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人狼夫婦と妖精 ツインズの旅  作者: 冬忍 金銀花
第二章 迷走するオレグ
141/257

第141部 ゴットランド島 捜索の始まり


 1247年9月28日 ロシア・リガ


*)スーパーな、メイド


「キルケー、男らは旨かったかい?」

「はいご馳走様です。貧民でしたがもう何年も食しておりませんでしたから。」

「それはすまない。俺が食うな”と言っていたからな。ところで男が居ないがこの船は動くのか?」

「はい、もう操船の技術は習得済ですわ。た*んまりと食べさせましたから!」


 キルケーが連れて来たメイドの五人が、なんとこの船を動かすというのだ。*に意味はない。


「キルケー、来賓のお二人の部屋はどうした。」

「はい喜んで私のお部屋を使って頂きますわ!」

「喜んで??……お前!……。」

「はい私、侯爵さまのお嫁になります!!」

「むぎゅ~!」

「ぎゃ~!!」


 侯爵の怒りはそのまま猫娘に転嫁される。


「私たちは転んだ嫁ではありません。反対です。」

「分かった、ではその減らず口に怒るとしようか。お前らの所為で危うく船と金貨八千枚を失うところだった。」


「私たち頑張って取り戻しました。怒られるのは反対です。」


「二人には怒っていないだろう、戸がない口に怒るのだ、お前らが金貨をたんまりと積んでいると言うからあの水夫らが犠牲になったんだぞ。反省しろバカチンが!」

「でも聞こえます。」

「おうおう、お前らは口減らしだ、ここで降りろ!」


「旦那さま、もうそこいら辺で勘弁されて下さい、猫の家の銅像にしましたら末代まで祟りが残りますわ!」


「私たちの館でしたら構いませんよ。あの憎きギルドに尻と尻尾を向けて据えておきますから。」

「アウグスタ、この旅から帰ったら館の屋根に猫の銅像を置くぞ。」

「まぁ趣味はいいのですが、性格が悪いですわ!」

「そう褒めんでもいいぞ。こそばゆいではないか。」

「アウグスタ??……。」


「ほらほら猫ちゃん。今日からは私がご主人さまよ。侯爵はおまんまを食べさせてくれないのだもの、私が食べさせてやりますよ。」

「ニャン!」x2


 アウグスタはベギーとシン・ティに言い聞かせていた。 


 ルイ・カーンもキルケーもアウグスタの底力を測りかねている。


「旦那さま、アウグスタにはきっと妖精が憑いていますのよ、分かりますか?」

「そうなのだが、あいつ、猫かぶりが妙に上手いからやはり分からないよ。」

「私たちを監視していたのは、その妖精さんかしら。」

「そうだな、どことなく女の子供のようだったぜ!」



「ルイ・カーン侯爵さま、私のためにたくさんの農機具を積んで頂きありがとうございます。」

「お礼には及びません。この船は空荷も同然でしたので。」

「ですが、空では商売になりませんよ。」

「別便がございます。予定通りに着きましたらニコライさんにも是非に!」

「ほほう、それは楽しみです。」


 ルイ・カーンはゴッドランド島へ持ち込む商材を探していたらニコライと遭遇したのだ。港に着いてからのルイ・カーンの行動はアウグスタにより四六時中も見張られていた。当然、ルイ・カーンは最初から気づいていたが無視していた。


「旦那さま、出港させますがよろしいですか?」

「あぁ頼む。」


 と言うルイ・カーンは一抹の不安が残っていた。水夫の男らが居ない、まさか女のメイドに変えられた?


 キルケーは大声で叫んだ。


「ルイ・カーン侯爵さまの、未来に向けて出港~~~~!!」

「俺、恥ずかしいよ!」



「船が出た、ニコライ・ハーシュホーンとの一か月の物語と、先に進んでボブとシビルとの再会の話がよいか悩む。」


 ニコライは、


「侯爵さま、ここは私、ニコライの話が先でしょう。」

「いいえ旦那さま、読者の方はボブとシビルとの再会を望んでおりますわ!」


「ニコライ、ここは先に進む。ニコライとの話は後日だ!」




 1247年10月1日 ゴットランド島・ヴィスビュー



*)1241年4月1日から六年半


 あれからいつの間にか六年半が過ぎていた。ルイ・カーンは入港しつつあるヴィスビューを涙目で眺めていた。


「ルイ・カーンさま、どうかされましたか?」

「あぁこのヴィスビューの港がな、俺の出発点だったんだよ。」

「そうでしたか久ぶりの帰郷ですね。当初の目的は果たせましたでしょうか?」

「金貨・銀貨を一千倍にするという目標はとうの昔にね。」


「ほほう、それは素晴らしいですね。」

「でも、どうして泣かれるのですか?」

「ニコライさん、旦那さまは奥さまと妹さまを攫われてあるのです。もしかするとこの島に居るのかと、まぁ、カチコミですね。」

「えぇ!! なんとムゴイ!」


 ルイ・カーンは話せないと思いキルケーが二人の間に割って入った。


「キルケーさん、それで相手は誰なのです?」

「デンマークの貴族の裏に隠れている、魔女マティルダですわ。」

「あの皇女殿下さま?」

「妃の偽物です。本物は普通の女ですわ。」

「皇女とは呼ばないよ、あれは王の娘をさす言葉だな。ひめみこからきた言葉だ。日本の天皇との続柄を言い表した言葉だ。」

「はい、以後は使用いたしません。」


 ニコライは事の大きさに黙り込んだ。ルイ・カーンはおかに上がるまで終始無言のままだった。ところが、ところが、ところが、ところがである。


「みんな来てくれ。俺の部下が間もなく入港する。」


 ゴッドランド島ではリガのニコライ・ハーシュホーン夫妻とルイ・カーン侯爵が出迎えた。


「おう、みんな、元気だったか!」


 あ”から始ってる”で終わる言葉遊びだよ?


「あんた、生きていたの!」

「いや~侯爵さまかい?」

「うそだろう、おいおい……。」

「え”っ?」

「オレグさん!!」


「か~まいったね!」

「きせきだわ!」

「くろうされたのですね。」

「けっか、オウライさ。」

「こんばん、奢れよ!」


「さ~続けるか?」

「しかし、また戦争を始める気かよ!」

「すでに始めているぞ。ここが戦場だ!」

「せめて援軍を!」

「それだけ居れば十分だ。それぞれみんなを紹介する。ボブ。船に上がらせてもらうぞ。」


「たのもしい援軍かい? 俺がか?」

「ちがうのか?」

「つよいのが二人居れば十分だ。」

「てつだってもいいが、見返りは!」

「とうぜんあるさ。金貨をたんまりとな!」


「なぁ早く紹介せろや!」

「ニコライだ、それにアウグスタ。キルケーはいいな。」

「ぬけた二人はボブ船長とシビル、名前の通りの魔女だ。」

「ねこの姉妹のシン・ティとベギーだ。」

「のこりは俺が最後か、ルイ・カーン侯爵だ、よろしくな。」


「はやくブドウを見せろ。」

「ひで~な、もっと勇敢に紹介が出来ないのか!」

「ふつうだろう、大したことではない。」

「へ~俺らを見下すのかい?」

「ほらほら、お客さまも待っておられるぞ。」


「まぁまぁルイ・カーン侯爵さま、漫才は止めませんか?」

「みごとに続いたであろう。」

「む・いみでございますが?」

「めんどうを掛ける。最後まで付き合え。」

「もう、ネタが無いと認めたらどうなのよ。」


「やだよ、俺にもメンツがある。」

「ゆうだけ無駄だよ。オレグはへそ曲がりなのだから。」

「よからぬ事を考えるのが、大いなるキズか!」


「らいひんのペールをお忘れですが?」

「りきんでおったわ。すまんペール。」

「ルイ・カーンさま! すかん!!」


「俺の名前で終わりだ。ブドウの出来は。」


「おう上等だと聞いているぜ。」

「ニコライさん、アウグスタさんも一口食べてみて下さい。」

「はい頂きます。……これは美味しい!!」

「ですわ~!」

「トチェフの連中にも世話を掛けただろう。帰ったらたんまりと賞与を払ってやるよ。」


「ルイ・カーンさま、これをお幾らで?」

「そうだな一箱が……。銀貨二枚だろう。ボブの費用とシビルのビール代。それに箱の費用、村の人件費。俺の利益が銀貨一枚だな。」

「ルイ・カーンさまの利益は大銅貨にされて下さい。これらを単価当たり銀貨一枚と大銅貨を三枚で買い取りいたします。」


 20,000x13,000=260,000,000=金貨・二千六百枚


「金貨で二千六枚ですね。ありがとうございます。ですが半分でお願いします。これは魔女マティルダの攻略の元になりますので。」

「いいでしょう。その魔女はブドウに弱いのですか?」


「いいえ、これはロシアンルーレット。ごく一部に毒を入れておきます。言葉が悪くてすみませんが全員毒殺に致します。」

「ま、待ってください。もし、そのブドウが奥様に出されたどうしますか。」

「出ませんよ、だってこんなに高価だと自分らで食べるでしょう。」

「ならばいいのですが。」

「カブしか食わせないのです、出すわけがない。」

「侯爵、そのロシアンルーレットに意味があるのでしょうか?」

「まぁ無いです。ですが少しずつ兵や修道女が死んでいきますので、少なくともブドウが怪しまれる事はありません。」


「旦那さま、どうしてこうも、つらつらと、いやぺらぺらと即行で文字を書き並べる事ができるのでしょうか。」

「キルケー面白いだろう?」

「はい退屈いたしません。旦那さまの素晴らしい教養バカが滲み出ております。」

「おうおう、そうだろう。どうだ、このロシアンルーレット作戦は。」



 ニコラスはどうすれば一番利益が上がるかを考えた。その答えは、


「いいえ侯爵さま。ここは私が全量を買い取りましてその魔女に高く売りつけますので、ルイ・カーン侯爵さまにおかれましては、早く金貨五千枚のご寄付をお願いします。その金貨が目の前にあれば食らいつきましょうぞ。」


「く~あのメス猫。またも秘密を漏らしやがったな。」

「可愛いではありませんか。怒らないで下さい。」

「少しは学習したようだが、まだ勉強は足りんな。」


 金貨八千枚を金貨五千枚と言った事を評価した。もしかしたら金貨三千枚が無くなっているかもしれない? と考えもしなかったルイ・カーン。


「ニコライさん、その前にあなたの農機具を早く売って下さい。持って行きましたら農機具さえも没収されますぞ。」

「そうですね、では農機具を販売出来次第に二手に分かれて作戦開始ですね。」

「そうだ、ニコライと俺は他人の関係だ。」

「はい承知。」

「ボブとシビルはニコライ夫妻を守ってくれないか。」

「オレグ。どちらかというと俺らが守られる方かもしれないよ。」

「そうかもな。俺らも知らない関係だ、間違ってもオレグ~とか叫ぶなよ。」

「はい了解いたしましたわ。ルイ・カーンさま。」

「ボブはどうだ、出来そうか?」

「おう俺は無理だろう。口にマスクをはめて喋らないようにするよ。」

「賢明だな。」


 ルイ・カーンはこのヴィスビューで三日を過ごす。



「お姉さま、宝石が光っています。一,二,三、四個もです。それも今まで光らなかったキャッアイが!」

「そうね、中心のダイヤも光だしたわ。オレグが来たのかしら!」

「そうよ、きっとそうですわお姉さま。」

「オンギャ~オンギャ~。」

「うるさい、黙れ! 二匹めが!」

「フンギャ!」



 1247年10月4日 ・ゴットランド島・フォレスンド


*)ゾフィとの再会


「ニコライ、私はマトワとの約束で港に残ります。……侯爵さま、早く皆さまをお食事に!」

「そうだな、あの懐かしい女将のパブに行こうか。今日はギャフンと言わせてやらねば気持ちが晴れない。」

「旦那さま? 昔の記憶が蘇ってくるのですね?」

「そうだな、最初の食い逃げのパブに行く。」


 あのフェアリーハンターに通報したパブだ。お忘れでしたか?


「アウグスタさん、俺は丘の上のパブに行くが来るのか?」

「尋ね人しだいです。会えるかどうかも分かりませんし、その時に考えます。」

「アウグスタ、待っているよ!」

「は~い。」


 アウグスタは独り港に残った。


「マトワとの約束は……、大きい柱の……、あの高い柱かな、うん。」


 アウグスタは辺りを見回すが、他には高い木は無かった。


「その木から夕陽に向って十歩歩いて止まる。そこから力任せに小石を港に向って投げる。でもどの方向かしら。マトワは心配いらないと言っていたけれども少し心配だわ。」

「アウグスタ、とにかく港に向って投げればいいのよ。どうせどこに小石が飛んでも同じなのだからね。」

「まぁ失礼しちゃう。変な事を思いだしたわ。こんな大事な要件を押し付けてさ、自分は疲れたから寝ると言うのだもの。起きたら黒パンのお焦げしかやらないんだからね。」


 と独りで回想にふけり怒り出す。


「で、投げる時間は夕陽が沈んだ時に! だったから小石を持って用意万端。」


「御嬢さん、旦那を待っているのかい?」

「えぇそうですわ。もうすぐ着くと思うのですが……そう、とても待ち遠しいですわ、ホホホホ……。」

「今、この灯台に灯りを吊るすから、無事に入港できるといいね。」

「え、あ、はい、そうですわ。」


 男はアウグスタに声を掛けたら高い灯台に灯りを吊り上げた。


「あらあら、とっくに日が沈んでいるわ、あ~どうしよう。とにかく投げるわよ、女と女の約束よ、戦争だわ!」


 アウグスタは小石に力を込めて投げた。


「えい、や~!」

「いた~!!!!」

「まぁ、小石に込めたねがいが当たったわ!」


 小石に力は込められない。


「まぁまぁ、あのは大丈夫かしら。頭に当たっても死なないとは言っていたけれども、どこに当たったかな!」


 投げられた小石が背中に当たる。この娘が尋ね人だ。名は……。


「まぁ伸びているわ! どうしまひょ!」


 アウグスタは慌てて駆け寄った。



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