誰も敵いませんもの。当然です。」

「・・・・・、でもないのですが……。」


 歯切れの悪いオレグだった。


 夜が更けて二人の女が帰ってきた。


「おうおめ~ら、随分と派手に暴れていたな。怪我は無いかい?」

「そうね、お腹は腹の虫が穴を空けてくれたわよ。水飲んでもダダ漏れだったわ。それにあの鶏がら。思いっきり唐辛子を混ぜていたのね。」

「いいや俺は知らないよ。この時代、唐辛子はもう売られていたかな。」

「突っ込むとこはそこじゃないわよ。いったい誰が死にそうな位の唐辛子を入れたか知りたいの。おかげでアウグスタに負けそうよ。」

「アウグスタも唐辛子を食ったのだろう?」

「いいえあいつは喉に魚の骨をつかえさせていたわね。あれから声が出ないらしいのよ。」


「やぁアウグスタお帰り。今日は楽しかったかい?」

「あ”、ニゴライ、ダダ今。ぎょうはおもいっぎりあばれでおもちろかっだわ。でも、ごえがでないの。」

「えぇ?? どうしてだい。」

「港に干してあったホッケを齧ったらぼねがざざっだ。」

「お前はまだつまみ食いをしているんだね。ほどほどにしなさい。」

「ば~いもうじまぜん……。」


 アウグスタはとある三人の女を見つけて、


「ねぇ精霊さんでしょう? 遊びましょ!」

「ひぇ~ご容赦を!!」「ガシャン、」「バタバタ・・・・。」x3


 三人の精霊は船に逃げていった。それを追うアウグスタだった。


「ねぇ、遊びましょ!」「精霊さん、遊びましょうよ。」


 このアウグスタの姿をみて、ニコライが沈みこんでしまうのだった。


「もう昔と少しも変わらない。」


 しかし、アウグスタの声が戻ったのはどうしてだろうか。


 全員が揃ったところで宴会は終了となった。料理が無くなったのだ。それでも二人は休もうとしなかった。


「私の精霊さんはどこ~!」


「あ~私の豚さんはどこ~!」

「ソフィア、唇が腫れてタラコになっているぞ。」

「どこどこ、明太子はどこにあるの!」

「リリー、寝ないで私にクジラの肉を出してちょうだいな。」

「え~やだ~! もう疲れて目を開けていられないわ~。」


 夜中になり、空には半分の月が昇る。


「さ、三度、戦闘よ、これは戦争よ!」x2

「ウォ~ォ~ オ~~ォ ウォ~~~!」

「ウォ~ォ~ オ~~ォ ウォ~~~!」



*)荒れ果てた街並み


「ぎょえ~!!」x?


 と翌朝街に出た人々は驚いた。道の石畳みの石はめくれ、飛んで家の壁に突き刺さったものもある。屋根のかわらは軒並み落ちてしまって道は歩けないほどになっていた。


「なんだい、どうした!」

「ぎょえ~!!」x?


「お、俺の馬が、ここに繋いでいた馬が居ない!」

「私の可愛いブタさんが逃げているわ、あ~今晩のお肉~!」


「おい、どうして井戸が潰れているんだい。」

「俺の家に大きな穴が~!! あ~ここは道路になってしまう~!」


 見渡す限りがこのよな有様の、朽ち果てたような街の光景が広がっていた。


「これって、あなたの奥様が~?!?」x2

「あわ、あわ、ああああああわわわ・・・・・。」x2


 ニコライとオレグは見合って開いた口が塞がらないのだった。


「まぁまぁお姉さまったら、お盛んなのですね。」

「ケツ、バカな女たちだぜ、まったくよ~!」


 リリーとゾフィ。シビルは、


「今晩は大きい夢見の魔法だな。やいゴンドラ。ドラゴンになって飛んで回れ! できるだけ地上低くにな。」

「この騒ぎを、この俺の仕業にすり替えるのか!」

「あったりまえだろう? 他には手段も方法もないんだよ。」

「ぎぇ”~!!」


 ゴンドラはドラゴンの姿になって街の上空を旋回している。


「ちょ~っとゴンドラの尻をつねっただけなのに、尻はあいつのツボなのか~?」


「ぎぇ”~!!」「ぎぇ”~!!」「ぎぇ”~!!」・・・・・・


「ひゃ~、ドラゴンだ~、みんな。逃げろ~!x?


「びぇ”~!」「びぇ”~!」「びぇ”~!」・・・・・・・・・


 ドラゴンの悲鳴がリガの街に響き渡る、渡る。


「あれはシッポをつねられると弱いのよね~。」


「びぇ”~!」「ぎぇ”~!!」「びぇ”~!」「ぎぇ”~!!」「びぇ”~!」

「ぎぇ”~!!」「ぎぇ”~!!」「ぎぇ”~!!」 ・・・・・・・・・。。


「んな、バカな!」x14

「しゃ~ないな~俺がどうにかするよ。」

「バッコ~ン!」「バッカ~ン!」

「お、命中だ! そのまま海に落ちろ!」

「ちょっと、あのゴンドラは泳げないのよ。死んじゃう!」

「私が海に落ちたところで召喚いたします。大砲で死んだ事にしませんと!」



 クルー、ゾフィ、大砲、ボブ船長、ヴァンダ王女、リリー……。


「おう出航だ! ここから逃げるぞ。」

「あの女はどうすんだい。ここに置いていけばリガは崩壊するよ。」

「ゾフィ、心配すんな。後でリリーに召喚してもらうよ。」

「お兄さま、遠く離れてから召喚いたします!」

「あ、ああ。……。」



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