表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人狼夫婦と妖精 ツインズの旅  作者: 冬忍 金銀花
第一章 駆け出しのハンザ商人 オレグ
13/257

第13部 ポーランドの村々を訪ねて!


 1241年4月14日 ポーランドのコバレ


*)コバレで行き倒れ?


 リリーとゾフィを待つ事一時間。俺は人間が出来ていない、待てないのだ。空腹には耐えられない。


 人間は、腹減った、寒い、寂しい、金が無い。この四点で自殺までしてしまう。殺人も行うのか? と考えたが、自殺者に比べたらはるかに少ない。殺人には宗教が大いに関係していた時代だった。


 俺は我慢できずに道端に寝っ転がる。ソフィアは女の子だ、へたり込んでいるが俺ほど行儀悪くは無い。


「あいつらは向こうで食っているんだ。きっとそうだ。殺してやる。」


 おやおや、空腹で殺人は無いのではなかったかしら? 持論と違うようね。


 ようやく二人は帰ってきた。


「お帰り! もう待ちきれなかったぜ。何かあったんかい?」

「な~に、大した事ではないよ。フェアリーハンターと鉢合わせしただけさ。逃げていたらお店が閉まってさ、開いている店を探しててこの時間さ。」


「あらま~、本当に大丈夫でしたのね。此処に居るのですもの!」


 ソフィアが心配して言う。


「そうさ、リリーの魔法でどこにでも行けるから捕まらないよ。」


 ゾフィの変身からノアの姿に戻って言う。




*)ゾフィの変身=ソフィア似の女の子の姿。ノア=いつものお気に入りの妖精のスタイル。


「お姉ちゃん、早く食べよう。私もお腹がペコペコよ」


 リリーは右手の指を咥えて食べ物を見ている。リリーの視線は? ゲートの中の食べ物だ。


 リリーはゲートの中に戻って料理を取り出した。次々に持ち出される料理に俺とソフィアは感動したのだった。でも? 微妙に欠けていたり少なくなっているのは不自然だ。


「お二人さんはもうご馳走様! していいんだよ。怒らないからね!」


 俺は気にもしてはいないが、言わずにはおけない性格だから嫌味を言った。所々が齧られたり無くなっていたりしていたのだ。


「ダメよオレグ! そんな優しい言い方ではね。こうドスを効かせてこう言うのよ。ウオ~オ~~~~オゥオ~~オ~~ン!」


 二人は怖気づいた。やっぱりお姉さまは怖いオオカミだ! 俺は図に乗り、


「怖いよ、ソフィア! この俺まで食べないでおくれ。」

「不味いからイヤだわ。リリーの方がましね!」


 ソフィアはオレグよりもリリーが美味しいという。リリーは堪らずに美味しそうなパイを持って空へ飛んだ。だが直ぐに降りてきた。妖精では沢山食べられない。人間に変身して食べだした。最後にとワクスを取り出す。誰もお喋りはしなかった。無心で食べていたのだった。



「う~ふッ。満腹だ。幸せだ~」

「良かったね、オレグ! リリーが魔法を使えて。」

「ああそうだよな。リリー、これからも頼むね。」

「うん、任せてちょうだい。」


「なあ、ソフィア。グダニクスに誰か協力者が居たらいいね。フェアリーハンターと会いたくはないからさ。」

「居場所が決まるまでは是非とも欲しいね。そうしたら、毎晩お風呂にも行けるし食事も自由に出来る。最高だわ。」


「オレグ、至急作りなさい。可及的速やかに。迅速に!」

「なんだい、同じ言葉を並べてさ。頭は大丈夫だろうね。」


「私たちからもお願いするわ。この美貌ですもの、妖精でなくても捕まるわね。」

「んな事! あってたまるか。でも倉庫の番と情報収集には必要だな。よし! 探してみるよ。」


「リリー、落ち着いたらコルニクまで頼むね。」

「OKよ、オレグ。任せて。」


 俺らはコルニクに向けて出発した。



 1241年4月14日 ポーランドのコルニク



 俺らはコルニクに向けて出発した。もう夕方になり宿屋を探すも、ここには無いという。野宿には毛布も何もないから、グダニスクに戻り宿を取った。毎日そうすればいいのに、ご苦労な事です。




 1241年4月15日 ポーランドのグダニスク


*)ボブを再雇用?


 俺は倉庫の番人と食事の協力者を探して回った。ハンザ商人の出入りする店や港を探したが見つからない。ボブがまだ帰りの荷が無いので滞在していたので相談をする。


「あ、あ、居た居た! やっと見つけたよ。」


 俺はボブの前に座った。ボブは一言も話さずに食べていた。赤い唐辛子をまぶしたニシンを焼いたものだ。


 俺たちはパブを数軒見て廻ってやっとボブを見つけたのだった。ボブの隣のテーブルが空くように睨みを利かせたいた。若い男女だから視線を浴びせると弱いのだ。気持ちを悪くさせてパブから追い出した。アベックさん、ごめん!


 俺はテーブルを横にくっけてボブに話し出した。ソフィアに注文は一任する。三人で適当に、大量に頼んでいた。これでテーブルが三つくっいたのだった。


「なあボブ。まだ馬車が見つからないんだ。何とか出来ないものかね。」

「無理を言うな。まだ二日目だろう?それよりも俺の運ぶ荷物を見つけてくれよな。頼むぜ。なあ、兄ちゃん。」


「荷物か、空荷で帰ればいいじゃん。それか、俺の倉庫で番をしながら探してはどうだい。」

「ウォホゥホー!そいつあー、ありがてーな。宿代が浮くぜ。是非ともそうさせてくれないか。」

「心にもない事を言っちまったぜ。ボブと後は荷役の三人か。」


「いや、俺だけだ。三人は帰って行ったぜ。雇う事も考えたが、何せ帰りの荷物が無けりゃ雇えないよ。」


「じゃあぁ、おひとり様で、銀貨三枚でどうだ。」

「それはありがて~な。銀貨3枚をくれるのか。兄ちゃんは凄いぜ。」

「おいおいおい!ボブ!それは逆だよ。ボブが俺に払うのさ。」

「なあ、ソフィア、そう思うだろ?」


「ええそうよ、ボブ。ボブが銀貨三枚を払うべきだわ。」

「チェ!そうかい、夫婦してそうなんだな。いいぜ払ってやるよ。その代り倉庫の荷物が無くなるぜ。」


「そうだろうな。倉庫の荷物を売るだろうな。でもダメだ。」

「オレグ!そうしなよ。ボブにもここで売ってもらおう。いい考えよね。」

「ボブ!いいかしら?家賃は要らないわ。その代りにここの商品を売ってちょうだい。売れたら内容により歩合給で賃金を払うわ。」


「そうだな、共通するところもあるし、丸っきり損にはならないな。そうさせてもらうよ。」


 俺はソフィアの意見に賛成した。ソフィアは続けて頼みごとを依頼する。


「ボブ、それからお願いが有るの。リリーとゾフィがお昼ごろに食事を取に来るから、毎日銀貨で十枚分の食事を用意して下さらないかしら。報酬は銀貨十枚から取ってちょうだい。銀貨十枚で私たちの一日分の食事を用意して。絶対の命令だよ、いいね。」


「これは請負かい?店と協力関係を結んで良いんだよな? だったらやるぜ。」

「そうね、予算の範囲内だから構わないわ。」

「よろしく頼むよ。大いに助かるからさ。」


「おい、リリー。お前はどうやって来て、持って帰るのさ、あ、ああん?」

「ボブ!ちょっとこさ、来てくれ。外で説明するから。」

「リリーも来てくれ。」


 俺とボブ。そしてリリーの三人で路地裏に行った。ここで魔法を披露した。


「こうやるのさ、見てて。」


 リリーはゲートを使い、移動して見せた。ボブは目の玉が飛び出し、口を大きく開けて驚いていた。最後に俺はボブを蹴飛ばしてゲートに放り込んだ。


「キャイ~ン。」


 ボブはもやもやと見えるゲートに投げ込まれた。そして直ぐに戻って来た。


 俺とボブ。そしてリリーの三人はパブに戻った。


「いやあ~驚いたぜ。出た先が俺の船だった。びっこらこいたでな。おっとこれはイングランドの方言だった。」

「ボブはやっぱりイングランドの生まれだったんだな。」

「そうだな、イングランド南部の生まれさ。」


 俺たちの最終目的地が、まさにその辺りなのだ。詳しく話してくれるかどうか。俺は訊いてみる事にした。


「なあボブ! イングランドのどの辺りになるんだい、良かったら教えてくれないかい?」


「そうさな、ロンドンの南東方向のサウサンプトンという小さな寒村? いや漁港だな。」

「そうか、俺たちの目的地に近い所だ。」

「俺の実家はもう無いぜ。タダ宿にしようなんて出来ないぜ。」

「おう、それは残念だ~、ソフィアさま、どうしましょう~」


 俺はふざけた口調で喋った。ソフィアは呆れた顔つきで、

「またふざけているんだから。オレグ? ボブに失礼よ、真面目に尋ねなさい。」

「いいよ、ネ~ちゃん。ちっとも構わない。田舎の出だからさ気にしないね。」




 1241年4月17日 ポーランドのコバレ


*)念願の馬二頭


 俺たちはまたコバレに寄った。リリーに空高く飛んでこの村を見渡した時に林の横の農家で、飼い桶らしい物が見えたというのだ。それも、大分経った昨日になって思い出したのだ。


 だから確認しに行くことにした。


「もし馬が居たら買いたい。それも二頭だったらいいかな。」


 俺は希望的な意見を言う。ソフィアは俺に相槌をしてくれるが、妖精の二人は俺をバカにしかしない。


「ジジババの村だ。開墾用の馬はもう要らないだろう。金貨を見せればイチコロさ。金貨十枚で十分だろう。」

「好きに空想してなさい。」


 ソフィアは冷めたことを言う。俺はリリーに先に行け! と言った。


「な、リリー。先に飛んでさ、お馬さんが居るか、見て来てよ。俺はこのコバレを見ながら歩くからさ。」


「OKよ。ゾフィーはソフィアと居るんだろう?」

「うん、お姉さまを守ってるから。」


「何からソフィアを守るんだい。この俺さまからとでも?」

「ブー!」


 俺はこの寂れた村の再生が出来るかを考えた。とにかく人・農民が居ないから農村の再生は不可! という結論に達した。


「なぁ、ゾフィ! ここは少し盆地になってるのかい?」

「東に大きい湖がいくつもあるからさ、地下水になって流れてる。周りは丘だからそうだね、盆地だね。」

「そうか、これが森の少ない原因だな。」


「オレグ! リリーから通信だよ。馬が二頭居るとさ!」

「おお! そうか。やったな。早く行こう!」


 はやる気持ちで到着するも随分と痩せた馬だった。この主人に馬齢を尋ねる。


「そうかい、売っていいよ。この馬はまだ若いよ。俺らの老後の資金にと置いていたものだからさ。幾らで買うかね。」

「それはありがたい。金貨で六枚でいいでしょうか?」

「おい、婆さん。金貨で七枚だそうだ。売るかい?」


「おやおや、金貨で八枚かい? それで十分だろうて。これでようやく息子の所に行けるよ!」


「まぁ~、この老夫婦ったら!」


 ソフィアは、金貨六枚で買う積りでいたオレグよりも、ずる賢いと思った。


「ねぇ? お婆ちゃん。この馬は若くはないよ。足腰も弱ってるわ。見てて!」


 ソフィアは馬の横に立ち、馬の耳に何かを囁いた。すると、


「ほら見て下さいな! 二頭とも足がガクガクと、震えていますわ。これではもう立つだけで精一杯よね。でしょう? お爺さん。」


 老夫婦は家に入ってなにやらヒソヒソヒー。


「そうですか、ワシらと同じですか。金貨で五枚でいいよ。来年には食べようと思っていたから。金貨五枚で贅沢して死ぬさ。」

「ありがとう、お婆ちゃん。リリー! 早く持ってきて。」


 リリーはゲートから今日の昼食を取り出した。


「さ、お二人とも、たくさん食べてください。」


 老夫婦は見た事もないご馳走に目が血走っていた。オレグは直ぐに金貨5枚を渡した。


「ありがとうお爺ちゃん。馬二頭頂いていくね。」

「おうさね、気をつけて帰りなされ!」


 商談成立で四人は急ぎゲートを使いグダニクスへと帰った。次なる商談には?


「ねぇ? オレグ! 金貨五枚はくれるでしょう?」

「いや、3枚だ。ソフィアの手法には参ったよ。オオカミの声で囁けばさ、馬もそりゃ~足もガクつくというものさ。俺はそこまでズルくないぞ!」


「うん、判った。金貨四枚でいい。いいわよ。いいかしら?」

「とほほ・・・・・・。」


「やったね、ソフィア!」

「それもこれも、ゾフィーの知恵だね。ありがとう。」

「なんだい、ゾフィーの知恵かい・・・・・。」



 こうして俺は馬二頭を手に入れた。そして蓄養に励んだ。

「人参だよ?タント、お食べ・・・。」

「ソフィア! お前さんが面倒をみるんだ。馬と仲良くなるんだぞ。」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ