第135部 シンティ
1247年6月30日 エストニア・レバル
*)シンティ
妖精のシンティは、キルケーに見抜かれてマンクス猫だと言われた。
「まぁ! 可愛い猫ですわ。」
(やはり魔女だわ! でも私を人間と言った意味が理解できない。)と考えた。
「シンティ、あなたは館のメイド長に任命いたします。」
「は……い。お受けいたします。」
「夜も頼みましたよ!」
「はぁ? 夜もですか~!」
「夜伽だよ。頑張りな!」
「いやでございます。」
「いい性格だ、ますます気に入った。」
本当にご主人さまにしか仕えない女だという事がキルケーには理解できた。家猫のペットだもの野良猫がそう容易く慣れるはずはない。
「こりゃ伯爵さまがご主人さまになれるのかな~?」
「んん?? どういう意味だ?」
「はいシンティを手懐ける方法をお教えしますわ!」
「キルケーの魔法が通じないのだろう? 手懐ける方法が本当にあるのかね~。」
「野良ちゃんにはそれなりの方法があるのよ。」
「いやだよ、黒猫に変えて猫可愛がりでもさせる気かよ!」
「いいえ違います。首にひもを付けて引っ張って回ればいいのです。」
「エサも必要か~?」
「旦那さまと食事がご一緒でしたら最高です。」
「それならできるだろうな。メイド長を外して執事に昇格させるか。」
「ただしイカ、タコは禁物でございます。」
「どうしてだ、美味いのにな。」
「猫にイカを食べさせましたら腰を抜かします。お疑いでしょうか?」
「実演してみる。抜けたら嵌め直してやるから大丈夫だ。」
「……、……。」
伯爵の言い方にさすがのキルケーも次の言葉が出なかった。シンティについての会話が終わった。
次の日、
「伯爵さま、私を御者に任命されて下さい。馬とも遊びとうございます。」
「シンティの生前は馬なのか?」
「いいえ違います。ですがお馬さんはダービーででも好きなのです。」
「そりゃいい! 今の馭者はクビにしよう。今後は俺についてこいよ。」
「はい伯爵さま。」
ルイ・カーンは早速馭者の男をギルド長に預けてしまう。ギルド長は断ることもできずにやや迷惑そうに引き受ける。
「これもシャチのエサにするのですか?」
「すまない、そうしてくれるか・海獣のエサにも使えるか!」
「あれは採食ですので肉は好みません。」
「同じ拾い食いだろう。どこが違うのか。」
「……。」
「ハープサルで養殖業の係にしてくれないか。」
「へ~い!」
馬が楽できるように細身の男を採用していた。教会ではロクに食わせてもらえなかったので細いまま成長したらしい。シンティは小柄で可愛い。
「伯爵さま、女の体重の目利きはおよし下さい。」
「俺はまだ言っていないぞ、先を越すでない。そうだな~十一貫だな。」
「そんなに軽くもありません。」
「もっと増やしていいのかい? 四十二kとか!」
「伯爵さま、馬車から落としてあげます。」
貫がキロに変わっただけで怒ってしまった。女は数字に弱いのだろうか。
「伯爵さま、今日は白菜の特売日ですよ、少し寄り道いたします。」
「ムギュ~!……。」
当時の農民はおおよそ食べられる草は食べていた。貴族は肉中心と黒パンだが農民には食べれらないので野草を摘んで食べる。野菜としてはおおよそ八十種類以上もあったらしい、一説では百十種類とも書かれてあった。
「パースニップもか!」
「はい白い人参はお馬さん用です。」
「俺のスープには入らないのかムギュ~!……。」
伯爵の好物らしい。これはある女の好物だからいつも多めに食わされていた。それで好きになったらしい。
シンティは久方ぶりの馬を操れてうれしいのだ、伯爵の言葉の意味は考えられなくなっていた。とにかく夢中なのだ。道に大きい石が出ていたら器用に避けて通ることが出来た。手綱扱いは素晴らしい。白菜三十個パブへ届ける。
「伯爵さま、あの女は変です、危険ですお避け下さい。」
「あれはサワという、俺の部下だが、どこか変なのか?」
「はい下腹部が膨らんでおります。弛んでいるのとは違います。」
「あぁそうだな、知っているよ。サワの前で止めてくれ」
「はい伯爵さま。」
「サワ、白菜を運んできたよ。七個でいいか。」
「はいご主人さま。……して、その馭者の変な女はなんですか?」
「……。」
「……。」
伯爵は無音の二人を差し置いて自ら白菜を下していた。
「シンティ、次行くぞ!」
「はい伯爵さま。」
「べ~~~!!!」
「ぶ~~~~!!」
「次は本部のパブだな。」
「はい、伯爵さま。」
ルイ・カーンは本部の自室にキルケーを呼んで先ほどの事を話した。
「おいキルケー。シンティは本当に人間か? どうしてサワと仲が悪いんだ。」
「それは旦那さまのせいですよ。女の戦いが始まったのです。」
「女の戦い? そうだな俺には解らぬ。」
「あ~らシンティは私とも仲が悪くてよ!」
「ケルキーック!!ソー!」
言い寄るキルケーに蹴りを一発! キルケーは難なく躱してしまう。クソ呼ばわりされたキルケーは怒るも、
「パコ~ン!」
と笑顔でシンティの頬を殴っていた。
「まぁ可愛い~わ! 私の下僕になりなさい?」
「ブ~!」
「ケルキーック!!ソー!……? キルケー!クッソー!……ん??」
「ギャッハッハ~、!!」
シンティの言葉を理解した伯爵は大笑いをした。
「シンティ、マンクス猫に変えられるから今後は突進するなよ。猫になったらこの俺でも元に戻せぬ。」
「んまぁ~伯爵さままでそのような!」
キルケーはシンティのこころ変わりにニッコリとほほ笑む。
「旦那さま、もうすぐ靡きますよ!」
「そうか~??」
馬が取り持つ縁だったのだろう。シンティはルイ・カーンの死に際の重要な妖精になる予定です。場所はイングランドの小さな島とイングランドの南のとある地点です。ルイ・カーンと接しながら莫大な魔力を蓄え続ける妖精さん。ルイ・カーンを支援し羊毛で産業を興す予定。
イングランド シンティ マンクス猫 小さな島
「旦那さま、もっと甘くて美味しい料理でシンティのこころを掴んで下さい。」
と言うキルケーの言葉で終わる。
「お姉さま、また石が光り出しました、水色です。どうしてでしょう!」
「暗い中でも光るものが在ると、なんだかうれしいね!」
「はい、」
「でもお姉さま。そこには無かったですよ。水色の宝石が誕生したのかしら?」
「うんぎゃ~うんぎゃ~。」
「うるさい黙れ。」
「うん……。」
「こいつは水色じゃない!」
*)荒れるサワとなだめるワルス
サワはルイ・カーンに靡いてはいないが嫌いでもない。今日シンティとういみょうちくりん”な女がご主人さまと現れて変な女と言われた。同じくサワもシンティに対して変な女と言う。
「ワルス聞いてよ。今日ね、ご主人さまと一緒に来た馭者がね、私を変な女だから、危険、近づくな、と言うのよ。もう、あったま来ちゃった!」
「それは酷いな、俺が文句を言おうか!」
「うん今度会ったらガツンとね!」
「俺が会った時は物静かで、どこかの若い農婦と思えたぞ。」
「あれは猫かぶりなのよ。きっと猫がご先祖さまだね!」
「おいおい、猫が人間に転生するものか、いくらなんでも飛躍のし過ぎじゃないのかな? う~ん??」
「だったらあの悪辣魔女が黒猫を変えたのだわ、きっとそうよ。」
「でもあれは魔女とも仲が悪いと聞いたが、どうなんだろうね。」
「あの女、死ねばいいのよ。ハープサルまでついて来たら海の泥にう~んと沈めてやるんだから。」
「そうカリカリするなよ。お腹に響くぜ?」
「そうね、……あいつ! 私のお腹を見透かすのよ。腹が弛んでいるとも言ったのよね。それに私は可愛くないとかなんとか。」
「こんな可愛い女房だからさ、やきもちを焼いたんだろう?」
「あのゲス女がやきもち?? それはあり得ないわ。だってどこの馬の骨とも解らない女だよ? 馬セリの食べ過ぎだわ。只の胸やけよ!」
女はある事無いことがとどめもなく口からこぼれてくる。口に栓で塞ごうとすると息咳切ったように洪水にまで大きくなる。サワは一白水星の星の元に生まれたのだろう。九曜暦には水と火は一つ。木と金は二つもあるのだが。
水は堰き止めることができる。もし溢れたら怒涛のごとく川下に甚大な被害をもたらす。今、まさに百十もの川が氾濫している。中国が大雨で多数のダムの水を放水している。九曜暦の土は三つもあるはどうしてだろう。(2020・6 雲南省)
世の男たち、一白水星の女は怖いと思え。ワルスは土星の生まれだろう、溢れる水を吸収してくれるから。二人の相性は良くもないが……。
サワの小言を聞くワルスこそ災難だろう。
「サワ、もう済んだのか?」
「そうね、言葉が尽きたわ、それ以前にワルスに嫌われるのはイヤだからもうおしまいにする。」
*)新しいパブの開店
「ルイ・カーンさま、開店おめでとうございます。」
「いやいや、まだ一号店だ。お祝いは要らないよ。」
「ルイ・カーンさま、開店おめでとうございます。」
「いやいや、まだ二号店だ。お祝いは要らないよ。」
「ルイ・カーンさま、開店おめでとうございます。」
「本店だ。お祝いはたくさん持ってきてくれ!」
ルイ・カーンは小さいパブから順次開店させた。トチェフから多数の食器が届いたので開店したのだ。メイドの教育も終わっている。多数もの板書きのメニューが並んでいる。
初日は建設ギルドや傭船ギルド。造船ギルドに家具のギルド。など建設に関係のあるギルド長が招待された。建設ギルドの人足は入れ替わり立ち代わりで一人に一時間の割り当てを行い全員を招待した。他二店のメイドも館のメイドも総動員されている。店に入らない作業員は屋外の馬車の広場で歓待を受ける。臨時の給仕の女はそれらの女房を当てているが不評を買っていた。
「伯爵さま、女房から飲ませて貰えません。」
「伯爵さま、女房の目が在りますので給仕の女に手が出せません。」
「当たり前だろう、(手も酒も)出されて堪るか!」
可愛い給仕のメイドが多数いるのだ、しかも若い。子供のメイドには店内のギルド長には近づくな”と言い聞かせていた。
「あのギルド長は鬼だ、女将、対処願う。」
「あいよ、軽くあしらってもいいのかい? だったら任せな!」
厨房と給仕の役割が反転していた。年季の入ったギルド長は分厚いガードの女を突き破る事は最後までできなかった。
トチェフから取り寄せたビールやワイン、ワクスにワインを入れて飲ませる。
「どうだ、安上がりだろう!」
「いいえご主人さま、結果は同じですわ。」
「いや水の分だけ安くなる?!」
ワインにワクスを入れて飲ませる?
この本部には二階に三つのテーブルが在る。左の一つにキルケーが座りパブの見張りをしている。キルケーからしたらこれらの全員の把握は問題ないという。男らの行動が見てとれるらしい。オカシイ頭になった男には退場を命じていた。女房が居るから浮気できないとは、キルケーにしたら可愛い子供の戯言だという。キルケーは長寿の年増な女、魔女だ。
中心はルイ・カーンとシンティ。このシンティは大の男嫌いだから伯爵がメイドから外している。とても良い待遇だ。右のテーブルには誰も居ない。これらのテーブルの後方が事務所と奥がルイ・カーンの自室になっている。さらに奥が得体の知れない部屋で四六時中も結界が張ってあり誰も入れない。キルケーの部屋なのかもしれないが、メイド長の部屋は完備されている。なぜだろうか。キルケーの本当の魔法が封印されているのか!
大いに賑わうパブ。酒が切れるまで飲みたいのか来賓は帰らない。
「キルケー、そろそろいいだろう。魔法を頼む。」
「はい旦那さま。今にルイ・カーンさまに忠誠を誓わせます。他には?」
「払った費用を回収したい傭船は半額にさせろ。建設は俺にどこまででもついて来るように頼む。メイドには駄菓子の箱を多数持ってこさせろ。」
「もう旦那さまはもう、性格が捻じれきっておいでですね。」
「うるさい、明日は司教や市長が来る。その時はまた……。」
「ルイ・カーンさまはワルですわ。」
ルイ・カーンは立ち上がり階下に向って、
「メイドと調理人、作業員は全員外に出てくれ。」
ごそごそと関係者は無言で出て行く。次に残った大小のギルド長が多数。
「皆さま、今晩は祝いに来て頂きありがとうございます。お帰りの際には、席に駄菓子の箱に置いて帰られる事を希望いたします。」
「今後の傭船料や建設の代金は、すべて半額でお願いする。」
これらの男たちは、無言で駄菓子の箱に***を置いて帰っていった。明日の朝にはこの、いかつい悪魔の魔法は切れて忘れてしまう。
ルイ・カーンとキルケーが最後なのだが、シンティが一人残っている。
「この悪魔、婆魔女! 金の亡者、ゾンビ! あ~私はなんという所に来てしまったのだろう! あ~、故郷に帰りたい……。」
この二人の悍ましい性格を知ってしまい嘆き悲しむ。
「精悍な伯爵さまだと思っていましたのに、なんとも悍ましい性格のご主人さまなのでしょう!」
悍という字に両極端な意味を持たせたのはどうしてだろう。
「シンティ、俺を褒めなくいいぞ。お前のご主人さまだ従え!」
「そうよシンティ。今の楽な暮らしが出来るのも伯爵さまのおかげよ。」
「いいえ今日でクビにされて下さい。」
「クビになってどこに行くのだい?」
「う、ぐぅ~!」
ぐぅの音しか出ない。
「腹は減っていないだろう。あれだけでは不足だったか?」
「はいピーナッツが六個です。足りません。」
「??……??」
ルイ・カーンは意味が分からなかった。シンティには確かに皿の料理で六皿を食べたはず、と考えるも、
「なにがピーナッツが六個なのだ?」
「はい全皿がイカのお料理でした。付け合わせが豆の六個です、もしかして?」
「そうか食べなかったのか、それは残念だ。今度は押さえつけて、な!」
シンティはめまいを起こして倒れてしまう。
「ルイ・カーンさま、帰って看病されて下さい。これはショック療養、いや虐待でございます。この虐待から立ち直れば、もう旦那さまに従順になります。」
「恐怖でもって支配させるのか。いい考えではないぞ。このまま嫌われたどうするのだ。夜中に刺されて、俺の方が殺されるかもしれないのだぞ。」
「なぁキルケー。この、いかつい悪魔の魔法は切れて忘れてしまうのだろう?」
「はい旦那さま。今後の仕事で料金が半額になる事は在りません。なにしろ、ぜ~んぶを忘れるのですから。儲かったのはカラのお財布だけです。」
「だよな~もうあいつらはケチだから、財布の金は自宅に置いてく来るしな~徹底したドけちのかたまりだ。」
「それは当然でしょう。ギルドで身体をはって金を稼ぐのですから。小さいお金も出し惜しみしますよ。」
「俺とは違う生き物だな。」
「ご主人さま?」
シンティが目を覚ました。
「シンティ、明日はVIPな来賓だが大丈夫か!」
「はい、もう怖いことはございません。私も稼いでお見せいたします。」
「??……??」
*)本当の開店祝い
身内の落成式の翌々日がメインのお祝いの開店祝いなのだが、
「ご主人さま、船は明日に着くかと思います。このままでは食材が足りません。」
「いや足りないのはおつむの中だけだ。すぐに名案が出て今日も無事に済むだろう。それで何人分の肉が足りないのだ?」
「全部です。明日に船が着いても当日の料理に間に合いません。」
「そうかぁ、だったらあの赤い魚を出せ。あれで十分だ。刺身が美味いだろう。」
「はいクジラですね。あの肉はたくさん残っています。脂身ですが!」
「そうかぁローソクでは食えないな~。」
「こんな時にあれが居たらな~。」
「あのう~伯爵さま。川に多数のシャンハイガニが生息いたしております。もう社会問題までなっておりまして東洋に輸出されるそうです。」
「いや、今は下水の川だ。食えない。食ったら、」
「死にますか!」
「だな。」
「ブランデンブルグでは本当に困っているという事です。」
「そうなのか?」
「いいじゃありませんか、ここのタリンの貴族を一掃させましょう。」
「貴族がたりんごとなるから、この俺が貴族になれるとか?」
「はい今の私でしたら伯爵さまにいい仕事をして見せます。」
「よし、乗った。来賓を全部殺そう!」
「はいご主人さま……!」
シンティは昨日のショックが大きかったのでまともではない。日本にも生息しているが年々少なくなっている。山太郎ガ二、モクズガニ、ツガニと同じである。味がとても美味しい。なぜ日本は少なくなるのだ!
「今日にでも揃うのか?」
「はい私にお任せ下さい。男を二十人ばかし貸してくだされば十分です。」
喜々としてシンティが働きだした。男嫌いなシンティがおかしい。
レバルの南に大きい湖がある。ここからシャンハイガニを採取するというが、
「秘密です。」
シンティは本当にシャンハイガニを三百kも水揚げしたのだ。
「ご主人さま、すみません。」
「どうしたシンティ。」
「はい、お借りしました二十人の男はお返しできません。」
「どうしてだ?」
「すべて力士の成瀬川土左衛門=土左衛門にしてしまいました。」
「本当か!」
「はいウソではありません。」
「しかし、どうやって!」
「秘密です。」
「……!……。」
「お前! 少し大きくなっていないか?」
「嫌ですよ、ご主人さま。セクハラです。」
見るからにシンティの胸が大きくなっていた。無いのが出たのだ、誰でも気づくだろう。
「まぁヒドイ!」
男二十人分の魔力をゲットした。明日は三倍にまで大きくなった。
「頼むから市長と司教は殺さないでくれないか。」
「それ以外は全部。」
「おう任せた。」
ルイ・カーンの金を無心に来るような貴族だ死んで当たり前。レバルの秩序が粛清された。
「ご主人さま。馬車を十台お貸しください。」
「いいぞ、だが馬は食べるなよ。」
「馬車を装飾いたしまして死んだ貴族を運びます。料金は金貨十枚です。」
「儲けは?」
「はい八十%です、ご主人さま。」
「ご主人さま?」
「おう随分と大きくなったな~!」
んなこと、もうあり得ない。シンティは本当に妖精か、人間か。いや、悪魔だ。
ルイ・カーンの目の前を飛ぶ五月蠅がすべて地に落ちる。これでようやくルイ・カーンの目指すべき貴族が見えてきた。
ルイ・カーンの目指す貴族を出すのに随分と苦労した。まだ入り口、頑張れシンティ! 悪魔のシンティ。
6月は水無月、旧暦の五月。蠅が多い。特に牛に取り付くハエに刺されるとアブみたいに、ジカ~ッとしてとても痛い。刺され続けると恐怖になる。家バエは小さくて手揉みする。ルイ・カーンはこの纏わりつく手揉みの貴族をハエと呼んだ。
これを小気味よく感じいるのがキルケーだった。サワとワルスは近寄るのも憚られるようで、桑原桑原と頭の上で手もみしながら避けて通る。
シンティ恐るべし!
シンティについて、大いに盛り上げました。以後は普通に戻します。シンティの人殺しはお忘れくださいお願いします。この章は夢でございます……。