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人狼夫婦と妖精 ツインズの旅  作者: 冬忍 金銀花
第三章 オレグvsアルデアル公
153/257

第153部 聖戦の予感?その2


「こら~! ゴンドラ。この俺さまを押し倒すことも出来ないのか~!?」


 とシビルの啖呵が聞こえたよ~な?


「もう少し待ってくれ! 俺は百年もの間、何も食っていないんだ!」

「でも女王さまは食ったとか!?」

「いいや、毎日毎日俺が食われたのだ!」


「俺って、ドラゴンのエサなのか???」



 1247年10月27日 ポーランド・トチェフ村



*)ゾフィと煙突?


 宴会からようやく解放されたゾフィはリリーと共に、鍛冶屋のレフと家具職人のヘンリクの工房を訪ねた。(まず)はゾフィの用件でレフの工房。


「やぁ嬢ちゃんたち。随分と久しぶりだったね。」

「は~い、こちらこそご無沙汰でした。レフおじさんもお元気で良かったわ。」

「はは、そう言ってくれると嬉しいね。俺にも可愛い娘ん子が欲しくなるよ。」

「あらお子さんは?」

「あぁガキンチョが二人だよ。もうすぐ生まれるから次は娘がいいな。」

「へ~頑張ったんだ。で、手応えは?」

「そんなものはないよ。……バカ! 大人をからかうなよ!」

「はいはい、……ほらゾフィ。」

「うん……レフ。肉厚の煙突を五本作ってくれないか。大きさは径が十cmで長さが二mは欲しいかな。」

「それは嬉しいね。ほっぺの肉はどれ位だ?」

「五mmでいいや。根っこの処には十五cmの大きさに出来るかな。」

「あぁ簡単だよ。他には。」

「そんでね、根っこの処は三cmの大きさの穴を空けてね。」

「底は、もしかして? ふたで塞ぐとか!」

「そうなんだ。これでね・・・・・・・・・・・・を、造るんだ。」

「OK、OK。理解出来たよ。詰めるのは石ころだよな。」

「鉄がいいのだけれども、たくさん作るのは無理だから石になるかな。」

「だったら先に鉄くずを溶かしてくれないか。そうしたら早く完成するぜ。」

「この前の要領でいいのかい?」

「あぁ上等だ。ほれあの屑の山を適当にな。」

「……いいよ。すぐに溶かしてあげる。」


 そう言いながらゾフィはいつものように、火の魔法で火球を作り屑鉄に沢山投げつけた。


「おいおいおい、も、も…いいよ。この勢いだと鉄が燃えてしまう。」

「大丈夫だよ、燃えているのは木や布きれだけだよ。」

「へ~魔法って凄いね~!」


 小高い鉄の山が崩れて地面の草やゴミなどに広がり燃えだしている。


「もう少し火球を出したがいいかな。それ!!」


「も、も、も、止めてくれ。続きは明日にたのむよ。少し小細工をするからさ。ん~~! また昼過ぎにでも来てくれないか。」

「うん了解したわ。」


 レフは男手を集めてなにやら慌ただしく作業を始めた。もう時間との勝負らしいからゾフィは声も掛けられない。



*)リリーと木箱?


「さ、次は家具職人のヘンリクよ、付き合ってね。」

「いいよ。リリーの作る物を考えて当ててやるよ。」

「当たったら内緒よ、いいわね!」

「いいぜ内緒だな。……? それって、完全に内緒っていう事だね!」


「それと、風のヴェーヤスマーテと火のウーグンスマーテに会った時の部屋の大きさは覚えているかな。私は精霊可愛さでまったく見ていないんだ。」

「リリーがどうしたいのかは知らないが、あの二人の部屋は造ってくれるの? あのままではさすがに可愛そうだよ。」

「序にゾフィの部屋も?」

「うん欲しい。色んな物を入れておくのにも使いたいしさ。」

「だったら建築のジグムントも連れて行かなければならないね。」

「そうだね。オレグに相談しようか。」

 

 レフとヘンリクの工房はほとんど隣だ。鍛冶屋は工房への火災の恐れから河原に建てられていて、他は長屋みたいに続いている。二人は会話半ばでヘンリクの工房に着いた。


「ヘンリクさん、お元気でしたか。」

「おやおや、お嬢さん方。随分とお久しぶりで!」

「新しい食器が出来ましたか?」

「ここらあたりじゃ大きい白樺の木が無いでな、大きい器が作れないんじゃ。」

「それはもったいないですね。ユール・ボードでは板が多かったですのもね。」


「だったら銀を伸ばして四角い皿を作ったらどうだい。」

「レフ! それ! いいわ。アイディアは頂きだわ。」

「銀はね毒物に良く反応するんだよ。だからオレグさんの器だけでも銀で作ってはどうかな。」

「毒殺されるのですか?」

「あんだけ手広く商売してんだ、時期に恨みもたくさん買うようになると思うぞ? 俺が言うんだ間違いない。」

「……う、うん。そうだね。これからは私も気にしておくね。ありがとう。」


「リリー銀で食器を作るんかい?」

「そうね、工房を造って職人を探してみようか。ゾフィも手伝ってね!」

「どこかの国に売り込めば儲かるだろうね。オレグに言ったらきっと…。」

「飛びつくわ。……銀か! 銀貨をたくさん必要になるね。」


「ヘンリクさんお願いがあるの。新しい船にとても大きい木箱を取り付けて欲しんだけれども、出来るかな。」

「嬢ちゃんのゆりかごかい? どれだけ大きくても材木が在ればできるぜ。」

「うんお願いね。図面は……これで十分かしら。」

「持ち運びができないよ、船はどこに在るんだい?」

「グダニスクだけれども、……遠いよね。」

「ちょと不可能だな。村の港には持ってこれないのかい?」


「そうねオレグ兄さまに相談してみるわ。着いたらお願いね!」

「あいよ任せてちょ!」



*)船を村に運ぶ?


「グダニスクから船を持ってくるのかい?」

「リリーに不可能の文字はないわよ。港は深く浚渫しているから大丈夫よね。」

「水底に着けば絶対に沈まないさ!」

「あは~ゾフィは良いことを言うわね。すぐに召喚しようか。」

「あいつには一言断われよ。」

「お兄さんならば大丈夫よ。だってオレグ兄さまもなにやら改造をしたいと言っていましたし。」

「あいつとはオレグではないよ。ボブ船長のことだよ。いきない船が無くなれば発狂しかねないよな。」

「ボブ船長のことは忘れていたわ、ゾフィありがとうね。」


「思いついたら吉日! ボブ船長も召喚しちまえば! いいのでしょう?」

「だね。……やるのか?」


「うんすぐに船とボブ船長を呼ぶわ。なんでも物事は早いに越したことはないわよ。オレグ兄さまも召喚だね!」

「卒倒しなけりゃいいのだけれども……。」

「誰が……。」

「二人ともだよ。他は港で仕事をしている人かな。」

「うん夜まで待つことにするわ。」

「賢明だ!」


 オレグは飲みすぎで虚ろな顔でソフィアから怒鳴られていた。ソフィアは酒にはめっぽう強いときたものだ。二日酔いとは無縁な酒豪だ。


「オレグ、今はライ麦の収穫で稼ぎ時なのですよ。それなのにそれなのに、このざまは無様ですわ。」

「だってさ、ソフィア。俺が居なくても……。」

「ボスのオレグが働かなくては誰も付いてはきませんわ。」

「ギュンターが居るし……。」

「あんなヘボ老人に仕事はできません。もそっとシャキーンとしんしゃい!」


 リリーとゾフィが家に戻った時はオレグの修羅場だった。ソフィアはオレグがトチェフで不在になり、カーン侯爵として活動していた事は上辺だけしか知らないのだから無理もない。ビスワ川の一帯を黄金の穀倉地帯に仕上げたのもオレグなのだが、ソフィアは残念なほどに知らないのだ。現時点ではこの黄金の穀倉地帯の収益はすべてが、それも自動でオレグの懐に転がり込む。ソフィアは知らない。


(こんなことはいくらソフィアにでも内緒だ!)というのがオレグのこころのなかのつぶやきだった。


「お姉さま! オレグお兄さまをいじめないで下さい。」

「や~いオレグ。もっとババァに怒鳴られていろ!」

「こらゾフィ。私がババァだって言うのかしら?」

「だってそうだろう? 暗い座敷牢に居たんだ老けて当然さ!」


 ソフィアは顔を真っ赤にして頭頂からは白い蒸気を出しはじめた。


「いくらゾフィでも、ゆ、ゆ、許しません。ここに座りなさい。」

「嫌だよ、バァ~バ!!」

「く~!~!~!~!~!」


 激怒したソフィアを無視するゾフィは表に逃げていく。同じくリリーも激怒したソフィアを無視して、


「ねぇお兄さま。新造船を村の港に運びたいのだけれども、いいかな。」

「そりゃ~、願ったり叶ったりだよ。あんなに大きい船でも呼べるのかい?」

「はい大丈夫ですわ。私はあの船に大きい箱を据えつけたいのですもの。」

「は? 箱??」

「内緒です。それと精霊さんには綺麗なお部屋を造って住まわせたいのですわ。」

「それはいい。是非にお願いしたい。資金は無制限に出すぞ!」

「まぁ~オレグ。リリーにまで色目を使うのかしら?」


「序だ! あのもと皇女さまにも一部屋を頼めるか!」

「まぁオレグは私との愛の巣は却下して、亡霊にまでも色目を!」

「はは当然だろう。ソフィアの部屋はもう完成した頃だろうか。」

「ええ””私にも部屋が在るのかしら?」

「リリーとの愛部屋あいべやだがな! 俺には倉庫で十分さ!」

「い、い、いいえ、それはなりませぬ。そこは私とオレグの部屋にします。リリーはその造るという木箱に収まりなさい。」

「いいですよソフィアお姉さま。私はお邪魔虫ですから、例え部屋が充てがわれても使いませんわよ、……お姉さまは嫌いです!」 

 

「それでリリー。船は今晩か?」

「早いのがよろしければ、ですが。」

「先にグダニスクに連れて行ってくれないか。他の職人まで巻き込んだら後々が面倒になってしまうからさ。」

「そうですわね。ボブ船長もいきなり船が消えたら発狂するだろうし。」

「そうだな、ボブの部屋も必要か……。」


 オレグはこころここに在らずでもうグダニスクに飛んでいた。


「あらあらお兄さまったら。気が早いですわ。」


「リリー私も連れて行きなさい。」

小姑ソフィアはうるさいので却下いたします。」

「ま、な、なんと、リリーまで、そのような……あんまりだわ!」


 そのよう、なみんなの思いとは裏腹にボブ船長は船倉を勝手に改造し始めていて、完成まじかだった。船倉は大きくて広いので二階造りに改造していたし船長室は甲板の上に造っていた。その改造費用はライ麦運搬の前払いで軽く済まされていたのだった。


「これは俺の船だ! 勝手にさせて頂く。」

「いいえボブさん。これはオレグさんの船ですよ。あまり弄繰いじくりり回さないで下さいね。」


 とはマクシムの言だがボブは意に介していない。


「なに兄ちゃんの金だ! 自由に使わせてもらうさ!」



「リリー先にブィドゴシュチュに頼む。ボブにクレーンを据えつけて貰いたいからさ。他はブィドゴシュチュの事務所にも顔を出したい。」

「そうね随分とご無沙汰していますから、ここは顔を出してビシッとする必要もありますわ。」

「そういう事だ。ソフィアにも行ってもらいたい。」

「ええいいわよ。オレグがどうしても私を連れて行きたいのならば行ってあげてもいいわ。」


「お姉さまは、すねちゃんですわね。」

「リリーうるさい、黙れ!          そうよ、黙りなさいな。」


 ソフィアの機嫌がなおっていた。


 オレグたちがブィドゴシュチュへ行くと聞いて、ゴンドラとシビルがオレグの元を訪ねてきた。


「おうオレグどの。俺らで運んでやるぞ!」


 やせ細っていたゴンドラとは程遠い、恰幅の良いゴンドラが姿を見せた。


「お前、シビルとHしたな!」

「おう、とても上手かったぞ。」

「いや違うだろう、美味かったが正解だろうが。……俺の精気まで吸っていたからな。」


「こらドラゴン。私の男に手を出したら殺すよ!」

「め、めっそうもございません。私は手を出していません。全部シビルが! あ! しまった……。」

「ばこん。」「バコン。」「バコ~ン!!」x2「ビュ~ン!」x2


 ソフィアからシビルとゴンドラがはたかれて彼方に飛んでいく。


「もう、ブィドゴシュチュに着いたかしら。」


 オレグの冴えない原因が発覚したからかソフィアは激怒した。そう、シビルが夢魔法でオレグの精気をゴンドラに吸わせていたのだった。



*)ブィドゴシュチュ


 ブィドゴシュチュにはすでにソワレが赴いている。ライ麦の輸送のいかだの進捗の確認のためだったが、魔女の二人を動力に小舟でビスワ川を遡っていた。そのソワレの横にはちゃっかりと母のヴァンダ王女が付き添っていた。


 ブィドゴシュチュの倉庫には満杯に近いライ麦が集まっていた。


「これはこれはソワレの姐さん。早く筏を出してください。でないと桟橋にもライ麦が積まれて仕事が出来なくなります。」


「あ、ボブ。先に母をゴンドラに積んで運んでくださるかしら。」

「ドラゴンはこりごりです。私は歩いて……ソワレと離れません。」

「ウフフお母様。ドラゴンは出ません。ゴンドラはクレーンのことです。」

「だったらあの空に見える物はなんだい!」


「キャ! ドラゴン!!」

「ヒュ~~ン!」

「どいて、どいて! そこ、どいて~~~!!」 「ヒュ~~ン!」

「川に落ちなさい。」 「どっ…ボ~ン!!」x2


「ボブ、釣り上げてもらえるかしら!」

「ガッテン!」


 二人にはクレーンのロープが投げられて無事に救助された。


「俺はクラフクまで飛ばされるかと思ったぜ!」

「クラフクは元の古巣だろう?」

「あぁそうだよ。あのころはドラゴンとして崇められていたしな。俺が退治されるまではな、毎月毎月美女を食い放題だったよ。」

「だったらもう一度、ドラゴンとして君臨してみれば!」


 シビルはゴンドラにやきもちを焼いたのだろうか。ぶすくれた言い方をした。


「あ~シビルちゃん。」


「ボブ。服が乾くまで吊るしておいて。」

「ガッテンだ!」


「おいおい、そんなことしていたらあとが怖いぞ!」

「あ! 社長!!」

「おうオレグの旦那。生きていたんですね。もう足かけ三年は過ぎやしたでしょうか。」

「よぉ~ボブ。お前は随分と歳くったようだな。」

「んなことはございません。今日は雨が降らなければいいのですが。」

「ライ麦が山積みだものな、濡れたらお前の責任だからどうにかしろ。」

「だったらもっと大きい倉庫を建ててくださいな。本当にもう収まりが出来ないまでに商いが大きくなりました。」

「で、ギュンターとせがれは来ているのか。」

「いいやソワレの姐さんだけですが、何か。」


「あ、いや、なんでもない。今晩は久しぶりに俺の驕りにすっから事務所横の本店に集まってくれないか。残らず集めてくれよ。」

「旦那、またどっかと戦争でもぶっかますのですかい?」


「ぶっかます? あぁそうなるかも知れない。ボブはトチェフに異動だ。明日からは俺と来てくれないか。」


「はいはいどこにでもお供いたしますよ。して?」

「そうさな三年は帰れないかもしれない。……いいかい?」

「三年ね~女房も同伴でよろしいでしょうか?」

「あぁ構わない。歓迎するよ。でだ、誰を釣り上げたのか?」

「それは内緒ですよ。あ、俺は倉庫に食材の手配に走ります。旦那とは後ほど。」

「よろしくな。出し惜しみはご法度だぜ。」

「港の広場にもテーブルを広げる程でもですかい?」

「いいぜ、総勢でどれくらいの部下が出来たんだ。」

「ざっと百人ほど。」

「ひゃ? く? にん??……も??」

「はいでさ。これも旦那の器量が大きいからですよ。俺はもうギルドまで作って手広く商いをしております。」

「そ、それは良かったな、……ぬぬぬ、ヌヌヌ・・・・・・・。悔しい!!」


悔しがるオレグを細目ででるという、何ともオレグ以上の性格の悪いボブに成長していた。ここのボブはオレグが第68部ほどの章のリンテルンで拾ってきた船乗りだ。ボブ船長とは異なる。


 ボブは足ふみ式クレーンを考案した人物だ。今では各地にクレーンを販売してクレーンの扱う男を庸して稼ぎまくっている。しかし第二第三のボブが出現するから、このボブのギルドは斜陽化するのは目に見えていたらしい。


「もうクレーンの秘密は隠せる事は出来ないだろう。次の仕事は何にしようか。オレグさんの二番煎じはイヤだしな~。」


 と時々口に出して思い悩んでいた。だから次の仕事は決まらない。それは考えあぐねていないからだった。ここにきてオレグからお誘いがあったから、二つ返事で了承してしまった。新規の発想は全く出来ない頭の構造なのだろう。


 夕方になりオレグ商会の人員が全部集まった。オレグは、


「おう俺の留守の間によく仕事をこなして頑張ってくれた。今日はそのお礼だ。存分に飲んで食べてくれ。」


「ゴチになります。」x?


 酒宴の途中でオレグはボブに詳しい仕事の事を話した。


「ボブ。お前の仕事は、グダニスクで造船の設計士兼監督だ。クレーン付きの船をたくさん造ってくれ。」

「旦那、まだ俺のクレーンの実用新案は使えるのですかい。」

「あぁまだまだ使える。斜陽産業ではないぞ。最初は俺の船にクレーンを二基据えてくれないか。」

「旦那、俺! 全力で働きます。」

「それと、グダニスクの造船のギルドを買い取っておくから、そこで無職になった子分と共に働いて欲しい。」

「ガッテンでさ~!」


 オレグはボブのギルドが斜陽することが目に見えているらしい。



 ソフィアはオレグをパブの隅に呼び出して、


「オレグ、逃げるのよ。さぁ早く。」

「どうしてだい。俺は逃げるのは嫌いだ。」

「キルケーが来るのよ。食べられたくはないのよ。特にオレグはね!」

「この俺が、キルケーに食われるのか?」

「そうよ、オレグは熟した果実そのものなのよ。だから逃げるの!」



*)キルケー


「俺は逃げない。キルケーにはお前たちを助けてくれた恩義もあるし、え~とどこに放置してきたかな~。」

「グダニスクだよ。でも今はここ、ブィドゴシュチュの家に戻ったらしいの。」

「それがどうした。どうして判るのかい?」

「家に多数の家畜が居ると聞いたのよ。だからきっと戻っているわ。」

「たぶんもう遅いだろう。そこいらの男かメイドに化けているだろうさ。」


 そこにリリーが気が付いて声を掛けてきた。


「オレグお兄さま。そこのメス豚は誰ですか?」

「え”? ソフィアだが……これがメス豚?…? いったいどこが!」

「全部ですわ。お姉さまは暗くなりましたらどこかに出かけていました。」


「お前! キルケーなのか?」

「もうリリーには敵わないわ。もう少しでオレグを連れ出せたのに。残念。」

「それでソフィアはどこに?」

「それは……    。」

「まぁ随分なご挨拶ですわ。三姉妹の救助の立役者を無視してくれるなんて。特にリリーさんは私をメス豚呼ばわりして後で舐め舐めしてくすぐってやりますからね!」


「ワレはキルケーをメス豚の上に召喚す。来たれキルケー!」

「キャッ!」 「ドスン!」 「イタっ!」

「おうおう、キルケー久しぶりだったな。」

「は~い元気にしていましたわ。私のダ~リン!!」

「よせやい気持ち悪い。……ところで、」

「替え玉よ。今日、私も命を狙われているようなのよ。妙な視線を感じてねこの娘を用意しいていたのですが、よもやオレグ崇拝者だったとは思いもしませんでしたわ。」


「いい迷惑だ、元に戻せ。」

「それはできません。後々にこじれたりしましたら大変です。」


「ガシャン、」「ガタ!!」「ダダダッ!!!!!!」

「これはお美しい一目ぼれです。」

「ぜひ、私のお嫁さんになって下さい。」

「あらあらこの方は……。ドラゴン? ですの????」

「いいえ、ゴンドラです。」


「そうですか、でしたら私の妹を差し上げますわ! とてもお似合いです!!


 同じ身体に鱗がありますから!」


 と言ったのはソフィアの姿の偽のキルケーだ。


「い、いいいいいや~!! オレグさまお助けくださ~い。」


 とは本物のキルケーだ。


「では、ゴメン!」「ヒェ~、お助けぉ~~~。」


 キルケーを狙っていたのはゴンドラだったのだろうか。


「あぁ飛んで行ったね!」

「そうだな。明日の朝までは帰らんだろうて。」

「で、リリーこの女は誰だい?」


「ばこん、バコン! ばこ~~ん!!」「ぎゃ~、痛い、痛い。」

「ソフィアお姉さまですわ。言うのが遅れましたかしら。」

「おいおい、ウソだろう?」

「さ~どうかしら! 胸にいてみてください。」

「どれどれ、俺のソフィアはこんなに小さかったかぁ~?!?」

「キャッ!」

「ばこん、バコン! ばこ~~ん!!」「ぎゃ~、痛い、痛い。」

「なにすんのよ、このヘンタイ親爺!」

「リリー戻せるか!」

「キルケーが帰るまでは無理ですわ。今晩は共に呪われてください。私はお姉さまの処に跳んで行きますから!」


 しばらくしてパブの女将が、


「この忙しい時にメイドはどこに行ったのかしら!」


 とぼやいた言葉がオレグの耳に届いた。


「リリーまでも俺をおちょくりやがって……。」

「……それも、二人もなのよね~。」

「え”、メイドが二人?…消えた??」


 ソフィアはキルケーの魔法でメイドが変身していた。もう一人のメイドは何処だろうか。



 ソフィアとリリーは街の中心地の宿屋兼パブに来た。


「ほらほら、ソフィアお母さまだよ~。」

「ママ~、ママ~抱っこ、抱っこ!!」

「うるさい、黙れ!クソガキが~!!」

「びぇ~、びぇ~。」x2


 ギーシャとへステアの二人の娘が泣きわめく。この宿にはシーンプが長逗留していた。


「シーンプさん、オレグが船を持ったのですよ。だからお迎えに来ました。」

「それは本当ですか! これで……やっとイングランドに帰れます。」


「お姉さま、これでメンバーが揃ったのですか?」

「えぇまだ半分なのよ。後はあのクソ女とメス猫が二匹だけかしら。」


 ソフィアが言うクソ女とはアウグスタのことであり、メス猫とはシン・ティとベギーの姉妹のことだ。二人はイングランドの孤島出身の妖精だったか。ついでだがボブ船長もイングランドの生まれでもある。


「パパ、ママが怖いの!」

「シーンプ、この二人の娘は買ったのかしら?」

「あぁへステアの育児放棄で拾ったのさ。将来の嫁さん候補までに育てる。」

「……。」

「ママが怖いなら、パパとお空の流れ星を見に行こうか!」

「うん、行く!」x2


 今晩はペルセウス座流星群の観測が出来ます。(12/8/2020)



「おう俺は次の章に進みたいからもう部屋で休むからな。」

「だんな~明日は全員有給でお願いしま~す!」

「その有給、金貨一枚で買い取る。」

「だんな~もう金貨なんか要りませ~ん!! ここの全員は金持ちでさ~。」

「な!・・・・・ぬぬぬヌヌヌ・・・・・・・・!」


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