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人狼夫婦と妖精 ツインズの旅  作者: 冬忍 金銀花
第三章 オレグvsアルデアル公
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第148部 オレグへのビッグなプレゼント


                 1247年10月20日 ポーランド・グダニスク


*)馬車


 チャカが夫のマクシムからオレグにプレゼントする船を包めと言われて、


「さぁ~て私はどしようかな! ……船を包めるかしら。」

 とか、

「なんで包みましょうか。黒い煙がいいかしら!」

 と言ってマクシムを煙に巻いている。チャカがどうするのかがマクシムの楽しみであった。


 今日は久々の雨降りだがオレグとその家族+エレナ。ボブ船長も来た。エレナはチャカからの呼び出しに応じて同乗している。


「馬車には屋根が必要だな。作らせるか。」

「オレグ、屋根を着けたら大きい荷物が載らないよ。」

「そんなの関係ない。俺専用の客車をこさえるのだからいいだろう。」


 馬車は荷馬車が主でよくテレビやアニメに出てくる馬車の原型は十六世紀以降主に十七から十八世紀が主流になります。貴族がこぞって乗り出したからです。


十四世紀にはコーチと言われる座席が作られました。それまでは台車に座席を置いただけですので、お尻に伝わる振動は痛いというものでした。そのコーチというのは馬車に柱を立てて梁を通して、そこから紐やチェーンを垂らして座席を結んだ簡単なものでした。これで大きな振動でもかなり身体への負担が無くなったといいます。まぁブランコですね。


 ですが今は十三世紀。楽な馬車は在りません。雨が少ないので屋根の必要性は少なかったのでしょう。小雨だ濡れていこう! 横に逸れてしまいました。



 オレグは雨だからと港の造船ギルドに行きたくなかった。


「ボブ、今日は雨降りで神経痛が痛いんだ、明日にしてくれ。」

「分かったよ、明日に順延な!」

「おう!」


 とどこまででも調子がいいオレグ。オレグはマクシムに呼ばれて来たのだから最初にマクシムの事務所に寄る。応対に出るのがチャカである。


「まぁオレグさま。足元がわる……いいえ、今はマクシムは留守ですので明日の朝一番で再度お願いします。」

「せっかく出てきたのだぞ。それに今日行くと言っとったではなかとですか。」

「あらそうでしたか、トチェフの村ではお世話になりましたわ、オホホホホ!」


 要領のえないチャカの対応にオレグは、


「分かったよ、明日の朝一番だな。」

「はいよろしくお願いします。」



*)クジラの串焼き


 オレグはエルザのパブに行き宿泊する。一緒に来たエレナは居ないがオレグは気にも留めてもいない。


 エルザが意外な事を言った。


「オレグさんがクジラの肉を出してくれたんだろう? お蔭でさグダニスクのクジラの串焼きが名物になってさ、うちは大儲けなのよね。」

「それは良かったな、でも俺は知らないよ。」

「んまぁ、またそうやって話をはぐらかす。」


 オレグの所業がエルザには見抜かれていた。ドキッとしたのだ。


「オレグ、クジラも捕まえて売っているの? 私、食べてみたい。」


 この質問には答えられないから、


「エルザ、そのクジラの串焼きを食べてみたい。そうだな……適当で!」

「あいよ、ありがとうね。」

「旦那はまだ帰らないのかい?」

「そうなんだよ、なんでも急な仕事が入ってさ、氷を買い出しに行っているんだ。このご時世に氷がどうして必要なんだか。」

「どこにさ、」

「それが教えてくれなかったよ、何処だろうね。」

「へぇ~そうなんだ。では帰りが遅いとか、」

「いいや、もう帰るだろうさ。焼けたよクジラ十本だね。」

「おうおう、これは美味そうだ!」


 と一人で先に手を出す。こんなどす黒い肉が美味いとは思えない三人。


「オレグ。あんた食べた事があるのね。この黒い肉は美味そうに見えないわ。」


 オレグは再度ドキッとさせられた。瞬時にオレグはエルザの顔を見た。エルザはにっこりとほほ笑んで、


「ソフィアちゃん。ほらほら味は保障するよ、温かいうちにお食べ。」

「エルザさん、本当なの?」

「ソフィアちゃん。ほらほらいい匂いがするだろう。」

「そ、そうですわね。リリーあんた、先に食べて……ゾフィが先ね。」

「ケッ、この肉は食えるか! 匂いはワインかい?」


 リリーとゾフィは右手に持ってためらっていたが、


「そうだよワインにし浸して焼いてさ、岩塩の粉末を振りかけて焼くんだ、これでも一本が銅貨三枚と高いんだよ。」


 と聞いた瞬間にソフィアは二本の串を持って口に放りこんだ。


「わ~これ、とても美味しい~わ!!」            「幸せよ!」


 呆気にとらわれるリリーとゾフィ。オレグは注意が逸れて安心した。


「うん、これ、とても美味しい。」

「旨い、旨い。」

「へぇ~これは美味いね~!」


 とわざとらしく大きい声で言うのだった。


「そりゃよかったよ、いっぱいあるから全部食べてね、オレグさま。」


「へっ、いったいどれ位?」

「なぁ~に両手の指の数だけだよ。」

「なんだ十本か、だったらもう無いね。」

「んなことはないよ、嬢ちゃんが三人でお姉さんが一人で、旦那が帰るしそうそう、エレナも居るだろう。」

「すると全部で七十本?? 銀貨で二枚も?」

「いいだろう? お金持ちなのだからさ断れないよね。」


「んもう……。」



*)大量の氷の行方


 そこに頭を拭き拭きのデーヴィッドとエレナが帰ってきた。


「おやおやオレグさん。お待たせいたしました。」

「いや少しも待っていないよ。お帰りエレナ。」


 今度はソフィアがビクッとした。オレグが他人にお帰りと言う事はない。少なくとも聞いた事はない。ソフィアが疑問に思う。そして黙り込んだ。オレグはエルザの押し売りで機嫌が悪いだけだろうか。


「エレナ、今日は大変だったかな。」

「いいえ、ほんの少し魔法を使っただけです。氷は重いので私は持てないから解けないようにしただけです。」

「へ~そうなんだ。その氷は港か?」

「さぁ、どうでしょう。」


 オレグはエレナの顔の表情に気を付けながら、


「リリーさっきから黙っているが、どうしたんだい。疲れたかい?」

「え、あ、お兄さま、そうですわね、少し魔力が抜けているようです。大していえ、なんでもありません。どうしてでしょう。」

「だったらこのクジラの串焼き、残りが六十本もあるんだ全部食べてくれ!」

「まぁうれしいです。これだけ食べれば十分でしょうか。」


 それは良かったと言うオレグ。今度はデーヴィッドに尋ねる。


「なぁデーヴィッド。主はチャカであの村から持ってきたんだろう? その大量の氷はよう。」

「いいえいいえ、決してそのような事はございません、企業秘密です。丸秘です。」


「そうかい。だったら俺も串焼きをたんまりと頂こうか。ゾフィ、無制限で食べていいぞ、支払いの心配は要らないね。」

「オレグがそう言うならば……エルザさん全部焼いてくださいね。」

「あいよ、任せて頂戴。」


 事情は知らないエルザは喜びデーヴィッドは段々と青ざめる。


「デーヴィッド、雨に濡れて寒いのかい。ほらワインだ飲め!」

「は、はい、オレグさん。ゴチになります。」

「いいよいいよ、これは俺んとこのワインなのだろう?」

「はいボブさんから買いま……、あ!」

「禁句だったか? なぁデーヴィッドさんよ?」

「ほら言わんこっちゃない。だから言っただろう。これはあんたが悪いよ。」


 と女房のエルザがたしなめる。


「ソフィアも飲め。喜べこのワインはただだ。」

「そうなんだ、オレグってカマかけるの上手いね!」

「そ~かぁ??」


 そんなやり取りでシュンとなったデーヴィッドだった。


「エレナ、どうかしましたか?」


 と今度はソフィアがエレナに声を掛けた。


「え、はい、私も氷の維持で疲れたようですわ。」

「でしたらこのクジラのお肉をたくさん食べたらいいわよ。」

「い、いいえ、こ・れはリリーさんにおゆず、譲りま・すわ。」

「そんなに遠慮はいらないわよオレグが払うのですもの。第一にトチェフの留守を守ってくれたのですから当然の報酬ですよ。」

「そ、そうでしょうか、でも今日は遠慮いたします。」


「ソフィア、エレナはもう解放してやれよ、俺は見逃しているんだぜ。」

「あらそうだったの。知らなかったわ。」

「もうお姉さまもお兄さまも意地が悪いです。ね! エレナさん?」

「はいそうですよ。ご迷惑をお掛けしますリリーさん。」

「エレナ、落ちたわね!」

「あ、リリーまでもが、……、……。」


 ゾフィが、


「お前らは全部が悪いんだぜ、少しは遠慮しろ。」

「はい、」x5

「まぁまぁ姦計はそれ位にしてさ、ポーランドの名物の牛と野菜煮込みだよ。」

「わ~温かいスープです、エルザさん!」

「牛が一頭なのか!」


 チャカ----エレナ----トチェフの氷----港----?? 氷の使用目的までは判らない。



*)とても寒い朝


 エレナが別れ際に一家の主婦としてのソフィアに言った。


「ソフィアさん、今晩は冷えますのでご家族の方にはご配慮をお願いします。」

「はいありがとうございます。オレグもまだ本調子ではありませんので用心いたします。」

「いいえ、オレグさんはもう本調子ですのよ、頭だけですが。」

「まぁそうですか、手の内を見せすぎましたわ、オホホホホ!」



 雨上がりの朝は普通寒いと決まっている。だが今日はこの秋一番か!


「オレグ、寒いけれども港まで行けるかな。」

「なぁにこれくらいは大丈夫だ、神経痛は悪いわな。」

「それって歳のせいだわ。それとも飲み過ぎかしら。」

「ほら行くよ。出ないと着かないよね。」


 ゾフィの短い言葉には早くが抜けている。最近は特にノアになっている事が多いし、前の事件の影響が残っているのかとリリーは心配するのだった。それもアルデアル侯の影響かな! と考えている。


 約束の時間よりも少し早いか、港に着くも、


「オレグさま、こない早よう来て頂きすんまへんな、」

「いえいえ、今日は何が出るのか楽しみですよ。」

「オレグさん、今ボブ船長を呼びに行っていますのでしばらくここでお待ちになって下さい。」

「やぁマクシムさん。プレゼントが楽しみです。でも今日は珍しいですね。」

「そうですね、こないなお天気は初めてどす。」

「おいチャカ、お前、変だぞ。」

「そうでっか? 板って普通ですわ。座っても割れまへん。」

「ムムムムムmmm。」


 マクシムはチャカの考えが判らない、いや船を包むという方法が解らない。


「おうマクシムさん、待たせたかなんの用件だい、おう兄ちゃんもか!」


「チャカ、用意は出来たかい?」

「はいオレグさまへの、プレゼントを披露いたします。私の夫が包め”と言いましたので、とても苦労いたしました。では皆さま、港までご同行をお願いいたします。」

「オホン!!…」


 意気揚揚に港に案内するチャカ。今朝は雨上がりでとても冷え込んでいて濃い霧が立ち込めていた。


「着きましたわオレグさん、それにボブさんに他の皆さまも、よくご覧下さいませ。…………エレナ準備が出来ましたか?」


 遠くから、


「は~い出来ました~。」

「エレナ、やって!」


 港に強い風が吹いた。オレグはしっかりと踏ん張るほどに強かった。


「なんだい風のプレゼン……ト、……かい、……。」

 

 なんと、そこには霧に包まれた大きな外洋船が目の前に現れた。


「ゲゲゲ、なんだ、このでかい船は!」

「おいおいおい兄ちゃん、こ、これが、お、俺の船なのか!」

「きゃ~とても大きいわ~!」


「オレグさんへの感謝の贈り物でございます。ちょうど船も無くされたので最高の贈り物だと確信いたします、が?」

「あ、あ、あ。最高だぜ、ボブ。良かったなこの俺でもこれほどの船は建造させることは出来ないよ。あわあわあわわわわ・・・・」


「オレグさん、もう声も出ませんか……気に入って頂きありがとうございます。」

「おいソフィア、夢だろうか殴ってくれないか……ボブにだぞ。」

「いいわよボブ、船まで飛んで頂戴、」

「ばこ~ん!」

「ヒュ~ン。」 「あれ~~~!!」 

「おう、良く飛んだな~。」


 その日、ボブは帰らない人になっていた。……チ~ン。エレナもだった。


 全員が朝食抜きだったからマクシムの館で御呼ばれになった。


「さ、オレグさん。三年ぶりのライ麦の交渉をいたしましょうか。」

「おう!!」


「オレグよかったね!」



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