第129部 トチェフ村の大改造!! 逸話ならぬ脱話
1245年5月25日 ポーランド・トチェフ村
*)メイン大通りの建設
グラマリナには、ソフィアの居ない事を理由にオレグが仕事をさぼっているように見えた。
「どういう事かしら、私に説明してください。」
「身も心にも負担がかかるソフィアが居ませんもの! 羽が生えるのは当然でしょう。……なにか問題でも??」
(ソフィアと一緒に居るのがそんなに負担になるのかしら? 無理もありませんですわね)その一言でグラマリナはそう思った。
グラマリナと四六時中も顔を突き合わせるエリアスからは、当然同じ思いだとはグラマリナは思ってもいない。なのにオレグの気持ちが理解できるという。どこかが可笑しい。
「いいえ、問題はそこではありません。オレグがこのようにノンビリと時を過ごす事が私には理解が出来ないのです。」
「その言葉! そっくりグラマリナさまにお返しいたします。少しはやや子の世話で目の色を変えて下さい。」
「はは、これは一本取られました。私の娘は大きく成長していますよ。風邪とかは無縁です、オホホホ!!。」
(ケ! 笑っていろ!!)「それはよろしゅうございます。実は……で、ございます。」
「あらあらまぁまぁ、そうですの。あの二人が居ませんとオレグは仕事が出来ないのですね?」
(きゃ~、痛い処を突いてくる!)
「はい、この私も初めて自覚したところででございます。とくにリリーには頼りきりでいた! と反省しきりです。」
「飲み友達のボブも居ませんね、デーヴィッドとエルザを寄こしましょう、朝まで飲み明かす事を許します!」
「ありがとうございます。これより館にまいります。」
「いいえオレグ。私は二人を寄こします、と言いました。館で思いっきり愚痴が言えますか? 特に私に対してですよ?? どうです違いますか?」
「はい~喜んで~~~!!」
オレグはさぼっている訳ではなかった。デーヴィッドとエルザが子供を連れてパブにやってきた。エルザは、ポンとテーブルに寝かし置く。
すでに飲み始めていたオレグにはエルザの動作が異様に映った。
「あり得ない!」
「オレグさん、どうされたのですか? さ、ぁ、飲みましょうよ!」
と酌にくるエルザだった。旦那を貰ってHな事に慣れてしまったエルザ。オレグに色っぽく迫る。
「ウ、ゴホン!!」
「なんですか! 不思議な咳をされますのね? オレグさま!」
「いや、今の咳は俺じゃぁないぜ。」
「まぁ!!」
「少しは旦那にも色目を遣ってやりな! 飲みすぎだろう!」
気が気ではないデーヴィッドだ。オレグには女を引き付ける何かが有るのだろうか。特に魔女らは人使いの荒いオレグには、何も言わずについてきている。モテない男の願望がこの物語の根幹をなしている。自分には幸せを、他の男には悪女や離婚”といった問題を背負わせて喜んでいる。エリアスには悪女。マクシムには二度三度の離婚。ボブにも給仕の女を。
だがデーヴィッドとエルザは幸福だ。どこかが可笑しい。デーヴィッドには浮気性の女なのか!やはり……。
「オレグさん、エルザには手を出さないで下さいよ。」
「当然だろう、俺も命を掛けるほどに女好きではないよ。いくら鬼が居ないとはいえ他所様には手を出さない。」
「魔女には? 出す? あ、んん?? どうなの??」
まるで私に手を出しなさいよ! と迫るエルザの態度。
「エルザ、飲みすぎだろう。ここからは仕事の話だ。旦那を借りるぞ。」
「あらあら、オレグさまはそういうご趣味でしたの!!」
「おう判っているじゃないか。お前も加われよ。」
「まぁ、今夜は寝かせないのね!!」
「?……?」
「デーヴィッド。館から港へ通じる通りをな、今の広さの三倍に広げてみたいのだよ。どうだろうか、賛成してくれるかな。」
「道の中央にはリンゴの樹でも植えるのですか?」
「あぁそうだとも。こうも軒を連ねていては、大火には弱いのだよ。これは将来このトチェフが発展しやすいようにと考えてのことなんだ。」
「では、オレグさんの考えとは?」
「あぁ、この大通りには商店や事務所を建てる。宿屋もパブも軒を連ねるのだ、きっと名物の街になるだろうさ。」
「え”ぇ!?! 観光の街にするのでしか? 吉原も??」
「そうだ、ドイツ騎士団も遊んで過ごせる街にしたいんだ。それも、すぐに…。」
ろれつが怪しくなったデーヴィッドが、
「どうしてドイツ騎士団ですか、あいつ等は毒です、ばい菌ですよ。それを呼び込むというのですか! 俺は反対です。」
「おう待ってくれ。俺の意見は何も言ってはいないぜ。な? エルザ。」
「えぇそうよ、デーヴィッド。オレグさんはまだ言ってはいません。」
(私と寝たいと、まだ言わないのね!)という願望が隠れている。
「では、その考えとはなんだい。」
「間もなくここにもドイツ騎士団が侵攻してくるだろう。だからさ、あいつ等にこのトチェフを滅茶苦茶にされたくはない。だからさ。」
「そりゃ~そうですよ、あいつ等を蹴散らしてやればいいだけでしょう。」
「この村でも戦争が出来て、勝利出来るとでも?」
「そう、出来ませんね……。だから村の保身になるように改造すると……。」
「あぁそうだ。ドイツ騎士団に嫌われて火を放たれたら??……。」
「村はこんがりと……。」
「なるからさ、だからあいつ等も機嫌よく過ごせる街に造り変える必要があるのさ。どうだ、理解できたか!」
「あぁ良く分かったぜ。オレギュは脳の中で青写真を描いているんだにゃ。」
(道の真ん中に樹を植えるのは、将来、この街に侵攻してくる戦車を通さないためにだよ!)とオレグは考えているのだった。
「あぁそうだともさ。道の中央には果実が実る木々がいいな。」
「でも長屋ではどうしようもないのでは?」
「そうさ、この大通りには戸建ての家を造るのさ! だから今の長屋は裏通りになるようにさ、新しく農地を埋めて道を通したいのだよ。」
「うんうん、俺がにゃんとか説得するにゃ。」
「それと俺のビール工場の前にもその大通りにしてさ、大きなレストランを造りたいのだよ。な? 賛成してくれるかにゃ?」
「出来立てのビーリュが飲めりゅんだ!……と、美味い料理!」
「おみゃ、いい考えだにゃ。・・・・・・・。」
「あたびょうよ、俺はな頭で仕事をする人間がにゃ。・・・・・。」
「あらあらまぁまぁ、二人とも酔い潰れてしまいましたね。」
「はいグラマリナさま、お隣の部屋で寒かったでしょうが、いい意見が聞こえてきまして?? でしょうか?」
「はい新年からは村の復興へと舵を切りますよ。オレグの先を進みたいですものね!」
「はいお館さま!!」
グラマリナはいつの間にかエリアスを差し置いて、お館さまと呼ばれるようになっていた。
「そうですね、これもオレグあってのことですわ、うふふふff・・・。」
「いい夢が見られますね、お館さま。」
「はい早くカネヅルが帰って来ますように……。」
「はい、前回たくさんの反物を送りましたから、楽しみですね!」
エルザもグラマリナもソフィアやリリーの苦労は知らない。能天気な領主の嫁さんだ。二人だけだと領主とメイドの関係の気分になる。
グラマリナは、オレグに悟られぬようにトチェフ発展の青写真を寝ずに考えた。それはオレグの筋書きだったとはグラマリナは死んでも気付かないのだ。
オレグにはそのようなトチェフの村の事よりも二人、いや三人の事が気がかりでどうしようもなく焦っていたのだ。(どうだ、判ったか! グラマリナ)とはオレグの夢の中のお話だろうか。
翌日オレグはグラマリナに館に呼び出された。
「オレグ、私はこのトチェフ村を大きな街に造りたいのです。つきましては村に大きい道を造って、商店や宿屋、パブを造ってまいります。協力していただけますね?」
「はい喜んで~~! きっと、すてきな街ができるでしょうね……。」
「うふふふ、むふふふ……。」
とても喜んだグラマリナだった。
「でも、お金はお支払い下さいまし……お館さま。」
「えぇ?? えぇ、ええ……。」
最後のオレグの言葉には何も言えないグラマリナだった。
オレグにしてみたら、
「俺の功績になる仕事をとんびに攫われた!! 憎きは作者か!!」
とオレグは最後に酔い潰れた事は置いといて、いいアイデアを盗まれた事に腹を立ててはいなかった。???……。
「これでグラマリナさまの、株が上がるだろう。」
オレグは他にも考えている。道の中央に植える樹の横には防災に役立つ水、そう、水路をも考えているのだ。
「水路が在れば自由に道は通れまい、どうだドイツ騎士団。」
「五m幅の大きい水路には、鯉を泳がせて大きくなれば食べるとするか!」
下水にならない様にと考えた案だった。出来るだろうか……。
久しぶりに農場とブドウ園を視察した。農夫が枝の剪定をしている。枝を選定して出来るだけ実りの良い枝を残すのだという。細い枝は切り落としていた。
「ブドウの樹の剪定で出るクズ枝を何かに利用できないか。」
「旦那、串焼きの串が最適ですぜ。これまた枝がとても美味いんです。」
「はぁ?? お前何を言っている。ブドウの枝が旨い??」
「はい旦那。ブドウは旨いでしょう??」
「あぁそうだな。」
「だったら枝も旨いに決まっていますよ。だから……さ! ね??」
(ブドウの枝を串に使うと肉類がとても旨くなるということです。)
「そうだな、錆びた鉄の串よりもいいだろう。」
古着屋
靴屋
毛皮屋
女中業
仕立屋
理髪屋
宝石屋
料理屋
菓子屋
石工屋
大工屋
蝋燭屋
織物屋
樽屋
パン屋
水運搬屋
さや屋
葡萄酒屋
帽子屋
鞍屋
鶏屋
財布屋
魚屋
ビール屋
洗濯屋
油屋
運搬屋
肉屋
バックル屋
しっくい屋
香辛料屋
鍛冶屋
紐職屋
宿屋屋
皮なめし屋
彫刻屋
医師
屋根職人
錠前屋
風呂屋
敷物屋
干し草屋
刃物屋
手袋屋
木材屋
木彫屋
馬具屋
飛脚屋
娼婦
両替商
刺繍屋
膠屋
煉瓦屋
……etc
「グラマリナ、どうだ、お前に出来るか!!」
一人の女が、
「オレグさん、オレグさん……。」
「あぁ、あん??」
「起きて下さい。さぁ帰って寝ましょうよ。」
「グラマリナ、どうだ……、この仕事、……、出来るか~!!」
「あらま~また眠ってしまったわ~、亭主とどっこいどっこいだわさ。」
(あ~ん?? 俺を揺り起こす女は誰だ~??)オレグの夢はまだ続くのだろうか。否!!
「オレグ、起きて。リリーが帰って来たわよ!」
「え”!!!!」
跳ね起きたオレグの襟をむんずと掴んで誰も居ないオレグの家に引きずる。いったいこの女は誰だろうか。
「さ、一緒に寝ましょうね!」
「ギャ イイイィィィ~~~~~~~ンンンん!」
「そう、いいのね!」
いつもいつも眠りかぶって書いております。今日見た夢も物語に入る
かもしれません。これもばたばたして空回りをしていた時に書いていました。
これも後日、修正いたします。