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人狼夫婦と妖精 ツインズの旅  作者: 冬忍 金銀花
第三章 オレグvsアルデアル公
152/257

第152部 聖戦の予感?


「わ~ヴァンダ王女さま、お母様~!! 私でございます、ヤドヴィガでございます。」

「お~! ヤドヴィガではないか、それに……?」

「他はエサですわ!」 


「ワレ、谷底のヘイタンをここに召喚す! 頭上に現れよ!」


「ギャフン!!」「お、クッションつきか~!」


 ごつい男がヴァンダ王女の頭に落ちてきた。


「クソガキが~!!」 「バコン!」「バコン!」「バコン!」

「あらあら、また谷底に行きましたわ。」

「子ヤギの食いかけがもったいないのだろう。リリー今度はヤギごと召喚してくれないか。」

「すぐに自力でがけを登ってきますわ。」

「あ、ホントだ!」




 1247年10月22日 ポーランド・トチェフ村


*)昇龍


「きゃ~龍が出たわ~逃げろ~!」 「ぎゃ~!」「ぎゃ~!!」

「ぎゃ~!!!」「ぎゃ~!!!!」「ぎゃ~!!!!!」


 ドラドンのゴンドラは龍に変身し谷底から穴を通り一気に地上へ姿を現したのだった。当然地上の人間たちは驚いて逃げ惑う。


「ぎゃ~!」「ぎゃ~!!」「きゃ~、龍が出たわ~、逃げろ~!」 


「やれやれ。腹でも壊したのか。そんなに急いでどうすんだい。」

「オレグお兄さま、きっと農園の裏手に飛んでいくでしょうか。」

「下剤が効きすぎたようだ、可愛そうに!」


「え~いお前、お前はワシのしもべに何を食わせたのだ。」

「可愛い子ヤギに塩を振っておきましたが……それが?」

変温へんたい動物に塩を与えたら死んでしまう。今後は与えてはならぬ。」


 ドラゴンは農民や石工の頭の上を北に飛んでいった。農園のはずれの方角だ。それでも恐ろしい龍の姿を見たからには、逃げるのは当然の流れ。悍ましい気を怖がっていた精霊たちも、大きい龍の姿を目の当たりしたら腰も抜けよう。


「ぎゃ、ぎゃ、ぎゃ、・・・・・。」


 と喚く精霊たち。


「もう、こいつらはしゃぁないな~。リリーどうしようか。」

「ここに置いていくのが妥当ですわ。後程召喚すればよろしいでしょう。私だってこの精霊たちには近づきたくはありません。」


 ライ麦畑の農奴たちも一目散に自宅に帰ってしまった。トチェフから人が消えた。


「お兄さま、あのドラゴンはどうされるのでしょうか?」

「俺の駒にしたい。vsアルデアル侯だな。」

「食費が大変でしょうか。牛や馬がすぐに無くなるとか?」

「たぶん大丈夫だ。ゴンドラの姿のままならばソフィアよりも少ないと思うぞ。」

「まぁお兄さまったら。お姉さまが聞きましたら怒りますわ。」

「いやいや、それよりもVSソフィア。VSシビルの方が心配だよ。」

「ドラゴンは大丈夫よ、問題は王女さまの方だよ。無理難題で攻めてくる感じがするわ。」

「パブにストッパーが居るから、ま、なんとかなるさ!」

「だといいのですが、そう上手く問屋は卸しません。」

「トンやは俺だ。豚料理でもてなすさ!」


「あ、だからあのユール・ボードなのですね?」

「おいおい、あの龍は地上に降りるようだぜ。」

「あそこはパブですわ。お姉さまが危ない!!」

「リリーゲートだ!」

「はい!……ゲート!」


 パブの方でも村の騒ぎで外に出て龍を見ていた。大きい腹の龍は後程細い身体になって、再びトチェフの村の上を飛び回った。龍はパブを見つけると一直線で地上に降下して降り立った。


「ここに来るわ~逃げろ~!」 「ぎゃ~!」「ぎゃ~!!」「ドスン!!」


 と大きい地響きと共にゴンドラが降り立つ。


「俺の可愛い子ちゃんはどこかな!」


 同時にオレグとリリーもパブの前に着地した。


「こら! 俺の女たちに手を出すな!」

「じゃかましい! どけ!」


「ゲート!」

「あれ~!!」


 とリリーのゲートに入ったゴンドラは元の穴の中に飛んでいった。


「リリーよくやった。では残りを召喚してくれないか。」

「あ、お兄さま。先にユール・ボードの確認をなさってください。」

「そうだ、ユール・ボードが先だな。」


 二人は仲良くパブに入った。



*)ユール・ボード


 ユール・ボードとは、北欧に古くから伝わる家庭の伝統料理のことだ。今はクリスマスの料理と位置付けられているが、キリスト教伝来の前から存在していた。冬至の十二月二十日ころのお祭りがそうだった。キリスト教の迫害を受けながらも途絶えることなく綿々と受け継がれてきたのだ。おもに豚肉料理が食卓に上る伝統行事。五穀豊穣を祝う行事のことだ。


「テーブルいっぱいに豚料理を並べれば、ユール・ボードだぜ。」


 オレグにしてみれば、スラブ人の血を引く、土着信仰も持たない無神論者。


「ここ最近のはやりになったからな、まねただけだ。」


 形だけでもキリスト教を受け入れないとたちまち近くの貴族が村に侵攻してくる。


「おう今帰ったぜ!」・・・「ぎゃ~!!!」


 オレグのけたたまし悲鳴がパブに響く。


「オレグ無事で良かった、良かったわ……。」


 涙目のソフィアがオレグに跳びかかって帰宅を喜んだのだった。


「すまないな、寝た子を起こして騒ぎにしてしまったよ。」

「うん無事ならばいいのよ、オレグ……。」

「心配させた、すまない。」

「うんいいのよ。今夜は離れない。」

「おういいぜいいぜ。朝まで付き合うさ!」

「うん……。」


「ドスン!!」


 と大きい地響きが再び!


「もう戻ってきやがったか。テーブルいっぱいの豚料理は出来ているか!」

「オレグさん、準備はできております。これだけあればあの龍もお腹いっぱいになるでしょうか。」

「え”~~~!! ドラゴンに食べさせるのですか~!」

「しゃぁないだろう。餌付けしないと俺らが食われちまうからさ。」

「納得~!」x6

「ソワレ、ありがとうな!」

「リリー準備はいいようだ。穴の中の人たちをここに召喚してくれ。」

「シビル、ソフィアお姉さまを抑えておいてください。では全員を召喚いたします。」

「あ、石工らは怪我人だ。病院に出せるか!」

「そうですね……イメージ出来ました。六人は隣に出します。」


「ワレは石工ら六人を病院に……召喚!」

「グルウ~グルウ~グ~、ウ~ウ~!!」


 ソフィアが人狼に変身しながらうめき声を出している。シビルは驚きながらも必死でソフィアを押さえていた。



*)惚れました、一目ぼれです!


「バ~ン!!」


 けたたましく入口のドアが蹴破られた。


「きゃ急がないと、ワレ、ここに召、ゴンドラの上に召喚!!」

「わ~ぉ!」「イテテ!」「きゃ~!」「いや~ん!」

「クソガキが~!!」 「バコン!」「バコン!」「バコン!」

「あらあらまた谷底に飛んで行きましたわ。」


 パブの入口に人の山が出来てヴァンダ女王だけがただ一人、勝ち誇ったように佇んでいた。四人の精霊たちは残らず精気をヴァンダ女王に吸われていた。


「あ~!! かいか~ん!!」


「ドスン!!」……「バ~ン!!」


 と大きい地響きとドアを蹴る音が三度。


「ヴァンダ女王、パァンダ女王! ご無事ですか!」

「クソガキが~!!」 「バコン!」「バコン!」「出直せ!」

「ヴァンダ女王、ヴァンダ女王! ご無事ですか!」

「あぁ、このように若いピチピチギャルになれたぞ。今まで我慢して正解だった。お前には苦労かけたな。」

「いいえそのようなお言葉は、もったい・・・。」


 ゴンドラはソフィアを一目見るなり、


「これはこれはお美しい!! 惚れました一目ぼれです!」

「え”!!」


 ゴンドラはヴァンダ女王への挨拶をすっ飛ばしてソフィアにせまった。ゴンドラは綺麗へんてこなソフィアに一目ぼれになってしまったのだ。


 ソフィアは大きい耳としっぽを出して全身の毛は逆立てていた。人狼の顔立ちでとても美しいとは言えない。


「こら! ゴンドラ。私という女がおりながら若い女にちょっかいを出すとは、いい度胸をしているではありませんか。」

「わ~ヴァンダ王女さま、お母様~!! 私でございます、ヤドヴィガでございます。」

「またしてもヤドヴィガではないか、それに……?」

「娘のエルジュビエタでございます。」


 ヤドヴィガは娘のエルジュビエタの手を引いてヴァンダ女王の前に現れたのだ。


「長らく探しておりました。お会い出来まして幸せでございます。」

「こんなにヨボヨボの婆ぁになって、どうしたのだ。」

「はい、ヴァンダ女王さまに精気を抜かれたのでございます。次は娘の、・・」

「いやよ、お母様の言いなりにはなりません。」


 とソワレは激しく抵抗して母親の手を引き離した。


 その横では、


「お美しい! 惚れました、私のお嫁さんになって・・・。」

「クソガキが~!!」 「バコン!」「バコン!」「バコン!」


 と今度はオレグが怒ってゴンドラをパブから叩き出した。


「オレグすご~い、ドラゴンを叩き出したわ!」x5

「リリーまた谷底だ!」

「はいなお兄さま! 素敵です。」

「ソフィア、俺が守るからもう変身しないでおくれ!」

「は~いオレグ。見苦しいところを見せてごめんなさい。」


「まぁな、な、なんと、ワシの下僕を……。」

「うるさい黙れ! 俺の女に手を出したらぶっ殺す! 分かったか!」

「は、はい、……。」


 オレグは勢い余ってヴァンダ女王にも怒鳴ってしまった。ヴァンダ女王はシュンとなり、これより先はオレグに逆らわなくなった。


「これは失礼いたしました。これはお近づきのご挨拶でございます。朝までお付き合いいたしますのでごゆるりとなされて下さい。」

「いいえこれは、このような、たくさんの夕餉、ありがとう。ゴンドラの分もご用意されているようで、重ねてお礼を申します。」


 ヴァンダ女王は目頭を押さえながらオレグにお礼を言った。


「とても長い間、地上に出る事もあたわず、苦労された事か存じます。これからは、おそよかにお過ごし下さい。」(おそよかに=優雅に)


「ドスン!!」……「バ~ン!!」

「ヴァンダ女王さま!」

「お前は一言多いから今後は黙りなさ。」


「は、はい、・・・・・これは、お美しい魔女さま、ぜひに!」


 シビルを見てまたしても猪突!


「クソガキが~!!」 「バコン!」「バコン!」「バコン!」


 と今度はシビルが怒ってぶっ叩いた。


「もうここからは飛んでいきません。腹痛は治まりました……。」


 威圧する顔立ちでシビルに迫っていた。シビルは動じずに、


「あんたも独身かいな?」

「はい独身でございます。」


「あちゃ~ゴンドラ。もうお前の好きにするがよい。ワシはオレグ殿に決めた。」

「バカ言うんじゃないよ、オレグは俺の男だ! 手を出すな!」

「ヒェ~!!!!!」


 ソフィアが凄む。リリーはにこやかに笑い、ゾフィは手当り次第に肉を頬張る。三人の精霊は例のごとくゾフィにしがみ付いている。



 オレグは、シビルには夢魔法を出させて村中の記憶を消させる。リリーには大地の魔法でこのパブに強い結界を張らせた。


 宴会は三日三晩続いた。一人が休憩で二階にあがり就寝してしばらくして起きてまた宴会に参加した。これが入れ替わり立ち代わりに続いたのだ。一番苦労したのはメイドたちだろうか、次は女将。メイドは隙を見せたらすぐに尻を触られていたのだった。


「塩掛けますよ!」

「おう、すまんすまん右手が勝手に出てしまうんだよ。」

「塩掛けますよ!」

「おう、すまんすまん左手が勝手に出てしまうんだよ。」


 いつの間にかグラマリナとエリアスも参加していた。リリーは大地の結界を張っていたはず。どこからパブに潜りこんだのだろうか。


「うっふん、隠し通路を造っておきましたわ!」



 少し短いですが、流れに乗って一気に!!


あ、時々一気読みして頂いております。ありがとうございます。

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