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人狼夫婦と妖精 ツインズの旅  作者: 冬忍 金銀花
第二章 迷走するオレグ
144/257

第144部 ソフィアの救出


 1247年10月8日 ・ゴットランド島・フォレスンド



*)魔女マティルダ


「それはもう金貨が四千枚ですもの、しっかりと呪術の準備をいたしております。」

「うふ金貨四千枚、それもデンマークの金貨ですか。うれぴぃ!」


 マティルダの従者が長い間守ってきた結界が解けてしまう。この失態は守り人が抜けていたのか、それともマティルダも従者もなのだろうか。


「あはぁ~やってもうた!」



 貴賓室に通された四人は当然ながら落ち着きが無い。まぁデンマークの妃に謁見するのだ、誰でもが緊張はする。だがシビルは追加でガンを飛ばす。


 この異様な感じはすぐにマティルダだけではなく他の魔女らも気づく。なのにシビルがガンを飛ばす意味はなんだろうか。


「貴女、私と張り合うのかしら、それとも同業のよしみの感情なのかしら?」


 マティルダは入室しての開口一番の挨拶となった。


「これはこれはマティルダさま。初めましてリガのニコライ・アウグスタと言うハンザ商人でございます。それに妻のアウグスタでございます。」

「そう、それでお隣は?」

「はいエストニアのルイ・カーン侯爵さまの使いでご寄付に参りました。私はペール・ギュントと申します。それにこち・・」

「その女は魔女ですね。ここには不向きな女ですが、なぜですか?」

「はい寄付の金貨が惜しくてこうやって出て来ました。マティルダさまこれは呪われた金貨でございます。ですので寄付は受け取られないようにお願いしますが、出来ませんでしょうか?」


「私には呪いは効きません。心配は無用ですよ。」

「な~んだ、そうなんですか。心配して損いたしました。でしたら私はこれで失礼いたします。かような席はどうも殺気立ってしまうものでして。」

「そうですか、ならば隣室で待ちますか?」

「はい是非お願いします。」

「逆にこの私をお傍に置いて頂けましたら幸いです。」

「こらシビル。侯爵さまを裏切るのですか。」

「いいえ、私はあの金貨が好きなだけです。ルイ・カーンなんて知りませんわ!」

「この薄情もの。」


「そうですか、でしたら後日面接試験を行います。ほれ、この女をあの部屋に案内しなさい。」

「奥のお座敷ですね、承知いたしました。共は二人を連れて行きますが。」

「はいそうしなさい。」

「えぇ? 私に共を付けるのですか?」

「はい案内役ですよ。それに、」

「そうですよね~どこの馬の駄肉とか分かりませんですよね~!」

「まぁそのような事はありませんわ。たてがみの部分が美味しい、いや、何でもありません。案内してあげなさい。」

「はいマティルダさま。」


「すみませんマティルダさま。私の方は寄付ではないのですが、高級ブランドのブドウの初物をお買い上げ頂きたくて参上いたしました。」

「そうですか、お支払いはこのデンマークの金貨ではできません。私のパトロンには一度お見せする必要がございます。」

「おお! パトロンさまですか。なおの事このブドウも献上されましたらきっとお喜びになられましょう。」

「えぇそうですわね。それでブドウの代金はいくらですか?」

「はい一箱銀貨二枚、合計で銀貨四万枚でございます。先にこのブドウの味見をされて下さい、私も妻も絶賛いたしました。」


「お前、持ってきなさい。先に味見をしなさい。それとお前たち三人にも分けますので一緒に味見をなさい。」

「はい喜んで頂きます。」


 ブドウは毒見で各人にはマティルダの従者が任意の部位で配膳した。また従者は念入りにブドウを検査するも異常は無いとマティルダに報告する。


「マティルダさま、とても美味しゅうございます。早くお食べ下さい。」

「そうですか、では一つ。」

「……はい、とても美味しいですね。」


「お前、二十箱を任意に抜き出して館の女や兵に与えなさい。直ぐにですよ。」

「はい承知いたしましたマティルダさま。」


 当初の予定が狂ってしまった。ここで二十箱のブドウが一度に味見いや毒見が行われる。ここで毒に当たればバレてしまう。残った二人は焦るのだが。


「マティルダさま、初めまして、私はアウグスタ・ハーシュホーンと言います。お妃さまにおかれましては、私どもの出会いがよき日にならん事を祈って止みません。出来ましたら、夕食の後でのお楽しみにされましたらいかがでしょうか。これは私の楽しみでもありますがとても美味しく頂けますわ!」


「そうなんですね。ではそのようにいたしましょう。今日はこの館に泊まって行きなさい。」

「はい、ありがとうございます。」

「そうして頂きませんと、金貨二千枚が用意できませんわ。」

「マティルダさま、それはいささか横暴ではございませんか。」

「どうしてですか? この館には金貨が二千枚しかございません。あれは使えませんので仕方なしに全部を放出いたします。出せば私どもも明日からの支払さえも支障をきたすのですよ。ここは痛み分けですよ。」

「むむむム・・・・・。」


「アウグスタ・ハーシュホーン、女は度胸ですわよ。」

「はいマティルダさま、直ちに夫を黙らせます。」

「はいとても素晴らしい妻を娶りましたね、ニコライ・ハーシュホーン。」

「それはもう、私に過ぎた妻でございます。」


 汗を拭き拭きのニコライだった。ペールからすれば一言の発言がやぶ蛇だから発言も出来ない。おどおどしているペールがギクリとなった。


「ペール。この金貨はどこから出てきたのですか?」


 マティルダの言葉使いは丁寧で優しい。しかし節々には毒が混じっている。


「はいエストニアのトームペア城の領主、フリードさまからでございます。ルイ・カーン侯爵さまはフリードさまの良き盟友さまになられます。」


「フリードなのですね。よく判りました。呪いなんかは少しも掛かってはおりません。ルイ・カーンにはありがとうとお伝え下さい。きっとご苦労されたと存じます。」

「はい、マティルダさまほどではないとは思いますが……。」

「そうですか、はっきりと物言う男ですね。」

「少しは言いませんと、私の腹の虫が治まりません。」

「そうでしょうそうでしょうとも。ペール気に入りました。今宵は、いや皆さま、今宵はゆっくりとお寛ぎ下さいませ、」


「マティルダさま、ブドウはこの館の全員にでしょうか。」

「はい。座敷のお客様にもお出しなさい。」

「え~今、お客様がいらしてあるのですか?」

「そうですね、長く逗留して頂いておりますわ。」

「それは素晴らしい!」


 アウグスタはもう声も出なくなった。ソフィアたちが毒を食べたらと思うと、もう居ても経っても居れなくなってしまった。


「少し外に出てもよろしいでしょうか。」

「はい、どうぞ。」


 夕食会には全員にブドウが配られた。計算外は座敷牢の全員にも配給される事だった。これを見越してのシビルの行動だった。


 シビルは今、ソフィアと同じ座敷牢に居る。


「あ、これは先客さん御機嫌よう。今日から私もお世話になるのよ、仲良くしてね!」


 開いた口が塞がらないソフィアとリリー。他の三人いや五人か、は、全くシビルの事は覚えてもいない。


「あ、はぁ~お仲間さんですか~よろぴく!」


 とは、シーンプの言葉だった。


 門番と魔女が去って、


「あはぁ、これはソフィアの子供かしら良く寝ているわ!」

「いやこれは、育児放棄のてて親の代わりで、」

「そう照れなくてもいいわよ、もうすぐオレグが来るからね!」

「え”ぇ”~ホントにオレグ生きていたんですかぁ~!!!」


 大声を出すので赤子が眼を覚まして泣き出す。


「うるさい二匹とも黙れ!」


 そう言われて黙り込む赤子。


「おうおうソフィアの言う事は効くのだね~。おうおうよしよし。」


 ソフィアは鬼母の異名を持つ羽目になった。聞くよりも効くとは赤子ながらに立派なものだ。


「あ~ぁ、鬼母と呼ばれる事になったじゃないの、責任とってよね。」

「ソフィアさま、ヘステアの育児放棄で申し訳ありません。これも全てソフィアさまの事を思ってのことでございます。」

「もう、異な事を言うのね。私がどれだけ苦しんでいたか……。」


「あ、私、みんなから生かされていたのですね……。」


「お姉さま、ここは黙ってオレグの生存を嬉しく思いましょうね?」

「リリー私、私は。悪い女だったのね。」

「いいえ、全然ですわ。誰もお姉さまが悪いとは思っていませんわ。ほら、もうオレグの足音がそこに!」

「おう、みんな、待たせたな! 今、助けに来たぞ!」

「オレグ、待っていた……わ…。」


 ソフィアが見たのは幻だった。ソフィアは打ち臥して大声で泣き出した。


「ごめんなさいお姉さま、言いすぎましたわ……。」


「リリー気にしなくていいわよ。結果はみな同じなのよ。早くオレグに会わせてあげたいのだけれどもね、ここの連中を全員毒殺にしないと気が収まらないのが居てね。その計画が進行中なのよ。」

「そうですか、序に火あぶりもお願いしするわ。」

「それは私たちがここから脱出出来てからだよ。」

「もう、いつでも出来るわよ。でも、いつがいいのかが分からないの!」

「リリーあんたはもう……。」

「そうね、力は戻って、いや、この部屋の結界が消えているわ。」


「あ~それでオレグは金貨を一万枚も使ったのね、オレグは凄いわ~。」

「オレグが私たちの為に一万枚も投げ捨てたの!!」

「いいえ、知らないと思うが、それだけではないはずよ。エストニアの事業にも侯爵家に取り入る為に、何万もの金貨を投げ打ったはずよ。あんたたちはオレグから好かれて本当に愛されているのね。あ、そうだ。ゾフィも元気で居るわよ。すごく心配していたわよ。」


「まぁゾフィが……そう、海で死なないで良かった、本当に……。」


 リリーまでもが泣き出した。リリーの方がソフィアよりも繊細で弱い性格なのに泣かないで今までソフィアを支えて来てのがイヤと言うほどに伝わってきた。


「リリー貴女は偉いわ、私なんか貴女の足元にも及ばないもの。」


 とシビルでさえも泣き出してしまった。


 ブドウはこの座敷牢までは下りてこなかった。途中で食べられてしまっていた。もの静かになった修道院。食べた連中はサワの毒気に当たり全員が眠っている。


 サワを人殺しにしたくないオレグは解毒剤も一緒にブドウに注入していた。一緒に食べれば中毒は起こさないとお思いのあなた! 考えを改めて頂きたい。フグ毒は即効性。解毒剤は遅行性。もうお分かりでしょう。同時に食しても間違いなくフグ毒にはあたるのだ。


 唯一絶対とはいかなかった。魔女マティルダはそよ風のようにシビレを感じていた。


「あは~ん、いい具合に身体がシ・ビ・レ・るぅ~!」


 翌朝、オレグらが全員して修道院に乗り込んだがマティルダが待っていた。


「おうおうマティルダ、随分と久しぶりじゃないか。元気にしていたようだな。ところで俺の家族は知らないか。」

「もう殺して食べてしまいました。これを見なさい。見覚えがありますか?」

「あぁそうかお前、これから殺されて、火にかけられて海に沈められるのだ。そんな悠長でいいのかな。」

「まぁそんな脅しは効かないわよ。この髪飾りはあの女の物なのよ、どう? 久しぶりに見た感想は!」

「あぁとてもうれしいよ。それは記念に頂けるともっと嬉しいよ。」

「えぇいいですわ。差し上げます。ですから殺されたくなければこの遺品を持って帰りなさい。」


「そうか二人は旨かっただろう。ここで敵を討たせて頂く。」

「なにを言っているのですか、返り討ちに遭いたくなければケツまくって逃げなさいよね、男の肉は美味しくないから嫌いなの。」

「ほほう、随分と自信があるのだな。ここはお前がこいつらに食われる番だぜ。この猫に俺は飢え死にしそうな位に随分とエサを与えていなくてな、早くエサを与えなくてはこの俺が食われそうなんだ。」


「ま、まぁ、おg品ですわ、そrに、そんn子猫は私には、意味gありません。」


 恐怖に怯えている様子が言葉の切れから感じ取れた。


 マティルダ破れたり。


「そうかい、俺はあんたを殺して家族の骨を拾うさ。弔いはもうこんなに遅くなっちまったから、いつでもいいんだよ。」

「マティルダ、覚悟をし。」


「いいぜみんな、こいつを殴り殺してくれないか。」

「おう兄ちゃん、いつでもいいぜ!」

「旦那さま、私、胸の乳房が少ないですよ。頂いてもよろしいですか?」

「ご主人さま、この女のどこがいいのですか?」

「狡猾さだろうな。」

「だったら姉妹は脳みそを頂きます!」

「おう自由に飲んで食べていいぞ。」

「ルイ・カーン伯爵さま、私はこの女には恨みがありません。どうしましょう。」

「ブドウの代金が貸し倒れだろう、代金の分の金歯を抜いて売れよ。」

「あ、そうでしたわ。代金の未収がありました。侯爵さま、思い出させて頂き感謝いたします。」


「あはぁ~ニコライはここで消えさせて頂きます、心臓に悪いです。」

「ルイ・カーン伯爵さま、私は金貨の恨みが枚数分だけございます。」

「おう、こやつの尻を5千回も殴ったれ!」

「手が痛くなりますので、針で突き刺しても?」

「いいや槍に替えろ。ソフィアたちは槍で突かれたらしいのだ。」

「ガッテン!」


「みんな頼んだぞ。俺は家族を迎えに行く!」

「はい侯爵・伯爵・旦那・オレグさま。」

「ご主人さま!」x2


「オレグ、俺も付いていく。」

「そうだな、ゾフィも心配してるよな。一緒にいこうか!」

「はいオレグ!」


 と、元気に答えるゾフィ。



*)ソフィアとの再会


「この奥かな。ゾフィ、ソフィアの気は分かるか。」

「うんこの奥のようだよ。リリーが居るから間違いないよ。」

「おう判った、ゾフィ耳を塞げ。」

「え~なんでだよ。」

「いいから塞げ。俺が叫びたがっているのだよ。」

「うん、いいよ、もう聞こえない。」


「ソフィア~~~~~!!!!!!!」「リリー~~~~~~!!!!!」

「迎えに来たぞ~~~~~!!!!!」「返事しろ~~~~~!!!!!」


「は~いオレグ、待っていたわ~、オレグ、オレグ・・・。。。。。」

「ようソフィア、リリー待たせたな。」

「びぇ~~~~~~!!!」x2

「お前、いつ子供を二つも生んだんだ?」

「そうね、これはオレグの子供よ、」

「ひぇ~~~~~~!!!! 俺は知らないぞ~!」


「ビィビィ、ぎゃぁ、ぎゃぁ。・・・・・・・・。」


 館中に鳴き声が響き渡った。


「マティルダの断末魔だ、うるさいから殺せ!」


 シビルは、


「良かったねオレグ!」


 キルケーがマティルダを双頭の猫に変えていた。


「旦那さま、この猫を連れて帰りたいのですがよろしいですか?」

「頭が二つか、お互い喧嘩しないか?」

「私、躾には自信があります。すぐに大人しくさせますわ。」

「頼むな、俺も顔を見るたびに殴ってやりたいからな。」

「でしたら顔の大きいメスライオンに造り変えます。」

「トラの張子がいい。いつもでも頭を張り倒してやりて~。」


「キルケー命令だ。ここの住人を残らず家畜に変えろ。」

「まぁうれしいですわ。ご主人さま愛してい・・」

「ばこ~ん、」

「黙れ、メス豚。」


 ソフィアが復活した瞬間だった。


「ソフィア随分と力が落ちているな。美味い物を食いに行くぞ。」


「そうですわね、あの女と戦うのですもの。たくさん食べて力を付けないとなりませんわ。」

「あの女?」

「あのメスオオカミですわオレグ。……どこで拾ったのかしら?」

「まぁ失礼しちゃう。やわオオカミ、受けて立つわよ、バカオオカミ!」

「なにを~! この泥棒オオカミ。マリアさまにしてやるのだから。」

「おお神よ!? そうですか、だったら私はお前を張り付けにしたいわ。」


「おうみんな、帰るぞ。黙って帰るぞ~!」

「は~い意義な~し!」


 メイド五人とソフィアとアウグスタが後続のスゥエーデンの船に乗った。他は懐かしいボブの船に乗っている。


「お姉さま、大丈夫かしら。」


「アウグスタさま、お犬さまに負けませんように!」

「マトワ、アウグスタは元気だ、細い女には力で負けないよ。」

「はいニコライさま!」


 シーンプ、ギーシャ、ヘステア、それに赤子の二つがオレグに纏わりついている。ニコライ・ハーシュホーンにはブドウの代金+マティルダの有り金の全部。オレグにはデンマークの金貨が全部戻っていた。


 リリーは一人で食べる食べる。今まで食べれなくて魔法の力が欠乏していたから全力で食べて飲んで食べて飲んで、


「シビルも良く食べるのね。」

「おめぇほどでもないがな。」

「そうね、もう食べれないかな。」

「そりゃぁ良かった、元気で良かったよ。」



 もう途中から随分と省略いたしました。144部は3月位にはあらすじを書いていましたが先急ぎいたしました。デンマークとの開戦やゴッドランド島の奪回作戦等が無くなりました。

 あの方へ向かう新章へ移ります。

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